はかりしれない衝撃度!チャーハンしっとり派が一目置く板橋「龍王」の超目玉新メニュー「ナスバター炒飯」

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東京都内、JR板橋駅近くに、夕方となるとサワーが180円で飲めてしまう激安な中華居酒屋さんが存在する。お店の名は「龍王」という。

 

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酒場激戦区にあって、勝ち抜くために単に安さを売りにしているのではない。外観からもうかがえるように、このお店の持つ独特のオーラ、みんなこれにハマっていくのだ。

 

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店内に入ると掲示されているように、サワー類はハッピーアワーなどという限られた時間ではなく、夜の部オープンから23時までその安さが続く。

 

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さらに、つまみはALL350円、その他定食にもなる一品メニューが500~600円台が大半。

 

「キムチ炒飯」の破壊力

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この「龍王」、店内は床やテーブルがアブラーな仕様になっているが、フレンドリーで気の置けない接客に、いつの間にか大して気にならなくなってしまう。

 

こうしたお店の空気感も含めて「龍王」の魅力なのだが、もちろん雰囲気だけのお店ではない。

以前に取り上げた「丸鶴」と並んで、私が『マツコの知らない世界』(TBS系列)の「板橋チャーハン」を代表する1軒として紹介し、ご出演いただいた。

www.hotpepper.jp

 

その時に紹介された、巨大なドーム型の炒飯の上にキムチの山が覆いかぶさる「キムチ炒飯」の迫力は、いまだ多くの人の脳裏に焼き付いているようで、語り草になっている。

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▲龍王の「キムチ炒飯」(650円)。キムチの酸味と炒飯の米の甘みと油のコクが実にマッチしている

 

安ウマ大盛の見本市

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定食やセットメニューもお得メニューの名の通り、ビックリするほどお得すぎる。

 

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野菜炒め定食の530円に始まり、

 

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ラーメンと半麻婆丼が550円、

 

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炒飯と餃子のセットが650円。

 

普通で山盛りサイズの炒飯単品500円と激安なのに、半餃子でないフルサイズ、しかも大きめのジャンボ餃子5個を+150円で付けられるとは、正気の沙汰とは思えない。

お店として大丈夫なのか心配になるレベルだ。

 

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▲餃子300円は皮が厚めで、肉汁が飛び出るほどジューシー

 

これだけでも十分スゴすぎるお店なのだが、今回取り上げたのには理由がある。新たに開発された炒飯の新メニューを、たまたうかがった際、偶然にも発見した。

 

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それがこの、「ナスバター炒飯」(700円)だ!

 

ナス好きとしては一も二もなく注文。出てきたそれは、ブロック状のナスがゴロゴロと大量に入り、しかもハムとチャーシューというW肉まで混在する代物だった。

ナスはトロトロになるまで火が入り、これがべらぼうに甘い! 対して、肉は大きく食べ応え抜群。米はバターで炒めているが、ピラフではなくあくまで炒飯。バターの乳のコクとナスの甘みとの相性が素晴らしく、どうして今までこの組み合わせがなかったのか、不思議に思えてしまうほど── 。

こんな天才的発明をしたご主人に、このお店の経緯を含め、お話をうかがわずにいられなかった。

というわけで、お父さんは中国語しか話せないので息子さんに通訳してもらうことで、取材が実現した。

 

経営者親子にインタビュー

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▲左:調理担当の父、楊利波(ヨウ・リハ)さん 右:フロア担当の息子、楊潤浩(ヨウ・ジュンコウ)さん

 

── こちらオープンは?

 

息子:お店自体は2004年からあったんですけど、それまでは別の方が営業してました。2006年にお父さんが先に日本に来て、料理人としてお店に入りました。私はその1年後に来日したんです。

 

── お父さんが日本に来られたキッカケは?

 

父:中国に住んでいたとき、町の中でも有名な中華料理店に勤めていて、同じ料理人仲間も結構日本で中華料理の仕事をしている人が何人か出ていたのもあって、誘われたんですよね。

 

── 日本でやってみないかと。

 

父:そうそう。

 

日中の中華料理はどう違う?

── その故郷で有名なお店というのは、中国のどの辺の、どういった料理になるんでしょうか?

 

父:東北部ですね。

 

── 東北料理の特徴ってあるんですか。四川みたいに辛いとか?

  

父:うーん、普通かな。でも日本人にしたら、十分すぎる辛さかもしれませんね。

 

── 火鍋メニューもありますよね。春雨のをいただいたことありますが、結構本格的な辛さでしたが、おいしかったです!

 

息子:そう? アレでレベル2くらい。中国では普通の辛さ。でもウチが今出してる料理は辛くない料理が主流です。辛いのがダメなら、青椒肉絲とかいろいろオススメがありますね。

 

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▲火鍋メニュー。「辛味」とわかりやすく表記している。鍋といっても1人前の適量で、ツマミとしても食べやすい

 

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▲息子さんオススメのチンジャオロース(650円)

 

── お父さんが中国の故郷で有名な中華料理店、そこで作られていた味と、いま板橋で出されてる味とは違いますか?

 

父:違いますね。

 

── 中国の味を板橋で出したいという思いはありませんか?

 

父:一時、味を変えないものをお客さんにサービスで出してみたこともありましたが、味を受け付ける人とそうでない人がハッキリ分かれますね。半分も食べられない人もいますね。

 

── その結果として、日本人に合わせる方向にしようと。この間いただいた麻婆丼の麻婆豆腐、あれはほとんど辛くないですもんね。

 

父:あれは日本のお客さんの好みに合わせて抑えてます。レベル1くらい。

 

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▲辛さのレベルが1という麻婆丼(380円)。ピリ辛な中に甘みも感じる

 

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▲筆者が個人的に大好物の麻婆茄子丼(650円)。麻婆豆腐より辛みが若干強めに感じる。ひき肉の食感と甘みが効いている

 

── でもお父さんとしては、麻婆豆腐はもっと辛くないと物足りないって感じますか?

 

父:いえ、今お出ししている麻婆豆腐が一番だと思ってます(笑)。

 

息子:お客さんのリクエストがあれば辛くしますよ。ただ、たまに、辛い料理をまったく辛くしないでくれって言われることがあるんですけど、例えば担々麺とか、それじゃおいしくないじゃんって思っちゃいますけどね(笑)。

 

── 辛い料理を頼む意味がないですよね。日本人は辛いのは全然受け付けない人と、平気な人の差が極端なんですよ、たぶん。

 

息子:激しい激しい。テレビでも激辛とかやってるけど、そういうのも食べられる人いますし。永遠に答えが出ないというか、難しいですよね。

 

「ナスバター炒飯」が出来るまで

── 個人的には丼物が充実しているのがうれしくて、深夜にガッツリ栄養補給したい時にスタミナ丼は何度もお世話になっていて、そのたび元気をもらっています!

 

父:ありがとうございます。

 

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▲個人的に一番注文しているスタミナ丼(580円)。豚肉他、ネギとニラがたっぷりでスタミナ満点! 豪快に混ぜてかっ食らうのが流儀

 

── おつまみのメニューもいっぱいありますけど、あれもあまり辛くないメニューばかりですよね。

 

父:棒々鶏の豆板醤くらいかなぁ。

 

── 飲む人がツマむ用のメニューなんで、そういうお客さんに合わせているということなんですか。

 

息子:そうそう、枝豆とか冷奴とか唐揚げとか、そんな感じ。

 

── 中でも、個人的なイチオシはナス揚げなんです。あれスッゴくおいしいですよね。熱が入ってナスがトロトロで。で、今回新メニューに登場した「ナスバター炒飯」も、ナスが甘くなるまでシッカリ炒められてて感激したんですけど、お父さんナスお好きなんですか?

 

父:特別好きというわけじゃなくて、ナス揚げがすごく人気あるから。

 

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▲ナス揚げ(350円)。フライドポテトのようにホクホクで甘みがあって、一度食べたら止まらない味!

 

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▲トロトロになるまで火が入ったナス。これが甘さの秘密。

 

── やっぱり評判メニューなんですね!!

 

父:それに、今はやっぱり炒飯が人気あるから、それを2つ合わせればイケるんじゃないかって。

 

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▲ナスバター炒飯(700円)をアップで見てみると、ナスの実の部分がサツマイモのように黄色くなるまで熱が入っているのがわかる

 

── なるほど。でも炒飯にナスを合わせようという考えはなかなか出てこないと思うんですよ。お父さんアイデアマンですね。だって、そもそも生のナスって硬いんで、トロトロになるまで火を通すのって時間かかって大変じゃないですか?

 

息子:時間かかるよ! 忙しい時に限って、ナス揚げや「ナスバター炒飯」がいっせいに注文入るんですよね(笑)。

 

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▲「ナスバター炒飯」を調理中のお父さん。ナスにしっかり火を入れて炒めるのがコツなのだとか

 

炒飯は日中共通アイテム?

── 炒飯といえば、2年前にテレビに出ていただいて、その時の反響ってやっぱりすごかったですか?

 

父:すごかったですよ。最初は思っていた数の倍以上来ましたから。でも今はテレビに出る前の標準くらいに戻ったかな。でも、出てよかったと思っています。

 

── テレビでは炒飯が取り上げられたので、炒飯ばっかりの注文になっちゃったと思うんですけど、炒飯って日本で独自に発展した料理じゃないですか。

 

息子:えっ、そうなの?

 

── あ、中国でも日常的に食べられるんですか?

 

息子:普通にあるよ。

 

── 中国の炒飯と日本の炒飯って一緒なんですか?

 

父:たぶん、そんなに違わないですね。中国で一般的な炒飯が、日本でいう五目炒飯に当たります。

 

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▲龍王で出されている炒飯(500円)。しっとりしているのは日本独自かと思っていたが、こういうものが中国でも食べられているとは!?

 

── へぇ、そうなんですか!? てっきり、昭和30年代の町中華で労働者メシとして、調味料とラードでこってりした炒め物が独自に進化したものかと思ってました。中国でも評判メニューなんですか?

 

息子:食べたことあるかは別にして、名前は全員知ってるはずです。

 

── なるほど。認知はされてますが、日本みたいにみんなよく食べる定番メニューではないと。では、このお店でお父さんイチオシのメニューはなんですか?

 

父:「ナスバター炒飯」です!

 

── 新メニューがいきなりおすすめに。独自に開発したメニューだけに思い入れがあるんですね。

 

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▲そんなわけで、しつこく再掲

 

親子で受け継がれる板橋の味

── では日本で作り上げたこの味を、この板橋で息子さんに継いでもらいたいですか?

 

父:そうですね。せっかくこの街で作り上げた味であり、地元のお客さんが愛してくれているお店ですから、可能な限りやり続けてもらいたいですね。

 

── 息子さんは、お父さんのお仕事を継ぎたいというお気持ちはありますか?

 

息子:お父さんがもし辞めるとしたら、私が厨房に入るかなぁ。

 

── では、将来的には、ずっと日本でこの仕事を板橋で続けていかれるんですね。

 

息子:そうそうそう。

 

── 中国に帰る予定はないと?

 

息子:お父さんは仕事出来なくなったら中国戻るみたい。そうなったら、私がこのお店をやります。

 

── これからも安くてボリューム満点のこのお店が、父から息子へと受け継がれることを楽しみにしています。今日は誠にありがとうございました。

 

早い・うまい・安い上に、日付が変わるまで営業してくれているので、仕事で帰りが遅くなり、晩飯難民になるところを助けられた板橋民には、自分だけではあるまい。
この先も、この頼もしくも優しい親子の作り出す味と空気感は堪能できるという頼もしい言葉もいただけた。
その中で、「ナスバター炒飯」のような更なる新しい味、そしてお店としての進化に大いに期待することとしよう。

こういうお店が街にあるということが貴重でありがたいことだと思う。探せば案外近くにあったりするもの。地域に根ざしたお店を見つけて、ぜひ味わっていただきたい。

 

お店情報

龍王

住所:東京都板橋区板橋1-49-3 ライオンズマンション1階
電話:03-6780-0329
営業時間:11:30~15:00、17:00~24:30
定休日:無休

 

書いた人:刈部山本(かりべ やまもと)

刈部山本

スペシャルティ珈琲&自家製ケーキ店を営む傍ら、ラーメン・酒場・町中華・喫茶で大衆食を貪りつつ、産業遺産・近代建築・郊外を彷徨い、路地裏系B級グルメのブログ デウスエクスマキな食卓 やミニコミ誌 背脂番付 セアブラキングザ・閉店 などにまとめる。メディアには、オークラ出版ムック『酒場人』コラム「ギャンブルイーターが行く!」執筆、『マツコの知らない世界』(TBS系列)「板橋チャーハンの世界」出演など。

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