料理は人柄が表れる。調理だけではなく、準備や後片付けも含めて、キッチンでの立ち振る舞いが異性のハートを掴んだりするのである。
そこに着目した婚活料理教室が全国的に大盛況らしい。しかし、具体的にそこで何が行われているのか、どんなタイプの人が参加しているのかはあまり知られていない。
あえて調理工程の多いメニューを
名古屋市南区にある「名古屋クッキングスクール」は、9年前から婚活料理教室を開催している、いわば先駆け的な存在。
スクールを主宰する料理研究家の杉浦友祐さん(写真下)に、婚活料理教室についてアレコレ聞いてみた。
───そもそも、婚活料理教室をはじめようと思ったきっかけは何だったんですか?
杉浦さん(以下敬称略):当時、私の周りで婚活をしている人が多かったんですよ。東京では婚活料理教室が盛りあがっているということも耳にしていたので、じゃあウチでもやってみようかと。これまで約100回ほど開催してきましたが、報告があっただけで100組以上はゴールインしています。ちなみに参加費は、男性が7,000円、女性が4,800円です。
───それはスゴイ! 婚活料理教室は、どんな流れで行われているんでしょう?
杉浦:まず、事前に名前と年齢、血液型、職業、趣味・特技、自己PRなどプロフィールを用紙に記入してもらいます。女性と男性、双方に用紙を渡します。それをもとに自己紹介してもらった後、その日に作る料理の説明をします。その後、くじ引きでグループ分けをして、調理をはじめます。
───具体的にはどんな料理を?
杉浦:もともとウチはフレンチやイタリアンのような華やかなメニューではなく、家庭料理が中心なんです。協力し合って調理できるように、餃子や春巻き、唐揚げ、ポテトサラダなど調理工程の多いものになりますね。料理が完成したら、他のグループの参加者とも話ができるように立食で食事をしてもらいます。参加された方が作った料理以外にあらかじめ私とスタッフが作った料理を12、13品出しますから、まさに婚活パーティーですね。
モテる人、モテない人の共通点とは
───やはり、お互いを知るには料理は効果的なんでしょうか?
杉浦:共同作業ですし、作りながら好きな料理の話題になったりしますから、ある程度の距離感は縮まるのではないかと。それに、料理を作っている参加者の暮らしぶりもなんとなくイメージできますよね。包丁を持ったことがない人が参加されることもありますが、食器を準備したり、皿を洗ったりと、調理以外にもやることはたくさんありますから。
───料理ができないからモテない、というわけではないんですね。
杉浦:それは間違いありません。片付けながら次の作業を準備したりと、手際の良い人は好感度も上がりますね。逆にマイナスなのは、何でもやりっぱなしの人。それと「自分は何もできないから」と言って、ただ見ているだけの人。
───どんなタイプの男女が参加されるんでしょうか?
杉浦:女性の場合、婚活なんてしなくてもモテるのでは? と思う方が多いです。一方、男性は……恋愛経験の少ない人になりますね。奥手だったり、端っから女性に興味がなくて親や親戚に勧められて参加するケースもあります。
実際に成婚したカップルに話を聞いてみた
杉浦:実は私、調理の指導以外に男性と女性の間を取り持つ、いわばキューピット役でもあるんです。今日、ウチの婚活料理教室が縁となって結婚したカップルに来てもらったんです。せっかくなので、経験者にお話を聞いてみませんか?
そんなわけで、ご登場いただいたのはひと組のご夫妻。
佐々木隆行さん(44歳)、亜澄さん(36歳)夫妻が参加したのは2010年8月。半年後に隆行さんがプロポーズして、婚活料理教室から1年後に結婚した。
話を聞いてみると、妻の亜澄さんは会社帰りにここの前を通りかかって、ネットで検索。婚活料理教室のことを知り、参加することにした。
一方、夫の隆行さんは2回目の参加。前回は気になった女性に声もかけられず、自信を失っていて参加する気はなかった。
ところが。
隆行さん:もともと先輩の勧めで参加したのですが、その先輩に「絶対に行った方がいい!」と説得されて……。どちらかというと、仕方なく参加しました。
ちなみに隆行さんは今も昔も料理はチャーハンや焼そばくらいしか作れないという。
杉浦さんも当時を振り返る。
杉浦:いやぁ、隆行さんと初めて会ったときのことは私、一生忘れませんよ。何しろ、約10年前とはいえ、ケミカルウォッシュのジーパンとヨレヨレのTシャツ姿で来たんですから。もうちょっと何とかしてくださよ、って思いましたもん(笑)。
「できない」なりに協力する姿勢が◎
婚活クッキング中、隆行さんは違うグループにいた亜澄さんに一目惚れ。立食での会食時に勇気を振り絞って声をかけた。そして、杉浦さんの好アシストでお互いに連絡先を交換することができた。
隆行さんに対する亜澄さんの第一印象はどうだったのか。
亜澄さん:悪くはなかったですよ。ただ、同じグループに気になる人がいましたし、私に好意を持ってくださる方もいましたから。
隆行さんは杉浦さんに相談しながら、積極的に亜澄さんへアプローチ。杉浦さんも親身になってアドバイスをした。
杉浦:まずは外見から変えようと思い、洋服を買いに連れて行ったり、美容院にも付き合いましたよ。もう、完全に料理研究家の仕事から逸脱していました(笑)。だから結婚を前提に付き合うことになったと報告を受けたときは本当に嬉しかったですよ。
当時、亜澄さんは一人暮らし。いつか好きな人と一緒に買い物へ行き、一緒に料理を作るような生活ができたらと思っていた。
隆行さんと付き合い始めてまだ間もない頃にそれは現実のものとなった。ただし前述したとおり、隆行さんが作れるのはチャーハンや焼きそばくらい。亜澄さん、大丈夫だったんですか?
亜澄さん:それが……。夫は料理が全然できなかったんですよ。でも、できないなりに協力してくれたのが嬉しかったですね。そのおかげでお互いの距離は縮まったと思います。
その後、めでたく2人は結婚へ。現在は2人の子供にも恵まれ、幸せに暮らしている。
ううむ。やはり、料理のできる/できないは関係なく、料理を作る中での気配りが最も重要なのだ。
真剣に結婚を考えている人にとって、婚活料理教室はかなり期待ができるのではないだろうか。
店舗情報
名古屋クッキングスクール
住所:愛知県名古屋市南区駈上1-11-29 新瑞南ビル1階
電話:052-693-5758
営業時間:11:30頃~19:00頃
定休日:要問い合わせ
※婚活料理教室は、8月24日(土)17:00~21:00(20代~30代の男女限定)、9月7日(土)17:00~21:00(30代~40代の男女限定)に開催予定。以降は要問い合わせ
書いた人:永谷正樹
名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。