簡単なのにしっとり仕上がる「鶏むね肉と春野菜のフライパン蒸し」はタンパク質も野菜も摂れる

料理・食文化研究家の庭乃桃(にわのもも)さんが、豪華な見た目なのに手軽に作ることができる「鶏むね肉と春野菜のフライパン蒸し」をご紹介。鶏むね肉も春野菜もしっとり仕上がる、簡単レシピです!

こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回ご紹介するのは、ジューシーな鶏むね肉と春野菜がとびきりおいしいフライパン蒸し。タンパク質も野菜も摂れる、簡単レシピです。

ごちそう感のある見た目に反して作り方もいたってシンプルなため、旬の味わいを手軽に楽しむことができますよ!

市販のハーブソルト(お好みのドライハーブ+塩で自作してもOK)

味の決め手となるのは、ハーブソルト。メインの味付けはほぼこれだけで、そこにオリーブオイルとバターを組み合わせ、素材のおいしさを目いっぱい引き出していきます。

それでは、できたての熱々はもちろんのこと、冷めてもおいしい「鶏むね肉と春野菜のフライパン蒸し」を作っていきましょう!

鶏むね肉と春野菜のフライパン蒸し

材料(2人分)

  • 鶏むね肉……1枚(350g)
  • 春キャベツ……1/6個(180g)
  • 新玉ねぎ……1/2個(100g)
  • 新じゃが……小6個
  • スナップえんどう……8本
  • にんにく……1片
  • 白ワイン(または酒)……50ml
  • バター……5g

【鶏むね肉の下味】

  • ハーブソルト……小さじ1/2強(=3.5g。鶏むね肉の重量の約1%)
  • こしょう……少々
  • オリーブオイル……大さじ2

※ハーブソルトは、塩に好みのドライハーブを混ぜて自作してもOK(よく合うのは、オレガノ、ローズマリー、セージ、タイム、バジルなど)。

作り方① 鶏むね肉を準備する

ハーブソルトの量は、鶏むね肉の重さの約1%

まずは、鶏むね肉に香りのよいハーブソルトでしっかりめに味を付け、オリーブオイルでコーティングしてから焼き上げます。ここでの塩加減が春野菜を含めた全体の味付けにもなっていくので、ハーブソルトはやや多めに使っていきましょう。

そして全体に味を行き渡らせ、加熱ムラをなくすために、切り方にもひと工夫。鶏むね肉の中央に切り込みを入れて左右に切り開く、いわゆる「観音開き」でまずは全体の厚みを取っていきます。

切り込みは、肉の厚みの半分くらいまで

皮面が下にくるように置き、まずは上の写真のように、真ん中あたりに1本深めに切り込みを入れます。

切り込みを起点に、左右の肉の厚みを均一にしていきます

次に、その切り込みから外側に向かって、包丁を寝かせるようにしながら厚みのある部分を少しずつ切り広げていきましょう。端の方まで肉の厚みを均一にできたら、反対側も同様に切り広げます。

左右に切り開いたところ

できました。上の写真のように全体の厚さがだいたい均一になればOK。これにより加熱ムラがなくなり、肉の繊維の間からも調味料が入りやすい状態となりました。

下味を付ける順番は、「ハーブソルト → こしょう → オリーブオイル」で

次は、鶏むね肉に下味を付けていきましょう。

冷たいフライパンに鶏むね肉を置いたら、必ず「ハーブソルト → こしょう → オリーブオイル」の順番で両面に擦り込みます。

※ここで順番を間違えると、オリーブオイルがハーブソルトをはじいて味が入りにくくなってしまいますので、気を付けてくださいね。

皮は伸ばして広げておきます

こうして両面をオリーブオイルでコーティングしておくと、鶏むね肉を焼いたときにうま味や水分が逃げず、よりやわらかくジューシーに仕上がります。焼き色も付きやすくなりますよ。

このまま30分ほど置いて味をなじませましょう(時間がないときは、置かなくても問題ありません)。

※焼き始めとなる、皮面を下にしておきます。

作り方② 春野菜を切る

続いて、春野菜を切ります。ポイントは、いずれも大ぶりに切っておくこと。甘みや食べ応えが増して、見た目も味もごちそう感のある仕上がりになります。

春キャベツは、2cm幅くらいの大きめのくし切りにします。

新玉ねぎも、2cm幅くらいのくし切りに。にんにくは、芽を取って厚さ3mmくらいの薄切りにしましょう。

筋の取り方:①先端からヘタに向かって引っ張り → ②ヘタごと取りつつ
 → ③先端まで一周取り除く

スナップえんどうは、硬い筋を取ります。先端のとがった部分から筋を引っ張り、ヘタを経由するようにしてグルッと一周すると、手早く簡単に取り除くことができます。

最後は新じゃがです。新じゃがは皮が薄くてやわらかいので、たわしなどで洗って皮付きのまま使います。

芽の部分を包丁の根元でえぐり取ったら、ひと口大に切って水にさっとくぐらせましょう。ここで一度でんぷん質を流しておくと、味の染み込みがよくなります。

作り方③ 鶏むね肉を焼く

さて、具材がすべてそろったので、いよいよ鶏むね肉を焼いていきますよ!

フライパンが冷たい状態から調理を始める「コールドスタート」

皮面を下にして、下味をなじませていた鶏むね肉を焼き始めます。

万一、肉がフライパンにくっついてもやがて剝がれるため、いじらずに

鶏むね肉は脂肪分が少ないので、熱々のフライパンでいきなり焼くのではなく、こうして冷たい状態からじっくり焼き始めた方が焼き縮みやパサつきなどが起こりにくくなります。

中火で肉を動かさないようにしながら、まずは端の方が白っぽくなるまで焼いていきましょう。

裏返した後は、10秒焼くだけ

端の方が白っぽくなってきたら、皮面の焼き色をチェック。上の写真のように、こんがりとおいしそうな焼き色が付いたら肉をひっくり返します。

そして、反対の面はさっと10秒ほど焼くだけにして、すぐに皿などに取り出します(フライパンに残った鶏むね肉の脂は使うため、捨てずに取っておきます)。

後で春野菜と蒸し煮にするので、ここでは皮面を焼き固めるだけに

ご覧の通り、取り出した鶏むね肉は、皮目はこんがりしていますが中の方はまだ生のままです。でも、心配はご無用! 後で春野菜と一緒に弱火で蒸し煮にするため、ここでは加熱し過ぎないでおく方がしっとりとした食感に仕上がります。

作り方④ 春野菜を炒めて蒸し煮にする

次に、フライパンに残った鶏むね肉の脂で、春野菜を炒めていきますよ。

春野菜の水分で、鶏むね肉のうま味をこそげ取ります

最初に味のベースとなる新玉ねぎとにんにくを炒め、香りが立ったら比較的火の通りにくい新じゃがを投入。フライパンの底に残った鶏むね肉の脂とうま味を、春野菜でしっかりこそげ取るようにしながら炒めます。

焼きキャベツ独特のおいしそうな匂いがするまで焼きます

続いて場所を少し空けて、春キャベツを加えましょう。

こちらも鶏むね肉の脂をなじませるように、葉にツヤが出るくらいまで軽く炒め少し焼き色を付けます。

白ワイン(または酒)を入れたら、まずは5分蒸し煮に

焼きキャベツの甘い匂いがしてきたら、全体をひと混ぜして白ワイン(または酒)を投入。フツフツしてきたところで、ふたをして弱火にし、そのまま焦げ付かないよう1~2度全体を混ぜながら5分ほど蒸し煮にします。

作り方⑤ 鶏むね肉を戻す

皿に取り出しておいた鶏むね肉を戻したら、さらに5分蒸し煮

最後に、鶏むね肉を野菜の上に戻しましょう。皿に残った焼き汁があったら、うま味がたっぷりなのでぜひ一緒に加えてください。

そしてこのタイミングで、多少シャキシャキした食感を残したいスナップえんどうも鶏むね肉の周りに散らしておきます。ふたを閉めて、弱火でさらに5分蒸し煮にします。

火を止めたら、バターを散らして余熱で蒸らします

鶏むね肉と春野菜が、だいぶ落ち着いてしっとりとしてきました! 火を止めて、仕上げに春野菜めがけてちぎったバターを散らします(バターの代わりに、溶けるチーズを30gほど散らしてもおいしいです)。

その後は再びふたをして、余熱でさらに5分置きます。

最後の蒸らしがちょっと面倒に思えるかもしれませんが、実はこれこそが今回の最大のポイント!

この時間でバターの香りが全体に回り、鶏むね肉の肉汁もしっとり落ち着いてくるんです。このひと手間で最高においしいフライパン蒸しが完成するので、あとひと息、我慢してみてくださいね。

さあ、ついにできました!

ふたを開けた瞬間に広がる、ジューシーな鶏むね肉とはじけるような甘い春野菜の香り!!

フライパンに残った蒸し汁もおいしいソースに

鶏むね肉を食べやすいサイズに切って、春野菜や蒸し汁とともに皿に盛り付けます。

早速いただいてみましょう。

ハーブソルトで味付けし、オリーブオイルをまぶして焼き上げた鶏むね肉は、やわらかくてとてもジューシー! かみしめるほどに味わい深い、しっとりした肉質です。

下味のハーブソルトの香りだけでなく、焼いたときの鶏皮の香ばしさもちゃんとあり、とてもおいしいですね。みずみずしい旬の春野菜と一緒に蒸し煮にしているので、その甘みやコク、まろやかさも感じられます。

いっぽう春キャベツ、スナップえんどう、新玉ねぎといった春野菜も、鶏むね肉の塩気とうま味を吸って驚くほどおいしくなっています。ホクホクねっとりした皮付きの新じゃがも、最高! ふんわり香るバターが、ますます食欲をそそりますね。

粒マスタード(分量外)を添えてみました。

程よい酸味と辛みで全体の味が引き締まり、こちらもグッと食欲をそそる味わいです。

できたての熱々はもちろんのこと、冷めても逆にそれぞれの味わいが引き立って、甘みや食感がしっかりと楽しめますよ。

鶏むね肉と春野菜、それぞれの相乗効果でおいしさが増すフライパン蒸し。コツを押さえればフライパン一つでシンプルに作れるので、ぜひお試しいただけたらうれしいです。

書いた人:庭乃桃

niwanomomo

料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。

トップに戻る