いつまで秋なの……と思うほど暖かい日が続いたかと思ったら、急激に底冷えする冬へと突入しました。寒いです。でも、寒い寒いとつぶやきながら帰宅し、部屋が暖まった頃を見はからって食べるアイスは至高です。
電気ストーブの遠赤外線に当たりながら、ぬくぬくの状態で冷たいアイスを頬張るぜいたく。ふと外を見れば木枯らしが吹き荒れており、より一層今ここにある幸せが実感できるものです。
そんな大好きな冬アイス。筆者の定番は大阪・戎橋商店街に本店を構える「北極」のアイスキャンデー・ミルク味です。
しゃくしゃくおいしいミルクアイスが舌の上でとろけ、甘い牛乳となって喉に落ち込んでいく感覚。1本食べ終わる頃に、ちょうどほてった顔が冷えてリフレッシュできるほどよい量。じつにじつに、冬アイスにぴったり。ぜひみなさんに食べていただきたいと思うのです。
昭和20年に創業し、アイスキャンデー一直線で営業する名店「北極」。長年使われているロゴとペンギンのキャラクターに親しみを感じる関西人も多いはず。
今回はそんな「北極」の久保田社長にお話しをうかがいました。
歴史ある甘味どころ「北極」
▲3代目の久保田社長
時は終戦後すぐの昭和20年。まだ物が十分にない混乱のさなか、「子どもたちに冷たくておいしいアイスキャンデーを味わってもらいたい」と考えた初代がアイスの販売を始め、「北極」が誕生します。
ーー当時はどんな状況だったんでしょう。
久保田社長:モノのない時代でしたので、お砂糖も配給でなんとかまかなう状態。そんなわけでうちのアイスキャンデーも1本20円、今でいうラーメン1杯と同じくらいの価格で、すごく高級なものだったんです。でも、甘いものやおいしいものを求める声が多く、お客様はたくさん来てくださいました。お店の前は行列になるほどだったようですね。
ーー当時から行列ですか! 素晴らしいですね。
久保田社長:幸いなことに多くの方にアイスキャンデーを気に入っていただいたので、もう少し規模を拡大しようか、と相談をしていたんですが、その矢先に初代社長の父が亡くなってしまいます。
ーーええっ。それはどうして……
久保田社長:交通事故でした。若くしてこうなってしまい、父も無念だったと思います。その後は母がお店を継いで、昭和30年にアイスキャンデーのほか、あんみつやわらび餅などの甘味と、オムライスやミートスパゲティなどの軽食を置く喫茶店として再スタートしました。
ーー「北極」といえばアイスキャンデーというイメージでしたが、軽食も出されてたんですね。
久保田社長:おかげさまでとても好評だったようですね。当時はお見合いの場所として利用されることも多く、「北極でセッティングすると成立する」なんてうわさもありました(笑)。
ーーアイスキャンデーを中心に販売する、今の形になったのはどういう経緯ですか?
久保田社長:まわりに同じようなお店がいっぱいできまして。その時は母が経営してたので詳細はわからないのですが、差別化を図るためにアイスキャンデーに絞ろうということになったようです。
アイスキャンデーへのこだわり
ーーこれだけ長く営業されてると、長年買い続けているファンも多そうです。味は昔から変えていないそうですね。
久保田社長:はい、味だけは徹底して守っています。お砂糖は創業当時から変わらずにザラメを使い、甘いながらも後味すっきりで何本でも食べられますよ。あと、北海道の十勝産あずきを100%使っていて、豆がつぶれないようにじっくりと炊き上げているのも特徴です。
▲豆の風味とすっきりとした甘さが特徴のあずき(130円)
久保田社長:それから、ヒノキを使ったアイスの棒も創業当時から変えていません。アイスの棒って普通は白樺の木を使うことが多いのですが、白樺を使うと独特の香りがして気になるんですよね。ヒノキだと、口の中に入れた時にすごく上品。長さも太さも発売当時と同じように仕上げてもらっています。
▲棒をくわえるとヒノキの香りがほんのり漂う
久保田社長:アイスを入れる箱も当時と同じデザインです。お客様も「変えないで」とおっしゃるので、今後も変えることはないでしょうね。
▲ペンギンのイラストが、なんともレトロかわいい
持ち運びのできるアイス
ーー持ち帰る時、箱の中にドライアイスを詰めてくれるから家に帰っても全然溶けていないんですよね。これもヒットのポイントだったのかなと思うのですが。
久保田社長:アイスって、普通だったらその場でしか食べられないものですからね。ドライアイスを入れて持ち帰れるようしたのも、個人店舗ではうちが初めてだったみたいです。これで和歌山でも奈良でも、東京でも持ち帰れるようになった。発砲スチロールに入れてドライアイスを詰めれば、24時間は大丈夫です。
ーーだからお土産としても重宝されたと。
久保田社長:そうだと思います。今でもドライアイスは店舗でコツコツ砕いて、アイスキャンデーの箱に詰めています。手作業なので箱に入れるのにちょうどいい大きさに調節できるから、持ちもいいんです。
▲木づちでガツガツ小さくしていく
ーー持ち帰って、自宅で自分なりにアレンジしても楽しそうですね!
久保田社長:そうですね。うちのアイスキャンデーは雑味が少ないので、アレンジするにはもってこい。ホームページ上でも、アイスキャンデーをワインに入れたりハイボールに入れたり、楽しみ方の提案をしているんですよ。
これまでアイスキャンデーはそのまま食べるのがいちばんだと思っていましたが、社長おすすめとあれば筆者もぜひアレンジにチャレンジしてみたいところ。
寒空の下、急いで数本買ってきました。
電気ストーブにあたりながらそのまま食べてしまいたい欲望をこらえつつ、粛々とアレンジしていきます。
ミルク味でやってみた
やっぱりアイスキャンデーの王道はミルク味。
いろんな味に染まってくれそうな、可能性を感じます。
①塩とオリーブオイル
スイカに塩の原理です。
冬は”こくウマ”な味わいが求められる季節なので、オリーブオイルが冬らしい濃厚リッチ感をプラスしてくれるかと。
おぅ、これはかなりオリーブオイルがガツンとくるな……。
油×アイスなのでそりゃそうなのですが、とても濃厚。というか、ちょっぴり胸焼けに近しい感じに……。
でも、塩だけの部分は甘みが引き立ってバッチリおいしいです。何事もやりすぎは禁物のよう。
②コーヒーリキュール
最初からちょっと冒険しすぎてしまったので、間違いないやつを試します。これは絶対においしいはず。
やっぱりうまい……!
スプーンですくって食べると、甘〜い大人のデザートみたいになります。
もうこれでいいじゃないか。これ以上何かをトッピングする必要はないのでは。
③バナナと小松菜
コーヒーリキュールで完成されている感はあったのですが、そんな思いを吹っ切ってスムージーを作ってみることにしました。
んんっ、おいしいのだけれど、甘すぎるきらいが……。
バナナが余計だったかもしれません。
アイスキャンデー自体に濃厚な甘みがあるので、果物だけでも甘みの許容範囲オーバーになってしまうのかも。
④ココア味×バゲットと卵
ココア味でも試してみたいと思いました。フレンチトーストを作ります。
先ほどの教訓を生かして、加糖要素はなしでシンプルに。ココア味と卵を混ぜて卵液を作り、バケットを浸して焼きます。
お、おいしー! こりゃたまげました。
正直アイスを溶かしたり卵液を浸すためのバットを用意したりと作るのは手間ですが、そんなことどうだっていい、ただうまい、と大絶賛できる味。
ココアのほろ苦さとクリーミーさが、熱を入れることでぐっと際立ちます。通常の卵液より染み込みにくいので、長時間浸すのがおすすめ。寒い朝、ホットミルクと一緒に食べればほっこり温まれること間違いなしです。
というわけで、アイスキャンデーアレンジのおすすめランキングはこちら!
1位:ココア味×バゲットと卵(フレンチトースト)
2位:ミルク味×コーヒーリキュール
ーーーーーー超えられない壁ーーーーーー
3位:ミルク味×バナナと小松菜
4位:ミルク味×塩とオリーブオイル
1位と2位がおいしすぎて、3位と4位がものすごくかすんでしまいました。
とくに1位のフレンチトーストは、手間はかかるけれどその分すごくおいしいので、時間と心に余裕がある時にぜひチャレンジしていただきたいです。
冬×北極のアイスキャンデー=幸せ
そのまま食べるのはもちろん、アレンジすればより一層おいしさが深まる北極のアイスキャンデー。
濃厚なミルクの風味としっかり甘めのテイストが、やっぱり冬にはぴったりです。さむい日にぬくい部屋でつめたい1本。ぜひお試しあれ!
お店情報
北極 本店
住所:大阪府大阪市中央区難波3-9-22
電話番号:06-6641-3731
営業時間:10:00〜22:00
定休日:なし
ウェブサイト:https://hokkyoku.jp/