もしかしたら生涯忘れられないかも……瀬戸内の海小屋で漁&自炊して過ごした僕たちの「四つ手網(よつであみ)」体験記

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ある日、知人に「四つ手網(よつであみ)」のこと聞いた。岡山県で伝統的に行われている漁のスタイルで、海に張り出した小屋に網がついていて、その網をすくい上げて魚介類を捕り、小屋の中で調理して食べるのだという。

 

上手に説明できているか少し自信がないのでこの画像を見て欲しい。

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小屋の右手に見える大きな網で魚を捕るのである。

「四つ手網(四手網とか四ツ手網とも表記される)」という言葉自体は、もともとは四角い網の四隅に竹などを十字に張って支える網そのものを指すのだが、その網を使った漁のこともひっくるめて「四つ手網」と呼ばれている。

岡山県と鳥取県で行われており、特に岡山県がさかんで、瀬戸内海につながる児島湾という小さな湾の湾岸には20軒ほどの小屋が立ち並び、一般にも貸し出しているのだとか。調べてみると、一つの小屋を一泊数千円からという価格で借りることができるようだ。

小屋の中にいながらにして手軽に漁ができて、それを好きに調理して捕れたて状態で食べることができる。聞いただけで夢のようじゃないか。これはやるしかない! そう思い立ってさっそく賛同者を募って行ってきた。これからその一部始終をレポートしたい。結論から言うと、これがとんでもなく楽しく、忘れられない経験になった。

 

いきなり絶景の夕陽が

私の呼びかけに応じてくれた5人の仲間たちとともに、岡山岡山市の西大寺にやってきた。JR赤穂線の西大寺駅から「四つ手網」の小屋があるエリアまでタクシーで15分ほどである。

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今回借りることにしたのは「四つ手網 田中」という小屋。ホームページに室内の画像なども載っていて雰囲気が分かりやすく、価格も1泊8,000円とお手頃。今回は6人での利用なので、みんなで割れば一人1,400円弱である。

ちなみに事前に岡山出身の友人何人かに「『四つ手網』って知っていますか?」とたずねてみたが、誰も知らなかった。なので最初は本当にそんなものがあるのか半信半疑だったのだが、無事予約することができてホッとした。

事前に小屋のオーナーである田中さんと電話で話し、用意してきた方がいい物などについても聞いていた。それによれば、なんせ「四つ手網」はどんな魚がどれぐらいかかるか、その時々の変動が大きいため、最悪何もかからなくてもいいように、バーベキューや鍋用の食材を用意しておくのがおすすめだという。そうやってみんなで飲み食いしながら、魚が捕れたらめっけもんというスタイルで臨むのが良さそうだ。

 

駅近くのスーパーで食材や調味料、紙皿や割り箸などを購入しタクシーで児島湾岸へ。小屋を借りることができるのは17時から翌昼ぐらいまで(利用時間は小屋によって違う)ということで、着いたのはちょうど日没間近のタイミング。

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小屋の目の前に日が沈んでいく。いきなりの絶景だ。

 

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しばし見とれた後、我にかえって小屋の中へ。

 

小屋の正面には瀬戸内の海

ドアを開けると10畳ほどと思われるスペースにソファやテーブル、キッチン、冷蔵庫など最低限の設備がある。

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そして窓の外は海である。

 

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何度確かめても信じられないような空間だ。小屋の正面は湾。

 

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だが、その反対側には住宅地が広がっていてそれも不思議だ。

 

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ちなみにトイレは小屋の外にある簡易的なもの。

 

網の操作は至極シンプル

ひとしきり慣れない状況にみんなではしゃぎ、ようやく落ち着いてきた。

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みんなでテーブルを囲んで座ってみると一見ただの飲み会だ。

 

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しかし、何度も言うが目の前は海である。

肝心の「四つ手網」をチェックしてみよう。小屋の天井からリモコンがぶら下がっている。「上」、「下」の2つのボタンしかないシンプルなものだ。

 

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こんな風に箱形の装置からワイヤーが伸び、天井に開いた小さな穴を突き抜けて外の網につながっており、網を持ち上げたり下ろしたりする仕組み。

 

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「下」ボタンを押してみるとグオーンという音とともにワイヤーが伸び、網が海中に下りていく。

 

下のGIF動画は海中に下ろした網を持ち上げてみたところ。

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おわかりだろうか。

 

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もし網に何かがかかったら、窓を開け、小屋の中に置かれている柄の長い網ですくい取る。

以上が漁の全工程である。

“怠け者”という感じでなんとも最高!

ちなみに取材時は12月初旬。気候の温暖な瀬戸内海沿岸とはいえ、夜はだいぶ冷え込む。それぞれ防寒はしてきたが、部屋に設置されている石油ストーブにかなり助けられた。「四つ手網」の小屋はそれぞれに広さも設備も違い、エアコンがあるちょっと価格がお高めの小屋もあれば、設備がシンプルでその分安い小屋もあるそうだ。

 

さっそく何かが釣れた

さて、外も少し暗くなってきたところで、しばらく海中に沈めていた網を上げてみよう。

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ボタンを押しているだけだが気分は海の男だ。

 

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グオーン!! 持ち上ってくる網の底に目を凝らしていると……あっ、何かかかった!

部屋の中からすくい上げてみます。

 

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ハゼでした。

体長12cmといったところか。これが1尾だけかかった。

小屋のオーナーの田中さんによると、辺りが真っ暗にになると網の上部についているライトに魚が引き寄せられてくるということだったので、まだタイミングが早いのかもしれない。

だがとにかくハゼが釣れた。釣れたっていうかすくい上げたというか。とにかくそのハゼをさっそくいただいてみようと思う。

ふと、ここでひとつ気づいたことがあった。「『四つ手網』楽しそうー!」などと来ておきながら本当に情けないことで申し訳ないのだが、参加者の全員が普段から魚をさばくことがなく、というか「魚さわるの怖い!」ぐらいのレベルなのである。無論、私もそう。

子どもの頃、川にハゼを釣りに行っていた一時期があるのだが、釣ったハゼは母親にそのままバケツごと渡して唐揚げにしてもらっていた。自分で生きた魚を調理した経験などまったくない。

だがしかし、こうして釣らせてもらった以上、命をいただくことを意識しつつもちろんしっかり食べさせていただきます。

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「うおー、生きてる! うおー!!」と騒ぎつつ下処理をし、まずはカセットコンロで塩焼きにしていただいてみることに。

 

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う、うまい……。

捕れたてゆえか、なんの臭みも無い。透き通るようなうま味。

1尾のハゼを6人でちびちび分け合う。

 

さらに何かが釣れた

「もし今日の収穫がこれだけだったらどうしよう……」と一瞬不安になったが、しばらくしてまた網を上げてみたところ、「あら! なんか大きいのがかかっています!」。

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こ、これはなんの魚?

 

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すくい上げてみると大きいのはボラだった。30cmほどか。

左の小さいのは、岡山では「ママカリ」とも呼ばれる魚で、「サッパ」のようだ。さらにハゼが2尾。

 

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「大漁だ!」と大はしゃぎ。

そしてすかさず「ボラ 食べ方」とスマホで検索。さばき方を解説した動画なども多数ヒットする。こんな時代でよかった。

 今回、私たちはカセットコンロに網を乗せて「焼く」、ペースト状の味噌スープをベースにした鍋で「煮る」、天ぷら粉をつけて油で「揚げる」、という3種類の食べ方を用意している。この3種類の食べ方で迎え撃てない魚介類はあるまい!

というわけで、ボラは半分を塩焼きに、半分を味噌鍋の具にしていただいてみた。「臭みがある」と言われることも多いボラだが、それはボラが汚れた川などにも生息し、そこで臭みを体に溜め込むからで、水がきれいなところでは刺身で食べられることもあるぐらいだという。←全部スマホで調べたことですが……。

 

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児島湾で捕れたボラに臭みは一切なし。塩焼きしてすだちを絞るだけでじゅうぶんおいしいし、鍋でグツグツ煮込んだ身はちょっとさっぱりしたタラみたいな感じだ。

 

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ママカリの塩焼きも焼き目の香ばしさと少しのほろ苦さが相まって絶品。お酒が進む。

 

だんだん釣果が上がってきた

網を上げるたびにいろいろなものがかかる。時間帯にもよるのだろうか。

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「今度は何だ!?」

 

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ジャーン! 正解は“いろいろ”だ。

「ガザミ」とも呼ばれる「ワタリガニ」や「アミ」と呼ばれる小エビ、

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さらに「ベイカ」と呼ばれる小さなイカも。

 

「四つ手網」の大きな魅力の一つが、網を上げて何かがかかるたびにそれをどうやって食べようかと考えながら楽しめるというところ。「ガザミ」は鍋に入れて食べ、エビやイカは塩焼きにすることにした。

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驚いたのがさっきまで食べていた味噌鍋が「ガザミ」を入れたことによって10倍ぐらいおいしくなった点。いきなり「カニ鍋」にレベルアップ。偶然捕れたものが食卓をグングン豪華にしてくれるなんて、まさに天からの恵みのようだ。

 

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また、グツグツと長時間煮込んだ末に食べた「ガザミ」の身のおいしさたるや、鳥肌ものであった。

 

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うますぎて笑える。

 

楽しい夜はふけて……

また網を上げてみる。「あ! 何かある!」とのことで近寄ってみると。

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葉っぱだったり。

 

かと思えば、

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今度はアナゴや小さな太刀魚がかかったり。

 

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その都度の釣果を楽しみながら深夜まで楽しんだ。

 

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こちらは真夜中の「四つ手網」の様子。網の光に魚が吸い寄せられてくるのだろうか。

 

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小屋の中には布団と毛布も用意されていたが、かなり冷え込んできたため、就寝時は念のため持ってきていた寝袋が役に立った。

ちなみに児島湾は非常に静かな湾で、昼から夕方まの間、岡山港から小豆島を結ぶフェリーが通る時だけフェリーが起こした波が打ち寄せるだけ。あとはシーンと静まり返っている。私たちが利用した小屋のすぐそばにも2軒の「四つ手網」の小屋が建っているのだが、取材当日は隣の小屋にも利用客がきていて、小屋の中でギターを弾いて歌う声などがこちらまで聞こえてくるほどだった。

夜、トイレに行こうと外へ出ると満天の星空。

しかも折しも「スーパームーン」と呼ばれる、地球と月の距離が近くなるタイミングで、ふと見あげた月の大きさに仰天した。

 

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堤防の右手の大きなオレンジ色の球体が月。この大きさが伝わるだろうか。

 

思いがけず大物が……!

さて、朝が来た。

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幸い、今日も天気は上々のようだ。

 

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炭をおこし、昨日はすぐに日が暮れてしまったためにできなかったバーベキューをして朝食とする。

捕れたての魚もおいしいけど、網で焼いたシイタケもおいしい。

 

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すっかり明るくなったので、もう網には何もかからないだろう。網が動く様を動画に収めるためにちょっと上げてみよう、と、気軽に網を上げて見た時のことであった。

 

これまでで最大の何かが網の上を飛び跳ねるのが見えた。

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「んん? なんだあれ!」

 

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すくい上げる小網の手ごたえがすごい。

 

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見てください! こんな大きなスズキが2尾。50cmはあろうかという大きさ。今回最大の収穫です。

 

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ママカリもこんなに大漁!

 

すべてがうますぎる

さっき朝ごはんを食べたばかりだが、そのまま昼食に突入!

小屋に来たばかりの時はハゼ1尾をぎゃあぎゃあ言ってさばいていた私だったが、デカいスズキも落ち着いて下ごしらえできるようになった。

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スズキは天ぷら粉をつけて油で揚げてムニエルに。

 

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これが脳がスコーンと開いたかと思うほどおいしい。

 

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ママカリも同じく揚げて食べた。

これもまたとんでもなくおいしい。

今回参加してくれた岡山出身の友人によれば、ママカリのフライが学校の給食に出ることもあったそうで、「そうこれこれ!」と大喜びであった。

 

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残った魚は昨夜から継ぎ足し継ぎ足しを繰り返しながら煮込み続けている味噌鍋に入れ、締めの冷凍うどんとともにいただく!

 

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魚介類のうま味がこれでもかと出まくった究極のうどんだった。またこの鍋で食べるスズキも大変おいしい。

 

箸を突っ込むたびに鍋の底からいろいろな具材が現れて、最終的にはこの鍋自体が小さな「四つ手網」みたいになっていた。

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幸せをかみ締め終えたところでゴミを片付け、小屋の中を来た時と同じように整頓して帰る。

なんだか長く記憶に残りそうな鮮烈な体験だった。

 

ベストシーズンは春先

最後に、小屋のオーナーである田中八十吉さん(写真下)に「四つ手網」のことについて聞いてみた。

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── このあたりの「四つ手網」はいつ頃からあったものなんでしょうか。

 

田中さん:かれこれ40年以上前でしょうか。そもそもは今堤防がある手前に流れる川で「四つ手網」を出していたんですが、そこで魚が捕れなくなったので海に向かって出すようになったのが40年ほど前ですかねえ。その頃は電動じゃなく人力で網を上げ下げしていました。一番多い時は60軒ぐらいあったんですよ。昔は私たちが自分で漁をして魚を食べるためのものだったのが、20数年ぐらい前から観光というか、一般に貸すようになってね。

 

── 60軒もあったんですか! 今は20軒ほどなんですよね?

 

田中さん:今は24軒か25軒か、それぐらいだと思います。以前は60軒ぐらいあったんですが、十数年前の台風(調べてみたところ、2004年の台風16号のようだった)でほとんどが流されてしまったんです。うちの小屋も一部を残して流されてしまって、それを機にやめてしまうところも多かったんですなぁ。

 

── そういう事情があったのですね。

 

田中さん:今、海の中の柱だけが残っているのはその時流されてしまったところです。

 

── 田中さんの小屋は3月~12月まで営業されていますが季節によって捕れるものは違うんですか?

 

田中さん:「四つ手網」で捕れるものはどっちみち近海の雑魚が中心ですので、ママカリ、セイゴ(幼いスズキ)、ハゼとか、そういうものが季節に関係なく、その時々でかかったり、かからなかったり(笑)。ただ、もともとは私らは春先にベイカという小さいイカが子を持って海に入ってくるのを目当てにしてやることが多かったんですね。なのでそういう意味では春先、5月頃が良いシーズンですねぇ。冬もかかるんですけど、寒いですからねぇ。夏になると虫がどうしても寄って来ますし。

 

── 5月頃にまた来てみたいです!

 

田中さん:だいたいこの辺では“彼岸から彼岸まで”が「四つ手網」の時期だと言っていましてねぇ(春のお彼岸である3月頃から秋のお彼岸の9月末頃までを指す)。冬の間もやっている小屋もありますけど、うちは3月終わりか4月はじめぐらいから貸すようにしています。

 

── 大きい魚がかかることもあると聞いたんですが。

 

田中さん:大きいのになると、75cm、76cmぐらいのカレイがかかることがあるんですよ。今年の秋も別の小屋でかかって新聞にも載っていました。うちでも去年はそれぐらいのがかかりました。だからまあ、そういうことも、たまにあるんです。たまに、ね。

 

── やはり、あれを捕りたい! っていうのではなく、その時にかかったものを楽しむのが良いんですね。

 

田中さん:そうして楽しんでもらえるのが一番ありがたいですね。あまり期待しないでのんびりやっていただけたら一番ですねぇ。

 

── ありがとうございました!

 

いかがだったろうか。小屋の中で賑やかに飲み食いしながら、ボタンを押すとその時々のタイミングで海の幸が手に入る。そしてそれをいろいろな食べ方で楽しみながら引き続きワイワイ過ごす── 

“棚からぼたもち”を待ちながら過ごすようなこののん気で満ち足りた時間。私はずっとこういうことがしたかったのかもしれないと思った。

暖かくなったらまた行こう!

 

最後に「四つ手網」に興味を持ってくださった方のために私からの要点メモを。

  • 小屋によって設備内容や価格が異なるので、まずは地元の漁協「九蟠漁業協同組合」に相談してみるのがおすすめです。
  • 買っておいた方が良いものも小屋の設備によって変わってくるので、小屋のオーナーに気軽に相談してみましょう。
  • シーズンによっては、寒かったり虫に刺されたりするので防寒・防虫対策についても事前に確認しておきましょう。
  • 5月の週末などは予約がたくさん入るそうなので計画はお早めに。
  • 魚がさばけるメンバーがいれば尊敬を集めること間違いなしです。
  • 油と天ぷら粉はどんなものでも間違いなくおいしくしてくれるので、ぜひ用意していくのをおすすめします。

 

取材協力:四つ手網 田中(住所:岡山岡山市東区豊田749)

  

書いた人:スズキナオ

スズキナオ

1979年生まれ、東京育ち大阪在住のフリーライター。安い居酒屋とラーメンが大好きです。exciteやサイゾーなどのWEBサイトや週刊誌でB級グルメや街歩きのコラムを書いています。人力テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーでもあり、大阪中津にあるミニコミショップ「シカク」の店番もしており、パリッコさんとの酒ユニット「酒の穴」のメンバーでもあります。色々もがいています。

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