「黒ニンニク」を知っていますか
黒ニンニクは、ニンニクを熟成させて作る発酵食品で、プルーンのような見た目とほんのりした甘さ、栄養価の高さが特徴で、ニオイも控えめ。
市販のものを購入するとけっこう高価だったりするので、自作する人もいます。
これは近所の農家さんが自作している黒ニンニクをいただいたもの。ツヤッツヤです。
これがニンニクと言われても、にわかには信じがたいかもしれません(笑)。
ただし、自作するには黒ニンニク作り専用の炊飯器を用意したり、熟成に何週間もかけたりと非常に手間と時間がかかります。
そこで、ガスコンロを使って簡単に数日でできる黒ニンニク作りに挑戦しました。
黒ニンニクを自作。まずは漬け込みの作業から
ニンニクはいろいろな品種がありますが、まずは食べた時の食感などを考慮して粒の大きいものがオススメです。
【材料】(3個分)
- ニンニク 3個
- 酢(今回はリンゴ酢を使用) 適量
- 日本酒(料理酒ではなく清酒) 適量
まずはニンニク臭を抑えるために、酢や日本酒に漬け込みます。
今回は、酢と日本酒それぞれに漬け込んで、ニオイや味に違いが出るのかを比較してみましょう。
写真のような大きさのプラスチック容器などにニンニクを丸ごと入れ、全体が浸る程度に酢や日本酒を入れて、ラップなどでフタをし、漬け込みます。
手頃なプラスチック容器がない場合は、ニンニクをビニール袋に入れ、酢や日本酒を注いでニンニク全体が浸った後に空気を抜けば、酢や日本酒がニンニクに染み込みやすくなります。
今回は、①ニンニクそのまま、②酢に漬けたもの、③日本酒に漬けたもの……の3パターンでやってみました。
②③は2日間、漬け込みます。どれもそのまま室温に置いてOKですが、暑い時期は冷蔵庫に入れた方が良いでしょう。
さて2日間経ちました。
漬け込みが終わったら容器からニンニクを取り出し、風通しの良い場所に置いて乾燥させます。その際、ニンニクの株はほぐさずにそのまま乾燥させてください。
しっかりと乾燥させるのがポイント。水分が多めに残っている状態で加熱すると、苦みが出る場合があるそうです。
風通しの良い場所に置いて2日ほど経ってから触ってみたところ、ニンニクの水分が飛んで少し軽い感じになりました。
さっそく、乾燥させたニンニクのそれぞれのニオイをチェックしてみました。
①ニンニクそのまま → 皮がついていても普通に臭ってきます。
②酢に漬けたもの → ほのかにフルーティさが感じられます。
③日本酒に漬けたもの → おお! ニオイがほとんどない! びっくりです。
「とにかくニオイを抑えたい!」という人は日本酒を使用するのがオススメです。
それではニンニクが乾燥したところで、加熱の工程に入りましょう。
ニンニクを加熱する
まず、ニンニクの中心から出ている長い茎の部分をハサミなどで切り落とします。これで、ホイルを巻いた時に厚さが均一になり、かつ、火力が均一にいきわたるようになります。
ホイルは三重に巻くのがポイント。一重や二重に巻くと加熱中にニンニクの汁が吹きこぼれたりします。
また、焼き網の上で転がらないように上下はやや潰し気味にして、平らになるように包んでください。
こんな感じで包み終わったら、ガスコンロで加熱します。
室内にニオイがこもらないように、今回は卓上コンロを外に持ち出してアウトドアクッキングです。
焼き網の上にニンニクを置いて、上下を各15分ずつ強火で焼きます。火気の扱いには十分注意しましょう。
しばらくすると、ホイルの隙間から白い蒸気が。食欲をそそるニンニクの香りが出てきました! 1個につき30分、3個で1時間半焼くので、卓上コンロの場合はガス切れに注意してください。
熟成の工程
ニンニクが3種類、全部焼けたところで次は熟成の作業に入ります。
焼けたニンニクをホイルのまま、3日間室温で熟成させます。つい、中を見たくなりますが、そこは我慢して見守ってください(笑)。
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「美味しくな~れ」と念を込めること3日間。
さあ! 熟成したかな? いよいよ開封の儀です。
まずは、①ニンニクそのままバージョンからホイルを取ります。
ホイルを取った瞬間からかぐわしいニンニクの香り。だけど、思ったよりは、ニオイはきつくないですね。
次は、②酢に漬けたニンニクです。ほんの少しですが、鼻を近づけると甘い香りが。
最後に、③日本酒に漬けたニンニク。
お!? やはり、この中では一番防臭効果があります。ほとんど無臭といっていいレベルでしょう。
そして、薄皮を剥き、取り出したニンニク。それぞれがこちらになります。
見た目は黒ニンニクというよりは、琥珀(こはく)ニンニクという感じの色味です。
おそらく加熱と熟成をさらに加えれば、もっと真っ黒なニンニクにできたのでしょう。
こだわる人は、炊飯器などで加熱し、熟成させる工程に20日間もかけることもあるそうです。
とはいえ、クリーミーな食感を予感させる琥珀色に仕上がってくれました。さしずめ「熟成 琥珀ニンニク」といったところでしょうか。
では、①ニンニクそのままバージョンから実食!
ねっとり、まったりした食感
おお ! 包丁で半分にカットして食べてみたところ、ねっとり、まったりした食感が。
さらに口に放り込んで嚙み締めると、ニンニクがペースト状になって、ほどよい香ばしさと力強い風味が一体となり、口いっぱいに広がります。
次は②酢に漬けたバージョン。
今回は3パターンとも焼き時間は同じですが、こちらは酢の成分中にある糖分のせいなのか、焦げた箇所があります。食べてみると、ほんのりですが、やはりフルーティさを感じます。
酸味はまったくないので、酢が苦手な人でも大丈夫でしょう。
最後に、③日本酒に漬けたものを。
こちらも、酢に漬けたものと同様、糖分で焦げてる箇所がありますね。
ニオイはほとんど無臭ですが、嚙んでみるとニンニクの香ばしさ、甘みがしっかり感じられます。料理の下ごしらえに日本酒は良く使われますが、これほど防臭効果があるとは……日本酒、優秀です!
昔からの滋養強壮として親しまれてる食材のニンニク。
ただ刻んで料理に加えるだけでなく、ちょっと変わったアレンジとして、ぜひ試してみてください。
ちなみに、いくらニオイが気にならなくなるとはいえ、出来上がった琥珀ニンニクは一気には食べずに、おつまみやパスタのトッピングなど、1日1片くらいをちびちび食べることをオススメします。
また、作った黒ニンニクは冷蔵庫に保存して1ヵ月程度で食べきるようにしてください。
いっぺんにたくさんの量を食べると……さすがに口臭には注意した方が良さそうです(笑)。
【おまけ】黒ニンニクとチョコレートアイスが非常にマッチするという噂を検証
……と、自作黒ニンニクの仕上がりにすっかり満足していたところ、『メシ通』にこんな記事が。
ちなみに「フードペアリング理論」とは
食べ物の香りを科学的に分析することで、おいしい食材の組み合わせを見つけ出し、独創的な新しい料理を創作
する、「食の最新理論」とのこと。
なんでもこの記事によると、黒ニンニクとチョコレートアイスという非常に相性の悪そうな食材同士でも、香りをプロファイルしてみた結果、実は理論上では非常にマッチする組み合わせなのだという。
本当なのだろうか? これは試さねば……!
ということで、コンビニでチョコレートアイスを購入してきました。
それにしても、『メシ通』の記事を読むまでは、こんな組み合わせは夢にも思いませんでしたよ。正直言うと、あまり食指が動くようなビジュアルではありませんよね。
ところが、意を決して口にしてみると……。
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おおお、これは面白い。
チョコレートの濃厚な甘みと、黒ニンニクのもったりとした食感が口の中で絡み合い、なんともリッチな口溶けに……黒ニンニクの舌触りは、まるで洋梨のコンポートか、あるいはプルーンのようなフルーティさです。
ガストロノミーを取り入れた先鋭的なフレンチレストランで、コース料理のデザートに出てきてもおかしくないような味わいでした。
いやはや、黒ニンニクの可能性、まだまだあるのかもしれませんね。
書いた人:星☆ヒロシ
夫婦で食べ歩きが趣味。夫は食べる専門で、妻は呑む専門。若いころは海外へも足を運んだが、最近は日本の良さを再認識し、旅をしながらその土地ならではのおいしいものを食べ歩く。