燻製をしよう。どんどん燻製を
私は燻製が好きだ。燻製の本を編集したこともあるし、自宅で薫製をすることも多い。
本格的にやろうと思うと大変だが、最近では簡易スモーカーも売られているので、自宅で簡単に燻製を楽しめる。
▲今回はこの商品のお話をします
燻製には簡単にいうと3種類の方法がある。
熱燻、温燻、冷燻だ。
燻製する温度によって向いている食材や、燻す時間が異なる。
本格的にやろうと思ったら仕込みに数日かかるし、燻して乾燥させる時間を考えたら1日がかりの仕事になる。面倒だ。
▲簡易燻製のイメージ。台所で5分燻すだけでこんな立派なあめ色に変身する
ただ、燻製の風味を楽しみたいなら数分燻製するだけで、十分に豊かな煙の味わいを楽しむことができる。過去に簡易燻製の記事を書いたところ、大きな評判となったことからもその注目度がわかる。
基本的に、燻製は簡単に手軽にできるのだ。
ただし、簡易燻製では難しいジャンルがある。それが「冷燻」だ。
難しい「冷燻」が食卓の上でできてしまう
新しい製品が世に出ようとしている。
卓上フードスモーカー「REIKUN-Dome」だ。
通常は下から上へ昇る燻煙が、独自の構造デザインにより上から下に落ちてドーム内に充満するよう設計されているという商品だ。
どういうことか。実際にその様子を見てみよう。
▲ガラスドームの上で燻製のウッドを燃やす仕様になっている
「REIKUN-Dome」は底が抜けたガラスの容器になっている。上部には燻製の煙を発生させるウッドを入れることができる。このウッドに火をつけて、その容器をスポッとお皿にかぶせる。
▲こうなる
ウッドに火をつけると煙が発生する。
煙は通常上にいくが、この製品の構造上煙は下に落ちて、容器内に充満する。
冷燻でつくる代表選手であるスモークサーモンなどは、ちょっとでも熱が入ると、素材のフレッシュさが失われてしまう。だが、この製品は容器内の温度はほとんどあがらず、食材に燻製の香りをまとわせることができる。
つまり、簡単に冷燻ができるのだ。
なんだかワクワクしてきた。さっそく煙を使って楽しもう。
なんでも燻製してみよう
▲今回使った食材はこちら
このプロダクトは、自宅の食卓で簡単に燻製を楽しむことをイメージして試作された。
実はまだ一般発売前で開発中の製品なのだが、燻製に異常な興味を示す担当編集M氏がこれに目をつけた。燻製にこだわる男は、たいてい私生活でも細かく面倒くさい人間が多いという個人統計があるのだが、M氏はそんなことない。
原稿の締め切りが遅れても、優しく何度も何度も繰り返し昼夜を問わず催促してくれる器の大きい男である。きっとこの製品も素晴らしいものに違いないし、この原稿も早く入れないといけない。
▲燻製界の難敵スモークサーモンがこんな簡単にできるとは
燻製をちょっとでもかじったことがある人なら、スモークサーモンの難しさがわかるだろう。煙をまとわせるために燻製器に入れると、すぐに庫内の温度が上がってサーモンに火が入って固くなってしまうのだ。
過去に私がスモークサーモンに挑戦したときは、燻製ウッドを燃やすダンボールと、サーモンを入れるダンボールをふたつ用意して、それらをパイプでつなぐという大仕事になった。
▲私は絵が本当に下手だ。絵心のある妻にリライトをお願いしたら断られた
出来上がったサーモンは、おいしかったがとても面倒だった。
だが、このプロダクトならばあのスモークサーモンが、こんなに簡単にできる。これはエポックメイキングだ。他の食材もどんどん燻製していこう。
▲うまい棒専用の燻製容器もあるようだ(違う)
▲写真はこの製品をプロデュースした株式会社UPQの中澤さん
「自宅でのひとり飲み」を豊かにしたいという思いからこの製品を思いついたという中澤さん。その気持ち、わかります、わかります。
燻製が簡単にできたら、これ以上ない幸せです。
さらに、燻製器具には汚れがつきものだが、スモーク中の汚れや経年劣化を味わいとして楽しめるよう、パーツデザインには真ちゅうやアイアンなどアンティークっぽい部品を使用したりしている。
燻製は男のものというイメージが強いが、女性ならではの視点は新鮮である。オシャレな見た目はホームパーティーにも重宝されるに違いない。
なんだか欲しくなってきた。
▲私はただ座って燻製を待つ。喜びと期待に満ちた表情である
燻製を待っている時間。それは、食材に神様が宿る時間である。私の名言だ。
燻製の神様は、どの食材にも煙の魔法をかける。ただし、相性がよくない食材もある。
本当に「煙の魔法」はかかるのか
▲できあがった。いい感じである
先ほどから比べるとそれぞれの食材は茶色く色づいている。食材が茶色くなるのはおいしさのサイン。さっそくいただこう。
▲いただきます
燻製は、お酒にあわせると最高のつまみになる。
ただし、この取材は午前中で、その上、私は前日の深酒がたたってひどい体調だったため、今日は酒の用意はない。おかげで冷静に燻製の味を確かめることができる。
不幸中の幸いだ。ここからは抜粋して感想をお伝えしていきたい。
ようかんの燻製
▲ようかん
中澤:あ、おいしいですね。
キン:おいしいおいしい、燻製の風味を軽くまとって味に深みが出ていますね。
はんぺんの燻製
▲はんぺん
中澤:これもおいしい!
キン:練りものの燻製はあいますね。うん、もっと時間をかけて燻製してもいいかも。
▲うーんという食材もある。鰹(カツオ)のタタキの燻製はイマイチであった
サーモンの燻製
▲期待のスモークサーモンはオリーブオイルと塩で
中澤:これはおいしいです。
キン:こりゃうまいわ。本来は下味をつけるものなので、塩を強めに振ったほうがいいかもしれませんね。しょうゆをかけてもうまい。
スナック菓子の燻製
▲うまい棒チーズ味
中澤:チーズ味にはあいますよね。コーンポタージュ味はあわなかったんですけど。
キン:えー、そうかな。意外とあうような気もします。いろんな味を試すのもいいですね。
インスタント焼きそばの燻製
▲そして期待のインスタント焼きそばだ。私はこの味わいを知っているので期待に満ちたドヤ顔をしている
中澤:これはおいしい!
キン:スパイシーなソースと、燻製の煙がマッチしてなんとも言えない深みのある絶品焼きそばに進化しますよね。これ、わたしも大好物です!
▲燻製したしらすをインスタント焼きそばにあわせるという必殺技を繰り出す中澤さん
燻製はおいしい。
時間をかけたほうがおいしいのだろうけど、簡単にできたらもっとうれしい。
燻製が食卓でできる、それはなんて豊かな人生だろう。
▲スタジオでお湯が沸かせなくて、急きょインスタント焼きそばを購入したコンビニに戻ってお湯を入れてきてくれた広報さん。ありがとうございました!
燻製のある暮らしは、あなたのすぐそばまできている。
「REIKUN-Dome」はまだ開発段階であり一般販売前だが、クラウドファンディングで資金を調達中*1だ。本気で早めの製品化を期待したい。
*1:2019年3月4日現在
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)