マイルドヤンキーがカレーを作るとマイルドになるのか

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【実験】マイルドヤンキーがカレーを作るとマイルドになるのか

私の知り合いに、ひとりだけ、マイルドヤンキーがいる。

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▲彼は未来ある若者なので、今回の記事では目にモザイクを入れさせていただく。ご了承ください

 

年齢が私よりもひとまわり下の、彼。
どうして私にひとまわりも年下の、しかもマイルドヤンキーの知り合いがいるのか。

 

中学時代、私は近所に住んでいる年下の子としか遊んでいなかった。
いつでも学生服の袖にチョークのあとが付着していて、理科の実験中にプレパラートを割りまくり、休み時間は常に図書館で「火の鳥」を読む。そんな私のようなタイプの中学生は、周りの同級生たちが部活に恋にと青春を謳歌している放課後、「近所の年下の子」と遊びがちなのである。

 

彼もまた、そうした私の中学時代に、一緒にポケモンカードをしたり蝉のぬけがらをただただ集めたりして遊んだ「近所の年下の子」のひとりであった。あれよあれよという間に、私も彼も大人になり、そして彼は、気がつくとある時点で、マイルドヤンキーになっていた。

 

彼も私もいまだに地元に住んでいる。近所同士、ぬるい付き合いがずっと続いている。

 

それは、ふとした思いつきだった。

「マイルドヤンキーがカレーを作ったら、果たしてマイルドになるのだろうか?」

この10円のような疑問を調査するため、彼に協力を頼んだ。
彼は、「顔写真に目線を入れてくれるなら」という条件で依頼を受けてくれた。

 

実験当日。彼と待ち合わせをした。

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左が、その彼である。

名前を「あつし」という。
あえてローマ字で表記するなら「ATSUSHI」である。おお。早くも立ち込める、マイルドヤンキーの匂い。

 

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しかし、彼もすでに20歳オーバー。
一時期に比べると、ファッションもだいぶ落ち着いた感じである。

 

そこで、彼からもらった、「一番マイルドヤンキーだった頃の写真」をご覧いただきたい。

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この、仲間を大切にしている感じ。

この、地元愛。

この、なんか電車の席で隣り合わせたらちょっと嫌な感じ。

まさに、マイルドヤンキーである。

 

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さっそく彼にカレーを作ってもらうべく、まずはスーパーへ買い物に出かけた。

 

ちなみに、この日の私の服装は、企画内容に合わせて「なるべくマイルドヤンキーっぽい感じ」を意識してみたのだが、この黒と黄色の組み合わせ、完全に「踏切」だ。

 

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そういえば、こうやって彼と肩を並べて歩くのも、何年ぶりだろう。
昔はこの道でも、よく彼と遊んだ。鬼ごっこをしたり、駐車場に落ちてるグラビア雑誌をドキドキしながら傘の先でつついたり。

 

あの頃、同じ時間を過ごしたのに、いま彼はマイルドヤンキーで、僕はなんだか他人に説明しづらい仕事をしている。人生というのは、つくづく、わからないものである。

 

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スーパーにて、彼に自由にカレーの食材を選んでもらった。

 

ちなみに彼には、この実験企画の核心部分である「マイルドなカレーになるのか」という部分は伏せ、「マイルドヤンキーがカレーを作ったらどうなるのか」という企画であると伝えている。

 

なので、彼が意図的にマイルドなカレーを作るということはない。

 

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ほぼ生まれて初めて料理をするという彼。ほとんど勘だけで食材を選び、ポンポンとカゴに入れていく。肉、じゃがいも、たまねぎなどといったオーソドックスなカレーの食材の他に、遊撃的にしらすを購入するなど、実にシナプスの自由な買い物を楽しむATSUSHI。

 

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こちらが、ATSUSHIの購入した、カレーの食材である。肉は牛でも鳥でも豚でもなく、牛と豚の合挽肉を選んでいる。

 

ヨーグルトとチリパウダーが混ざっている点にご注目いただきたい。マイルドにしたいのか、それとも辛くしたいのか、未知数な感じが、とても良い。企画意図の核心を伏せているにも関わらず、まるで我々の思惑を見透かすかのような、ハラハラ感のある食材セレクトである。

 

ちなみにヨーグルトを買った理由は「お母さんがカレーを作るとき、たしかヨーグルトを入れていたから」で、チリペッパーを買った理由は「なんか美味しくなる気がしたから」ということであった。

 

「あ、でも、お母さんが入れてたのは、ヨーグルトじゃなくて、牛乳だったかも……」とも漏らしていた。

 

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「今日のカレーのポイントは、隠し味を入れること。リンゴ、しらす、ヨーグルトがその隠し味です」とATSUSHI。

隠せるのか。しらすは、隠せるのか。

 

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いざ、カレー作りスタート。

そのかなり危なっかしい包丁さばきに、思わず私もカメラマンさんも口を揃えて「猫の手! 猫の手!」とアドバイス。どうやら、本気で料理をしたことがないらしい。

 

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しかし、ATSUSHIは大胆に調理を進めていき、リンゴの皮むきも包丁でトライ。

「イケる、オレは、イケる気がする……」とまったく根拠のない自信を唱えながら、皮をむいていた。

 

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「隠し味」と言っていたはずのリンゴが、なぜか一口大に切られていく。ATUSHIの調理は、我々をミステリーな気分にさせてくれる。

 

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ふとカウンターに置かれた彼のスマホが目に入った。待ち受け画面は、地元の仲間と祭りで神輿を担いだ際の集合写真であった。

 

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カレー作りが進んでいく中、ATSUSHIに色々と気になることを尋ねてみた。

 

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ワクサカ「自分が(マイルド)ヤンキーだと自覚したのは、いつ?」

ATSUSHI「中二の頃かな。『クローズ』とか『ドロップ』とか、ヤンキー映画ばっかり観ているうちに、そういう世界に憧れるようになった」

 

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ワクサカ「中学の時って、どんなことしてた?」

ATSUSHI「職人でもないのに作業服を着て、サティでプリクラ撮ったりしてた」

 

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ワクサカ「友だちって、何人くらいいる?」

ATSUSHI「数えたことないからわかんないけど、いつも15人くらいのグループで遊んでる。いまはだいたい、カラオケとか飲み会。バイト代もほとんど遊ぶお金で消える」

 

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ワクサカ「EXILEは好き?」

ATSUSHI「オレはあまりよくわからない。友だちは好きな奴、多い。芸能人だと吉木りさとかは可愛いと思う。あと、広瀬すずとかも」

 

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ワクサカ「最近、嬉しかったことは?」

ATSUSHI「『とんねるずのみなさんのおかげでした』の番組タイトルの『した』の部分を描いている人に飲み屋で会って、似顔絵を描いてもらったこと」
※このエピソード、私はなんか妙に気に入ってしまった

 

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ワクサカ「趣味とかってあるの?」

ATSUSHI「特にない。夢もない。地元でだらだらしているのが一番」

 

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喋っているうちに、気がついたらフライパンの上が大変なことになっていた。

そもそも、なぜフライパンを使っているのかはともかく、ATSUSHIも炒めづらさを感じたらしい。ここで鍋に移し替えることに。

 

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なぜか一番最初に、鍋にしらすを投入するというフリースタイルっぷりを見せつけつつ、カレー作りは終盤戦へと突入した。

 

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煮込んでいる間、まったく灰汁をとらないという「ビックダディ」方式で料理に臨んだATSUSHI。最後に思い出したようにヨーグルトを入れて、みごとカレーは完成した。

 

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これが「マイルドヤンキーの作ったカレー」である。

一見すると普通のカレーだが、二見すると表面にしらすが大量に浮いていて、実に不安な気持ちになる。

 

さて、果たして、味はマイルドなのだろうか。

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いざ、実食。

 

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美味い。普通に、美味い。

しらすが意外にも、磯の匂いを醸していて、それが、美味い。

 

そして、本当に、マイルドだった。やはりヨーグルトが効いている。
でもそのマイルドさの奥に、少しだけチリペッパーのピリッとした辛みを感じる。

それは、まさに「マイルドヤンキー」のカレー化ともいえる一品であった。

 

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ごちそうさまでした。

 

ここでATSUSHIに今回の企画の核心をネタばらし。

「いや、まあ、そりゃマイルドになるよ。自分の家のカレーを参考に作ったんだけど、うちのカレーって、基本マイルドだもん」とのことだった。なるほど。

 

マイルドヤンキーの部屋へ

取材終わり、彼の部屋をのぞかせてもらった。

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机の上に飾られた、地元の仲間からの誕生日お祝いプレゼント。
本当に、地元の仲間を愛していて、地元の仲間から愛されているんだな。

 

私は、不思議な嬉しさを感じた。
自分の友だちに、友だちがいる。
それはなんだか、とても幸せなことに思えた。

 

突然の「利き伊右衛門ゲーム」

ふと、部屋の隅のあるものが目に入った。

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動揺したせいか写真がブレてしまったが、これこそマイルドヤンキーの部屋名物、大量のペットボトルの空き容器。しかもすべて、「伊右衛門」である。

 

するとATSUSHIは突然、「オレは伊右衛門しか飲まない。目をつぶって飲んでも、それが伊右衛門茶かどうか当てられる自信がある」と謎の豪語をした。

 

なんだかよくわからないが、そういうことなら「利き伊右衛門ゲーム」もやってみようと、近所のコンビニで3種類のお茶を購入。

 

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ATSUSHIが青春時代に仲間とよくたむろしていたという神社に移動し、検証をしてみた。

 

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目をつぶり、三種類のお茶をテイスティングしていく、ATSUSHI。
モザイクのせいで、目をつぶっているのか開けているのかわからないのが痛恨の極みだが、たしかにしっかりとつぶっていることを保証したい。

 

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まず、いきなり「伊右衛門」を飲ます。

 

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次は「おーいお茶」。

 

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そして最後は「綾鷹」である。

 

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「伊右衛門は、3番です!」

と自信満々、高らかに宣言するATSUSHI。

 

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しかし、正解は1番である。

 

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本気で悔しがるATSUSHI。

 

いったい、これはなんの時間なのだろう。
いったい、これはどんなスピンオフ企画なのだろう。

 

またしてもミステリアスな気分に包まれた私であったが、そういえばあの頃は、こうしてATSUSHIと意味のないことばかりして遊んでいたな、なんてことを思い懐かしい気分に包まれ、そしてもうあの頃のようにATSUSHIと遊ぶ毎日に自分はいないのだな、などとも思い、少しだけ切なくなったりもした。

 

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マイルドヤンキーがカレーを作ったらマイルドになるのか」という企画の名目でこうして久々にATSUSHIと過ごしたわけだが、なんのことはない、自分は適当な口実でただATSUSHIともう一度遊びたかっただけだったのだと気がついたのは、取材が終わりATSUSHIと別れて、すぐのことだった。

 

書いた人:ワクサカソウヘイ

ワクサカソウヘイ

1983年生まれ。作家・脚本家。主な著書に「中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる」「夜の墓場で反省会」「今日もひとり、ディズニーランドで」などがある。とにかく小動物がなつかない。

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