自家配合の「カスタム七味唐辛子」食卓をさらに香り高くする試み

「どれもそんなに変わらないじゃん」と思われがちな七味唐辛子。でも、基本の配合さえ押さえれば自由で思い切った配合が手軽に楽しめる、カスタムできるスパイスなんです。

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七味って、辛すぎないですか?

こんにちは、ちみをです。

 

私、辛いのは好きなんですが、辛すぎるのは苦手なんです。

だって辛すぎると何を食べてるかわからなくなるじゃないですか。舌は痛いし、鼻水も出るし。

 

そして特に思うのがこれ。

市販の七味は、私にとっては辛すぎる!

 

そもそも七味って唐辛子以外「辛み」はないはずなのに。

巷の棚に並ぶ七味は唐辛子の量が多いんですよね。ほかの六味の味が際立たないので製品ごとの違いも感じ取りづらい。

 

と思っていたある日、浅草の某有名七味唐辛子店の七味を手に入れる機会がありましてですね。さっそく使ってみるとこれが、ウルトラ旨い……!!!!!

 

人生で出会ったことのないコクと華やかさに衝撃を受けました。

何だこれはと思い今まで使っていたウチの七味と比べると、明らかに内容が違う。

 

▼自宅にあった七味

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▼対して有名店の七味

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こうして見てみると黒胡麻が多いのがわかりますが、麻の実の量、全体的な唐辛子の比率など、明らかに配合が違う。

これを見て「そうか、七味の配合ってここまで違っても成立するんだ」と気がついたのです。

 

そもそも七味に配合の決まりがあるなんて聞いたこと無い。

 

じゃあじゃあ、やってみましょうよ「カスタム七味」。

配分も配合成分もいじっていじっていじり倒して辛すぎず、香り高く、料理の次元を押し広げる「僕が考えた最強の七味」ってやつを作ってやろうじゃないか……。

 

と、前置き長くなりましたがいろいろな検証を試みたのが本稿となります。

それではどうぞ。

 

まずは基本配合を決める

型破りという言葉は型があって初めて破れるということで、まずは基本型の配合を考えましょう。

これというレシピがある訳ではないので私の好みで基本配合を決めておきます。

 

▼基本配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 黒胡麻 1
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5
  • 青のり 0.5

(※あくまでも比率なので、量はお好みでどうぞ)

 

ポイントは唐辛子少なめ、その他材料はわりとフラット。

ケシの実と麻の実が多いとジャリジャリしすぎる、また青のりも入れすぎるとお好み焼き味になっていくので少な目に設定。 

 

▼混ぜて混ぜて

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▼完成

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風味としては辛すぎず、また陳皮のフルーティさで品のある使いやすそうな仕上がり。

基本型はこれで良いでしょう。

ではこれをもとに、カスタムしていろいろな料理に合わせていきます。

 

天ぷら蕎麦を意識した七味

カップの天ぷら蕎麦があるので、さあ何をどうしてやろうか。

 

▼フリーズドライゆず皮

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さらに果実味を加えて香りの立体感を付けることで、カップめんらしからぬリッチさを出そうという試み。

 

▼カスタム七味、天ぷら蕎麦ver.

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 黒胡麻 1
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5
  • 青のり 0.5
  • フリーズドライゆず皮 1

 

基本配合にフリーズドライゆず皮を追加しただけ。

 

▼実食!

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▼旨い

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うむ、間違いない旨さ。

 

配合したものを全部かけましたが、唐辛子の量は少なく辛くはないため食べやすい、鼻水も出ない。

不意に飛び込むゆず皮が爽やかこの上ないですね。

そして汁に溶け込んだフレーバーがたまらない!

カップめんは「汁を飲み干す瞬間が一番旨い」というのは定説ですが、複雑な香りを纏った汁がその瞬間をさらにリッチにしてくれます。

 

という訳でいきなり「八味」になってしまいましたが、それくらい自由にやっていきたいと思います。

 

親子丼を意識した七味

親子丼も七味がベストフレンズ。さて配合は……

 

▼カスタム七味、親子丼ver.

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▼配合!

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 4
  • 山椒 1
  • 白胡麻 4
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5
  • 青のり 0.5
  • フリーズドライゆず皮 1

 

基本配合にフリーズドライゆず皮1、また陳皮を4に増量、黒胡麻を白胡麻に変え4を配合。

動物性のコクのある料理なので胡麻多めで対抗、かつ陳皮で肉の香りをソフトにする効果も狙います。

 

▼実食!

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▼いいぞ……!

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なんとなく白胡麻にしてみたんですが、正直なところ色味やコクを踏まえると黒胡麻でも良かった気がします。

この配合は、とにかく陳皮! 鶏肉と玉子との相性がグンバツなので、多分普通の七味+陳皮単体でバッサーかけても美味しいですね。

 

和風パスタを意識した七味

和風パスタ好きなんですよ。

今回はキノコとほうれん草のニンニク醤油仕上げを用意。

さて配合は……。

 

▼カスタム七味、和風パスタver.

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▼配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 白胡麻 1
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5
  • 乾燥大葉 3

 

基本配合の黒胡麻を白胡麻に。また、青のりを大葉3にコンバートしてオイリーなパスタに和の清涼感の付加を狙います。 バジルのような使い方でしょうか。

 

▼実食!

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▼さわやか~

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大葉は大成功ですな。

清涼感もそうですが和風パスタですから「和」の印象を強めたいという狙いは当たりました。

また麻の実の歯ごたえがとてもいい仕事!

突如「パリッ」とくるアクセントが単調な咀嚼にリズムをもたらします。

 

▼ちなみに大葉は、乾燥大葉が手に入らなかったので食品乾燥機で自作

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塩焼き鳥を意識した七味

塩焼き鳥の缶詰を愛好しています、これも七味が欠かせない。

さて配合は……。

 

▼カスタム七味、塩焼き鳥ver.

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▼配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 2
  • 陳皮 1
  • 山椒 2
  • 黒胡麻 1
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5

 

基本配合の唐辛子と山椒を増量、青のりをカットして六味に。

相手が塩焼き鳥ということでシンプル目に仕上げていきたい所存。

 

▼実食!

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▼びりっとくるぜ

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そもそもこの「塩焼き鳥」という存在とは何者であるか? 

「肉に塩」というシンプルさで勝負するそのハードコアぶりが持ち味の料理です。

その姿勢に敬意を表すべきと考えた私は、香りに存在感がある青のりを使わずにシンプルな構成としつつ、刺激のある唐辛子と山椒を増量して「真っ向勝負」な方向性に。

それが成功の要因でありました。

 

いやこれ、酒がすすむぜ。

 

肉じゃがを意識した七味

皆さんは肉じゃがに七味、かけます?

私はかける派です。さて配合は……。

 

▼カスタム七味、肉じゃがver.

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▼配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 黒胡麻 4
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 麻の実 0.5
  • 青のり 2

 

基本配合に黒胡麻と青のりを増量。

味が非常に濃い料理なのでパンチ強めに仕上げる。

 

▼実食!

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▼米が! 米がほしい!!

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ちょっとかけすぎに見えますか? はい、かけすぎましたね。

青のりは増やし過ぎるとお好み焼きみたいになるので注意が必要です。

言い方悪いですが、非常に下品な味付け……。

ですが! それを差し引いても「白米キラー」ともいうべき食欲をそそる青のりと大量の黒ゴマの芳香の波濤に抗うことはできません。

あっという間に1杯分のご飯を平らげてしまいました。

 

漬物を意識した七味

皆さんは漬物に七味、かけます?

私はメッチャくちゃかける派なんです。

今回は大根の浅漬けを用意しました。さて配合は……。

 

▼カスタム七味、漬物ver.

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▼配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 黒胡麻 4
  • 麻の実 0.5
  • フリーズドライゆず皮 1
  • 細切り昆布 2

 

基本配合の黒胡麻を大胆に増量、ケシの実(ポピーシード)は不使用。

さらにフリーズドライゆず皮、そして細切り昆布! これは七味なのか? というギリギリのライン。

どちらもよくある漬物に入っている素材なのでまあ合うだろうという安易と言えば安易な配合です。

 

▼実食!

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▼わかってた旨さ

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これは……旨いね、めっちゃご飯進みます。

 

でも当たり前で意外性がないですね、浅漬けに入れるものを後のせしただけですから……。

面白くない配合ですが、美味しいのは美味しいのでオススメです。

糠漬けにも合うかも。

 

唐揚げを意識した七味

唐揚げに七味、かけます? 

私はかけない派なんですが、今日はひとひねりして唐揚げ向けの配合を考えてみましょうか。

 

▼カスタム七味、唐揚げver.

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▼見慣れぬ新人が……

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 2
  • 花椒 2
  • 白胡麻 4
  • ケシの実(ポピーシード) 0.5
  • 青のり 0.5

 

基本配合の山椒は使わず、黒胡麻のかわりに白胡麻を大幅に増量。

そして揚げ物なのでフルーティな風を吹かせるための陳皮を増量。

さらには「花椒」をプラスし中華的痺れを加える。

また花椒の特徴として忘れられがちな「柑橘香」の付加も狙います。

 

▼実食!

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▼これは素晴らしい

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麻味マニアの私としてはたまらない痺れ加減。

ただ痺れるだけではなく陳皮と花椒のフルーティさが非常に強くて香りにスケール感ある味わい。

油分が多く、力強い味わいの唐揚げを向こうに回しても、一歩も引かない壮麗さがあります。

あと、白米にも合います。

 

こういう中華な素材も取り込める柔軟さが七味唐辛子という配合メソッドにはありますね。

 

白米を意識した七味

最後は白米。

七味をかけた料理は白米に合うということがわかったので「じゃあ白米に直にかければいいじゃん」という発想です。

 

▼カスタム七味、白米ver.

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▼配合

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【材料と比率】

  • 唐辛子 1
  • 陳皮 1
  • 山椒 1
  • 黒胡麻 1
  • 麻の実 1
  • 青のり 1
  • 細切り昆布 2
  • かつお節 大量に

 

ケシの実(ポピーシード)は外し、細切り昆布とかつお節を追加して旨味を増強。

これが七味かと聞かれれば、すいません七味じゃないですねもう。

コンセプトは「ふりかけ」です。

 

▼実食

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踊るかつお節!!!!

 

▼辛いな……

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ひとつわかりました。

白米に直でかけると、唐辛子の存在感が増して辛い。

いやけっこう辛いなこれ……まあかつお節と細切り昆布のおかげでご飯は進むのですが、妙なことは考えないで普通にふりかけを買いましょう。

むずいです。

 

まとめ

というわけでいろいろと配合しまくりましたが、結論としては「香りが強いものを多く入れると旨い」「意外と大失敗はしない」と言えますね。

 

通常、七味に求められる要素は「辛さ」である以上、市販品で尖った香りの配合はしづらいとは思います。

ですが、「自分の好みの香りはもっと欲しい」「料理に合わせた香りが欲しい」となったとき、自家配合により「市販品ではありえない思い切った配合」で料理に一味添えるのは非常に楽しくその時だけの特別感もあります。

 

また「意外と大失敗はしない」ということがわかったのが大きな収穫でした。

今回「これはちょっと……」と思ったのは白米の時くらいで、あとはとても美味しかったです。

 

成功のPOINTは以下。

 

・唐辛子は少な目を推奨

辛すぎるとほかの素材の良さが見えづらくなります。

 

・陳皮は超大事!

フルーティな香りとほのかな苦味が高級感を手軽にプラスできる、そのうえ多少入れ過ぎてもさほど他の風味の邪魔をしないのでとても使いやすいです。

 

・青のり入れすぎ禁止

お好み焼きになります。注意。

 

そして、

 

・自分の「基本配合」を見つけろ!

 

自分の好みの基本配合をもとにカスタムを施していくと素材の抜き差しで配合を検討できるし再現性も担保しやすいです。

 

はっきり言って好みの問題なので、とりあえず今回紹介した基本配合をもとにご自分だけの「基本七味」を研究してみましょう。理科の実験してるみたいで楽しいですよ。

 

あとは素材自体の自作も楽しそうですね。

 

▼今回は乾燥大葉を自作しましたが、陳皮を自作してる方もいるそうで

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という訳で皆さんも楽しいカスタム七味、ナイスな配合ができたら是非教えてください。

 

ではでは。

 

書いた人:ちみを

ちみを

1980年生。銀河で一番美味しく飯を喰らい酒を呑む才能を持ち、食と何かを無理やり結合させることを得意とする食コンテンツサプライヤー。昼はしめやかにリーマンを営む。好きな言葉は「牛飲馬食」。好きな女優は「80年代のかたせ梨乃」。

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