実はそこまでおいしいTKGを食べたことがない
こんにちは。
2022年となりましたが、昨年からの持ち越しタスクと新規タスクの数々を思うと、
とたんにすべての家事(とくに炊事系)がおっくうになってきます。
こんなとき、秒で完成するおいしーいご飯があればいいのに……と悩んでいましたが、あるじゃないですかー!
T・K・G(卵・かけ・ご飯)!
皆さんは、卵かけご飯はお好きですか?
私は手軽だし、大好きです。
ところが……食後に「満足した!!」ということがほとんどないのですよ。
毎回食後に「物足りないなぁ」と思うことがデフォルトになっています。
そこで、『メシ通』の編集D氏とともに、「一般社団法人 日本たまごかけごはん研究所」の代表理事、上野貴史さんにアドバイスをもらうことに。
上野さんは、TKGこと「卵かけご飯」のために日々奔走されており、様々な経歴を積んだシェフでありながら日本を代表する卵かけご飯の伝道師として、いろいろな卵かけご飯を発案しては発信しています。日本各地のおいしい卵のセレクトショップ運営など、地域創生の活動もされているんですよ。
(画像提供:日本たまごかけごはん研究所)
まずは基本から! 無敵の「Sunrise(以下、サンライズ)」
――今日はよろしくお願いします。さっそくですが、私の作る卵かけご飯はいつもイマイチなんです。どうしたら満足できる1杯になりますか。
上野さん:そんな人は、まずは基本の卵かけご飯としておすすめしている、「サンライズ」を試してみてください。
【サンライズ】の作り方
①お茶碗に盛った温かいご飯150gに、醤油7gをかけ、混ぜる。
②別の容器で軽く溶いたMサイズの卵(60gくらい)を①にかけ、混ぜて食べる。
※醤油は家にあるものでOK。おすすめは薄口醤油や、少し甘みを感じられる醤油。
※醤油の分量は推奨のため、好みの味の濃さの醤油ご飯となるよう、調整。
――「サンライズ」ですか。ネーミングも気になりますが、それよりも、なぜ先に醤油だけご飯にかけて混ぜるんですか!? 私はこれまで、ご飯の上で卵を割って、そこに醤油をかけて一緒に混ぜていました!
上野さん:そのやり方だと醤油の味が勝って「醤油味の卵かけご飯」になってしまい、卵のうま味があまり感じられないんです。好みの味の濃さの醤油ご飯を先に作っておいて、あとから卵でコーティングするイメージです。それによって、まず卵のうま味と甘みが全面的に感じられて、ふわっと醤油のコクと風味が追いかけて来るという、味のグラデーションができます。あとは、「ご飯150g+醤油7g+卵60g」というのは、何度も試した結果、私がたどり着いたおいしく食べられる黄金比になります。
編集D:黄金比があるんですね! ちなみにネーミングの由来はなんですか?
上野さん:ネーミングは、食べてもらったら分かるのですが、溶き卵が「朝日」だとしたら、ご飯+醤油の「夜空」を、パァっと明るく照らしていくイメージ。だから「サンライズ」です(笑)。
おいしく食べるための材料の選び方とは
編集D:おすすめの食べ方を教えてもらったところで、 卵はどんなものを選べばいいですか?
上野さん:Mサイズを選ぶようにしてください。Lサイズは大きさに惹かれるかもしれませんが、中身の黄身はMサイズと同じ大きさなんです。かえって白身の割合が増えてしまうので、卵かけご飯にはあまり向きません。
――そうなんですね。卵の生食は、どれくらいの期間できますか?
上野さん:卵が生食できる目安は、10℃以下の冷蔵保存で2週間くらい、パッケージに記載されている賞味期限と同じです。
新しいものほど白身に濁りが見られ、時間が経つと透明でサラサラになっていきますので、見た目でも鮮度の判断はある程度つきますよ。卵かけご飯を作るときは、少し前に冷蔵庫から出して常温くらいに戻しておくと、さらにご飯へのなじみが良くなります。
編集D:お米はどんなものがいいでしょうか。
上野さん:粒が大きめで、かつ粘りが少ないお米がおすすめです。炊き方は、米10:水9くらいにセットして、お寿司のシャリのような感じで、少し固めに炊きます。ちなみに炊きたての熱々ご飯は、卵かけご飯には向きませんので注意してくださいね。
―― えっ、なぜですか? 炊きたてが一番おいしいんじゃないんですか!?
上野さん:ご飯の温度が高すぎると、卵をかけたときに熱で固まってしまうんです。だから「先に醤油をかけて混ぜる」というのは、ご飯の温度調節を行うという意味でも理にかなっているんです。
――なるほど、そうなんですねぇ。
上野さん:あとは、醤油は家にあるものでOKです。あれば、素材の味が引き立つ薄口醤油だとなお良いです。香りとうま味がありつつも、主張が強くないので卵の味に干渉しない。あとは、少し甘みを感じられる醤油なんかもおすすめですね。
編集D:薄口醤油がおすすめなんですね!
――作り方も材料の選び方も、今まで私が食べていたのとぜんぜん違います。今日が「卵かけご飯元年」という感じです。早く作って食べてみたいです。
編集D:私もお話を伺って、さっそく試してみたくなりました。
上野さん:「サンライズ」以外にもいろいろな食べ方があるので、ぜひ試してみてください。
――この「TKG style」というやつですね。 紹介されている卵かけご飯のネーミングに、ちょっとダジャレ的なのも混じっています (笑)。
編集D:こんなに種類があるんですね! え、よく見ると、白身だけや、ご飯や醤油だけの「これは卵かけご飯……?」なものもあって、なんだか自由な世界です(笑) 。
――私は全種類制覇したいです。最後の、準備だけして食べない「Imagination(イマジネーション)」なんかは一周してかなりの上級編ですね……。我慢できるかな(笑)。
さて、上野さん、ここまでを「日常づかいの卵かけご飯」とすると、お祝い事やおもてなしの場面でも出せるような「ハレの日の卵かけご飯」の準備ってなにかありますか。
ハレの日の卵かけご飯とは
上野さん:「ハレの日の卵かけご飯」ですか。特別な日に食べる卵かけご飯ということですね。できれば、1個あたり40円以上の卵がおすすめです。レシピはいろいろありますよ。次回は、ハレの日の卵かけご飯の作り方をお教えしましょう!
この場では、余談として「おいしく食べるなら、食べる前や食べているときのイマジネーションも大事」ということをお伝えしておきます。
編集D:ハレの日の卵かけご飯における、 イマジネーションとは?
上野さん:特別な卵かけご飯が食べたいという気持ちを、まずは最低3日前くらいからジリジリと募らせておく。どんなに卵かけご飯の口になっていたとしても、 絶対に我慢です。なんなら他の卵料理もセーブしても良いくらい。そしていざ食べる瞬間が来たら、目の前にある卵に感謝して、あとは卵がお店に並ぶまでのストーリーや、産んでくれた鶏さんや育ててくれた鶏卵家さんにまで熱い思いを馳せながらいただけると、理想的ですね。私は、それにプラスして鶏さんの動画を見たりもしています(笑)。
――……なんだか変態チックかつ、壮大ですね。
編集D:私も数日間セーブして心を整える、よくやっています(笑)。食べたとき、最初に押し寄せる感動が違いますよね。
――今日はここまでです。上野さん、ありがとうございました!
***
いかがでしたでしょうか。次回は【作り方編】です。実際にサンライズとハレの日の卵かけご飯を作ってみましょう。
【作り方編】はこちらから!
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
まとめ
【食べ方】
・サンライズは「ご飯150g+醤油7g+卵60g」が黄金比(醤油の分量7gは推奨のため、好みの味の濃さの醤油ご飯となるよう、調整)
・混ぜる順番は、ご飯→まずは醤油→最後に溶き卵で
【卵】
・Mサイズを選ぶ(ハレの日にはぜひ「1個あたり40円以上」のものを)
・作る前に冷蔵庫から出して、常温に戻しておく(ご飯とのなじみが良くなる)
【お米】
・粒が大きめで、粘りが少ないものを選ぶ
・米10:水9で少し固めに炊く(お寿司のシャリのイメージ)
【醤油】
・家にある醤油でOK
・薄口醤油(香りとうま味がありつつも、卵の味に干渉しすぎない)や、少し甘みを感じられる醤油もおすすめ
イラスト:逸見チエコ