大阪で味わう「もんじゃ焼き」。独自進化を遂げたもんじゃに迫る

お好み焼きともんじゃ焼きは似て非なるもの。大阪はお好み焼き文化で、もんじゃ焼きが食べられている印象はあまりない。と思いきや、大阪で独自の進化を遂げたもんじゃ焼きがあるという。早速都島「鉄板dining もら」で実際に味わってみたら、天下の台所の懐の深さを感じるうまさに出合えた。

エリア都島(大阪)

f:id:kimuraosaka:20180404104447j:plain

お好み焼きが根付いている大阪にあって、もんじゃは同じ粉もん&鉄板料理ながらあまり食べられていないように思います。

かくいう私(大阪在住)も、自らすすんでもんじゃを注文することはほとんどないし、友人から「もんじゃ食べに行こう」と誘われたことも記憶にありません。

そういう風にもんじゃに対して、少し距離を置いている大阪の人は多いのでは。

もんじゃとは、そもそも大阪の人の口に合わないものなのでしょうか?

 

実は独自進化を遂げている大阪のもんじゃ

f:id:kimuraosaka:20180404103445j:plain

都島(みやこじま)区にある鉄板焼き「鉄板dining もら」は、大阪のど真ん中にありながら、もんじゃをメインに展開している少し珍しいお店。

 

SNSなどでも「もんじゃがうまい」と評判で、その秘密を探るべくやってきました。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103506j:plain

▲オーナーの松茂良(まつもら)さん

 

── 大阪でもんじゃをメインにするって、かなり挑戦だったのでは?

 

「あ〜でも、うちのは東京で食べるもんじゃとはまた全然違っていて、大阪の人にも受け入れやすいと思いますよ」

 

ほお。

いわば「大阪風もんじゃ」のような感じになっているのか。

百聞は一見に如かず。まずはオーソドックスな「豚もんじゃ(600円)」をオーダーしてみました。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103545j:plain

▲具材はキャベツ、揚げ玉、干しエビ、豚バラ肉といたって普通

 

「もら」では、もんじゃはすべてスタッフさんが焼いてくれるスタイル。食べ慣れていないのでこれはうれしいですね。すべてお任せしましょう。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103632j:plain

アツアツに熱した鉄板の上で、まずは具材だけを焼いていきます。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103650j:plain

具材全体に火を通しながらコテで刻み……

 

f:id:kimuraosaka:20180404103705j:plain

土手を作っていきます。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103728j:plain

土手の中にダシを入れて熱したら

 

f:id:kimuraosaka:20180404103745j:plain

全体を混ぜ合わせて粘り気を出していきます。

ここでダシのいい香りがふわ〜と漂って、食欲がガツン! と刺激されます。

……ハテ、もんじゃって焼くときにこんなにダシの香りがしたかしらん……?

 

完成です!

f:id:kimuraosaka:20180404103814j:plain

▲ここからさらに1〜2分加熱して焦げをつけるべし

 

大阪風もんじゃ」を食べてみよう

f:id:kimuraosaka:20180404103856j:plain

いい感じに焦げ目のついた部分を小さなコテでこそげ取り、焼き付けながらいただきます。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103912j:plain

これは……ダシの味がかなり際立っている。

ダシがまずどっしりとあって、そこにカリッとした焦げ目の香ばしさや、キャベツのとろんとした甘さが変化を加えています。

具材にはとくに変わりがないのにベースのダシが全然違うから、いわゆるもんじゃの味とは、たしかにまったく印象が異なるなあ。

 

東京のもんじゃは、ダシのほかにソースで味付けてるお店が多いと思うんですよ。でもうちのもんじゃはカツオと昆布で取った関西風のダシをベースにしてて、さらにおでんにも使えるようなしっかりした味に仕上げてるんです。だから、もんじゃに抵抗ある大阪の方でも『うまいなぁ』って食べていただけてますね」

 

たしかにこの味は多くの人に好かれると思うし、もんじゃのイメージが覆る。

 

f:id:kimuraosaka:20180404103956j:plain

少し時間が経って鉄板にパリパリと張り付いたもんじゃ。「これもおいしいんですよ」と松茂良さん。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104013j:plain

ああ……本当においしい。

 

半生状態より味が少し濃くなっていて、シャリシャリという小気味よい食感もじつに楽しい。これは酒の肴としてもぴったりですね。

 

大阪風もんじゃ」についての考察

こういったダシを効かせた「大阪風もんじゃ」を提供しているお店は、「もら」のほかにもちらほら見つけることができます。粉もんながら大阪の人になかなか受け入れられなかったもんじゃが、ここへきてぐんと注目を集めているよう。

地元の福井、現住所の大阪、少し前には東京と、3つの都府県を住んできた身として、大阪の料理はダシが効いている、ということは多少なりとも実感しています。

ベースとなるダシにそもそもパンチがあって、醤油などで味付けしなくてもそのままでおいしいから、たこ焼きやうどんなど安くても深みのある料理が多いのだろうと。

 

ダシの歴史を辿ると江戸時代に行き着きます。「天下の台所」と呼ばれ日本全国からおいしいものが集まる中で、昆布が大阪に持ち込まれてダシが誕生。カツオと昆布を組み合わせる「合わせダシ」も生まれ、食文化の発展に大きく貢献しました。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104117j:plain

パンチのあるダシとともに今日まで歩んできた大阪の人にとって、東京の一般的なもんじゃではダシの味が少し物足りないのではないでしょうか。

 

お好み焼き・たこ焼きと同じ粉もんながら、ダシの味で今一歩及ばず「もんじゃは大阪の食べもんじゃない」というイメージに至っているのではないのかと考えます。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104137j:plain

そんな中、大阪の若き料理人がもんじゃの目新しさや面白みに惹かれ、新しい味を模索。パンチのあるダシ文化を取り入れた、大阪の人に受け入れやすい味へと進化させているのではないでしょうか。

 

お好み焼きやたこ焼きと同じように、粉もんとしてもんじゃが大阪の人に認知される日も近いのかもしれませんね。

 

評判の創作もんじゃを食べてみよう

f:id:kimuraosaka:20180404104349j:plain

トッピングによって味がガラリと変化するのももんじゃ焼きの楽しいところ。

「もら」で一番好評の創作もんじゃ「チーズリゾットもんじゃ(750円)」をオーダーしてみました。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104424j:plain

素早い手さばきであっという間に完成。
真っ白な仕上がりがとても新鮮です。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104447j:plain

うまい、うまいよ……!

パンチのある関西ダシに、生クリームとチーズがぎゅーっと包まれている印象。たっぷりかかったブラックペッパーがアクセントとなり、うーん、飽きずに食べられますなこれは。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104505j:plain

グラタンとかドリアって、焼き目のついた部分が抜群においしいじゃないですか。

このもんじゃは、そのカリッと香ばしいところが最初から最後まで楽しめる感じ。たまらぬうまさです。

 

f:id:kimuraosaka:20180404104522j:plain

今でこそ大阪の人に愛されるおいしいもんじゃを作り上げる松茂良さんですが、24歳という若さでお店をオープンさせてからは人知れず苦労を重ねてきたのだそう。大阪でのもんじゃを模索し、一時は食事も喉を通らないほど考えすぎていたことも。

 

けれどもオープンから4年が経ち、お店のファンも右肩上がりに上昇。「ようやく今『うまかったで』って言ってもらえることがうれしい、と感じる余裕ができました」と語る姿は、じつに頼もしいものです。

 

若き才能と大阪ならではの味わいが融合したもんじゃ。百聞は一見に如かず。一度食べてみてはいかがでしょう。きっと驚くと思いますよ!

 

お店情報

鉄板dining もら

住所:大阪大阪市都島区都島北通1-1-12
電話番号: 06-6928-5566
営業時間:18:00〜24:00
定休日:水曜日 ※2018年6/1〜は水曜日・第2火曜日定休予定

www.hotpepper.jp

 

書いた人:木村桂子

ケメコ

福井県出身、大阪府在住。某エンタメ系企業にて雑誌編集に携わり、その後コピーライターを経てフリーランスに。大衆居酒屋から小洒落たカフェまで、うまいと聞けばどこへでも突入。ゆえに体重増量中。

過去記事も読む

トップに戻る