高円寺にものすごく気になるお店があった
先日見た邦画のクライマックスで、主人公の男女がダンスを踊るシーンがありました。
その舞台となった場所が、普段私がベロベロに酔いながら歩いている東京・高円寺のガード下だったんです。
そんなわけで、いつもの高円寺がちょっと素敵に思えたりしながら散歩していたら、気になるお店を見つけてしまいました。
「きのことおさけ」。
むむむ、絶妙なカップリングじゃないですか! さっそく行ってみることにしましょう。
※文中で触れている「きのこのお刺身」は店舗で加熱して提供しています。きのこはマッシュルームなど一部を除いて基本的に火を通さないと食べられなないため、ご注意ください。
多彩なきのこ料理とお酒が楽しめる「きのこ料理専門店」
「きのことおさけ」に到着。
高円寺駅から徒歩数分のガード下、かわいい暖簾が目印です。
暖簾をくぐると、優しそうな店長さんが出迎えてくれます。
店内はカウンター席とテーブル席がいくつかのこぢんまりした広さ。落ち着いてくつろげそうな雰囲気です。
身近な食材だけど、なかなか主人公になりきれない「きのこ」に注目
※撮影時に一瞬だけマスクを外していただきました
店長の来馬(くるば)さんに話をお伺いします。
──はじめまして。まだ新しいけれど、落ち着いてくつろげる雰囲気の素敵なお店ですね。きのこ料理専門店とのことですが、お店はどのような経緯でオープンされたのですか?
来馬さん:高円寺のクラフトビール専門店「ビアカフェ 萬感」のオーナーが「高円寺のガード下にいい物件があって、今度は日本酒のお店をやりたい」というお話をしていて。
「ビアカフェ 萬感」の常連客でもあり、高円寺のバーで間借り居酒屋を営んでいた自分に声がかかったんです。緊急事態宣言が解除されたばかりの2021年10月に、時短営業からのスタートでしたが、翌11月からは徐々に軌道に乗ってきています。
──そもそもなぜ「きのこ料理専門店」だったのでしょうか?
来馬さん:きのこ料理専門店という業態をあまり見たことがなく、料理は日本酒を合わせられるように、和食をベースにした構成にしたいと思ってオーナーと企画しました。
きのこは身近な食材でありつつも、まだまだ世間に浸透していない種類も多いですし、その味わいについても未知の食材としての一面も持っています。通年で安定して仕入れができますし、メイン料理としても、サブとしてもいける高い汎用性も魅力の食材です。
──きのこと日本酒は合いますよね。
来馬さん:はい。それに、きのこ料理と聞いてすぐ頭に浮かぶ炭火焼きや天麩羅だけでなく、もっと意外なメニューも作りたいなと思っています。後ほど食べていただきますが「柳松茸」や「はなびらたけ」のような、普段家庭で食べる機会が少ないきのこに出合ってもらえるような場にもしたいですね。
──きのこにとても詳しそうですが、何か学ばれたのですか?
来馬さん:菌類を専門的に勉強したわけではないのですが、大学は農学系でした。まだまだ勉強中とはいえ、このお店を開くにあたってその経験は、少しは活かせたかなと思います。
きのこのお刺身? 豊かな香りとうま味、新食感の歯応え
▲名物 きのこのお刺身盛合せ(800円)
きのこは、うま味が逃げない程度の火加減で昆布出汁に通してから、冷製にしてお刺身風にした一品です。
その時々のオススメのきのこを盛合せにするそうですが、今回いただいたのは柳松茸、生きくらげ、はなびらたけの3種類。
きのこはマッシュルームなど一部の種類を除いて、基本的に生では食べられません。お店ではきちんと加熱して提供しています(決してご自宅できのこを生で食されないように!)。
▲柳松茸
柳松茸は松茸とは違い、香りよりもシャキシャキとした歯触りや食感が強いのが特徴だそう。
来馬さん:いろいろなきのこで試しましたけど、食感の強さではこれがもっとも強いかもしれません。生の状態だとしなやかさがなくて、普通のきのこと同じ感じで扱っているとパキッと折れてしまうほどです。
──これはたしかに凄い歯応え! うま味も十分に感じられますし、まるで肉でも食べているかのような満足感です。
▲生きくらげ
来馬さん:中華料理などで使用する乾燥きくらげではなく、生の状態で出荷されたきくらげを、出汁にくぐらせています。生のきくらげならではのプルプルとコリコリが両方味わえます。
──クセがないので出汁との相性はいちばんいいですね。この独特のプルプル感がクセになりそうです。
▲はなびらたけ
はなびらたけは山の中で自生する希少なきのこだったものの、近年では栽培に成功し市場に流通するようになったそう。
──このきのこは初めて食べましたけど、最高においしいですね! 他のきのことは風味が違います。なんというか……高級料亭のような上品な味?
来馬さん:はなびらたけは刺身の中でいちばん評判がいいですね。少し大げさかもしれませんが、香りの中に柚子っぽさも感じられたり……。
──目をつぶって食べたら、きのこだとわからないかもしれないですね。シャキシャキ、コリコリしていて、食感は海藻とかに近いかも。ホルモンの白センマイ刺しをもっと繊細にしたような感じもします。
これは絶対みんなが好きなやつ。実力派ポテトサラダ
▲舞茸クリームポテトサラダ(600円)
上段から味玉、舞茸クリーム、ポテトサラダという3段構成。まるでお洒落なイタリアンで出てきそうな見た目ですが……。
味玉を割り、トロ〜ッとした黄身と舞茸クリーム、ポテトサラダを一緒に頬張ると……。
ああああ……これはみんなが大好きなやつ! 濃厚な黄身と舞茸クリームの芳醇な香りが相まって、大人の味を演出しています。
ボリュームたっぷり。味は繊細……本格麻婆菌茸(マーボーキノコ)
▲本格麻婆菌茸(1,000円) ハーフ(600円)※写真はフルサイズ)
来馬さん:きのこのうま味を邪魔したくないので、鶏ひき肉、鶏出汁と昆布出汁をベースに、赤味噌と豆板醤で味つけし、辛さをほどほどにした優しめの味にしています。
具材として入れているきのこは日替わりというわけではないですが、その時々で変えているそう。
歯応えがあって食物繊維もたっぷりだし、ボリュームのわりにはカロリーも抑えられそうなメニューです。
来馬さん:「きのこの炊き込みご飯」(500円)と一緒に食べると、また最高なんですよ〜。次回はぜひ!
──き、きのこの炊き込みご飯……それは気になるな〜。ダイエットがまた遠のく……。
きのこのパートナー、お酒にもこだわっています
▲しめじ舞茸ジントニック(700円)
──きのこをボタニカル(※)に使ったジンですか? 最近の国産ジンは面白いですね。
(※)ジンやベルモットなどで使われるハーブやスパイスのこと
来馬さん:芋焼酎、しめじと舞茸を使ったジントニックです。それほどガツンときのこが香ってくるわけではなく……。
──はい。ほのかなきのこの香りを感じます。独特な風味はありますけどクセが強いわけではなく、上品な味ですね。
▲日本酒 半合(600円)一合(900円)
来馬さん:日本酒はあまりブランド重視とかではなく、たとえば造っている杜氏が同世代だったりとか何か自分的に共感できるストーリーがあるお酒を選んでいます。
あとはきのこのうま味に負けないような、どっしりとしたお米の味がしっかり感じられるものとか。 きのことお酒のワンダーランドみたいになればいいな……と思ってやっています。
他にもご予約限定で「きのこしゃぶしゃぶ鍋」もあるそうなので、きのこをたっぷり食べたい時にも良さそう。
まだまだいろいろな楽しみ方がありそうなきのこ料理専門店、皆さんもぜひ訪れてみてください。
※この記事は感染対策を行ったうえで取材したものです。
お店情報
きのことおさけ
住所:東京都杉並区高円寺南3丁目68-1
電話番号:03-6781-3934
営業時間:17:00〜24:00(日曜日営業)
定休日:火曜日
Instagram:きのことおさけ
書いた人:BLObPUS
オリジナルキャラクターの怪獣フィギュア「BLObPUS(ブロッパス)」をリリースしたのをきっかけに活動開始。国内外のフィギュアイベントに参加しつつ中央線沿線を飲み歩く怪獣おじさん。蓄光素体にメタリックカラーを基調とした独特の色使いで彩色にも定評がある。