みなさまこんにちは。京都のライター・ナガオヨウコです。
京都観光で悩むのは「どこで飲むか問題」でしょう。
そんなワガママなあなたにおすすめのバーがあります。
私がプライベートでも訪れている、隠れ家すぎるお店なんですよ!
まずはこちらの写真をご覧ください。
キツネのお面で抹茶を点てている!
あ、怪しい……!
では、キツネのお面を外していただきましょう!
「狐菴(こあん)」菴主の真秀(マシュー)さんです。
普段から着物をご愛用。髪の毛はシルバーブルー、足元はDr.マーチンという伊達男です。
マシューさんのいでたちを見ての感想は「相当なこだわりがありそう」「自分大好きそう」なのではないでしょうか。「よっ! 男前」なんて声を掛けづらい。
最初は私もそう思いました。
とはいえ、ご安心を。
マシューさん(以下敬称略):「キツネのお面は、いつもつけているわけではありませんよ。つけるのは、近所の子どもたちが来たとき。子どもたちは“キツネだ!”と大喜びなんです。髪の毛がシルバーグリーンなのは白髪隠しです(笑)」
えっ、バーなのに子どもたちが来店する?
マシュー:「インスタグラムでは、ナルシス党というハッシュタグでコスプレめいた写真をアップしています。しかし、ガチのナルシストだと思われてしまっていて。シャレのつもりでやっているんですが、誰もツッコんでくれないんですよ……」
話してみると、かなりユニークな方とわかります。
もう一度言います。ご安心ください。
商店街のはずれにある
場所は、新大宮商店街のちょいはずれ。
▲基本的にスタンディングスタイル
マシュー:「近所の喫茶店でコーヒーを飲んでたら、大家さんに『ウチの物件はどう?』と声をかけられたんです。ごく普通の昭和建築でした。おしゃれな京町家ではありませんでしたよ(笑)。
改装を手がけてくれたのは、寺社仏閣にある茶室も手がける建築士さん。伝統的な日本建築工法でリノベーションしたら、町家のようになりました」
▲アプローチ
細長い飛び石が8つ。
マシュー:「お茶室の露地などでは、飛び石は山を表すモチーフ。8つの石=8つの山なんですね。八海山や八重山など、8がつく山はたくさんの山という意味があります。山々を超えると、この世ならざるものが見えてくる。キツネもいますしね(笑)」
▲飛び石の間に、菊炭が敷き詰められている
あと3年ほどすると、炭の部分に苔が生えてくるそうです。
マシュー:「土壁は、知人30人くらいに手伝ってもらって作りました。土は、練って休ませたりと、時間と手間をかけて作りました。土壁の中には、竹小舞(たけこまい)という竹を格子状に編んだ下地が入っています。これも手作りです」
▲カウンター
カウンターの白い部分は、カエデの木を継ぐために塗りこんだ漆喰のプレート。
現世とあの世との結界である川に見立てているのだそう。
あとで出てきますが、お酒だけでなく、抹茶など温かいドリンク類もグラスで提供されます。あんみつも、グラスのうつわでいただきます。
その理由は、川に見たてたカウンターにグラスを置くと、飛沫(しぶき)や雫のイメージと重なるから。
うつわやグラスも含めた空間演出、というわけなのです。
おすすめポイント①会話を楽しめる仕掛けがいっぱい
そうこうしているうちに、開店時間の15時に。
おしゃれな女性やベビーカーに赤ちゃんを乗せたママがやってきました。
じつはこちら、看板もなければ、外にも中にもメニュー表がありません。これは、マシューさんの「菴主の私と会話をしながら、自分好みのものを見つけてほしい」という想いから。
通りすがりの人が、「何屋さんなんですか」と話しかけてくることもしばしばなんだとか。
スタンディングなのは、立ち飲みだとお客さん同士の距離が近く感じられるから。椅子に座ると、自然と「個」の空間ができてしまいます。
「お客さん同士との出会いも楽しみにしていただきたいんです」と、マシューさん。
▲夜の外観
そういえば、以前友人とプライベートで訪れたとき、横にいた年配の男性と盛り上がりましたっけ。その男性、じつは結構有名な日本画家さん。たまたま持っていた人形を見せてもらったら友人がひと目惚れして、その場で購入してました。
そんな不思議な出会いがあるのも、ここならではだと思います。
おすすめポイント②極上和菓子と日本酒のマリアージュ
メニューは、京都の酒・和菓子・コーヒーの3本柱。マシューさんが大好きなものベスト3だそう。日本酒は京都全域のものですが、和菓子とコーヒーはご近所さんのもの。なお、フードはありません。
▲嘯月の上生菓子(こなし)「山路(やまみち)」/600円、向井酒造「伊根満開」/600円
和菓子は、ご近所の和菓子店「嘯月(しょうげつ)」と「聚洸(じゅこう)」の2店よりお取り寄せしています。どちらも、甘党のマシューさんが惚れ込んでいるお店。
選んでいただいた日本酒は、丹後半島・伊根町にある向井酒造の「伊根満開」。
真っ赤なのは、赤米を使っているためです。カテゴリーとしては日本酒ですが、甘くてフルーティなワインのような味で本当に美味しい!
わたくし、キリリ系のお酒が好きなのですが、「伊根満開」だけは別格。品の良い甘さの上生菓子との相性も抜群なんですよ。
▲聚洸の「織部」/600円
織部焼の柄を入れた、薯蕷(じょうよ)饅頭です。織部焼は、桃山時代の“へうげもの(ひょうげもの=おどけた人の意)”、茶人の古田織部が好んだ陶器のこと。
ということで、奥に織部焼を置いてみました。
こちらの2店では、生菓子は予約しないと購入できません。もちろん予約すれば買えますが、茶房もないので、食べるのはホテルか自宅か、になると思います。
「極上の和菓子は、せっかくならいい雰囲気で味わいたい」
「和菓子に合うお酒があるなら試してみたい」
という人も、こちら「狐菴」はおすすめ!
日本酒は、京都のものが6〜7種類で600円〜。試し飲み1杯100円もありますよ。
▲竹野酒造「祝蔵舞(いわいくらぶ)」/600円
2杯めは、京丹後市にある竹野酒造の「祝蔵舞」を。
京都で生産される、祝米という酒米を使った日本酒です。
通常、日本酒は、発酵を抑えるために火入れ(加熱処理)をして出荷されます。火入れをしない「生酒」の状態だと、発酵が進んで味が変わってしまうからです。
こちらの「祝蔵舞」は火入れしてあるのに、開栓直後と数日経ってからとは味がまったく異なるのだとか。不思議!
私が飲んだときは、ふんわり旨みがあるのに、飲み干した後にフルーティな香りが残りました。
おすすめポイント③抹茶をグラスで提供
▲抹茶/700円
抹茶はこれまたご近所、皐盧庵(こうろあん)茶舗のもの。宇治茶の産地として知られる宇治田原町に自家製園をもっている、かなり真面目なお茶屋さんです。
抹茶茶碗ではなく透明のグラスで提供しているのは、「抹茶の質をくっきりと感じられる」ため。
グラスで飲むと、すっと飲める美味しさなのに、香りが高いのがわかります。エグみなどの雑味がまったく感じられません。これは新発見!
そして、見た目も素敵だと思いませんか? 鮮やかなグリーンも、ダブルウォール(二層構造)のグラスで抹茶が浮いて見えるのもイイ。
おすすめポイント④女子職人の和菓子がカワイイ
▲招きネコもなか/1個400円
SNS女子に一番人気なのが、こちらの招きネコもなか。
ルックスの可愛さと、あんこの美味しさで大人気です。私も大好き。
もなかの皮は金沢から取り寄せていますが、中のあんはご近所の和菓子職人・aoiさんの手作り。
つぶあんのほか、月替わりでブランデーりんごあん、ローストした種入りのかぼちゃあん、塩レモンあん、実山椒入り白あんなどが登場。
▲和菓子職人のaoiさん
とかなんとか言ってたら、偶然aoiさんが来店!
招きネコもなかを持っていただきました。
「マシューさんと相談しながら、お酒やコーヒーに合う和菓子を製作しています」と、aoiさん。
▲乙女のあんみつ/700円
天草(てんぐさ)100%の寒天、黒糖つぶあん、柿のラム酒コンポート、蓮の実、くこの実、あんずなどのジャムという構成で、こちらもaoiさん作。
寒天は素朴な味わいですが、他の具材が酸味、甘味などいろんな味を添えていてひと口ごとに楽しい!
見た目の可愛らしさに反して、けっこう食べ応えあり。
なお、和菓子は持ち込み自由です。
ただし、空間の雰囲気を壊さないことが条件。お店のお酒やコーヒーに合いそうなものを選んでください。甘いものマニアのマシューさんに、「じつはこんなお酒に合うんですよ」と伝えてビックリさせるのもアリです。
おすすめポイント⑤ご近所ロースターのコーヒーが飲める
▲カフェラテ/700円
またまたまたご近所、自家焙煎のコーヒー店「サーカスコーヒー」より。若い夫婦が営むお店で、わざわざ足を運ぶ観光客も多いお店です。私もちょこちょこいただく機会が多いのですが、本当に美味しいんですよ!
ちなみに、カフェラテで使っている牛乳は、またまたまたまた(何回めだ)ご近所、山田牧場のノンホモ(無調整)です。
65℃30分の低温殺菌のため脂肪分が多く残っています。
カウンターの上にある不思議な人形(郷土玩具の米沢人形だとか)があったり……。
キツネの嫁入り人形があったり……、とこれらもひとつひとつが可愛らしい。
見るもの食べるもの飲むもの、すべてが新鮮に感じられると思います。滞在の予定時間は長めにとっておきましょう。
場所をおさらい。
新大宮商店街の中ほどを西に入って徒歩1分です。
地元密着型の商店街のちょっとはずれ、という隠れ家感もおすすめポイントのひとつです。
お店情報
狐菴(こあん)
住所:京都府京都市北区紫野上門前町66
電話番号:非公開
営業時間:15:00〜21:00(LO)
定休日:月曜日・火曜日
Instagram:https://instagram.com/kiss.a.co
書いた人:ナガオヨウコ
ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。
- ブログ:しましま畑でつかまえて