※この記事は感染対策を行なったうえで取材したものです。
このいい感じのテーブル、近所のカフェで買いました(実話)
「二刀流のお店」に惹かれます。
もちろんひとつの業態を追求するお店も素敵ですが、複数の業態をこなすかっこよさもありますよね……と、いきなり語り始めてすいません。
『メシ通』ではこれまで町中華の記事などを書いてきました、ライターの半澤です。
今回はそんな二刀流のお店の中でも圧倒的に変わり種、「家具」×「カフェ」という業態で勝負しているお店をご紹介します。 ※2022年12月29日をもってカフェ営業は終了。今後は不定期でテイクアウト営業予定。
近所にある「家具カフェ」です。
誰がカフェで家具なんて買うの? と思っていたら、まさか自分が買うことに。
そして実際に買ってみたら、生活がガチで変貌しQOL(クオリティオブライフ)が爆上がりしてしまったというお話です!
木村兄弟のお店だからwood good brothers
こちらは東京都杉並区の荻窪駅南口にある「家具カフェ wood good brothers」。ウッドでグッドでブラザーズ、その名前の由来は「木村」兄弟がやってらっしゃるから。
この2人、本当にグッドな兄弟なのですよ。
兄、雄太さんは学生時代、一人暮らしを始めた時に、自分の好きな家具を選ぶことの喜びを感じ、家具業界へ。
5年半にわたり店舗スタッフやバイヤーとして活躍。家具愛とインテリアの知識がハンパない方です。
こちら弟の雄麻さん。若い頃からカフェで腕を磨き、兄とともに独立。
カフェメニューはもちろんスイーツにも着手し、今では100を超えるというメニューすべてを手がけています!
僕はお店の近所に住んでいるということもあり、何度かお邪魔してコーヒーを飲んだり、料理をいただいたりしていました。
駅近にも関わらず静かで、仕事もバリバリはかどるいいお店です。
アボカド丼をいただいたその日、突如家具の話に
▲お店の名物、サーモンアボカド丼(ランチ時は1,230円/ドリンク・サラダ付き。ディナー時は単品で1,050円)
これぞカフェメニューという一品です。わさびとごま油のハーモニーがたまりません。
ことの発端は、まさにこちらをいただいていた日のことでした。
雄麻さん:こちらは今、ランチで一番推しているメニューなんですよ。アボカドは一部形を残してマッシュ、サーモンはスモークしているんです。
──なるほど、サーモンのこの香ばしさは燻製にしたからなんですね。アボカドのホクホク感と、うま味が凝縮されたサーモンが感動的に合いますね!
雄麻さん:多くのお客様からご好評をいただいていますね。和風の仕上がりで、気に入ってもらっています。
雄麻さんの作る料理はいずれも、どの年代の人もおいしくいただけるのが特徴。店頭ではスイーツのテイクアウトもあり、こちらも評判なんです。
なるほどね、細かな工夫を凝らしたサーモンアボカド丼も繊細でおいしいわけだわ。
これは好きになってしまう人が多いはず!
と、ランチを満喫していたところ、目の前に「家具お探しシート」なるものを発見。
──これはいったいなんですか?
雄麻さん:あ、半澤さん、ご存知なかったんでしたっけ。うちは家具も購入できるカフェなんですよ。
──いやいや、「家具カフェ」と名乗ってらっしゃるのは以前から知っていましたよ。
こちらがwood good brothersの店内。品のいい素敵な家具が並んでいます。
さらに驚くことに、店内のイスやテーブルなどインテリアにすべて値札が付いているんです。そう、つねに売り物の中で食事をしているというとんでもない状況なのですよ。
面白い!
天井を見上げると、おしゃれな照明が。こちらはお値段4万円超え。都会的でセンスのいいデザインです。
思わず目を奪われてしまうフェイクグリーンの数々。こちらもただの飾りではなく、売り物なのです。値札が付いているのは知っていたけど、そもそも疑問が……。
──あの、失礼を承知でうかがいますが、本当にここで家具を買う人はいるんでしょうか?
雄太さん:それがいらっしゃるんですよ。おかげさまで年々家具の売り上げは上がってますね。カフェというハードルの低い業態のせいか、気軽に家具が買える良さもあるんだと思います。
──そうなんですね! たしかにカフェだから、普通にコーヒーを飲むだけでもいいですし。
雄麻さん:家具屋さんに入る時に感じる、心のハードルをちょっと下げられるのかもしれませんね。それと、家具について相談できる場所って意外とないですよね。家具の知識を持っている人がたまたまカフェにいた、くらいで考えていただけるとうれしいですね。
──wood good brothersのように家具を売っているカフェってほかにはあるんでしょうか?
雄太さん:あるとは思いますが、うちのようにカフェを主体にした家具屋さんというのはほぼほぼないと思います。
──たしかにあまり聞いたことないですね。
雄太さん:もう5年目を迎えているので、自分たちでは当たり前だと感じているのですが、いわゆる家具屋さんからしたら、なんて面倒くさいことをやっているんだって思うかもしれませんね。
──いやあ、実際にそうですよ。2つの業態を同時にやってらっしゃるわけだから。
雄麻さん:たしかにそうですね。でも兄もちゃんと料理を出しますよ。仕込むのは全部僕なんですが(笑)。
この素敵な兄弟の姿を眺めているうちに、僕の心の中にこんな感情が芽吹きました。そうだ、家具を買おう……。
──ちょっと今度、本当に家具の相談しにきていいですか?
雄太さん:もちろんです。ぜひ、相談だけでもいいのでいらしてください!
家具カフェで自宅のリビングテーブルについて相談
そうだ、家具を買おう……。
その気持ちを生み出した原因はリビングテーブルへの不満でした。リビング兼事務所の真ん中に置いているのですが、そろそろ買い替えかなあ。かれこれ4年くらい使っていますが、不便さも感じていました。
一部ガラスになっているのがおしゃれと思って買ったのですが、使ってみるとそうでもなく(涙)、もっと収納力があって、しっかりしたテーブルがほしいと思っていたのです。
ということで、wood good brothersを再訪。家具の相談にのっていただきます。
▲店内には家具の資料コーナーが
──(実際の部屋の写真を見せながら)今のテーブルがこんな感じなのですが、もっと大きくて立派なものがほしいんですよね。このテーブル、たしか1万円弱くらいでネットでなんとなく買ったものでして。
雄太さん:写真を見せていただきありがとうございます。そうですね、まずイスの座面の高さと合っていないように思います。
──と言いますと?
雄太さん:座面の高さプラス30cm前後というのがテーブルのベストの高さと言われているんです。座り心地が良くてイスとの関係性が良くなるんですよね。
──そう考えると、今のテーブルは低すぎますね。そういえば、なんだかくつろげない感じがありました。テーブルそのものというよりは、イスとの高さの関係なんですね。
雄太さん:そうですね。高さというのも大きいと思います。
──また、せっかく買うのなら、もうちょっと見栄えがする大きいものが良いと思っています。
雄太さん:だいたい状況がわかりました。ちょっと一緒にいろいろ見ていきましょう。
そう言うと雄太さんはたくさんある家具のカタログの中から1冊を取り、ページをめくり始めました。
──リビングテーブルといってもこんなにいっぱいあるんですね。全部日本のメーカーですか?
雄太さん:そうです。今は50社ほどとお付き合いがあるんです。前職でバイヤーをやっていた頃は、300社くらいと取引していたんですよ。
──家具メーカーって一般の人はあまり知識がないから、こうやって家具について知っているプロの人に相談できるだけでとても助かりますね。
そして、ああじゃないこうじゃないとやり取りを経て10分後……。
雄太さん:半澤さん、ついに見つけました! こちらのテーブルはどうでしょう。
──どんなテーブルでしょう?
雄太さん:こちらは関家具というメーカーのもので、リビングでの利便性を追求したコーヒーテーブルです。高さが45cm。イスの座面からぴったり30cmというわけではないですが、今お使いになっているイスとの距離感も良い気がしますよ。
ご提案いただいたのは、ホワイトオーク材と黒いスチールの組み合わせがなんともおしゃんなテーブルでした。
──なるほど、実は自宅でオンライン打ち合わせなんかをやる際にノートパソコンを使うので、もっと高い位置にモニターがあったらいいなと思っていたんです。
雄太さん:そうなんですよ、収納の容量も大きいですし。今の半分ガラスになっているテーブルよりも、使い勝手は向上すると思いますよ。高さもちょうど良さそうです。ちょっとコーヒーを飲むだけでなく、パソコンで作業をする場所としてもぴったりだと思いますよ。
──いやあ、ドンピシャな提案をありがとうございます。もう決めてしまおうかなと思いながらも、とはいえ気になるのは質感です。やはり現物を見ないことにはなあ。家具って、色や触り心地も大事じゃないですか。
雄太さん:木の質感だったら、今すぐチェックできますよ。
──どういうことですか?
雄太さん:ちょっと待ってください。
店内で木の質感をチェック
そういうと、雄太さんはある箱を取り出しました。え、何ですかそれ?
雄太さん:このテーブルの木ならサンプルがありますよ。
──マジですか。なんつうか、めっちゃ本格的ですね。
雄太さん:色もこんな感じですね。
スゴい! まさかカフェで家具の雰囲気までわかるとは。
この時にはもう僕の心は決まっていました。買う、買う! えっ、6万円? それなら予算内です。これはもう、買っちゃいます!
雄太さん:半澤さん、まあ落ち着いてください。注意点があります。こちらの木材は水のシミが残りやすい材質なので注意が必要です。
──なるほど、それはちょっと困りますね。
雄太さん:それでも、ラッカーかウレタンのクリアスプレーを半年に1回ほど塗ってあげれば水にも負けません。そして乾燥後に1000番手以上のサンドペーパー(※)で塗布面を滑らかにしてあげるのもおすすめです。
(※)サンドペーパーの表面の目の粗さは番手といわれ「#」を付けた数字で表される。粗目で#40~#100、中目で#120~#240、細目で#280~#800、極細目で#1000~となり、金属面や木目の仕上げには極細目を使用することが多い。
──なるほど、それならすぐできそうなので挑戦してみようかなあ。
雄太さん:あともう1点。スチールの脚が全面に付いています。なので足の小指をぶつけると痛いので気を付けてください(笑)。
──おすすめしながらも、しっかり注意点を教えてくださるとは真摯すぎませんか(涙)。
リビングテーブルを新調したら、あきらかにQOLが向上した
後日、大きな買い物にヒヨッた僕は、雄太さんに実際にテーブルを展示しているお店を教えてもらい、実物をチェックに出かけました。
そして、実物を見たうえで納得して購入しました。ここからはひたすら自慢話です。ご了承ください。
これが購入したテーブル。大きくて立派です。
不惑を間近にして、やっと大人の仲間入りをした気分です。一人暮らしを始めて約20年、こんなしっかりした家具を買ったの初めてかも。6万円という出費は、カフェで使ったお金としては史上最高額です(ちなみにwood good brothersの店頭でカード決済しました)。
木の質感はお店で教えてもらっていたけれど、実物はやはり渋めでうれしいです。
そして、ご覧ください。こんな感じでテーブルが斜めに上がるのですよ。
これでオンライン打ち合わせもパソコン作業も快適になりました。使えるスペースも広く、このテーブルで仕事をすることが圧倒的に増えています。
収納力も抜群で、テーブルの下には置き場に困っていたLPがたっぷり収まりました。
これはうれしいなあ。見る度にほれぼれする美しさと、実用性の高さを兼ね備えています。おかげでQOLがだいぶ高まりましたね。
前と比べるとテーブルは大きくなったものの、ご覧のように周囲はスッキリ。
せっかくなのでこの機会にテレビ台も排してスピーカー類も新調、リビングの暮らしやすさそのものが激変したように感じます。
雄太さんに教えていただいたとおり、イスの座面からプラス30cm前後を目指した結果、くつろぎやすさもアップしましたね。本当にありがとう、wood good brothers!
家具は人生の中でも大きな買い物
ということで、後日僕は素敵な家具を購入させてもらったお礼を言いにwood good brothersへ向かいました。
夜だったということもあり、ビールをいただきます。
こちらのお店はクラフトビール(700円)も定番メニュー。つねに4種類のクラフトビールがあり、ビール好きも満足できます。
▲この日は「色とりどりのたっぷりサラダ(レギュラーサイズ 970円)」をいただきました
雄麻さん:このドレッシングはなかなか好評で、買って帰りたいという人も多いんですよ。
──めっちゃわかります!
雄麻さん:でも、添加物を入れていないから日持ちしないので売っていないんです。にんじんをすりおろして作っているんです。
──そうか、この風味はにんじんなんですね、やさしい甘みと酸味が野菜を引き立てて、延々と食べられますね。そうそう、おかげさまでテーブルが届きました。
雄太さん:それは良かったです。実際にお使いになってみていかがでしょうか。
──おかげさまで最高の使い心地です。仕事のパソコン作業もはかどりますし、収納スペースも増えて周囲もスッキリしました
雄太さん:家具は人生でも大きな買い物のひとつかと思います。日々活躍しているとうかがうと、家具屋冥利(みょうり)に尽きますね!
──いやあ、本当に感謝ですね。いただいたアドバイスの数々は、さすが家具の専門家と感動しました。家具カフェというコンセプトも面白いですが、そもそも兄弟で仲良くお店を営業するって大変じゃないですか。
雄麻さん:逆に兄弟じゃないとできない部分はありますね。兄弟だからガマンせず、伝えたいことをちゃんと伝えられるというのは大きいです。
雄太さん:日々の連携でも、あうんの呼吸みたいなところはあるかもしれませんね。あとは家の行事で休みやすいのがいいよね。
雄麻さん:たしかにそれはある。家族の行事は重なるから、その意味では休みを取りやすいですね(笑)。
──それは素敵です。今後もお世話になります!
今回、実際に家具を購入してみてわかりました。
家具カフェはおいしい料理と素敵な時間を提供する飲食店でありながら、豊かな暮らしまで提案してくれるコンサルサービスでもあるのです。今後も注目したい、まさに新しい業態ですね。
次に高級家具を買うのは、結婚する時かなあ(そんな予定はありませんが)。
その時はまたよろしく頼むぜ、木村兄弟!
※この記事は感染対策を行なったうえで取材したものです。
お店情報
荻窪 家具カフェ wood good brothers (ウッド グッド ブラザーズ)※2022年12月29日をもってカフェ営業は終了。今後は不定期でテイクアウト営業予定。
住所:東京都杉並区荻窪5-16-20 SNビル1F
電話番号:03-6279-9748
www.facebook.com
書いた人:半澤則吉
1983年福島県生まれ。2003年大学入学を期に上京。以来14年に渡りながく一人暮らしを続けている。そのため自炊も好きで、会社員時代はお弁当を作り出勤していた。2013年よりフリーライターとして独立。『散歩の達人』(交通新聞社)にて「町中華探検隊がゆく!」を連載するなどグルメ取材も多い。朝ドラが好き。