"男は黙って甲類焼酎"的オジサンのワインバー初体験物語【静岡】

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大衆居酒屋さん側からのぞき見たワインバー

ワインというのは、好きな人にとってはどこまでも興味の尽きない代物ですが、そうでない人にとってはいかにもキザったらしいお酒という節がありますよね。産地とかブドウ品種とか、マリアージュがどうのとか……、煮こみにビールに甲類焼酎の“居酒屋党”からすれば、

「酒を飲むときに、めんどうくさいことを言うなよ」

というわけです。

しかし、そんな根っからの居酒屋党(そう思っていた)の僕にも、ついにワインバーに足を踏み入れる日がやってきました。

あ、自己紹介がおくれました。はじめまして、メシ通レポーターの間覚です。 

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それは、暇さえあればお酒を酌み交わす親友Mの、「いいワインが手に入ったから家に来ないか」というお誘いがきっかけでした。

乙類焼酎のお茶割り専門で、食には頓着ないM。そんなMと居酒屋さん専門の僕という二人が、自宅で高級ワインをたしなむというのは、お金をドブに捨てるような行いです。しかし僕たちはそのことにワインを注ぐまで気がつきませんでした。

飲むほどに 酔わずに浮かぶ ハテナマーク

ワインの良し悪しの基準がわからないMと僕。一口飲むほどに、“高級ワイン”という言葉が邪魔をして頭が混乱します。そして、そうなってくるともう楽しくなんか飲んでいられないのですね。つまり僕たちは、“高級ワイン”という言葉にもてあそばれたんです。

あまりの敗北感。そして、その副産物として僕の脳裏に浮かんだのは、「いったいワインってどうやって楽しむの?」という単純な疑問です。加えてもう一つ、「ワインのかりはワインでしか返せない」というわけのわからない闘争心にも火がつきました。

「なんにしても、ワインを知るには、やっぱりまずはワインバーからですかね」

ということで急遽、僕とMは、静岡市内にある以前から評判のワインバーへ行ってみようというはこびになったわけです。 

 

あれよあれよのワインバー初体験 

静岡駅の北口からおよそ10分。街中を東西に貫く青葉公園から静岡東宝会館に向けて北側に伸びる道に入ってすぐ左。雑居ビルの2階にお目当てのお店はありました。

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ワインバーの名は「Buco(ブーコ)」といいます。ちなみに「Buco」とは、イタリア語で洞窟という意味。その名のとおり店内は壁や天井が全体的に丸みを帯びていて、まるで洞窟の中のようなお洒落なしつらえです。

 

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おそるおそる入店すると、白シャツ&ベストできめたマスターの稲垣匡宏さんが、

「はじめての方ですよね? うちのお店は、お酒はワインがメインで、ほかにビールとリキュール類が少しあるくらいですが、大丈夫ですか?」

と、丁寧な口調で声をかけてくれました。

すかさず「はい大丈夫です」と答えながら、僕は今さら自分たちがワインバーに来ていることを不思議に思って、「確かにワインを飲みにきたんだよな」と心の中で反芻します。

店内はL字のカウンターに7席。一番奥に4人掛けのテーブル席がひとつ。

案内されたカウンターの席についてあらためて店内を見渡すと、雰囲気といい、店の大きさといい、とても居心地のいい空間です。きっとショットバーなんかと勘違いするお客さんも多いんでしょうね。稲垣さんが、最初にこのお店がワインバーであることを僕たちに確認したのもうなずけます。

 

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さて、なにはともあれついにワインバーにやってきた僕たち。なにごともはじめの挨拶が肝心ということで。

「はじめてワインバーに来たんですけど、いろいろ教えてください」

と、ルーキーらしい謙虚な挨拶。すると、

「わからないことがあったら、いろいろ聞いてください」

と、稲垣さんは笑顔で返答してくれます。まずは、気さくな人だとわかり一安心です。

 

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つぎに、注文をしようとメニューを見てみると、ワインはもちろん食べ物のメニューが充実していることに気がつきます。料理はイタリアンが中心で、野菜料理に肉料理。パスタもオイル系からトマトベースまで、いろいろな種類が食べられます。また、メニュー表に載っているレギュラーメニューのほかに、黒板には旬の食材を使った本日のメニューも豊富に書かれています。

そんなイタリアンの専門店にも負けない品揃えのお店を、一人で切り盛りする稲垣さん。調理から接客まで手際よくこなす姿は、目を見張るものがあります。その様子を横目に、何を注文したらよいかあれこれ悩んでいると、ちゃんと僕たちのことも気に掛けてくれていましたよ。

「もし決まった銘柄が無ければ、グラスワインはいかがですか。白と赤、それにスパークリングもグラスで出せますよ」(稲垣さん)

「じゃあグラスワインの白と、それに合うおつまみをおまかせで」(僕)

ということで、しばらくして提供された白ワインでMと乾杯しようとすると、隣に座っていた常連というお姉さんが、僕たちの乾杯に一緒になってグラスを合わせてくれました(こういう、ささやかな喜びは、居酒屋さんにはないですね)。

 

初心者にはうれしい独自のグラスワインのオーダーシステム 

ところで、いざ飲み始めて気になったのが「Buco」のグラスワインのことです。というのも、隣の常連のお姉さんによると、「Buco」の特長のひとつは、グラスワインのオーダーシステムだそうで、なんでも彼女もそのおかげでワインが好きになったというのです(これは、気になります)。

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そこで、稲垣さんの手が少しだけあいた隙に、グラスワインのことをいろいろ聞いてみました。

 

グラスワインのオーダーシステムって他のワインバーとなにか違いがあるのですか?

「そうですね。うちでは、(スパークリングは1種類だけですが)赤と白それぞれのグラスワイン用のボトルが空になったら、次にグラスワインを頼むお客さまが、銘柄をセレクトできるというオーダーシステムにしています」

へぇ~。それは、珍しいんですか。

「珍しいと思いますよ。おそらく多くのお店は、グラスワインとして出す銘柄はあらかじめ決まっていると思います。お客さんが、いくつか種類がある中から銘柄を選べるお店は少ないと思いますよ」

ちなみにグラスワインとして頼めるワインの銘柄は何種類くらいあるのですか?

「白ワイン、赤ワインともに7銘柄ずつの合計14銘柄あります」

それだけあれば、グラスワインを全て試してみるだけでも、通う価値はありそうですね。でも、どうしてこのようなスタイルにしたのですか?

「それこそ間覚さんみたいにワインバーが初めてという方にも、気楽にいろいろなワインを楽しんでもらいたいと思ったからです。このシステムなら、あまり難しいことを考えずに、グラスワインのオーダーひとつでいろいろなワインを楽しめるチャンスがありますからね。まずはいろいろ飲んでみて、その中から自分好みのワインを見つけてもらえたらうれしいです。もちろん、それぞれのワインに合うおつまみについてもアドバイスさせていただきますよ」

 

なるほど。つまりワイン初心者の僕たちにとっては、「Buco」はうってつけのワインバーだったんですね。

ちなみに、グラスワインの銘柄は、特定の産地にこだわっているわけではないので、他のワインバーのグラスワインではなかなか見ることのできない銘柄も楽しめるとのこと。混んでいる日は、グラスワイン用のボトルが減るのも早いので、頼むごとに違う銘柄のグラスワインを楽しめるなんてこともあるそうです。

 

この日オーダーした3杯と3品 

この日はグラスワインを3杯と、(稲垣さんにアドバイスしてもらった)それぞれに合うおつまみを3品オーダーしました(僕たちも、運よく3杯のグラスワインで3種類の異なる銘柄のワインを飲むことができました)。びっくりするのは、(小さなお店なのに)どのおつまみも「Buco」流にアレンジされた、店内で一から手作りの本格的な料理だということ。

グラスワインは一杯 600円(スパークリングは一杯 650円)。おつまみは一品 500円前後が中心なので、3杯と3品なら4,000円でおつりがきます。これなら、懐具合も安心。今まで通っていた居酒屋さんと同じ予算で充分に酔っ払うことができるのもうれしいところです。

1杯目と1品目

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▲ グラスワイン 白 インソリア (600円)

 

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▲彩り野菜のカポナータ (400円)

 

レモンなどの柑橘系の皮の苦味を感じるイタリア・シチリア島の白ワイン「インソリア」は、同じくシチリア島の郷土料理「彩り野菜のカポナータ」と一緒にいただきました。椎茸やドライフルーツをはじめ、8種類の食材を使っているので文字通り彩り鮮やか。ドライフルーツを使っているせいかどことなく南国の風情を感じるのが「Buco」流で、ほのかな白ワインの苦味が野菜やドライフルーツの甘さを惹きたててくれます。400円という値段も魅力ですね。

 

2杯目と2品目

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▲グラスワイン 赤 キャンティ (600円)

 

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▲パプリカのマリネ (400円) 

 

甘さが控えめでサラッとした味わいの「キャンティ」は、繊細な野菜料理をはじめ、いろいろな料理に合わせやすいということで、この日は「パプリカのマリネ」といただきました。上品に盛り付けられたパプリカは丁寧に火を入れて甘味を引き出していて、キャンティの程よい酸味とパプリカの甘味が口の中で心地よく融合します。ちなみに「パプリカのマリネ」は、「Buco」の不動の人気メニューです。

 

3杯目と3品目

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▲グラスワイン 赤 シャトーダングレス (600円)

 

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▲レバーペースト (650円)

 

南仏ラングドックの赤ワイン「シャトーダングレス」。シラーという品種のブドウがベースで熟成樽の樽の香りも感じる濃厚な味わいです。そんな濃厚なワインには「Buco」の濃厚な味わいのレバーペーストがよく合います。レバーは、鳥の白レバーを使っていて驚くほど滑らかな舌触り。お店で毎日焼きあげる自家製パンもついてくるので、ボリュームもあり、僕はこの3杯と3品で、ほろ酔いになりお腹もいっぱいになりました。

 

付け合せについてくるバゲットも自家製

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▲バゲット単品 (300円)

 

「Buco」は、レバーペーストをはじめ、いろいろな料理のつけ合わせでついてくるバゲットの美味しさでも評判を呼んでいます。それというのも、パン職人の経験も持つ稲垣さんが毎日お店で手作りのバゲットを焼き上げているからこそ。原料にはライ麦粉を使用。出来立てらしい、外はカリッと中はモチモチのパン屋も顔負けの美味しいバゲットは、単品(300円)で頼むことも可能です。

 

ワインの初心者から上級者まで集うお店の秘密

さて稲垣さんは、今のお店を持つまでは、くだんのパン職人をはじめ、イタリア料理店やデパートのお惣菜店などでの調理経験など、実にいろいろなことをやってきました。そして極めつけの経歴は、プロボクサーをやっていた時期があることです。

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だからでしょうか、話をしてみるとすごくストイックな一面を感じます。それは、(毎日仕込むというバケット作りもそうですが)料理にも表れていて、「ついつい手間がかかる料理ばかりをメニューにしてしまう」と、つぶやくでもなくぼやくのが少し面白いのです。

そして、そのストイックさは、ワインの品揃えにも現れています。

常連のお姉さんが、

「好みをわかってくれているから、毎回、自分好みの味のいろいろな銘柄のボトルワインを指南してくれるの」

というように、稲垣さんは、お客さんが好みを見つけたら、それをちゃんと覚えるようにしているそうです。

 

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確かに「Buco」では、メニューに載せていない上級者向けのワンランク上の銘柄をはじめ、ボトルワインのラインナップも豊富です。それは、お客さんの好みにできるだけ応えたいというストイックな稲垣さんならではの、細やかな配慮によるものだったんですね。

最初に「Buco」に入ったときに感じた、様々な世代が集う和気あいあいとした雰囲気は、そんな稲垣さんがお店にもたらした懐の深さなのかもしれません。

 

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ゆっくり1時間半ほどかけて3杯と3品。僕たちのワインバー初体験は大変満足のいくものでした。お腹も満たされてほろ酔い気分。夜風を酔い覚ましに利用しながら、家路に向かっていると、はかったように地元のスナックのママからの着電です……。こうして、おじさん二人の秋の夜長は、相も変わらず酩酊の中で過ぎていくのでした。

 

お店情報

Buco(ブーコ)

住所:静岡静岡市葵区七間町10-10 光ビル2F
電話番号:054-251-5987
営業時間:17:30~翌1:00(LO 翌0:30)
定休日:日曜日

※金額はすべて消費税込みです。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。

 

書いた人:間覚(かんかく)

間覚

老舗出版社出身のライター件編集者。間隔ではなく感覚でもなく間覚。間を読みバランス感覚に優れるわけでなく、実際のところはお酒の飲みすぎによる皮膚感覚の低下と頻尿によるトイレに行く間隔の短さに悩みつつある初老。ライフスタイル系雑誌や新聞社などの紙媒体での執筆のほか、自社で雑誌を出版していたこともある。

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