こんにちは、東京ソバット団の本橋です。
今回は「立ち食いそば界の新星」と、一部で話題になっているお店を紹介しますよ。
ここのところ飲食業界では原材料費や人件費の高騰で、個人経営のお店は苦労しているところが多いんですよ。
そんななか、なんと飲食店の経験がゼロだったにもかかわらず、立ち食いそば店を始めて着実にファンを増やしているお店があるのです。
場所は日本橋小伝馬町。メトロの駅を出るとすぐという好立地。
この「田そば」というお店がそれです。
この「田そば」がオープンしたのは2015年の春なんですが、その1年後の2016年の春から半年以上も病気のため休業してしまい、同年の10月に再開。
苦境にも負けず進化し続ける味が、評判となっているんです。
評判の立ちそば店の魅力に迫る
店内は立ち食いカウンターのみ。
すぐそばには、チェーンの「小諸そば 小伝馬町店」があって、日本橋本町方面に少し行くと、やはり名店の「おか田」があるんですが、それでも昼どきにはお客さんでギュウギュウ。
さて、とりあえず駆けつけ一杯、いただきましょうか。
立ち食いそば店には珍しい、花巻そば(バラのり・400円)を。
こちらはそば、ツユ、天ぷらともにクオリティーが高いんですが、なんといってもツユがすごくて、鹿児島産の本枯節を使うというぜいたく仕様。
カツオの香りうま味が抜群なんですよ。
そこにのりの香りが加わると、これがもうもん絶級のうまさ!
すんません、夢中になってすすっちゃいました。
ちょっと驚くほどのこのうまさ。
飲食未経験だったのに、なぜこんな絶品そばを出せるようになったのか。
店主の坂本さんに話を聞いてみました。
お店のオープン日までにちゃんとしたかき揚げを作ることができなかった
この「田そば」をやる前は不動産関係の仕事をしていたという坂本さん。
あるとき、知り合いの不動産業者から、誰か借り手はいないかと相談をされたのが、現在、「田そば」が入っている物件だったそうです。
当時は5、6年も空いている状態で、ボロボロの廃墟状態でしたね。とりあえず近くで借りてくれそうなところはないかと小伝馬町周辺を歩いたんですが、駅出口のすぐそばで立地がいいことに気づいて、自分が借りてみようかなと思ったんですよ。
今でこそ立ち食いそば店の多い小伝馬町ですが、当時は「かめや 小伝馬町店」があるのみ。ここで立ち食いそば店を始めればうまくいくんじゃないかと、ひらめいたんだそうです。
いつか自分一人の力で商売をやりたいと考えていた坂本さんは、独立開業を決意。
飲食はまったくの未経験だったため、飲食店を経営している知り合いに、まず相談したと言います。
たまたま、その知り合いがやっている飲食店に、昔、立ち食いそば店で働いていた人がいたんですよ。その人にいろいろ教えてもらうなかで、本郷にある鵜飼商店の鰹節をすすめられたんです。自分がそば店をやるなら、これを使いたいって。
なんと、この絶品ツユが生まれたのはたまたま!
もしここで多くのお店が使っているだしパックを選んでいたら、あのウマウマツユは生まれていなかったのか!
これが鵜飼商店の鰹節。
他のお店のものもいろいろ試したそうですが、これが一番よかったとのこと。
さて、ツユが決まり、そばもむらめんの生麺を使うと決めたものの、ここで大きな壁となったのが、立ち食いそばの顔とも言える天ぷら。
かき揚げがねぇ、まとまんないんですよ。猛練習したんですがそれでもダメで、結局、お店のオープン日までにちゃんとしたかき揚げを作ることができなかったんです。とてもお金を取れるもんじゃないんで、オープンから1週間ぐらいは無料で出していました。あの頃はお客さんに、よく怒られていましたよ。
それでも努力を続け、今ではいろいろな創作天ぷらを出すまでに。
なんか天ぷらの話を聞いていたら食べたくなっちゃったんで、お話を止めて納豆ちくわ天そば(420円)でもいただきますか!
ちくわを半分に切って、溝になった部分にひきわり納豆を入れて揚げたもの。
けっこうな変わりダネなんですが、これがうまいんですよ。
これ、磯辺揚げにしたのが大正解。
ちくわの甘みと納豆うま味と青のりの香りがナイスマッチですよ。
またしても無言で食べてしまいました。
さて、お客さんに怒られながら、なんとかちゃんとしたそばを出せるようになった矢先、大手立ち食いそばチェーンの小諸そばが歩いて30秒の所にオープンするという事件が起こります。
小諸そばができるって知ったときは驚きましたよ。これはヤバイって。でも、いざオープンしたら、まったく影響なかったんですよ。常連のお客さんたちがちゃんと、こっちに来てくれたんです。
最初のうちは、あまりの手際の悪さに怒って帰ってしまうお客さんもいたという坂本さん。
それでも頑張っているうち、いろいろなアドバイスをしてくれたりと、応援してくれる常連さんが増えていったんだそうです。
みなさんに支えてもらっている感じですね。だから病気で休業していたときは、辛かったですね。近くの「おか田」の大将も心配してくださったみたいで、再オープンしたときは真っ先に来てくれて、再開をツイッターで流してくれたようなんですよ。それを見たお客さんたちが、また来てくれて、泣くほどうれしかったですね。
ううう、ええ話や……。
お客さんに支えながらの試行錯誤の毎日。
実は今もダシこそ変えてはいないものの、かえしに関しては配合や作り方をいろいろ変えて、ベストなかえしにトライしているんだとか。
いいね! すごいね!
じゃあ、いい話を聞いたら食欲が出てきたんで、最後にばら肉そば(580円)をご飯セット(100円)でいただきますか!
今でも改良を続けているツユ
うひょひょ、甘辛肉とツユの相性が抜群ですよ。
こうやって玉子にからめて食べるとたまらん!
そしてさらにこのメニューのポイントは、薬味として添えられた、ショウガのごま油あえと鷹の爪のかえしあえ。
そして無料で使えるかえししょうゆ。
かえししょうゆを垂らしたら玉子かけごはんをグリグリかき混ぜ、肉を乗せーのショウガと鷹の爪を乗せーので、スペシャル肉丼!
いや~、ショウガと鷹の爪がいい仕事しています!
さすが進化し続けるお店は芸が細かいですね。
今日3杯目だけど、バクバクいけますよ!
それにしても、どれもこれもうまい「田そば」。
坂本さんの言うように、「お客さんに支えられて」ここまで来たんでしょうが、そのもとになっているのは、お客さんの気持ちに応えるべく努力してきた、坂本さんの姿なのではないでしょうか。
今も改良を続けているツユや、ばら肉そばの薬味がそれを表しているような気がします。
ちなみに17時からは、別の方が「よっちゃん」という串かつのお店をやっているという、二毛作展開を始めています。
こっちも来なきゃね。
いやはや、「田そば」からしばらく目が離せませんな!
お店情報
田そば
住所:東京都中央区日本橋小伝馬町3-7
電話番号:03-6206-2578
営業時間:6:00~15:00
定休日:土曜日・日曜日・祝日
※この記事は2017年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
メシ通編集部からお知らせ
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