【シリーズ富士そばの秘密:第3回】「カツカレー」より「カツ丼」推しな深い理由【東京ソバット団】
こんにちは! たまにはラーメンも食べている東京ソバット団の本橋です!
「名代富士そば」といえば、店舗限定のさまざまな限定メニューが売りということで、前回「肉そば」開発の舞台裏を見せてもらったんですが、まだまだ限定メニューに関する面白い話があるので、もういっちょ「富士そばの秘密」をお送りします!
さて、話は戻り、東京・代々木にあるダイタンホールディングス株式会社の会議室。池袋ダイタンフード株式会社常務取締役の木村正志さん、そしてダイタンホールディングス株式会社フィリピン統括マネージャー の工藤寛顕さんと、そばの話をしていたのですが……。
──実は「ソバット団」を名乗っておきながら「富士そば」のカツ丼が好きなんですが、かなり好評ですよね。
木村 はい。セットが人気ですね。
──で、メニューにはカレーライスもあると。それで前から不思議だったんですが、カツがあってカレーがあるのに、なんでカツカレーをやらないんですか?
木村 やっているお店もありますが、少ないですね(※都内に2店舗のみ)。カツカレーのカツは揚げたてで出したい。その揚げ時間を考えると、やっぱりスピード勝負の立ち食いそばでは難しいんですよ。
──そうですね。カツは天ぷらより揚げる時間がかかりますし、お昼時とかは厳しいですよね。
工藤 うちのかつ丼はタレが自慢なんですよ。
なるほど。常温の揚げ置きかつの場合、カツカレーだとその美味しさが発揮できない。かつ丼ならばタレで煮込むので、揚げ置きでも美味しく食べられると。かつひとつをとっても、考えているんですね。そこから考えるとカツカレーはないけど、カレーかつ丼があるのは納得です。
しかしここで木村さんから面白い情報が。なんとノーマルな揚げ置きかつを使ったかつ丼とは別に、揚げたてかつで作った「上ロースかつ丼」というメニューがあるらしいんです。むむぅ、それはぜひ食べてみたい。いや、ぜひノーマルのかつ丼との違いをぜひレポートしなければいけないじゃないですか。
工藤 かつ丼、上ロースかつ丼、カレーかつ丼の3つをやっている店舗があるので、取材を頼んでみましょうか?
──そ、それはぜひ、お願いします!
ウィンドーを見てみると、ありましたよ、かつ丼3兄弟が!
浅草は雷門にほど近いこのお店は、オープンしてから2年ちょい。他の店舗よりもテーブル席が多めにあって、落ち着ける作りになっております。
そして場所柄、外国人観光客の方が多く見えるようで、店内には多言語対応のメニューブックもありました!
ふむふむ、メニューによって「Vegetarian well eat」と書かれているのが、いかにも国際観光都市の浅草っぽいですね。
さてさて、さっそくかつ丼3兄弟の長男、「かつ丼」をいただきましょうか!
どん!
ノーマルの「かつ丼セット」(720円)。今回は四十路も半ばにさしかかった体のことを考えて、ほうれん草(100円)をトッピングしてみました。ちなみにかつ丼単品だと490円になります。
工藤さんの言う、「自慢のタレ」がしっかり染み込んでいます。玉子もトロッとしていて、見た目だけで美味いですよ。
いただきます!
香ばしい衣にガブッとかみ付けばタレの甘みが口に広がり、
そして自慢のタレというのがこちら。
主な原料はいわずもがな醤油に酒にみりんに砂糖と、いわゆるかえしと同じなのですが「カツ丼」用にチューニングされているだけあって、塩梅が絶妙。実はこちらを開発したのは、めんツユで有名な食品メーカーにいた方たちが作った会社。さすが、ツユのことを知り尽くしているだけあります。
いまやほとんどの富士そば店舗にある「かつ丼」ですが、もともとは限定メニューだったんだとか。ところが始めてみたところ、これが大好評。その年に大ヒットした限定メニューに与えられるホームラン賞(開発者に賞金10万円が与えられる)を受賞し、見事、グランドメニューになったんだそうです。
おっといけない、そばもちゃんといただきますよ。いちおう「ソバット団」ですから。
かつ丼セットの場合、ちゃんと1人前のそばが付いてくるので、しっかり食べたい人もうれしい。この時点でお腹いっぱいですよ、ええ。
そしていよいよかつ丼3兄弟の次男、「上ロースかつ丼」(850円)。1日限定20食だけに調理も手が込んでて、ちゃんと注文後の揚げ。富士そばで働く前も、そば店でかつ丼を作っていたという佐藤店長が丁寧に作ってくれます。
傍らには、あの「かつ丼のたれ」。
さて、待つことしばし。いよいよ「上ロースかつ丼」の登場です。
どん!
さすがお高いだけあってフタ付き。いやいや、このフタを開ける瞬間がいいんですよね~。
肉もちゃんと厚いです。ちなみにカツはノーマルだと80グラムなんですが、上ロースは120グラム。肉がいいだけじゃなくて、量も多いんです。
いざ、いただいてみますと……。
あ~、当たり前ですけど、こっちのほうが美味しいですよ。衣の香ばしさがしっかりあって、肉のうま味も濃い。ちょっとお高いんですが、その値段も納得。思い切って言っちゃいますが、普通のおそば屋さんで食べるかつ丼より美味いです。
こちら、ここ浅草店の他、赤坂見附店や西荻窪店、
ちなみに、本橋が普段やっているかつ丼を美味しくいただく裏ワザ。別皿でわさびを頼みまして……。
こいつをかつにチョンとつけていただくのです。
不思議なことにわさびはツンと来ず、なんともまろやかになっていいんですよ。2杯めのかつ丼でもパクパク食べられちゃう。
というわけで、次はかつ丼3兄弟の三男、「カレーかつ丼」をいただきましょう! もともとまかないで食べられていたというこのメニュー、試しに出してみたところ好評で、今ではここ、浅草店の他、
見た目はけっこう攻めている感のあるこの「カレーかつ丼」(570円)。いざ食べてみて気づいたんですが、カレーが普通のカレーとはひと味違うんですよ。
いや、使っているカレーは普通のカレーなんですよ。どういうことかというと、カレーとかつを一緒に食べると、かつがまとっているツユがカレーの味をグッと深いものにしてくれるんです!
おそるべし、「かつ丼のたれ」の力。カレーの味を見事にレベルアップさせてしまいました。かつ丼+カレーなんてやりすぎと少し思っていましたが、これはかなりおすすめです。それが証拠に、取材時にお店に来ていたアジア系外国人の若い男性4人組は、そのうち3人がこの「カレーかつ丼」を食べていました。大好評じゃないですか!
いやはや、今回はかつ丼はもとより、「かつ丼のタレ」をしっかり堪能させていただきました。「名代富士そば」には、「カツカレー」はないけれど、「かつ丼」がある。「カレーかつ丼」がある。もうそれで十分でございます。
ところでみなさん、どのかつ丼も、その丼様が白っぽいのに気づきましたか? これは「幸せのかつ丼」として全店ですすめている作り方で、玉子の白身と黄身が混ざらないよう、あえて軽く溶くだけでかけているのです。こうして、かつにかかる白身はフワッとし、周辺に流れた黄身がたれと相まって、なんとも美味いかつ丼ができあがるのです。
さて、3回に渡ってお送りしてきた「富士そばの秘密」シリーズも、今回で最終回です。みんな知っている「富士そば」の、意外に知らないウラ事情を楽しんでいただけましたでしょうか?
次回は普通に立ち食いそばを紹介しますので、お楽しみください!
お店情報
住所:東京都台東区雷門2-19-11中山ビル
電話:03-6276-3852(ダイタン食品株式会社)
営業時間:24時間営業
定休日:無休
書いた人:本橋隆司
フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。近著は『東京立ち食いそばジャーニー』『立ち食いそば大図鑑』(ともにスタンダーズプレス)そばであればだいたい好き。
- サイト:立ち食いそば図鑑の中の人のサイト
- Facebook:東京ソバット団
撮った人:安藤青太
カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『相撲部屋の幸せな猫たち』『東京の、すごい旅館』など。好きな立ち食いそばはコロッケそば。