粉からこねて「チキンラーメン」を自作してみた【理系メシ】

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やってきました、「カップヌードルミュージアム」。

横浜の赤レンガ倉庫のそばに立つ、しゃれた建物だ。あんまりシャレているので、気づかずに通りすぎる人もいるそうだ。

さて。なぜ「カップヌードルミュージアム」に来たかというと、チキンラーメンを作りに来たのだ。

こちらでチキンラーメンの手作り体験ができるというのである。

熟語のテストで「厚顔無恥」を書けと言ったら、「え? 痛くねえ? なんでタマにムチ?」と言った息子を連れて行く。

日清のチキンラーメンを知らない日本人は、ほぼいないと思う。

お湯を入れたら3分で食べられる驚異の食べ物。

考えてみればとんでもない話で、即席食品という概念自体がチキンラーメンから始まった。

缶詰に匹敵する大発明だ。

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アテンドしてもらう日清ホールディングス広報部・内田さん

 

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日清ホールディングス広報部・内田さん:戦後間もない頃の食糧難の時代に闇市が開かれていて、ある日、創業者の安藤百福が通りかかった際、長い行列ができているのを見つけました。その行列の先には1軒のラーメン屋台があったそうなんです」

その後、頼まれて理事長になった信用組合が倒産して一文無しになった時、思い出したのがその風景。

内田さん:家庭でお湯があればすぐに食べられるラーメンを作れば、みんなが喜ぶだろうと。

なるほど。

それから丸1年間、平均4時間の睡眠で、ひたすら試作を繰り返して作り出したのが世界初のインスタントラーメン、チキンラーメンなのですね。

わかった?

はい、では安藤氏にあやかって、ちゃんと銅像をよくなでておくように。

 

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夏休み中ということで、館内は人多し。

内田さんによると、夏休み期間中は1日4000人以上の来館者が訪れるそうだ。

チキンラーメンの手作り体験ができるチキンラーメンファクトリーは完全予約制。

「カップヌードルミュージアム」のホームページまたはネットで予約する。

あっという間に満員御礼になるので、余裕を見て予約することをおすすめする。

 

さあ、チキンラーメンをつくろう!

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席についたら、ひよこちゃんのバンダナとエプロンをして、手を洗う。

食べ物を扱う時は手洗いが大事。

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まずは小麦粉から練るのだ。

よろしくお願いします~。

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小麦粉をボウルに入れてくぼみを作り、そこにかん水と水と塩を混ぜたねり水を投入、混ぜ合わせる。

スタッフさんから指導が入る。

 

スタッフさん:片手で素早くぐるぐるかき混ぜます。早さが大事ですねえ。指の間を粉が通るようにぐるぐるぐるぐる。

 

おお! 粉が黄色くなってきた! 

これがかん水の力か。

かん水は炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ性の食品添加物。

タンパク質に作用してコシやツヤを生み、小麦粉のフラボノイドと反応して黄色に発色する。

食品分類上、かん水の入っていない麺は中華麺とは呼ばない

ただの細いうどんである。

 

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できた生地をこねる。

まず手で生地をつぶして広げて折りたたみ、つぶして折りたたみを繰り返す。

 

スタッフさん:できるだけ固くなった方がおいしいので、しっかりつぶしてね。

 

続いて麺棒を使って、押し伸ばしてはたたみ、また押し伸ばす。

 

スタッフさん:まな板と同じぐらい、1センチぐらいの厚さになるまで伸ばしてね。

 

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次は製麺機を使った作業。

 

スタッフさん:ハンドルを矢印の方向に回してね。麵生地は乾燥しやすいので早く回すのがコツ。

 

出てきた生地を半分に折り、折り目から製麺機へ入れ、また伸ばす。

 

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繰り返すと生地がぴかぴかになってきた!

 

スタッフさん:今3回目ですが、全部で10回、回していきます。

 

ありゃ。意外と大変。

 

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スタッフさん:最後広げてみて、表も裏もまっ平らな状態になる。これで完成。

 

生地をビニール袋に入れて、生地を熟成させる。

 

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生地を寝かせている間、パッケージに日付と絵を描く。

内田さんと再度合流。

製麺工場の見学はしたことがあるんですが、こうやって手で触るとなかなか面白いですね。

 

内田さん:工場でも同じ工程で大量生産されています。実際に体験された方からは、チキンラーメンはおなじみの食材から作られていることがよくわかった、とおっしゃていただきました。

 

たしかに。

 

内田さん:防腐剤や合成保存料、合成着色料も入っていないことが、体験するとわかりやすいですよね。

 

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いよいよ製麺。

 

内田さん:生地を薄く長くのばしていきます。この作業は4回繰り返します。

 

麺の太さ=生地の幅&厚さってことか。

 

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内田さん:では麺にしていきます。20cmぐらいの長さにハサミでちょきんと切ってください。

 

麺がどんどん出てくると面白いな。

ハサミでちょきん。

面白い、面白い。

 

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100gずつに分ける。ちょうど2食分の麺がとれるのだ。

 

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手もみで縮れを加えながらふんわりと麺をかごに入れ、一度、蒸す。

 

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蒸し上がった麺に味付けをする。

まず、ごま油をざっとかけて麺をほぐし、次に醤油や鶏エキスの入った味付けスープをかけて手早く全体になじませる。

粉末調味料だとばかり思っていたが、液体をかけるのね。

ごま油が使われているのも発見。

 

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油で揚げるための型に入れる。

麺がくっつかないように、ふんわりが基本。

この製法、安藤百福氏が考えた発明当初のやり方と基本は全く変わっていないというからすごい。

天才っているんだね。

 

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揚げる前に、串で麺の絡みをとって隙間を作る。

けっこうな職人技である。

工場のラインではこれを機械でやるのだそうだ。

 

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麺を油で揚げる。

これが世界初のインスタントラーメンを誕生させた瞬間油熱乾燥法である。

奥方が天ぷらを揚げているのを見てひらめいたという逸話があるこの製法、高温の油で麺を揚げることで麺の水分が急速に蒸発、麺の中に無数の小さな穴ができる。

この穴にお湯が浸み込むとたちまち麺が元の水分を含んだ状態に戻るというもの。

 

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すごい勢いで水分が蒸発している。

現在もインスタントラーメンの製法といえば瞬間油熱乾燥法が主流で、生麵のような食感のノンフライ製法は熱風で乾燥させている。

 

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はい、出来上がり!

 

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パッケージに入れて、封をしたら完成だ。

他にも日清カップ焼きそばプチU.F.O.や工場で作られたチキンラーメンなどをお土産にもらった。 

 

どうも一日ありがとうございました!

 

いよいよ実食

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さて、手作りチキンラーメン、果たして味は市販品と同じなのか?

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ちゃんとたまごポケットもあるのだ。お湯をかけて3分間。

昔のCMでは子連れ狼こと拝一刀が、「3分間待つのだぞ」と言っていたけど、そんなことを覚えているオヤジも数が減ったよな。

 

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完璧。

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どうかね、味は?

「ぐっじょぶ!」

何がグッジョブだよ。

 

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市販品と食べ比べると、麺がおいしい。

スープの味はまったく一緒だが、麺がワンランク上。

がんばってこねたかいがあったというものだ。

 

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そんなわけで安藤百福氏のクリエイティブシンキング=創造的思考に触れることのできる「カップヌードルミュージアム」、イチオシである。

インスタントラーメンが体にいいとか悪いとかいうけど、安藤百福氏は亡くなるまで毎日チキンラーメンを食べていたそうである。

それで享年96才の大往生ですからね。

実際に麺から作ってみて、まったくこれこそがラーメンそのものであることよとわかったのだった。

内田さんおススメのチキンラーメンまんじゅうもやたらにおいしかったので、お試しあれ。

 

施設情報

カップヌードルミュージアム

住所:神奈川横浜市中区新港2-3-4
電話:045-345-0918 (案内ダイヤル)※お電話のおかけ間違いには、十分にご注意ください。
開館時間:10:00~18:00 (入館は17:00まで)
閉館日:火曜日 (祝日の場合は翌日が休館日)、年末年始
入館料:大人 (大学生以上):500円  ※高校生以下は無料
チキンラーメンファクトリー:小学生 300円 / 中学生以上 500円

www.cupnoodles-museum.jp

※チキンラーメンファクトリーの体験はネットから事前申し込みが必要です。

 

書いた人:川口友万

川口友万

サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。

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