冬の自炊といえば、やはり鍋。最近はスーパーでも「鍋セット」といった野菜やキノコがセットになったものや、レトルトの鍋つゆが売られており、ただでさえ簡単な鍋がさらに身近になってきています。
ところが、筆者はその影響で鍋のレパートリーが単調になってしまいました。鍋セットの野菜やレトルトの鍋つゆに、何かもう1つ動物性タンパク質を追加して、あとは薬味で味変をするという状態に。それでも美味しいのが鍋ですが、もっとバリエーションを増やしたい……。
そう悩ましく思っていたところ、救世主が! 料理家・風間章子先生が、斬新かつ簡単な「麻婆茄子鍋」を伝授してくださることになりました。
風間先生は過去にも『メシ通』にご登場いただき、最高の水炊きの作り方や、土鍋の育て方をお教えいただいた鍋のプロ。
今回はなんと、あの麻婆豆腐の素で鍋つゆを作るのだとか。鍋に茄子を使うのも珍しいですし、これは新たな扉が開けそうな予感……!
材料と下準備
【材料】(2~3人分)
(具材)
- 豚バラ肉 200g
- 茄子 4本
- 長ネギ 1本
- もやし 200g
- ニラ 1束
- 春雨 30g
(鍋つゆ)
- 水 600ml
- 麻婆豆腐の素 1パック(1パック75g・3人前)
※濃い目が好きなら水800mlに麻婆豆腐の素を2パック - 鶏ガラスープの素(顆粒) 小さじ1
※塩 小さじ1/2で代用も可能
(茄子を炒める用)
- ごま油 大さじ1と1/2
下ごしらえは難しくありません。基本的には素材を食べやすいサイズにカットしていくだけ。手慣れている人なら、あっというまにできる作業でしょう。
まずは豚バラ肉。4~5cm幅に切ります。
風間章子さん(以下、風間):鍋に豚肉を入れるなら、バラ肉が美味しいですよ! 脂の甘みがよく出ます。
茄子はヘタを落とし縦に6等分のくし切りにします。半分に割った茄子をそれぞれきれいに3つに切る、先生の包丁さばきに感嘆。
ちなみに、茄子はヘタの部分のトゲがしっかりしているものは鮮度がいいそうですよ。もしトゲが残っている状態で売られていたら、トゲトゲしい茄子を選びましょう。
そして、茄子はこの鍋の主人公です。よりボリューミーな鍋にしたいときは、茄子を増やしていくといいですね。
長ネギは約6cmの斜め切りにします。このくらいのサイズですと、熱が通って柔らかくなっても長ネギらしさを堪能できますね。
もやしはスーパーで1袋200gのものが主流なので、1パック丸ごと使えばいいでしょう。
ニラは約6cmの長さに切ります。個人的に大好きな食材なので、香りがたまりません……!
風間:鍋の定番野菜としては他にホウレンソウもありますけど、下茹でしなきゃいけないですよね。ニラはホウレンソウと違って下茹で要らずで手間が省けるので、今回チョイスしてます。
春雨はボウルなどに入れて、熱湯を注いで3分ほど待って戻し、食べやすい長さに切ります。
麻婆豆腐の素は、この鍋の大きなポイントになりそう。
今回、風間先生がチョイスしたのは、合わせ調味料タイプで、花椒がしっかり効いた四川風味(ついでに化学調味料無添加)のものです。挽肉などは入っていません。このレシピをやってみようという方は、選ぶ際の目安として参考になさってみてください。
風間:麻婆豆腐の素を使っているのは、麻婆茄子の素よりも一般的に甘さ控えめだから。鍋の場合は甘くない方が食べ進めやすいですからね。それから、水・麻婆豆腐の素・鶏ガラスープの素の分量は、他の具材や食べる分量に合わせて適宜バランスを整えましょう!
整えるタイミングは後ほど説明します。
鍋作りのポイント
麻婆茄子鍋の作り方は、特に難しいところはありません。要所要所のポイントを押さえておけば美味しく作れるでしょう。
茄子を焼く
茄子は焼き目を付けておくのがポイント。
風間:表面を焼いておくことで、煮たときに身が崩れにくくなりますよ! ごま油で焼くと、香りもよくなるんです。
フライパンにごま油を引いて中火にし、茄子を焼いていきます。
全体的に焼き目が付いてきつね色になったら、取り出しておきます。
鍋を作る
次に、鍋を作ります。市販の麻婆豆腐の素を使うこの鍋では、複雑な出汁取りも必要ありません。鍋つゆを簡単に作って、準備した具材を順次投入する、この2ステップです。
1)水・麻婆豆腐の素を入れて火にかけ、鶏ガラスープの素で味を調整
まずは鍋に水を投入し、中火であたためながら麻婆豆腐の素を溶かし入れます。
風間:(鍋つゆを一口味見して)う〜ん、やっぱりもう少し塩気とうま味もほしいので、鶏ガラスープの素を入れちゃいましょう。
味見させていただくと、風間先生はそれほど濃い目の味付けにはされていませんでした。ですが、サッパリとした味付けだったことで、後述のようにかえって食が進んだように思います。
2)長ネギ、豚バラ肉、もやし、春雨、茄子、ニラの順で投入
煮立ってきたら、具材を入れていきます。
風間先生は「長ネギをクタクタにする派」ということで、真っ先に長ネギを投入。そして一度蓋をして、長ネギに十分火が通ってから蓋を外されていました。
残りの具材は火が通りやすいのでテキパキと投入。
主役の登場をまだかまだかと待っている麻婆鍋。
春雨、茄子まで投入しました。
ちなみに長ネギを鍋から避難させているのは、撮影用に長ネギを再度盛り付けるため。お家で食べるときにはもちろん入れっぱなしでOKです。
全体に火が通ったところでニラを加え、避難させていた長ネギを戻し……
ニラがしんなりとしてきたら完成です。
鍋の準備が整い、私の胃袋の準備も整ってきました……!
これは箸が止まらない!
麻婆豆腐の素って、基本的には水を加えずに調理するじゃないですか。この鍋は薄味になりすぎてしまわないのかと、ちょっとだけ心配に。
ですが、食べてみるとその希釈具合が絶妙なんですよ。ちゃんと鍋として食べやすい濃さになっているんです。
具材は、まず主役の茄子からいただきました。鍋なのにシャキッとした歯触りが残っていて、それが四川風味の味付けによく合っています。ごま油の香りも手伝って、白米がほしくなる味に。
ニラ・もやし・豚バラ肉など他の具材も、鍋つゆがしつこくないおかげでどんどん食べることができます。鍋つゆをよく吸った春雨も美味しく、チュルチュルとした食感と共に楽しめます。
普通の鍋と違って、唐辛子のような薬味がなくても味は十分。
より辛くしたいなら、取り皿に豆板醤やコチュジャンをお好みの量、用意するといいでしょう。辛いもの以外にも、コクをアップさせるために、ねりごまペーストや甜麺醤などを足すのもアリですね。
はあ〜美味しかった、ごちそうさまです。
自分でも作ってみた
風間先生に教えていただいたので、早速、自宅でも作ってみることに。先生と同じ麻婆豆腐の素を用意できなかったこともあり、多少の応用は入りますが、同じ手順で作ってみました。
近所のスーパーには挽肉入りの麻婆豆腐の素しかなく、内容量は155gでした。先生に教わった際の麻婆豆腐の素は、挽肉なしで内容量75gのもの。挽肉入りで容量も異なるので、辛さの調整をしなければなりませんね。
麻婆豆腐の素に水800ccを混ぜたところ、辛味はちょうどよくなりました。しょっぱさやコクが薄くなっていたため、鶏ガラスープの素を味見しながら入れて、いい感じの鍋つゆに。
具材を投入し、出来上がりを待ちます。鍋の盛り付けベタはご愛嬌(あいきょう)です……!
出来上がった鍋は、豚バラ肉の甘みと麻婆豆腐の素の辛味が絶妙。そこに、もやし・えのき・長ネギの歯触り、茄子の香り、春雨のチュルチュル感、ニラの存在感が加わり、なんとも美味しい仕上がりになりました。
締めにはご飯も投入。コチュジャンを混ぜることでコクが出て、最後まで美味しく食べきることができました。
私でも再現できた麻婆茄子鍋。ぜひ、読者のみなさんも試してみてください!
書いた人:奥野大児
馴染んだ店で裏メニューを頂けるのが至高と思っている呑兵衛ライターでブロガー。店主と仲良くなるのが得意らしい。グルメ、旅、歴史、IT、スマホなどなど多ジャンルで書きます。
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- ブログ:「明日やります」 https://www.odaiji.com/blog/