うま味を意識すれば家でもおいしく!鶏手羽中と野菜、ナンプラーが決め手の「うま味スープカレー」【美窪たえ】

料理家の美窪たえさんに、お家で作る「うま味スープカレー」のレシピをご紹介いただきます! 隠し味「ナンプラー」が決め手のうま味たっぷりレシピです。

こんにちは! 料理家の美窪たえです。

本日は、隠し味のナンプラーが決め手! 家で作る「うま味スープカレー」をご紹介します。

札幌名物グルメの一つであるスープカレー、その味わいはお店ごとに千差万別ですが、共通する特徴は、北海道ならではの山や海の恵みを存分に活かしたスープの「うま味」ではないでしょうか。

うま味がたっぷり溶け込む、あのスープカレーを家でも作ってみたい……! そんな皆さまにぜひお試しいただきたい、身近な材料で作る、期待を裏切らないおいしさのスープカレーレシピとなっています。

うま味を底から支える隠し味として力を発揮するのは「ナンプラー」です。他にも鶏の手羽中、香味野菜など手に入りやすい材料を活用して、深みのある家スープカレーを完成させていきます。

【材料】2人前

  • 手羽中(ハーフ)……10本
  • だし昆布……小1枚(10g)
  • トマト缶(ホール)……1缶(400g)
  • 玉ねぎ……1個(200g)
  • ニンジン……1/2本(100g)
  • ニンニク……大さじ1
  • しょうが……大さじ1
  • オリーブオイル……大さじ1
  • 醤油……大さじ1
  • ナンプラー……大さじ1
  • カレー粉……大さじ2と1/2(15g)
  • ケチャップ……大さじ2
  • 砂糖……大さじ1/2
  • オレガノ(ドライ)……小さじ1〜2
  • 温かいごはん……適量
  • ゆで卵、野菜など好みのトッピング

食材を最大限活かす、二つの下準備!

どんなにこだわっても家で作る場合には、専門店がやっているような「大量のエビの頭を長時間煮出して濃厚スープを取る」ことや「地元産の野菜を惜しげもなく加える」といった方法をそのまま真似することは難しいもの。

そこで、限られた材料で「食材の力を最大限発揮させる工夫」が重要になってきます。

まず、「うま味の相乗効果」を生み出す昆布の準備です。

1.スープ全体のうま味を支える「昆布出汁」を準備します。ボウルにだし昆布を入れて熱湯(分量外、約700cc)を注ぎ、そのまま20分ほど放置しておけば、昆布出汁の出来上がりです。

そのまま味見しても強烈な味わいは感じない昆布出汁ですが、まさにそこがポイントになります。

昆布には代表的なうま味成分の一つ「グルタミン酸」が含まれています。

これが他の成分と合わさることで、「うま味の相乗効果」を生み出すのです。

大事なのは、昆布出汁そのものがどれほど美味かではなく、あくまで完成後のその働きです。普段は昆布を使っていないという方も、今回はぜひ昆布出汁を試してみてください。だし昆布はスーパーや100円ショップでも小容量のものが入手可能です。

次に、スープに溶け込ませる野菜の準備です。

2.煮込みに使う野菜類を準備します。玉ねぎはみじん切り、皮をむいたニンジン、ニンニク、しょうがはそれぞれすりおろします。ニンニクとしょうがは市販のチューブでも構いません。

一般的なカレーとは違い、今回煮込む野菜は具材ではなくスープに溶け込ませるためのものになります。ですから、この段階でみじん切りやすりおろしにして細かくしておくことで、スープになじみやすくなります。

これで下準備は完了です。続いて煮込んでいきましょう!

「うま味」を意識することがポイント! スープカレーの作り方

同じ材料を使っても、「ただ煮るだけ」ではなく、常に「うま味」を意識しながら調理を進めていくことで格段の差が出ます。要所を押さえながら、おいしく煮込んでいきましょう。

3.手羽中に醤油を絡めます。

切り分けてある分、手羽先よりも火の通りが早いため、短い時間で柔らかく煮上がります。

煮込んだ後は骨離れが良いので食べやすく、今回のポイントになる「うま味」も骨から出るため、手羽中は家で作るスープカレーに最適の食材です。鶏肉にはうま味成分の一つ「イノシン酸」が豊富なのです。

4.フライパンでオリーブオイルを中火で温め、皮目を下にし、手羽中を並べます。醤油も全て入れてしまってください。

一度手羽中を並べたらあまり触らずに、3分ほどそのままじっくり焼き色をつけるのがおいしさを作るコツ。

肉類は煮込む前にこうして焼き色をつけることで、その焼き色が煮汁に溶け込みスープ全体にうま味を与えてくれます。

この香ばしい焼き色は、食材の糖とアミノ酸を加熱することで起こる「メイラード反応」によるもの。

特に醤油を絡めてから焼くと濃い焼き色がつきやすく、醤油が焦げる素敵な香りも加わって一層スープに深みを与えてくれるのです。

使う油は「それ自体においしさのある」オリーブオイルがおすすめ。材料一つ一つの味の重なりが、最終的なスープのうま味のカギとなります。油のコクもおいしさの一部。量が少々多く感じるかもしれませんが、ぜひ躊躇せず分量通り使ってみてください。

5.手羽中を焼いている間に煮込み用の鍋を準備します。そこにトマトを入れ、中火にかけながら、ヘラで実を潰します。トマトも昆布と同じうま味成分「グルタミン酸」が豊富です。

実がしっかり潰れたら、昆布出汁、塩(分量外、小さじ1)、そして、今回の隠し味「ナンプラー」を加えます。

暑い時期にエスニック風のお料理に活躍した後、出番が激減してなかなか減らないとお困りの方も多いのではないでしょうか。

魚から作る「魚醤」であるナンプラーは、調味料でありながら非常に強い魚系のうま味(グルタミン酸)を持っています。

少し使うだけで一気に異国情緒が漂うほど特有の香りと塩気が強めですが、これを煮込み料理の隠し味として使ってみると、煮込む間にその香りはスープに溶け込んで丸くなります。それでいて魚系のうま味はしっかり残るので深い味わいに仕上がるのです。

手羽中の表面に良い焼き色がついたら、鍋に加えて、蓋をして煮込み始めます。

煮立ってきたら弱火にして、コトコトと静かに煮込んでください。

6.手羽中を焼いたフライパンに玉ねぎを加え、中火で炒めます(油が足りないようならオリーブオイル少々を足してください)。フライパンについた手羽中の焼き色を玉ねぎの水分で溶かしながら炒めていきます。

7.玉ねぎのカサが減り透明感が出て甘い香りがしてきたら、ニンジン、ニンニク、しょうがを加えて、水分を飛ばすように炒め合わせます。

香味野菜がなじんだら、ケチャップ、砂糖、カレー粉を加えてさらに炒めます。さらりとしたスープカレーには、固形のルーよりもパウダー状のカレー粉が向いています。

カレー粉は既にさまざまなスパイスが配合されたミックススパイスです。市販のカレー粉を軸に、さらにお好みのスパイスや調味料を加えることで自分らしいカレーを作ることができますよ。

8.全体がペースト状になったら、野菜のうま味が凝縮した、香り高いカレーペーストの完成です。

煮込み鍋に加えて溶かし込み、お好みでオレガノを加えて、できるだけ水分を逃さないように蓋を閉めた状態でさらに20~30分煮込んでいきます。

オレガノの使用はお好みですが、加えてみると香りが広がり、まるでスープカレーのお店のようなオシャレな雰囲気が一気に漂います。トマトと相性が良く、トマトソースやピザ、スパイシーなチリビーンズなどにも使われているハーブですので、なじみのある香りになります。

オレガノもだし昆布同様に、スーパーや100円ショップで小容量のものが手に入ります。他にも、パセリ、バジル、タイムなど手持ちのハーブがあれば、それを使用してもおいしく仕上がるでしょう。

ゴロゴロ野菜のトッピングが「うま味スープカレー」を盛り上げる!

スープカレーといえば、お店では野菜やゆで卵などがゴロゴロとトッピングされた盛り付けも特徴的です。カレーを煮込んでいる間に、ゆで卵や、家にある野菜で焼き野菜を準備しておきましょう。

野菜は厚めにスライスして、やや多めのサラダ油(分量外、底から5mm程度)で揚げ焼きにすると、食べやすくツヤッと色鮮やかに仕上がります。

出汁を取った後のだし昆布も、水気を拭いて一口大に切ってからついでに揚げ焼きにしておくと、良いおつまみになりトッピングにも使えます。

油を入れた鍋の中で重ならないように置いて弱火でゆっくり加熱し、一度引き上げてから数分時間をおいて2度揚げするとカリッカリになります。お塩(分量外)を振ってどうぞ。

ナンプラーとごはんの組み合わせが抜群! 「うま味スープカレー」の楽しみ方

カレーの煮込みを終えたら味見をして、味が薄ければお好みで塩、カレー粉(ともに分量外)などを加えて調えてください。

スープカレーを器に盛り付けて具材をトッピングし、ごはんを添えれば、「うま味スープカレー」の完成です!

まずはスープを一口。野菜の甘みと手羽中のおいしさが加わって、スープ全体のうま味が広がります。さらに昆布出汁による「うま味の相乗効果」によって、味の一体感が感じられます。

続いてごはんと一緒に。スープカレーの食べ方に特に決まりはないそうですが、カレーをごはんにかけるよりも、ごはんをスプーンにのせてカレーの方に浸すようにすると、スープのおいしさとごはんの食感が同時に楽しめますよ。

ごはんが合わさるとナンプラーの魚風味がさらに増します。当然ながらごはんとスープカレーの相性が抜群に! 

手羽中のお肉は骨からするりと離れて、しっとり柔らか……。

スープだけ、ごはんとスープ、スープとお肉、お肉と野菜、楽しみが尽きません。

溶け合ううま味を、心ゆくまで楽しんでください。

まとめ

ナンプラーが隠し味の「うま味スープカレー」、ナンプラー特有の香りも、煮込み料理に使ってみるとまろやかになじんで、強いうま味が加わります。

素材のおいしさがたっぷりのスパイススープで、体の芯から温まってくださいね。

書いた人:美窪たえ

料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。

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