こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。本日ご紹介するのは、寒さの厳しい今の時期にはピッタリ! ひと口食べれば体がポカポカ、香味野菜とうま味たっぷりのスープがおいしいタイのおかゆ「カオトム」です。
タイといえば、意外にもおかゆのおいしさでも知られる国。その中でもさらっとした口当たりがおいしい、日本の雑炊にも似た食感の「カオトム」を作ってみたいと思います。
肉や魚介、卵など、さまざまな具材で楽しむことができますが、そのおいしさをギュッとひと皿に詰め込み、しかも冷やご飯で手軽に作る方法をご紹介します。
ポイントは、スープをいかにうま味たっぷりに仕上げるか。長時間煮込まなくてもいいよう、身近にある食べものを隠し味として使っていきます。
それでは、材料をそろえて10分煮込むだけで完成する絶品のカオトム、ぜひ作ってみてくださいね!
冷やご飯で作る、タイのおかゆ「カオトム」
【材料(1人分)】
- 冷やご飯……180g
- 豚ひき肉……50g
- 卵……1個
- ナンプラー(仕上げ用)……小さじ1/2
[スープ用]
- 水……400ml
- 鶏ガラスープの素(顆粒)……小さじ1
- さきいか……5g
- にんにく(あらみじん切り)……小さじ1
- しょうが(皮付きのままあらみじん切り)……小さじ1
[豚ひき肉の下味用]
- ナンプラー……小さじ1
- パクチーの茎や根の部分(香菜)……小さじ1~お好みの量
- 塩……少々
- こしょう(あればホワイトペッパー)……少々
[トッピング用]
- パクチーの葉の部分(香菜)……適量
- しょうが(皮をむいて針しょうがにしたもの)……適量
- 小ねぎ……適量
- フライドオニオン……適宜(なくてもよい)
- こしょう(あればホワイトペッパー)……お好みの分量
※スープや下味、トッピングなど複数の用途で使うため、しょうがは合わせて1~2片、パクチーは1~2本程度ご用意ください。
味の決め手はこれ!
さて、味の決め手となるのは、なんといってもうま味がたっぷりのスープ。ベースとなる鶏ガラスープの素に、ナンプラー。そして、パンチのあるにんにくとしょうがを効果的に使って食欲をそそる味に仕上げます。
そしてもう一つ、大事な仕事をしてくれるのが、こちらの「さきいか」。おつまみ用として売られている、おなじみのあれで大丈夫です。
本来はお米を長時間煮込んで作るカオトムですが、今回は冷やご飯をさっと煮るだけにしますので、このさきいかが持つ魚介の甘みとうま味が最高のだしになってくれます。
そしてもう一つ、カオトムの仕上げに欠かせないのが、こしょう。ラーメンなどに使うテーブルこしょうなど家にあるものでかまいませんが、ホワイトペッパーがあると一気に本格感が増します!
タイでもよく使われるホワイトペッパーは、ブラックペッパーに比べると風味がやわらかく、それでいて後からじんわりと広がる辛みと香り高さがあります。熱々のおかゆにたっぷり振りかけて食べると相性が抜群です。色味も白いので、おかゆの美しさも際立ちますよ。
作り方A 香味野菜を準備する
さて、それではいよいよ作っていきましょう。
一番のポイントと言っても過言ではない、香味野菜の切り方から。
まずは、スープ用のにんにくとしょうが。こちらは、食べた時に食感が残るように、あえて大きめのあらみじん切りにするのがポイントです(しょうがは、風味を残すため皮付きのままでOK)。
次に、トッピング用のしょうが。こちらは、スプーンなどを使って皮をこそげとり、薄切りにしてから「針しょうが(極細の千切り)」に。水にさらしてギュッとしぼっておきます。
そして、残りの香味野菜も上の写真のように切っておきます。
まずパクチーは、豚ひき肉の下味用は茎や根を刻みます(写真③)。トッピング用は、葉の部分だけ摘み取っておきます(写真④)。
そしてトッピング用の小ねぎは、小口切りにします(写真⑤)。
ちなみにパクチーは、上の写真のような根っこ部分も食べることができます。よく洗って汚れを取り、刻んでスープや肉の臭み消しなどに使うと無駄がありませんのでぜひご活用くださいね。
作り方B 豚ひき肉に味をつける
さて、次は豚ひき肉です。タイ料理の一つの特徴ですが、こちらはあらかじめ下味をもみ込んでから煮ていきます。
もみ込むのは、豚ひき肉の下味用のナンプラーと、③パクチー、塩、こしょう。
濃厚な魚介のうま味を持つナンプラーが豚ひき肉のうま味を引き立て、さらにパクチーやこしょうの効果で、肉のクセがうまく消されます。これによって、スープに直接豚ひき肉を入れて煮ても臭みが出ず、おいしいスープができますよ!
作り方C スープで煮る
さあ、ここまで準備ができたら、あとはもう煮るだけです。
小鍋にスープ用の材料(水400ml、鶏ガラスープの素小さじ1、さきいか5g、①しょうが、②にんにく各小さじ1)を入れて火にかけます。
煮立ったら、下味をつけた豚ひき肉を投入。軽くほぐして、アクを取ります。
豚ひき肉に火が通ったら、仕上げ用のナンプラーで味を調えて、
冷やご飯を入れてほぐしましょう。
再び煮立ったら卵を入れます!
上からおたまでご飯をかけて、卵を蒸し煮状態にします。
お好みの加減で卵に火が通ったら、できあがり。器によそいます。
トッピング用の④パクチー、⑤小ねぎ、⑥しょうが、それにお好みでフライドオニオンをのせます。そして仕上げに、お好みの分量のこしょうを(たっぷりと振りかけるのがおすすめです)。
うま味いっぱいの魚介の香りに、たっぷりの香味野菜。なんともたまりません!
パンチのあるこしょうの香りが、猛烈に食欲をかき立てます。
レンゲをそっと沈めると、中から卵も登場。
早速、くずしながらいただいてみましょう。熱々を、ハフハフしながらいただきます!
食べた途端、口の中に広がる魚介の甘みと濃厚なうま味。このパンチは、やはりナンプラーならではですね! さらに隠し味のさきいかの風味が、全体をふんわりと包み込んでめちゃくちゃいい仕事をしてくれています。
豚ひき肉は臭みもなく、しかもナンプラーによってさらにうま味が増幅されているようです。それがご飯に絡み、味わい深いスープと一体となって、これはもう食べる手が止まりません……!
いわゆる「おかゆ」というと、ご飯が主体で味も一辺倒になりがちなため、食べている間に飽きてしまうイメージがあるかもしれません。でも、このカオトムは違います。
ご飯だけでなく、スープの中のほろほろとしたひき肉と、トッピングのシャキシャキしたしょうがとパクチーの食感。しょうがはじんわりと辛く、やわらかく煮えたにんにくのコクとパクチーの鮮烈な香りが鼻をくすぐり、もうひと口、もうひと口と手が伸びるんです。
そして極めつけは、たっぷりのこしょう。しびれるような辛さがじんわりと広がり、食べ終わった後は、体がもうポカポカ!
五感を刺激するうま味と香り
おかゆよりもボリュームがあり、ごちそう感も満載のタイのおかゆ「カオトム」。しっかりしたうま味と五感を刺激する香味野菜の食感・風味は、寒さで縮こまりがちな体を目覚めさせるのにもまさにピッタリです。
朝・昼・晩と、いつ作ってもおいしくいただけますので、ぜひこの冬お試しください!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。