こんにちは! 料理・食文化研究家の庭乃桃です。
『メシ通』でもよく登場する食材、鶏肉。2022年・2023年と、日本全国の県庁所在地と政令指定都市別ランキングで、鶏肉の購入量と支出額が最も多かった場所をご存じでしょうか。
それは大分市! たしかに、からあげやとり天など鶏肉を使う名物料理で知られていますよね。今回ご紹介するのは、そんな大分で愛される郷土料理「吉野の鶏めし」です。
もともとは大分県南東部の吉野地区の猟師めしから始まった家庭料理だといわれていますが、それが広まり、今では大分各地で親しまれています。
地域や家庭によって具が違ったり、炊き込みや混ぜ込みなど作り方も異なったりしますが、今回はシンプルかつ味も決まりやすい、混ぜ込みで作っていきます。
また、アレンジとしてにんにく入りバージョンもご紹介します。
具は冷凍して作り置きもできるので、解凍して温かいご飯に混ぜればいつでもおいしい鶏めしがいただけますよ。それでは作っていきましょう!
「吉野の鶏めし」
材料(4人分)
- 米……2合
- 鶏もも肉……1枚(350g)
- ごぼう……1/2~1本(150g)
- 砂糖……大さじ3
- しょうゆ……大さじ4
- 酒……大さじ3
※ごぼうは、普通サイズなら1本、太めなら1/2本を目安に。
※にんにくを加える場合は、1/2片分のすりおろし(小さじ1/2程度)をご用意ください。
鶏めし用ご飯の炊き方
具を作る前に、まずはご飯を炊いておきます。
鶏めしに使うご飯は、具材(鶏もも肉とごぼう)を煮た汁ごと混ぜ込んで味を付けるので、やや硬めに炊くのがおすすめ。水(分量外)はいつもより気持ち少なめに。
鶏めしの具を作る① 具材を切る
皮と身に分けたら、それぞれに黄色い余分な脂や血などがあれば取り除きましょう。ここで丁寧な処理をすることで、クチにしたときの食味が変わってきます。
外した鶏皮は食べやすい大きさに切ります。包丁だと切りにくい場合は、キッチンばさみを使うと楽です。
続いて、身の部分もカット。鶏もも肉は煮ると縮むので、2cm角くらいに切っておきます。
ごぼうを切ります。ごぼうは皮の部分が一番香りが強いので、皮はむかずに使います。流水にさらしながら、たわしなどで軽くこすって表面の泥だけを落としたら、ささがきに。ごぼうが太い場合は縦に数カ所切り込みを入れてから、ささがきにしていきます。ピーラーなどを使ってもOKです。
ごぼうをすべて切り終えたら、水にさっとさらしてアクを流します。ごぼうの色もおいしさのうちなので、酢水に浸けたり、長く水にさらす必要はありません。水にくぐらせたらザルなどにあげて、しっかり水気を切りましょう。
鶏めしの具を作る② 具材を煮る
油は使わずに、鶏皮から出た脂で具材を炒めます。それが、素朴ながら後引く味わいに仕上がるおいしさの秘密! まず、フライパンか鍋に鶏皮を入れて中火にかけ、しばらく脂が出てくるまで焼いていきます。
中火で2~3分、時々ヘラや菜箸などで突きながら鶏皮を焼いていくと、脂がじわじわと出てきて表面がカリッときつね色になります。こんな状態になったら、もう鶏臭さも消えています。
次に、鶏もも肉の身を入れましょう。
にんにくを入れたい場合には、ここで加えて一緒に炒めます。
にんにくを加えると、いっそう食欲をそそる味わいに。具の作り置きをする場合には、味が落ちにくくなるメリットもあります。
鶏もも肉を炒めていき、表面が白っぽく色づいてきたら、水気を切ったごぼうを加えます。
ごぼうと鶏もも肉を優しく炒め合わせます。
火加減はずっと中火のままですが、ごぼうには鶏肉の脂を、鶏もも肉にはごぼうの香りや風味をしっかり含ませるイメージで炒めます。
ごぼうがややしんなりとしてきたら、砂糖を加えます。
ここから先は、砂糖→しょうゆ→酒の順に調味料を加えていき、その都度なじませながら炒め煮にしていきます。こうすることで、調味料それぞれの味が立ち、ふっくらとおいしい具ができます。
砂糖が全体になじんだら、しょうゆを加えて、
しょうゆが全体にまわったら、最後に酒。
アルコールがしっかりと飛ぶように、2~3分そのまま炒め煮にして、煮汁が写真のように、ヘラで底をこすったときにゆっくり戻る程度まで煮詰めます。
具ができました。できたての鶏もも肉を菜箸でつまんでみると、プリッとしていておいしそう!
鶏めしの仕上げ
それでは炊きあがったご飯に、具を混ぜ込んでいきましょう。
作ってすぐ食べても良いのですが、ここでおいしく仕上げるコツをご紹介。できれば具を混ぜ込んだ後、30分ほど保温状態で蒸らしてあげると、よりいっそう美味!
30分ほど蒸らしたものがこちら。米ひと粒ひと粒に鶏皮から出た脂がまわり、なんともつややか! 米と鶏もも肉とごぼうが、まさに一体となっています。
鶏もも肉のおいしさに酔いしれる
早速、いただいてみます。すでに香りがとびきりのごちそう! といった感じですが、お味はどうでしょうか。まずは、ごくごくシンプルなにんにく無しのものから。
ひと口食べれば鼻に抜けるごぼうの香り。プリッとした、かむほどにうま味があふれる鶏もも肉! そして、甘辛いしょうゆベースの味わいがなんとも郷愁を誘います。
シンプル過ぎて少し物足りない? と思いきや、まったくそんなことはありません! むしろ、この食材と調味料だけでどうしてこんなにおいしいのか驚くほど。
そして、こちらはにんにく入りバージョン。
見た目は変わりませんが、食べてみるとふんわりとにんにくの食欲そそる香り! 普通の鶏めしよりも少しだけパンチのある、そんなにんにく入りバージョンは……
こんな禁断の食べ方もおすすめ。卵黄のっけです。
おにぎりの作り方・具の保存方法
最後に、鶏めしをおにぎりにするときのコツと、具の保存方法をご紹介。まずおにぎりは、熱々の状態で握ろうとすると脂や具が邪魔をしてぽろぽろ崩れがち。なので、鶏めしのあら熱がとれてから、しっかり強めに握りましょう。手がベタつくので、ラップで包むとやりやすいですよ。
鶏めしのおにぎりは、冷めても美味。ほろりと崩れて、いくつでも食べられそう。
具は冷蔵で3日、冷凍で1カ月程度保存可能です。冷凍する場合は食品用フリーザーバッグに入れて空気を抜き、十分に冷まして冷凍庫に入れます。食べるときは解凍して、温かいご飯に混ぜれば、いつでも鶏めしが楽しめます。
まとめ
大分で愛される「吉野の鶏めし」の作り方をご紹介しました。家庭の数だけレシピがあるといわれる定番のメニューですが、とても作りやすいので試してみてくださいね!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。