福岡市の繁華街・天神と歓楽街・中洲の間にあって、近年小ジャレた飲食店が増えて注目されている春吉エリア。そんな春吉エリアにあって、小ジャレた感じとは程遠い（失礼！）カオス感漂うロックな大衆中華のお店がある。中華料理店、と言うよりは「町のラーメン店」と言った方が正解だろう。店の名前は「胡同（ふうとん）」。中国の古い言葉で、井戸など水が出る場所を意味し、井戸端のように人が集まる場所を指すらしい。
▲外から張り紙や黒板、ホワイトボードのアピールですでにカオスな雰囲気
「胡同」の基本メニューは「R＆R」ことラーメン＆ライス500円（ランチタイムのみ）。物価の安い福岡とはいえ、ラーメンにご飯がついて500円とはもはや希少。しかも、妙にこだわりを主張するラーメン店が増える中、ここのラーメンは安心して食べられる昔ながらの優しい味わいだ。以前勤めていた事務所がこの近所だったので、ほかのメニューには目もくれず、「R＆R」ばかり食べていた。
事務所が移転してからはすっかりご無沙汰していたのだが、久しぶりに前を通りかかると、入口の黒板に「B級アラカルト復刻版」と気になる文字。あれ？ そんなのやってたっけ？
▲B級アラカルト復刻版メニュー
▲壁の隙間を埋め尽くす貼り紙
久しぶりにくぐった「胡同」ののれん。
「お兄さん、久しぶり！」と大将も僕のことを覚えていてくれた。
ラーメン＆ライスを「R＆R」と書くあたりからもわかるように、大将・池添努さんはミュージシャン。今でもアコースティックなラテン系のデュオで、月に1度はライブをやっているらしい。お店の内外にやたら貼り紙が多く、サブカルチックな匂いがぷんぷん漂っているのは、たぶんそのせいだろう。
あらためて話をしてみると、「胡同」は昭和37年に池添さんのご両親が始めたお店で、お父さんが早くに亡くなってしまったために、否応なしにお店を支える立場になってしまったそう。お父さんの味を守るという課題と自分の味を作るという目標の間で揺れつつも、池添さんは基本であるラーメンの味を確立して、店のローンも返済してしまった。ブレないベースを確立して、なおかつクリエイティブな遊び心を出すというのは音楽も料理も共通するところがあるのだろう。そしてユニークな「B級中華」が誕生した。
▲チャッチャと手際よく料理する大将・池添努さん
それではまず、ナンバーワンメニューの「カルボナーラ皿うどん」。
▲カルボナーラ皿うどん （700円）
たっぷりかかったブラックペッパーが食欲をそそる一品。ちゃんぽん麺に豚骨スープを吸わせるという皿うどんの基本を踏襲。ベーコンの代わりに豚バラを使い、旨味が全体に広がっている。
▲豚骨スープを吸った麺はモチモチ
次は「焼きラーメン」。「焼きラーメン」そのものは福岡では珍しくないが、期待して食べてみたらソース焼きそばと変わらないものが出てきてガッカリしたという人も多いはず。
▲焼きラーメン（700円）
しかし、「胡同」の「焼きラーメン」はウスターソースは使わず、ラーメンの細麺を豚骨スープで炒めた塩味仕上げの“本当の”焼きラーメン。モヤシやキクラゲとの食感のコントラストが普通のラーメンよりも強調されていて楽しい。
▲汁ありのラーメンよりも麺やネギ、キクラゲの歯応えが際立つ
そしてもう一皿。「マーボーラーメン」。
▲マーボーラーメン（700円）
とろみのあるマーボー豆腐にちょっとかた茹での細麺、たっぷりスパイシーな山椒フレーバーと、これははまれば癖になること間違いなし。
▲かた茹での麺に麻婆のとろみが絡まり、絶妙の食感
“B級グルメ”というと思いつきだけのチープな料理が多い気もするけれど、「胡同」の場合はベースがしっかりしているだけに、どれも旨いし値段も良心的。取材のときも、半分以上が「B級アラカルト」を注文するという好評ぶりだった。
▲「胡同」は昼飲みもOK
ちなみに以前は「ラーメンBar」をうたっていた「胡同」だが、今は22:30の閉店。代わりに昼飲みが安くて充実しているので、ヘベレケ注意！ です。
▲昼飲みメニュー
お店情報
胡同（ふうとん）
住所：福岡県福岡市中央区春吉3-26-14
電話番号：092-761-0198
営業時間：11:30～22:30
定休日：日曜日
※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
