鍋のコゲを気持ちいいくらい落とすヒット商品を開発した洗剤のメーカーの中の人に話を聞いてきた

料理好きの皆さん。自宅の台所の鍋、焦がしていませんか? 黒焦げの鍋を楽してピカピカにする、ちょっと信じられないような楽しい洗浄剤を見つけました。今回は爆発的となったヒット商品の開発秘話も含めて、取材してきました。

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▲焦げを落とした鍋、落としていない鍋を重ねてみました。きれいさが大違いです

 

黒焦げの鍋を楽してピカピカにする方法

料理好きの皆さん。鍋、焦がしていませんか?

 

私はよく焦がします。だいたいやらかすのは冬。

牛すじ肉を柔らかくするときなどに、長時間弱火で煮込みますよね。その時に鍋を火にかけているのを忘れてしまい、よく「鍋黒焦げ事件」を起こしてしまうんです(皆さんはご注意くださいね!)。

 

昨年も年末にやらかしました。

いつもは湯に重曹を入れてぐつぐつ煮立て、それでなんとかなるのですが、今回はそれくらいではまったく無理なレベル。あまりのまっ黒焦げさに鍋を捨てちゃおうかと思ったものの、いや待て、何か方法があるかもしれないとネットで検索。

 

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▲手作り感のあるチラシ。使い方も丁寧に解説されています

 

そこで発見したのが「こげとりぱっとビカ」(株式会社グリーンツリー関西)という商品でした。ネット上での口コミ評価は非常に高く、これなら良いかもと注文したのが昨年の大掃除の時期。

 

もちろん最初は半信半疑。とりあえず、いつもガス台に置いたままのやかんに塗布してみました。隣の鍋やフライパンから飛びちった油が付着&加熱されて黒くこびり付いた、なかなか厄介な状態になったやかんです。

洗浄剤が乾かないようにやかんにラップをして一晩放置。すると汚れが黒いジェル状になって固まっており、水で流すだけでピカピカのやかんに戻ったのです。

 

発売から8年売れなかった商品が、テレビ放映で売り上げ急増

と、ここまで読んだ方は、そんなにうまく焦げが落ちるものか、嘘っぽいぞと思われたかもしれません。

この商品、発売してから爆発的に売れるようになるまでに実は8年かかっているのですが、商品の普及を長らく妨げてきたのは、とても簡単に焦げが落ちることを消費者に伝えるのが難しかったからでした。

 

株式会社グリーンツリー関西の広報担当、盛田友香さんにお話を伺いました。

※本取材はリモートにより行っております。

 

f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田友香さん(以下・盛田):弊社は創業40年近くになる、主にビルメンテナンスやハウスクリーニングを手がける清掃のプロ向けに清掃用品や機械を販売している会社です。
「こげとりぱっとビカ」は2011年に発売し、WEB中心に販売してきました。また直接買いに来られる方には店頭で販売もしていました。とはいえその時点ではヒット商品とは言えず、また社員8人の会社ですので広告を出すような予算もありませんでした。それが2019年にテレビ番組で取り上げていただいたことで、その放送直後から一気に販売数が増えたんです。

 

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▲株式会社グリーンツリー関西の盛田友香さん

 


f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田:一般的に「焦げは取れない」と認識されている方が多いのか、文章や写真で説明をしてもなかなか信じてもらえませんでした。テレビ放送があったことで「焦げ」が簡単に取れると認識していただいたのかなと思っております。
それ以来、ありがたいことにWEB販売のほうでも多くの方にレビューや高評価をいただいており、販売数は年々伸び続けています。

 

テレビで放送された翌日には、発送が追い付かないほどの注文が殺到。たった1日で、過去1年に販売した以上の商品数が売れたのだとか。現在もコロナ禍で在宅時間が増え、家の中の掃除、お手入れに消費者の目が向いているのか、好調な売れ行きが続いているそうです。

 

売れなくても「絶対に良い商品」と信じていました

それだけ売れない時期が続いても諦めなかったのは、「これが絶対に良い商品だと信じていたからです」と盛田さん。

カビ取り、さび取りは開発に取り組む事業者が多く、以前からさまざまな商品が発売されていましたが、焦げ取りはなぜか、開発されていませんでした。

もしかしたら、「焦げが落ちるような商品の開発は無理」と諦めていたのかもしれません。

しかし、ニーズは高いはずと判断、同社は時間をかけて開発に取り組みました。

 

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▲一般の人が使うものということで安全面にも考慮しているそうです

 

f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田:開発は外部の開発事業者さんに委託。完成までに2~3年かかりました。特にこだわったのは安全性。プロ向けには毒物及び劇物取締法、有機溶剤中毒予防規則に該当する薬品を使うことがありますが、一般の方が使う商品と考えるとそうしたものは使えません。
安全で、でもよく落ちるものを。また、洗浄する鍋などの光沢を落とさず、傷を付けないよう、研磨剤を含まない洗浄剤を目指し、何度もテストを繰り返しました。

 

テストのためにと社員宅はもちろん、友人やさまざまなつてを頼って鍋、フライパン、たこ焼き用鉄板(関西ですねえ!)、焼き肉の網や五徳その他を「きれいにして返すから」と借り回ったそう。

その成果がこの商品なのです。

 

一度使ったら、人に教えたくなる

テレビ番組で紹介されて火がついた後は、あっという間に売れるようになった「こげとりぱっとビカ」。

しかも、面白いのは「お客様がこの商品を勝手にどんどんお勧めしてくださるんです」と盛田さん。

 

f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田:友人に「雑誌で見たよ~」などと教えてもらうことも多く、最近では本屋さんに行く度にどこかに載っているかもと思って雑誌などをぱらぱらめくるようにしています。今度、どこかで掲載されていたら、教えてくださいね。

 

この商品、勝手にお勧めしたくなる気持ちはよくわかります。

筆者も自分で使ってみて、我が家の鍋の大半をきれいにしたところで、どうしても誰かにお勧めしたくなり、そういえば! とメシ通編集部に連絡。「これ、すごい洗剤だから、記事で紹介しましょうよ」と提案して記事にしたのでした。

 

ちなみに以下の4枚の写真がその時に編集部に送ったものです。

頑固な汚れが付いた状態の鍋に洗浄剤を塗り、ラップをして一晩待ちます。するとこんなにきれいになるんです。

 

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▲ステンレスの片手鍋。かなり、かなり頑固な汚れが……

 

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▲洗浄剤を塗りたくったところ。お盆の上に新聞紙を敷き、その上に片手鍋をのせてあります 

 

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▲ラップを貼り付けて、洗浄剤が乾かないようにします

 

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▲完成! すっかり元の輝きを取り戻しました

 

ビニール手袋は必須。使えるかどうかを試してから塗布を

さて、いよいよ、使い方です。

用意するものは「こげとりぱっとビカ」、ビニール手袋、ナイロンブラシ(歯ブラシでも可)、ラップ、新聞、場合によってはビニール袋など。

 

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▲鉄、ステンレスなら良いが、素材が何かと悩んだら、隅っこにちょっとだけ塗って試してみてください

 

使えるのは鍋、やかんなどのステンレス及び鉄製品、レンジ、オーブン、ダッチオーブン、フライヤー、ガステーブル、焼き網、焼き肉用鉄板、たこ焼き用鉄板、ピザ用鉄板、パン・ケーキなどの焼き型、五徳、タイル壁、目地などに付着した焼き付き油汚れやべとつき油汚れなど。

 

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▲丁寧な説明。竹とか木、革には使っちゃダメです

 

この洗剤が使えない素材としてはアルミ、銀、銅、しんちゅう、亜鉛、スズ、クロムメッキなどの金属製品、プラスチックなどの樹脂製品、ホーロー、ガラス、鏡、漆器、竹製品、木製品など。

 

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▲アルミにも使える万能タイプも登場。強力タイプよりも洗浄力が多少落ちる分、アルミを傷めない

 

アルミ製品やシリコン製品、ガラストップ、ホーロー製品については効き目がソフトな「こげとりぱっとビカ万能タイプ」が新たに発売されているので、そちらを使うのがいいそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田:最近の鍋やフライパンなどは、単一の素材だけで作られていないことがあるので、不安に思ったら隅で少し試してみてから全体に塗布するようにしてください。また、ご家庭によくあるテフロン加工のフライパンには使えないのでご注意ください。

 

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▲せっかくなので違いをお見せしようと大小2つの鍋を用意

 

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▲この商品を使うために買ったビニール手袋を装着

 

もうひとつ、注意したいのは使用時にはビニール手袋を使うこと。

洗浄剤は強いアルカリ性なので手に付くと皮膚のたんぱく質を加水分解、表面が溶けてつるつるになってしまいます。肌に付いたらすぐ水で洗い落とすようにしてください。

それ以外にも注意事項は本体に記載されているので、必ず読んでから使いましょう。

 

洗浄剤を塗ったらラップをして密封、そのまま放置

使い方は簡単。容器をよく振って洗浄剤をきれいにしたい鍋などに塗布、洗浄剤が乾燥しないようにラップをして密封、そのまま放置します。

塗布する時にはナイロンブラシを使うときれいに塗ることができます。

 

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▲歯ブラシで塗り塗り。軽い焦げならこの時点で落ちることも

 

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▲ラップをして密封

 

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▲しばらく放置。汚れが溶け始めているのがおわかりいただけるでしょうか

 

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▲このくらいの状態でも、ラップの上から軽くこすっただけで表面の汚れがつるっと落ちます。それがけっこう快感でついつい、何度もやってしまいました

 

▲そしてラップを剥がす。これは一晩置いた状態。洗浄剤がどす黒く、ジェル状になっていて、そこに焦げが溶け込んでいる感じ。ペーパータオルなどで軽くふき取り、水洗いをします

 

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▲できました。焦げ落としをしていない鍋を上に重ねて比較します。いかに焦げが落ちたか、わかると思います

 

私はお盆に新聞紙を敷いて、その上に鍋を置き、洗浄剤を塗布。

ラップをしてから一晩放置というやり方をよくしていました。お盆にのせておけばキッチンの外や邪魔にならないところに移動できるからです。

 

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ただ一度、新聞紙が足りなかったのか、黒くなった洗浄剤がお盆に染み込んでしまい、お盆に跡が付いてしまいました。新聞紙を厚めに敷くか、あるいはラップやビニール袋などを敷いておくのが賢明です。

 

温めると焦げが早く落ちる

また、裏技としてラップをした状態の鍋などを温めるという手もあるそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20220228131713p:plain盛田:よく何時間で落ちますかと聞かれますが、汚れの状況にもよるのでひと言では答えられません。ですが、早く落とそうと思ったらラップをした状態で温めてみてください。この洗浄剤は基本10度以下になると効き目が弱まります。逆に温めると効果大。
塗布後にラップをしたものをビニール袋に入れて、湯の入ったバケツに入れてお燗してあげると早く落ちやすくなります。また、冬よりも夏のほうが時間がかかりません。また鍋は使った後、熱がある状態で塗布するのも良いですね。

 

それほど汚れていないもので3~6時間、汚れがひどいからと一晩放置。それでも取れなかったら、同じことを何度か繰り返します。

私の個人的な感想ですが、表面的な汚れの場合はだいたいは1回、多くても2回程度で落ちるように感じます。

 

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▲左の写真が「こげとりぱっとビカ」を1回使った状態。さらにもう1回使ったものが右の写真。鍋のふちの焦げはかなり取れており、あともう1回くらい集中してやれば鍋底の焦げも取れるかなという感じ。鍋の内側はもう少し根気よく続けます

 

私の鍋のように何時間も焼き付けてしまったもの(トホホ……)はさすがに2回やってもピカピカにまで戻すのは難しく、全体的な焦げはかなり落ちたものの、まだ若干の黒さも。

ただ、煮汁に黒い焦げが混じるような状態は脱し、普通に使えているので問題はなし。

鍋を捨てなくて済みましたし、それ以外の鍋はすっかりきれいになって、料理も楽しい。

もし、焦がしてしまって捨てようかと思っている鍋があるなら、試してみて損はないはず。

それから皆さん、牛すじ肉を煮る時にはタイマーをかけるなどして、鍋を火にかけていることを忘れないようにしましょうね。

 

gtkansai.com

書いた人:中川寛子

“真山知幸”

住まいと街の解説者。30数年不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他、まちをテーマにした取材記事が多い。主な著書に『この街に住んではいけない』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』『東京格差 浮かぶ街、沈む街』(ちくま新書)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

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