国内に約1300店、アメリカや中国、台湾、韓国など海外にも約150店を展開する日本一のカレーチェーン「カレーハウス CoCo壱番屋」、通称「ココイチ」。
その第1号店は、1978(昭和53)年、愛知県・西枇杷島町(現・清須市)にオープンした西枇杷島店であることはファンならずとも有名だ。
2014(平成26)年、建物の老朽化により、リニューアル。
イマドキのしゃれた雰囲気に生まれ変わったが「1号店」のプレートに歴史の重みを感じる。地元のみならず、全国からファンが訪れる“聖地”なのだ。
今回注目したいのは、西枇杷島店の正面に向かって右隣に併設された「壱番屋記念館」なる施設。私、永谷は仕事で移動する際に、車でここの前をよく通るのだが、ずっと気になっていたのだ。
一宮市にある本社に問い合わせてみると、見学は無料だそう。ただし一宮にある本社に事前予約が必要とのこと(詳細はページ最下部を参照)。
ってことで、予約して行ってきた。今回は「ココイチ」ファンなら一度は詣でたい“聖地”をリポートする。
ヒマな時間がお店を育てた
出迎えてくださったのは、株式会社壱番屋・経営企画室の平尾康能さん。
「新店舗に建て替えるにあたって、当社の歴史を振り返ることができる施設もほしいということになり、倉庫に眠っていた備品やメニュー、POPなどを展示する記念館という形にしました」(平尾さん)
さっそく展示物を見ながら、平尾さんに「ココイチ」にまつわるエピソードをうかがうことに。
そこから日本一のカレーチェーンとして躍進し続けているヒミツを探ってみよう。
館内に入って左側のショーケースには、店で使用していたお皿やコップなどの食器やメニュー、POPやマッチなどの販促物が年代ごとに所狭しと並べられている。
創業当時のメニュー(写真左上)は木製で、何ともいえない味がある。私はアラフィフだが、この時代の「ココイチ」はまったく知らない。
「弊社のルーツは、創業者が経営していた喫茶店でした。市内に2店舗あり、サイドメニューのカレーが大好評だったので、3店舗目をカレー専門店にしようと。それがここ、1号店というわけです。ところが、開店して2日間は、オープン記念の粗品として用意した高級食パン目当てのお客様で賑わいましたが、3日目から閑古鳥が鳴いていたそうです。逆にヒマになったおかげで、お客様一人一人に向き合って、丁寧に接客・調理することができたんです」(平尾さん)
よく「ピンチはチャンス」といわれるが、オープン当時から逆境をバネする気風があったということだろうか。
少し年代が前進すると、見覚えのあるメニューやお皿が。ハッキリと覚えているのはこの時代から。っていうか、この頃はすでに私は社会人だったと思う。
読者の皆様は中学生か高校生、いや、小学生だった人もいるかもしれない。
ショーケースの上には年表と写真、その時期に加えられたカレーの写真やユニフォームも展示されている。
あ、そういえば、バナナカレーなんてのもあったな。注文したことはないけど。
毎日食べても飽きない味を追求
興味深い展示を眺めていると、担当の平尾さんが「ココイチ」の味の秘密について解説してくれた。
「カレー専門店を開店させるにあたって、創業者は東京の人気カレー店を視察したそうです。ところが、どのお店も個性が際立っていて、確かにおいしかったのですが、毎日食べられるかといえば難しい。カレーそのものが個性的な料理だと思うのですが、その個性を強調せずに、毎日食べても飽きない味を追求しました。特徴がない、とも言えますが(笑)、特徴がないからこそトッピングがいかされるんです」(平尾さん)
中央のショーケースには、プレゼント用のカレースプーンがズラリ。見覚えがあるのが「グランド・マザー・カレー」のカレースプーン。これ、欲しかったなぁ。
右側のショーケースには、レジ横で売られていたキーホルダーやボールペン、ストラップなどオリジナルグッズを展示。結構なレアグッズぞろいである。中には、時計やミニカーなどもあり、その充実ぶりに驚いた。
興味深かったのは、「カレーハウスCoCo壱番屋 今日も元気だ! カレーがうまい!!」というゲームソフト。
調べてみたところ、プレイヤーは店員となって、調理や接客など先輩のアドバイスを受けながらシミュレート。各ステージをクリアすると、店長になれるとか。って、新入社員の研修にも使えそうだ(笑)。
大食いチャレンジにも歴史アリ
こちらは、かって「ココイチ」が実施していたチャレンジメニューの紹介。これは1300グラム以上の超大盛カレーを20分以内に完食できたらタダになるという、一世を風靡(ふうび)した人気企画だ。
高校時代に友人がチャレンジしたものの、残りスプーン一杯分のご飯がどうしても入らずに撃沈したのを覚えている。
1300グラムの超大盛カレーにチャレンジして、タダになるのはチェーン全店を通じて1人1回のみ。途中で席を離れたり、ご飯を一粒でも残したら失格となる。
今では2キロ超えのカレーやスパゲティ、オムライスなど大盛をウリにしたお店がたくさんあるので、1300グラムなんてたいしたことはないと思う方も多いだろう。が、フツーの人は絶対にムリ。このサンプルを見れば、一目瞭然だ。
また、完食した人は、名簿の記入と記念写真の撮影を行うことになっている。店内にポラロイド写真が飾ってあったのを覚えている人も多いだろう。
そのかたわらには、チェーン全店の超大盛達成記録がディスプレーされていたと記憶している。「ライスの量4100グラムとか1300グラムを1分39秒で完食」などなど、驚くべき記録が並んでいた。
ちなみに、1300グラムを完食した最年少記録は9歳。日付には1997(平成9)年3月20日とある。ってことは、今は30歳になっているはず。男性か女性かわからないが、どんな人生を送っているんだろう。
ちなみにチャレンジメニューは、食べ残しによるゴミ問題で2003(平成15)年に中止となった。
「ココイチ」は海外進出していた
こちらは、海外で展開する店舗の写真と、実際に使われているメニューブックを展示。どの国も、量や辛さ、トッピングを選ぶシステムは日本と同じだが、国によっては日本にはないおつまみやデザートを用意している。
さらに、インドネシアのメニューが閲覧できる。
インドネシアに限らず、海外の店舗では右ページの「オムレツのカレー」が好評とか。食べてみたいが、残念ながら日本国内の店舗ではこのメニューは用意していない。いちばん近いのが、「スクランブルエッグカレー」だろうか。
私事で恐縮だが、昨年5月にタイ・バンコクへ行った。
高級デパート、「セントラル ワールド」のレストランフロアでココイチを見つけたとき、何だかホッとした。今や「ココイチ」のカレーは日本のソウルフードと言っても過言ではないのだ。
秀逸なコピーの「とび辛表」
ところで「ココイチ」が全国制覇、つまり、全国47都道府県下へ出店を達成したのは、1994(平成6)年。ここ、1号店のオープンからわずか16年後のことだ。
その原動力は何だったのか。
「1号店で1日6万円を売り上げたら、2号店を出す目標を立てました。それをクリアしたら、次は10店舗を目指そうという具合に、目の前にある目標をひとつずつ着実にこなしていった結果です」(平尾さん)
フランチャイズ展開するにあたって、一般から募集すると、企業理念が伝わりにくいという点がある。また、飲食業で働く社員は独立志向が強くて、長く勤める者が少ないという状況でもあった。
それならばと、社員として働きながら独立の支援をしようという「社員のれん分け制度」を採用した。オーナーは食材の仕入れと販促品の購入などを負担し、ロイヤリティーはゼロ。この独自のシステムも功を奏したに違いない。
館内奥には、創業時の店内を再現したコーナーも。
うん、うん、昔はこんな感じだった。この黄色いカウンターがよりカレーをおいしくさせるんだよなぁ。
見上げると、懐かしの「とび辛表」が!
「目はバチバチ 十二指腸もビックリ」とか「頭はガンガン 二日酔いもマイッタ」、「全身ガクガク 三日はケッキン」など、インパクトあるあおり系のコピーがズラリ。
このコピーを考えた人はマジ天才だと思う。
記念館を見学しているうちに、何だかムショーに「ココイチ」のカレーが食べたくなってきた。ってことで、見学後は1号店へ立ち寄って「ロースカツカレー」(753円 ※一部地域 774円)を食べることに。
記念館で学んだ「ココイチ」の歴史に思いをはせながら食べるカレーは、いつもよりおいしく感じた。
施設情報
壱番屋記念館
住所:愛知県清須市西枇杷島町末広31 2F
入館時間:14:00~16:30(予約制・見学無料)
予約申し込み先:株式会社壱番屋 0586-76-7545
予約受付時間:月曜日~金曜日 9:00~17:00
お店情報
カレーハウス CoCo壱番屋 西枇杷島店
住所:愛知県清須市西枇杷島町末広31
電話番号:052-502-4738
営業時間:11:00~24:00
定休日:無休