宮本農業~食材のルーツを辿る旅 其の6(後編)~産地を巡る冒険【タベアルキスト】

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みなさん、こんにちは! メシ通レポーターのタベアルキストKikutaniです。

「料理」と「生産者」。両者を繋げる魅力ある「食材」。そのルーツを辿る旅も、今回で6回目。今回は、知る人ぞ知る千葉県の幻の大豆、「小糸在来」を取り上げます。

下町のお豆腐屋さんで出会った、「小糸在来」を使った極上のお豆腐。パッケージに幻の大豆と書くほど、貴重な豆を作っている産地を訪れました。

 

丘の上の枝豆畑

今回訪れたのは、千葉県の君市。
タベアルキスト、房総半島にはご縁があります。
それだけ美味しいものが沢山あるエリアということですね!
今回は海沿いではなく、山の方に来ました。

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丘の上にある、農場に案内していただくと、なかなか抜け感のある景色。
一面に青々と葉を茂らせた「小糸在来」が広がっていました。前回の三浦かぼちゃのように、収穫後じゃなくてよかった!
ここは、「小糸在来」のオーナー制の畑で、毎年一般の方向けに販売されている枝豆畑になります。(今年分はすでに終了)

 

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畑に降りて、間近で見ると、たわわに実った枝豆が。枝豆としてはちょうど食べごろ。ん? と思った方、多いのではないでしょうか?
枝豆と言えば、夏のビールのお供! の印象が強い野菜。
10月になっても枝豆の状態というのは非常に珍しいのです。
普通の枝豆であれば、すでに大豆になってしまっていますから。
10月でも枝豆なのは、この「小糸在来」と、京都の丹波黒豆の枝豆ぐらいのもの。
「小糸在来」は、生産量はもちろん食べる時期という点でも、非常に希少なのです。

 

「小糸在来」に魅せられて

今回お話を聞かせてくださったのは、宮本農業の宮本雅之さん。
たった2週間しかないという、収穫期の一番忙しい時期でしたが、貴重なお時間をくださいました。

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宮本さんは枝豆を作り始めて8作目。
本格的に就農して5年目の若手農家さん。
とあるイベントで「小糸在来」に出会い、その美味しさに感動して農家になってしまったという方です。
前回の平田社長のお豆腐もそうですが、「小糸在来」には人を動かす魔力があるようです。

 

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こちらが枝豆の収穫機。
収穫期間が短い枝豆は、機械を投入し、いかにスピーディーに収穫できるかというところが大事になってきます。
しかし、「小糸在来」は機械を使うのも大変です。生命力の強い「小糸在来」は、幹や枝が太く強く育つため、機械が負けてしまうこともあるとか。

 

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宮本さんのところでは、育てる期間や肥料を工夫しています。
成長をコントロールして、豆のおいしさと、機械による効率化を両立させています。

 

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刈り取った豆は、実と葉に振り分けます。
風の力で軽い葉は吹き飛ばし、豆だけが出てくる仕組み。機械化が進んでも、仕組みは昔と同じ。

 

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一度洗って、汚れを落とします。

 

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もう一度選別機にかけて、商品として販売できる実を振り分けます。
パンパンに膨れた実から、それだけで美味しさが伝わってきます。

 

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最後は袋詰め。機械のスピードに負けない動きが人間にも要求されます。
枝豆はとにかくスピード勝負。
収穫後は刻一刻と美味しさが失われていきます。
購入したら、その日のうちに食べてしまいましょう。

 

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一袋きっちり250g。赤色の鮮やかな袋は、いかにもブランド品の風格ですが、実は袋のデザインはブランドで統一されておらず、生産者それぞれだそうです。
この辺りはJAの方でも課題になっていて、より「小糸在来」の存在感を高めていくために、どうしたらいいか考えているそうです。

 

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最後は段ボールに詰めて出荷。道の駅などに卸されていきます。
の道の駅「味囲楽(みらい)さだもと店」は、平日でも朝から大盛況。
「小糸在来」は特に出が良いので、見かけたら買っておいて損はないです。
後で、と思っていると売り切れていたりします。

 

おすすめの枝豆アイス

「小糸在来」は、都内はもちろん現地の飲食店でさえ提供しているお店は少ないのが現状。
ほとんどは小売店で扱われています。
そんな「小糸在来」ですが、宮本さんがおすすめしてくれた「小糸在来」グルメがいただけるお店がこちら。
お隣、袖ヶ浦市の袖ケ浦市農畜産物直売所「ゆりの里」の牧場のアイス。

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袖ケ浦市内酪農家の女性組織「農事組合法人みずき会」が運営しているお店です。
70代、80代のお母さま方がバリバリ働いています。
大体、こういうお店は美味しいのが相場。

 

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ラインナップが魅力的。
POPのひとつひとつに丁寧なコメントが添えてあって、どれも美味しそうです。

 

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手前、緑色の枝豆味から時計回りに、カボチャ、ミルク、ブルーベリー。
ほんのり塩気の効いた、枝豆のシャーベット。
豆の香ばしさの良く出た、緑鮮やかな一品です。全卵を使用しているので、少しシャリっとした食感も特徴のひとつ。
一杯あたり50gぐらいの豆が入っているそうで、産地ならではのぜいたくなスイーツです。
冬に向けて、枝豆×ミルクでポタージュなんかも検討しているとか。

 

幻をもう一度普通にしたい

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買って帰った「小糸在来」の枝豆は、色はパステルグリーンながら、味は濃厚。香りもガツンと来ました。だだ茶豆のような香ばしさではなく、「大豆!」と主張してくるような香りです。


枝豆を食べているのに、お豆腐を食べているような錯覚さえ感じるほど美味しいです。

食材のルーツを辿る旅 其の3の相模半白節成と同じく、「小糸在来」も「在来種」と呼ばれるグループの品種です。


昔は当たり前にあったのに、いつの間にか作り手も食べ手もいなくなってしまい、「幻」と呼ばれる存在になってしまいました。
画一的な商品を大量生産、大量消費する時代はずいぶん前に終わって、多様性が見直される時代になりました。
今なら、もう一度、選択肢のひとつになれるかもしれないと。
いや、なって欲しいなぁですね。
食べる側が食べたいと思わないと、農家さんも作ってくれませんからね。

 

秋でも美味しい枝豆が食べられるようになったら良いなぁと、「小糸在来」片手にビールをいただく夜更けでした。

 

お店情報

牧場のアイスクリーム

住所:千葉県 袖ケ浦市 飯富1635-1 袖ケ浦市農畜産物直売所「ゆりの里内」
電話番号:0438-60-2550
営業時間:9:30~18:00
定休日:毎月第2水曜(8月は除く)/12月31日~1月4日

www.facebook.com

 

書いた人:Kazushi Kikutani

Kazushi Kikutani

ご当地グルメフリークで、野菜ソムリエの資格をもつタベアルキスト。B級グルメや郷土食、旬や特産品を活用した料理に目がない。食べ歩きに際しては、情報よりも店舗から感じるインスピレーションを重視。「美味しいもイマイチも丸ごとひっくるめて楽しむのが食べ歩きの醍醐味」と語る。

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