しっとり鶏ムネ肉を使った鶏飯の作り方 鶏ムネストックも同時に作れる

色とりどりの具材をのせて、熱い鶏スープをかけながら食べる、奄美地方の郷土料理、「鶏飯(けいはん)」を料理家の美窪たえさん流のレシピで、ご紹介します。

こんにちは! 料理家の美窪たえです。

今回は、しっとりした鶏ムネ肉を使った茹で鶏と、鶏スープのおいしさを存分に楽しむ「鶏飯(けいはん)」をご紹介します。

鶏飯は、ごはんの上に色とりどりの具材をのせて、鶏スープをかけながら食べる、鹿児島県奄美地方の郷土料理です。

元はおもてなしの際に振る舞われていた贅沢なお料理ですが、今回はスーパーでそろう食材で作れるレシピとなっています。

一番のポイントは何といっても、メインとなる鶏ムネ肉のしっとりおいしい茹で方です。パサつきを恐れるあまりよくありがちな「中が生っぽかった……」なんていう失敗が起こりにくい、とっておきの茹で方をご紹介します。覚えておくと他のお料理にもアレンジできてとっても重宝しますよ。

また、鶏飯のカギである鶏スープは「ある材料」を1つ加えるだけで、たちまち絶品鶏スープに早変わり。そのおいしさをぜひ体験してみてください。

さまざまな具材があり、見た目も華やかな鶏飯は、準備が大変そうな印象がありますが、基本は茹で鶏と鶏スープでおいしくごはんを食べるシンプルなお料理です。

作り方も、大きく分けて①茹で鶏を作る、②好みの具材を用意する、③鶏スープを作る、の3工程です。思ったよりもすっきりシンプルですね。

材料(2人前程度の作りやすい分量)

〈茹で鶏〉

  • 鶏ムネ肉……2枚(700g前後)
    ※今回は茹で鶏の便利な冷蔵・冷凍保存の方法をお伝えするために鶏ムネ肉を2枚使用しています。鶏ムネ肉1枚で調理する場合でも、他の食材の分量はご紹介する通りで問題ないです! 詳しい冷蔵・冷凍保存の方法は記事後半にてご紹介しています。 

  • 長ネギの青い部分……1本分
  • しょうが(薄切り)……10g
  • 塩……8g
  • 水……1リットル

〈鶏スープ用調味料〉

  • 酒……大さじ1
  • 薄口醤油……大さじ1/2
  • 粉ゼラチン……10g

〈椎茸の煮付け〉

  • 椎茸……3個
  • 醤油……大さじ1/2
  • 砂糖……大さじ1/2

〈錦糸卵〉

  • 卵……1個
  • 塩……ひとつまみ
  • 酒……少々(小さじ1/3程度)
  • サラダ油……小さじ1

〈トッピング〉

  • 青ネギ……3本
  • たくあん……20g
  • 柚子の皮(乾燥)……小さじ1
  • 刻み海苔、白ごま(あればお好みで)

 

  • ごはん……適量

 

「何もしない時間」が絶品につながる! 鶏スープの味を決める茹で鶏の作り方

1.メインとなる、茹で鶏と鶏スープを同時に作っていきましょう。鍋に〈茹で鶏〉の鶏ムネ肉以外の材料を入れて中火にかけ、沸騰したら鶏ムネ肉を静かに入れます。

鶏ムネ肉を入れると温度が下がりますので、再び沸いてくるまで待ちます。

再度沸騰してきたら、お湯の表面がふつふつと揺れ続ける程度(やや弱めの中火目安)の火加減にして、そのまま2分ほど茹で続けます。途中で鶏ムネ肉を裏返すと、より均一に火が通ります。

2.茹で時間2分程度が経過したら蓋をして火を止めて、そのまま30分以上置いておきます。この放置する時間によって鶏ムネ肉全体に熱が行き渡り、きちんと火が通っているのにしっとりの、絶品茹で鶏が出来上がるのです。

ポイントは、水と塩の量、茹で時間をきちんと計ること。水の量と茹で時間は加熱具合に直結し、塩の量は茹で鶏とスープの下味に影響しますので、大体ではなくここだけはきちんと計ることが大切です。

メインのトッピングとなる茹で鶏さえ仕込んでしまえば、あとは好みの具材を用意するだけで、ほぼできたも同然です。ごはんを炊いておくのも忘れないでくださいね。

椎茸の煮付けに錦糸卵、柚子など、コクと爽やかさが混ざり合うトッピング

3.鶏飯には定番として添えられる具材がいくつかあります。まず椎茸の煮付けと、錦糸卵です。

椎茸の煮付けは、干し椎茸を使うと独特のうま味があって本格的ですが、今回は生の椎茸と電子レンジで気軽に作っていきます。

椎茸は根元から軸を切って3〜4mmの薄切りにし、耐熱容器に入れます。〈椎茸の煮付け〉用の醤油と砂糖を上から回しかけ、ふんわりとラップをして、電子レンジ600Wで2分を目安に加熱します。

吹きこぼれやすいので大きめの器を使い、蒸気で膨張するためラップはふんわり余裕を持たせてかけるようにしてください。

加熱が終わったら、やけどに注意しながらラップを外してよく混ぜ合わせます。ラップを椎茸の表面に貼り付けて乾燥を防ぎつつ自然に冷ませば、あっという間に椎茸の煮付けの完成です。

4.錦糸卵も焼いていきましょう。

卵をボウルに割り入れ、塩と酒を加えてよく混ぜ合わせます。

フライパンにサラダ油を入れて中火にかけ、油をキッチンペーパーでのばします。フライパンが温まったら弱火にして卵液を入れ、フライパンを傾けながら薄く全体に広げていきます。

卵液の周りが乾いてはがれてきたら優しく箸でめくって裏返し、火を止めます。裏返すのが難しければ、表面が乾くまで片面焼きでも問題ありません。

冷めたらくるくると巻いて端から細く刻めば、錦糸卵も出来上がりです。

椎茸の煮付けも錦糸卵も、残ったらちらし寿司やそうめんの具などにも使えます。

5.そしてもう一つ、鶏飯らしい味わいを作る特徴的な食材があります。

それは「柑橘類の皮」です。現地ではみかんの皮を使うことが多いようですが、皮が食用のものが手に入りにくいこともあり、今回は柚子の皮を使いました。やや意外に思える材料ですが、コクのある鶏スープに柑橘の爽やかな香りが加わることで、さっぱりと食べることができるのです!

スーパーでは、フリーズドライやチューブ入りの柚子の皮が売られています。残ったらお吸い物やうどんなどにも使えますので、ぜひ試してみてくださいね。(※画像はフリーズドライを水で戻したものを使用しています)

6.青ネギは小口切り、たくあんは細切りにします。

本場奄美の鶏飯ではパパイアの漬物がよく使われるそうですが、他の地域ではなかなか手に入りにくいと思いますので、食感が近いたくあんで雰囲気を楽しみましょう。

他にはお好みで、刻み海苔、白ごまがあればもう完璧です。

ここまでが鶏飯によく添えられる定番具材です。可能な範囲でそろえれば十分おいしく作れますので、安心してください。

他にも、ミョウガや大葉、パクチーとおろし生姜、三つ葉とわさび、柚子の皮の代わりに柚子胡椒、梅干しなども鶏飯と好相性です。

シンプルでおいしい料理だからこそ、定番具材に加えて自分流の味変も楽しめますので、ぜひ家にあるものでいろいろ試してみてください。

7.茹で鶏の放置時間が過ぎたら、鶏ムネ肉を細く裂いておきましょう。細めに裂くとごはんと一緒に食べた時のなじみが非常に良くなります。(鶏ムネ肉が熱い場合は、鶏ムネ肉だけを皿に取り出して表面にラップを貼り付け、触れるくらいになるまで冷ましてから裂いてください)

鶏ムネ肉を割ってみると、中まで均一に熱が加わり、かつ見事にしっとりしています。これで全ての具材の準備ができました!

粉ゼラチンがカギを握る、コクうま鶏スープの作り方

8.ごはんにかける鶏スープを準備します。

鶏飯の最大の特徴といえば、鶏スープをかけてごはんを食べること。具材もさることながら、鶏飯の完成度は鶏スープのおいしさが決めるといっても過言ではありません。今回は、濃い味付けに仕上げていきます。

といっても、鶏スープの仕上げは簡単です。

鍋に鶏ムネ肉の茹で汁3カップ(600cc)を入れて中火にかけ、〈鶏スープ用調味料〉を全て加えてしっかり温めれば準備OK。

そして、冒頭でも触れたこの鶏スープの味わいのカギが「粉ゼラチン」です。

ゼリーなど冷たいデザートに使われることの多い粉ゼラチンですが、その成分は動物性コラーゲン由来のタンパク質。熱い鶏スープに加えると、まるで鶏ガラを長時間煮込んだような味に仕上がります。

鶏ムネ肉の茹で汁は、既に十分完成度の高いスープですが、そこへ粉ゼラチンを足すことでなめらかな口当たりと奥行きが生まれ、本格的な味わいのコクうま鶏スープがすぐさま完成するのです。

これで全てが整いました。鶏スープをしっかり熱々に温めて、いただきましょう!

鶏スープがうまい! しっとり鶏ムネ肉の鶏飯の楽しみ方

ごはんの上に具材を彩り良くのせて、熱い鶏スープをかけていただきます。

丼もののように一度にたくさん盛り付けずに、ごはん少なめ鶏スープ多めで、おかわりしながら食べ進めるのがオススメです。

鶏ムネ肉のしっとり感と柔らかさ……。鶏スープごはんに、ふんわりとよくなじみます。

椎茸の煮付け、錦糸卵の味わいと彩り、それらを引き立てる薬味類を一緒に、鶏スープがサラサラと胃に運んでくれます。鶏スープの熱で立ち上る柚子の香りが爽やかで、いくらでも食べられてしまう軽やかさです。

茹でた鶏ムネ肉の保存方法と温め直し方のコツ

最後に、茹でた鶏ムネ肉のジューシーさを維持しながら保存する方法と、温め直しの方法についてご紹介します。

<茹でた鶏ムネ肉をしっとりしたまま保存する方法>

茹でた鶏ムネ肉は、茹で汁に浸して密閉した状態で保存することがポイントになります。

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ジッパー付き保存袋などに、鶏ムネ肉が浸るくらいの茹で汁を入れて密封した後、冷蔵・冷凍保存することで、鶏ムネ肉の中の水分が染み出すことを防ぐことができますよ。

<鶏ムネ肉のジューシーさを維持したまま温め直す方法>

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柔らかさを保ったまま、鶏ムネ肉をおいしく温め直すためには直接再加熱しないことが重要になります。多少面倒ですが、先に茹で汁だけを鍋で沸騰させ、火を止めた状態で鶏ムネ肉を投入して温め直すことで、ジューシーさを維持することができますよ。冷凍の場合は一度解凍してから温め直してくださいね。

※冷蔵の場合は1〜2日以内、冷凍の場合は1カ月以内に使い切るようにしてください。

鶏飯で残った茹で鶏は、バンバンジーやジーローファンなどにもアレンジできますので、下記記事などを参考にぜひ試してみてください。

www.hotpepper.jp

まとめ

スーパーで手に入る材料だけで作れる、奄美地方の絶品郷土料理

コクうまな鶏スープでさらりと食べる、出汁茶漬けのような独自のおいしさと、旅の気分もご一緒に、満喫してください! 

 

書いた人:美窪たえ

料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。

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