島旅フォトライターのいづやんです。
みなさん、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか? 僕はライフワークにしている島旅に出かけられなかったので、「おうちで島旅気分をなんとか満喫できないものか」と色々試行錯誤していました。
例えば、今までの旅で撮った島の写真を整理してTwitterにアップしたり、島の人とオンライン飲み会をしたり、溜まった島関連の本を消化したり。
そんな中、各地の島が発信する「この機会に、うちの島の特産品をお取り寄せしませんか?」「島のものを詰め合わせたお取り寄せ便を始めました」といった情報を目にする機会も増えてきました。
それなら、遠くてなかなか行くことの出来ない島の食材や食品を取り寄せて、お腹の中だけでも島を感じようではないか! と思い立ち、早速注文してみました。
海と山の幸が詰まった「五島よかとこ便」
お取り寄せ先に選んだのは、長崎県は五島列島(以下、五島)。
五島は過去に何度か旅をしたことがあり、沖縄にも引けを取らない青い海、豊かな自然、潜伏キリシタンの歴史などの独特の文化、親切な人々との交流など、とても好きな島々です。
もちろん、食べ物も本当に美味しく、3年前に行った時は5日間の朝昼晩、何を食べてもハズレ無しの素晴らしい思い出が、脳裏と胃袋に刻まれています。
▲五島の島々には、この大瀬崎灯台のような美しい景色が随所にあります(撮影:筆者)
そんな旨いものだらけの島々の特産品を詰め合わせたのが「五島よかとこ便(以下、よかとこ便)」。
サイズは「大(「12,000円)」「小(7,500円)」(ともに税・送料込み)※の二種類がありますが、今回は初めてなので「小」を頼んでみました。季節によって、入っているものが変わるそうなので、中身は届いてのお楽しみです。
※2020年7月現在
注文から一週間ほどで、チルド便のダンボールが届きました。
早速開封してみると……
結構な量が入っていそうなので、箱から出して広げてみましょう! 加工品に野菜、そして驚いたのは二つも入っていた保冷パック。
開けると中からは魚が出てくる出てくる、テーブルに並べきれないほど。魚はすべて真空パックにされて鮮度抜群です。
届いた五島の特産品たちは以下の通り。
海産物
▲ヒラス※(刺身用)、二つに割られたヒラスの頭(塩焼き・煮付け用) ※西日本でのヒラマサの呼び方
▲ブリ(刺身用)×2、アジ(塩焼き用)
▲イカゲソ、イカ(刺身用)×2
▲フエフキダイ(バター焼・フライ用)、ヒラメ(刺身・煮付け用)、きびなご(一夜干し)、生あおさ
野菜
▲パプリカ、たけのこ(ゆで)、橋本さん家のミニトマト
加工品
▲五島手延べうどんセット、しまおう(アジのすりみ)、「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」(レトルト)
「これで送料込み7,500円って、安すぎない? 大丈夫!?」と、やや引くくらいの量です。
商品一覧が載っている紙も同梱されていて、魚のパックには名前と一緒に「刺身用」などオススメの食べ方も書かれているので、「これどうやって食べるんだろう」と迷うこともなさそう。
ちなみに、注文の時にリクエストを入れれば、魚は届いてすぐ調理できるよう下処理を済ませた状態でも、丸ごと送ってもらうことも可能です。これはとてもありがたい!
8日間の「五島食材祭り」、スタート!
ずらっと並んだ五島の幸を前に、「さて、どれから食べよう」と嬉しい悩みに頭をひねります。ちなみに、今回料理してくれたのは僕の妻。かなりの分量の食材を毎日美味しく料理してくれて、感謝です。
【1日目】
まずは鮮度命のお刺身系からいただきましょう。届いた日の夜は、ヒラス、ブリ、ヒラメの刺身をどんと並べてみました。
どうですか、この迫力!
▲ぷりぷりのヒラスの刺身。箸にもその弾力が伝わります
ヒラスもブリも、身がぷりぷりして新鮮そのもの。「よかとこ便」の魚は、朝獲れたものを“五島〆(漁業団体が長崎大などの協力のもと独自に編み出した神経締めの技法。瞬時に魚の神経と血を抜き取り、鮮度を保つ)”で締めて真空パックされるため、今おろしたのでは? と思うほどの美味しさでした。もちろんくさみもありません。
ヒラメも、ねっとりとした甘みがあってつい箸が進んでしまいます。
お供に、生あおさの味噌汁を。生のものは東京圏ではなかなか手に入らないので、あおさ好きとしてはかなり嬉しい。
妻と二人で分けても食べきれなくて、半分ほど残してしまいましたが、残ったものはまた翌日に別の料理にします。
【2日目】
お昼は、昨日残ったブリの刺身を醤油と酒、みりんでヅケにして、「ブリ漬け丼」にアレンジ。新鮮な証拠である身の弾力は、ヅケにしても変わらず。薬味のミョウガとの相性も抜群でした!
夜は、昨日の残りのヒラスとヒラメの刺身をカルパッチョに。
パプリカは、豪快に肉詰めに。身が厚くて歯ごたえがありつつも、甘みが強くて肉に負けていません。
パプリカの青くささが苦手な妻も「これは甘くて食べられる」としっかり完食していました。
【3日目】
刺身用のブリは未開封のパックがもう一つあるので、この日は趣向を変えて「ブリしゃぶ」としゃれこんでみました。
初日に結構な量の刺身を食べたはずなんですが、まだこんなに食べられて最高です。刺身用の魚は、届いてからパックを開封しなければ、3日ほどは生のまま食べられるそうですよ。
野菜を一緒に茹でた出汁でしゃぶしゃぶして、いただきます!
軽く火を通した身を口に入れると、刺身とはまた違った濃厚な旨味が感じられます。「刺身より美味しいかも!」と二人であっという間に完食。
【4日目】
魚料理がずっと続いたので今日は別のメニューということで、橋本さん家のミニトマトと、たけのこを使います。
ミニトマトは、カマンベールチーズと一緒にカット。シンプルに、オリーブオイルと塩でサラダに。
実は僕、ミニトマトをそれほど美味しいと思ったことはないのですが、これは本当に美味しかった! 実がぎゅっと詰まっていてひたすら甘く、青くささがまったくなかったです。シンプルなレシピが一番合うトマトですね。
たけのこは、筑前煮風に。ちょっと小ぶりでしたがその分柔らかく、味がしっかり染み込んで美味しく完食できました。
刺身用のイカは、シンプルに卵黄と醤油で和えたものを。醤油は、同じ長崎県の離島、江島で購入した幻の「江島醤油」を使ってみました。
イカ納豆も作ってみました。どちらも、身にしっかりと歯ごたえがあり、噛むとイカの甘みがじんわり広がります。日本酒を飲みたくなりますね!
思いのほかバラエティ豊かな4日目の晩御飯となりました。
【5日目】
新型コロナウイルスの影響で、僕もリモートワークとなっていて、お昼は自宅で食べています。そんな時の強い味方がレトルト。
よかとこ便に入っていた「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」は、商品名の通り、鯛の出汁が入っていてコクがある美味しいカレーです。
「チキン」「五島豚なんこつ」など全5種類あるうち、今回送ってもらった「プレーン」には具が入っていないのですが、それは“色々アレンジを加えられて、なんにでも合う”から。
一口食べるとしっかりしたコクが感じられて、次に爽やかな辛味がやってきます。色んなレトルトカレーを食べてきましたが、これは上位に入る旨さ。「プレーン」は普通に買っても税込150円(1袋)と、かなりリーズナブルで普段づかいできる嬉しさです。
【6日目】
今回届いたものの中で一番インパクトがあったのが、二つに割られたヒラスの頭。これを、オススメの「塩焼き」と「煮付け」にします。届いてから冷凍しておいたのですが、解凍してもなお綺麗だったのが印象的です。
塩焼きにしたものは、身がふっくらしていくらでも食べられます。小ぶりな頭ですが、ひっくり返すと裏には身がたくさん残っているので、なかなか食べごたえがありますよ。
もう片方は妻が上手に煮付けてくれたので、箸が進みます。塩焼き、煮付けとも甲乙つけがたい食べ方です。
今回、二つに割られた状態で届いたので、どちらも試せてよかったですね。
小ぶりのアジは、南蛮漬けにしました。
また魚ばかりの晩御飯になりましたが、どれも美味しかったので言うことなしです。ありがとう、五島の海の幸!
【7日目】
入っていた加工品のひとつ「島すりみ」は、五島の海で獲れた様々な魚をすりみにしたもの。「あご」や「いわし」など数種類ある商品ですが、今回は「アジ」でした。
これをすりみ汁にしてみます。
すりみからも出汁が出て、じんわり旨い。
気軽に魚を食べることができる加工品はあちこちにありますが、こういうお取り寄せセットに入っていると実際に食べてみることができるので、「今度は同じメーカーの他のものも食べてみようかな」と思えるのがいいですね。
【8日目】
日本各地にはご当地うどんが色々ありますが、僕が一番好きなのが五島うどん。今回の「よかとこ便」にも入っていてテンションが上がりました!
このうどんの定番の食べ方が「地獄炊き」と呼ばれるもの。食卓に置かれた鍋にぐらぐらと茹で上がったうどんを直にすくいあげ、溶いた生卵に絡めていただく、シンプル極まりない食べ方です。生卵には醤油や出汁を垂らすとより美味しいですよ。
まずはカセットコンロに鍋をセットし、うどんを茹でます。
ぐつぐつ茹だっているうどんをすくい上げます。我が家ではうどんすくい棒も常備されています。
あつあつのうどんを生卵に浸すといい感じの半熟になり、美味しさが倍増します。
麺が細い五島うどんだからこそ、生卵がよく絡み、いくらでもするすると食べられるのです。気がつくと、一袋あっという間に食べきっていた……なんてことがよくあります。
・・・・
こんな感じで、一週間ほど至福の「五島食材祭り」を開催してきましたが、満足度は非常に高かったです。まだ使っていない食材もありますが、それはまたの機会に。
今回の「よかとこ便」は魚が多めでしたが、魚を減らして野菜を多めにしてもらうことも可能だそう。また、定期便もあるので、一年を通して五島の食材の移り変わりを楽しむこともできますよ。
我が家では早速、3回分の定期便を注文しました!
「島の旬」をいち早くキャッチしてお届け
そんな五島の魅力が詰まった「よかとこ便」は、五島列島は福江島の「GotoChallenged椿」という事業所が販売しています。どんな思いでこのようなサービスを提供しているのか、代表の尾崎さんにメールでお話を伺いました。
──いつからこのようなサービスに取り組んでいるのでしょうか。
尾崎昌子さん(以下敬称略):2019年4月に事業を立ち上げたんです。その後、チラシ作りや梱包する箱の制作を開始、新聞の折り込みチラシで宣伝をしてお試しセットを送るなどしつつ、2カ月後の6月から正式に発送を開始しました。
──「五島よかとこ便」の商品の組み合わせはどのように選んでいるのでしょうか。
尾崎:五島で獲れる鮮魚・野菜・加工品を私たちが厳選しています。
鮮魚は、朝水揚げされたものを漁師さんから直接仕入れ、その日のうちに加工、真空パックにして発送します。
野菜は青果市場や農家さんから直接仕入れた季節(旬)のものを、加工品は私たちが一度食べてみて美味しいと思ったものを入れるようにしていますね。 どれも鮮度命なので、すべてクール便で発送しています。
▲福江島の鬼岳から港を臨む(撮影:筆者)
──複数の生産者さんから食材・食品を集めることは、どんな苦労や難しさがあるのでしょうか。
尾崎:生産者さんの思いが込められた商品を、どのように島外の方に発信していくかは難しいところです。
例えば、野菜や魚をどう食べてもらえば美味しいか、農家さんや漁師さんから情報をいただきますが、それをどのようにお客様に発信していけば、魅力が伝わり注文に繋がるか、悩んだ時もありました。
今は島の旬なものをいち早くお送りすることで、季節の訪れをお客様にお知らせするのがよいのかなと思っています。
──新型コロナウイルスの自粛以降、注文数にはどのような変化がありましたか。
尾崎:今のところ(※4月末時点)、あまり大きな変化はありません。しかし、ご注文いただくお客様によっては「外出できないから取り寄せたい」という依頼は確かにあります。また、「島を離れて暮らす子どもに送りたい」という五島在住の方からも注文をいただきます。
──「よかとこ便」を販売している、GotoChallenged椿についても教えてください。
尾崎: 私の息子には障がいがあります。一般就労での受け入れが困難という理由から、島では障がいのある子どもの働く場が少ないこともあり、自ら雇用する目的で始めました。
事業所名になっている「Challenged(チャレンジド)」とは、“障がいをもつ人”を表す新しい英語です。障がいをマイナスと捉えるのではなく、自分自身や社会のために、ポジティブに活かしていこうという思いを込めて名付け、国境離島新法の雇用機会拡充事業の助成金で事業を立ち上げました。
「よかとこ便」だけでなく、五島の椿油や米粉を使った「椿玉クッキー」などを販売し、今後は障がい者の雇用も増やしていきたいですね。
──島での生活はいかがですか?
尾崎:この福江島を含む五島には課題がたくさんあります。例えば、障がいのある息子が生活していくには、福祉や環境整備も遅れていますし、離島なので医療も十分とは言えません。高齢化・少子化で若い人が少なくなっていることも課題の一つです。
そんな五島ですが、見るところや旅する魅力、美味しいものは本当にたくさんありますし、隣近所とは物々交換するほど仲良しです。私が育ったこの素晴らしい五島を、事業を通してたくさんの方々に発信していきたいと思っています。
尾崎さんが生活されている福江島を始めとした五島の島々は、僕も実際に訪れて感じましたが、間違いなく何度も行きたくなる魅力に溢れています。
そして、「五島よかとこ便」には「今は行けないけれども五島を感じたい」「いつか行くためにせめて美味しいものでも頼みたい」「五島を応援したい」という思いに十分に応えてくれる食材や食品が詰まっているのも確かです。
今回は五島のお取り寄せを取り上げてみましたが、みなさんもこの機会に「いつか行ってみよう」「今度また行きたい」と思っている島々のお取り寄せ、ぜひ試してみてください!
www.goto-challenged-tsubaki.com
書いた人:いづやん
島旅研究家、島旅フォトライター。本業のWeb制作のかたわら、休みのたびに日本の離島を巡り歩いては写真を撮り、ブログを書き、イベントで話したり、同人誌を作って離島の魅力を発信しています。人生初離島は小笠原、一番通っているのは八丈島。
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