鶏白湯スープでお肌ツルッツル? コラーゲンたっぷりの極上スープの秘密【理系メシ】

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「コラーゲン」はホントにお肌にいいのか

近所にできた、ある鶏白湯ラーメンの店。

スープに色々あるけれど、ここは「鶏だし」のみの一本勝負。

仕事の帰り、小腹がすいたので食べてみたわけですよ。

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俗に濃いコーヒーを指してスプーンが立つと言いますが、このスープはレンゲが立つ! 

そのくらいに濃厚で、ひと口食べてうなった。

 

私は博多出身で、水炊きをよく作る。それは手加減なく猛烈に濃厚に作るけれど、それよりもさらに濃厚。口の中から喉の内までうまみに押されてガツガツ、おいしい、染みる、滋養〜滋養〜と食べ終えて翌朝。

 

なんか違う! お肌が違う! ツルツルしてる!

 

スッポンも食べた、ホルモンも食べた、豚足は買ってきて煮て食べ焼いて食べ揚げて食べ、でもね、こんなことはなかった。アブラギッシュになることはあっても、お肌ツルツル? 

もしかして、「食べて効く」のか、コラーゲン?

濃厚鶏スープを再現しながら、コラーゲンのことを考えてみる。

 

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材料は鶏ガラ3本、もみじ(鶏の足のこと)500グラム、臭い消しにしょうが、甘味を出すのにタマネギ1個。

味の強化に昆布。違うダシが重なると味が数倍良くなる。カツオと昆布を組み合わせると、うま味が約7倍になるのだ。

 

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まず鶏ガラを水からゆでる。

 

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しばらく沸騰させ、アクを出し切る。

 

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お湯ごと捨てて、よく水洗い。

内側の血管や内臓の残りもキレイに洗い、骨だけにしたら、切断。

 

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骨の中のずいが白濁の正体なので、煮出すために骨を割るように切る。

 

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次はもみじ。ちょっとグロい。。。

 

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これも水洗いしてから煮てアクを出し切る。

 

コラーゲンを飲んでも意味はない?

俗にコラーゲンと言いますね。

コラーゲンは皮膚や骨、血管など全身に分布するたんぱく質で、マットレスのスプリングのように体を支えている。加齢による顔のたるみやハリのなさはコラーゲンの代謝が遅くなったため。だからコラーゲンを飲めば、若かりし頃のようなピカピカの肌に戻るという。

 

コラーゲンは、化粧品や健康食品として莫大なマーケットを作り出した。

でもね、サイエンス的には「いい加減にしろ」と。

 

タンパク質はアミノ酸が結合したもので、コラーゲンもアミノ酸が作り出す構造体。タンパク質はサイズが大きく、そのままでは腸から吸収できない。だから消化液を使って結合を外し、アミノ酸として吸収する。タンパク質の性質はアミノ酸の結合のパターンで決まるので、消化吸収によってタンパク質の特性は失われる。

だから、コラーゲンを飲んでも意味はないわけです。

 

コラーゲンは、コラーゲンを構成するグリシンやヒドロキシプロリンなどのアミノ酸に分解されて吸収されるので、飲んだコラーゲンが肌を作り出すかといえば、そんなわけがない。

 

肉を食べようがコラーゲンぷるぷるの豚足を食べようが、食べてしまえば同じこと、コラーゲンを食べたら肌がプルプルになるなんてウソ……と思っていたのだけど(!)

 

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もみじの爪を抜き、足裏の汚れを取ります。

これがすごく面倒かつグロい。爪を引っこ抜くわけで、グロい。グロいなあと思いつつ、このグロい足から大量のコラーゲンが溶けだすのです。

 

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準備完了。

 

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鍋を洗ったら、全部鍋に入れて強火で沸騰させ、そのあとは弱火でひたすらゆでる。

 

効かないはずのコラーゲンが、なぜ効いたのか?

明治製菓の研究グループが2009年に発表した「コラーゲンペプチド経口摂取後による皮膚角層水分量の改善効果」によると、「30歳以上を対象とした層別解析で、魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた」のだという。一方、「豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった」らしい。

むむ? 魚のウロコから作ったコラーゲンで肌のハリが回復する?

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3時間経過。まだまだ煮込む。

どうして「効かないはず」のコラーゲンが効いてしまうのか? 

コラーゲンは分解しにくく、アミノ酸とタンパク質の中間ぐらいのサイズで、コラーゲンの性質を残したコラーゲンペプチドの状態で吸収される。

 

京都府立大学の佐藤健司教授らは、従来、吸収後にすみやかにアミノ酸に分解されると考えられていた食物由来のコラーゲンペプチドが、高濃度で血中に存在している(予想の数万倍の濃度)と発表した。

コラーゲンペプチドは吸収され、血液に乗って全身に運ばれる。

 

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6時間経過。これ以上はダシが出そうにない。こすことにする。

 

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全身に散らばったコラーゲンペプチドは、「材料」ではなく「スイッチ」と考えられている。コラーゲンペプチドはコラーゲンの原料になるのではなく、細胞のスイッチを押し、コラーゲンを合成させるらしい。

 

……なんとなく釈然としない。

本当にただのスイッチなのか? そのまま肌の真皮に取り込まれ、コラーゲンを再編することはないのか?

 

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白濁したスープ。感じは出ているが、色が薄い? 

もっと濃かった気がする。

 

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とりあえずラーメンを作ってみる。インスタントラーメンの麺をゆでて、

 

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スープとして、作った鶏スープを加える。

 

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塩を加えて完成。

 

いただきます……

 

おいしい。

 

だが、違う。こんなに薄くない。あのお店で食べた鶏白湯ラーメンは、もっとはるかに濃かった。

もっともみじを入れないとダメのか? 

それとも安売りスーパーで買った鶏ガラがダメだったのか?

 

翌朝、お肌にまったく変化はなかった。ちょっとやそっとのコラーゲンではダメらしい。

劇的な改善が欲しければ、圧倒的に濃い、大量のコラーゲンが必要なのだ。

そしてそんなものは、とてもじゃないが家庭では作れない。

肌の調子が悪くなったら、また鶏白湯ラーメンを食べに行こう。

 

※この記事は2016年12月の情報です。

 

書いた人:川口友万

川口友万

サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。

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