一口にジンギスカンと言っても、あらかじめたれに漬け込んである肉を焼く「味付け」と、肉を焼いた後にたれを付けて食べる「後付け」と、大きく分けて2種類があります。
かくいう筆者も北海道留萌市(るもいし)という道北の出身なのですが、小さい頃から自宅でジンギスカンを食べる時は、味付けと後付けそれぞれに慣れ親しんできました。
東京のジンギスカン屋では、どちらか一方を提供するのがスタンダードですが、その両方を楽しめるのが水道橋駅からほど近い「羊肉酒場 悟大 水道橋店」です。
入口に「味付け&後付け どっちも旨い!」と、こだわりを掲げています。
生ラム、味付けジンギスカンのバリエーションも豊富。
多彩な部位を取り揃えているのが、重ね貼りされた数々の写真からガンガン伝わってきます。
そんな本場・北海道の味を求めて水道橋にやってきたのは「フィロソフィーのダンス」。
今年、ソニー・ミュージックレーベルズよりメジャーデビューすることが決定している4人組アイドルグループです。2019年4月にスタートした初の地上波番組『フィロのス亭』では、散歩ロケで食リポにも挑戦しています。
しかし4人は数えるほどしかジンギスカンを食べたことがないということで、ナビゲーターとしてお呼びしたのが羊料理に詳しいフードライターの大谷悠也(おおたに・ゆうや)さん。
大谷さんにジンギスカンの食べ方をレクチャーしてもらいながら、フィロソフィーのダンスが食レポにチャレンジします。
網焼きでジューシーかつヘルシーに羊肉を味わう
店内に入ると、壁にはたくさんの短冊メニューがぶら下がり、ビール箱とべニア板で作ったテーブルが郷愁を誘います。
ジンギスカンによく合うニュージーランド産ワインの品揃えも充実。
北海道では中央部が凸型になっているジンギスカン鍋でラムやマトンを焼くのが主流ですが、悟大では、あえて「あみやき(網焼き)」で提供しています。そのほうが肉汁が閉じ込められてジューシーになるのと、余分な脂と水分が落ちてヘルシーかつ香ばしい味わいになるとのこと。
肉は北海道千歳市にある昭和26年創業の食肉生産・加工会社「肉の山本」から直接仕入れることで、新鮮な羊肉を安価に提供することができるそうです。
ジンギスカンを食べる前に、大谷さんのお話を伺います。
──「味付け」と「後付け」の両方を食べられるジンギスカン屋って珍しいですよね。
大谷:一緒に提供するのは珍しいですね。本場の北海道でも札幌などの都市部だと両方のジャンルが共存していますが、それ以外のエリアは片方であることが多いように思います。
佐藤:後付けって、普通の焼肉みたいに焼いた後にチョンチョンとたれをつけるってことですか?
大谷:そうです。
佐藤:後付けでしかジンギスカンは食べたことがないです。
大谷:東京は後付けのほうが多いですね。味付けタイプは焼肉というよりも、北海道では鍋料理のような感覚なんですよね。
──昨年あたりから、また都内にジンギスカンのお店が増えていますよね。
大谷:着実に増えてますね。みなさんお若いので知らないと思いますが、2004年ぐらいからジンギスカンブームがあって、一気にお店が増えたんですけど、2年ほどで廃れていったんです。ただ今回の場合はブームを超えて、ジンギスカンが定着している印象です。羊肉の人気自体が高まっていると感じますね。
十束:どうして増えたんですか?
大谷:ジンギスカンに抵抗感を持つ人が少なくなったんでしょうね。昔は硬くて、臭くて、まずいというイメージがあったんですけど、物流が良くなったので、おいしい羊肉がどんどん入ってくるようになったんです。
ジンギスカン以外でも、羊料理のバリエーションが定着したのも大きいでしょうね。たとえば最初からジンギスカンだと抵抗があっても、羊肉が入ったカレーならば食べられる。そうして食べているうちに羊肉のファンになって、ジンギスカンのおいしさにも気付いていくのではないでしょうか。
奥津:そもそも羊肉が臭いってイメージはないですね。
日向:ライブで北海道遠征をした時に、初めてジンギスカンを食べたんです。全然臭くないし、めちゃめちゃサッパリしているので、おなかがいっぱいにならなくて延々と食べてました。
大谷:羊肉は脂の溶ける融点が高いんです。なので、おなかの中に入っても吸収されにくくて、固まったまま出ていくのでヘルシー。そういうお肉なので、食べても食べてももたれないんですよね。
奥津:そのためかアイドル仲間でもジンギスカン好きは多いですね。
大谷:あまり馴染みのない食べ物は女性のほうが興味を持つことが多くて、そこからブームが起きるんですよね。なので羊肉好きは女性のほうが多い気がします。
羊肉特有の匂いがクセになる
奥津:ラムとマトンの違いを教えてください。
大谷:年齢の違いですね。生後1年未満がラム、生後2年以上がマトンと区別されることが多いです。ラムとマトンの間はホゲットと呼ばれます。ラムは仔羊に近いので、比較的に癖がありません。成長するに従い、餌(草)を食べる量も増えるので、マトンは特有の香りが出てくるんです。ただ、羊肉好きになると、むしろ香り、匂いのあったほうが好きという人が多いですね。
十束:マトンと聞くとカレーのイメージが強いです。
大谷:マトンはスパイスの効いた料理との相性がいいですからね。
奥津:ラムもマトンもひっくるめてジンギスカンなんですか?
大谷:両方出しているお店が多いですね。どれだけ羊肉のクセを楽しめるのかによって食べ分けるといいでしょうね。
十束:私はジンギスカン初心者なんですけど、初めてでも食べやすい部位はどれですか?
大谷:ラムの赤身の部分ですね。羊の特徴として、脂の多い部分は匂いが強くなるんです。脂の乗ったマトンは、かなり匂いが強いですからね。なので初めての場合は、お店の方に「赤みを多めに出してもらえますか」と相談してみるのがいいかもしれません。同じ部位でも切り方によって、味も変わりますしね。
悟大さんのようにメニューのバリエーションが多い場合は、お店の方に聞くのが間違いないです。僕も、いろんなジャンルの料理を食べ歩いてますけど、やっぱりお店の人が一番詳しいですからね。
佐藤:味付けと後付けで、どっちを先に食べたほうがいいってありますか?
大谷:肉本来の味を楽しみたいなら、最初はさっぱりと後付けで食べたほうがいいでしょうね。
どんどん羊の匂いが好きになっていく
いよいよ実食。その前に乾杯です。
大谷さん、奥津さん、佐藤さん、日向さんがオーダーしたのは、2019年にサッポロビールが発売したクラフトビール「SORACHI1984」(660円)。他にも悟大で扱っているビールは、全てサッポロビールです。十束さんがオーダーしたのは、夕張メロンシロップを使用したラムハイ「夕張ラムハイボール」(495円)。
1品目は羊のタン元の芯のみを使った希少部位の「特上タン」(一人前 1,100円)。
悟大スタッフ:軽く塩コショウを振ってあるので、焼いた後は、たれをつけずに食べてみてください。
佐藤:ジンギスカン屋さんでタンを食べられると思わなかったです。
大谷:悟大さんは部位に力を入れているので、モツ類が充実していますね。いろんなモツを提供しているということは、それだけ鮮度が高い証拠です。
日向:焼き方はありますか?
大谷:網に乗せたら、しばらく置いて大丈夫です。牛肉と一緒で、肉汁が軽く出てきて汗をかき、淵の色が変わったところでひっくり返して、軽く焼き上げればバッチリです。要は焼き過ぎなければいいんです。細かいことを言っていると焼肉は楽しくないですからね。
十束:先生のひっくり返し方が、めちゃ丁寧。
日向:おいしい! 羊の匂いはするんだけど食感がタンだ。
十束:全く臭みがないです。
2品目は羊の「特上肩ロース」(一人前 1,100円)。
日向:おいしい見た目をしている。
奥津:おいしさのプレゼンがすごいね。
店員さんが食べやすい大きさにカットしてくれました。
奥津:特上肩ロースは何を付けて食べるのがおすすめですか?
悟大スタッフ:モンゴルの岩塩をご用意しているので、それを少し付けて羊の味を堪能してください。
日向:ふわふわじゃん!
十束:すごく柔らかいんだね。
佐藤:おいしい。いくらでも食べられる。
3品目は羊の「ショルダー」(一人前 935円)。
佐藤:脂が甘いよ。ほどよく脂っぽくて美味しい。一生、この脂噛んでられるわー。
十束:ずっとお口の中にあったらいいね。もう羊が臭いって概念がなくなった。
奥津:どんどん羊の匂いが好きになってくるね。
4品目は「ラムチョップ」(一本 858円)。
佐藤:これは見た目からしてヤバい。
奥津:私、骨付き肉が大好きなんです。骨の周りが一番うまいと思ってるので。
大谷:間違いないですね。骨付き肉は特別感がありますしね。
佐藤:煙が大変なことになってる。
大谷:今までの部位とは脂の量が違いますからね。
日向:骨までおいしい!
十束:もう我慢できない。ごはん頼んでいいですか? せっかくなので、この北海道らしい「たらこバター飯」(440円)をください。
十束:ラムチョップとバターとたらことごはんの相性が抜群です。これは毎日食べたくなる。
味付けジンギスカンは1切れでごはん一杯食べられる濃厚な味
悟大ではお酒の飲めないお客さんのために、北海道限定のソフトドリンクも充実しています。奥津さんと日向さんは2杯目に「ハイボール」を頼みましたが、乳酸菌飲料好きの十束さんは「ソフトカツゲン」(385円)、あまりお酒の飲めない佐藤さんは炭酸飲料の「ガラナ」(385円)をオーダー。
十束:すごく乳酸菌を感じますね。さっぱりした飲み口で、小さい時に飲んだことがあるような懐かしい味です。
佐藤:これが良い表現なのか分からないですけど、小さい時に、ガラナの味に似た風邪薬を飲んだ記憶があります。薬なので少量しか飲めないんですけど、もっと飲みたかった記憶が蘇ってきました。かなり好きな味です。
5品目は味付けジンギスカンの「ラムロース」(一人前 825円)。
大谷:味付けジンギスカンは焦げやすいので早めに食べたほうがいいです。
日向:甘い~。後付けと味わいが全く違いますね。
十束:スタミナ付きそう。
佐藤:しっかり漬け込んでいるからジンギスカン初心者でも食べやすい味。
6品目は味付けジンギスカンの「マトンロース」(一人前 825円)。ラムロースよりも肉の色が黒みがかっているのが特徴。
奥津:1切れあったらごはん一杯食べられるぐらい味が濃厚。でも臭みがないから食べやすい。
──ジンギスカンメニューを6品食べていただきましたが、それぞれの一押しを発表してください。
佐藤:特上肩ロースですね。さっぱりしているし、柔らかいし、たれで食べてもお塩で食べてもおいしくて、クセもなくて初心者向けだと思います。
日向:同じく特上肩ロースです。高級感があって上品な味でした。
十束:食べやすさではショルダーですけど、マトンロースに衝撃を受けました。羊の匂いは強いんですけどコクがあって食べごたえがありました。
奥津:特上タンですね。ちょうどよい厚さで、プリプリした食感が最高でした。
大谷:今日はみなさんの楽しそうに食べている姿を見ているだけで十分おいしさが伝わってきました。もっとジンギスカンを好きになってくださいね。
ジンギスカン初心者からマニアまで満足させるメニューの幅広さとクオリティの高さ。酒飲みも下戸も満足できるバラエティに富んだドリンク類。
悟大は大勢でわいわいと羊肉を堪能できる聖地でした。
撮影:西邑泰和
お店情報
羊肉酒場 悟大 水道橋店
住所:東京都千代田区神田三崎町3-8-4 江戸川ビル1階
電話:050-5257-5655
営業時間:16:00~23:00
定休日:年中無休