【お店を継ぐということ】名店の味を進化させた二代目夫婦の絶妙な関係【東京ソバット団】

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老舗の立ち食いそば店の閉店が続く

こんにちは! 東京ソバット団の本橋です。

昨年、2017年は新御徒町の「アヅマ」や神楽坂の「神楽坂そば」、浜松町の「満留賀」など、古くから続く老舗立ち食いそば店の閉店が続いた、ちょっと寂しい年でした。

 

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ちなみにこちらは営業していた当時の「アヅマ」の写真。2017年12月に閉店。

 

人材不足や再開発など、閉店の理由はそれぞれなんですが、老舗店の場合、後継者が見つからず、お店を閉めてしまうということがよくあります。

そんな中、代替わりをうまく果たして評判となっているのが、小田急線は千歳船橋にある「八兆」というお店なんです。

 

千歳船橋「八兆」老舗の味を継ぎつつ進化させた二代目夫婦の絶妙な関係

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創業から今年で34年目になるこちらの「八兆」。

以前はベテランのご夫婦が営んでいたんですが、2016年に代替わりしてからはインスタグラムも始めて、そこに上げている写真がなかなか魅力的だったんですよ。

 

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こちらはなんと栗の天ぷら

栗ですよ、栗!

 

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さらにこんにゃくの天ぷら。串かつでこんにゃくってありますが、そこからヒントを得たらしいです。

立ち食いそばの枠を大きく広げている、チャレンジングなこの「八兆」。

もう気になってしょうがないので、ガッツリと取材をしてきました!

お店で出迎えてくれたのが、こちらの若女将と若旦那のご夫婦。

若旦那は残念ながら「顔はちょっと」というシャイな方だったんですが、なんでしょうか、この仲よさげな雰囲気。

明らかに今までの立ち食いそば店とは、違う感じがしますよ。

 

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とりあえず駆け付け一杯ということで、定番のかき揚げそば(420円)をいただきましょうか。

 

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なんとも緑が鮮やかなこのかき揚げ。

小松菜やわさび菜など、その時期の葉野菜がメインで、アクセントに玉ねぎが入っているという作り。しっかり野菜が食べられる逸品になっているんですよ。

上にちょんと乗ったニンジンもしっかり甘くて、いいアクセントになっています。

 

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そばは小幡製麺の生麺を使用。

そばの風味とコシがしっかりあって、鰹(カツオ)とかえしがギュッときいた濃いめのツユに抜群に合うんですよ。

小田急線沿線はとにかく「箱根そば」帝国なわけですが、「八兆ここにあり!」と天に向かって叫びたくなる、それほどのうまさなわけです。

 

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もう、一言も発さず食べ続けちゃいます。

さて、お腹も落ち着いたところで、気になる代替わりのことやインスタグラムのことを聞いてみましょうか!

お話を聞かせてくださったのは、若女将なのですが、これにはいろいろ事情があるのです。

 

基本は変えず、しかし自分がいいと思うものを信じて作り続ける

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もともと「八兆」を営んでいたのは、こちらの若女将の叔父さんご夫婦。

若女将は「八兆」の隣で父親が営んでいた写真店を継いで、店主、写真家として働いていたのです。ちなみに美人若女将として界隈では評判なのです。

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170201p:plain写真店の賃貸契約が切れるときに、現像機材も古くなっていたんでお店をたたもうと考えていたんです。同じときに「八兆」も契約が切れるタイミングで閉めるという話になって、じゃあ私がやる、と手を上げたんです。

 

すぐ隣だったこともあって、たまに「八兆」を手伝っていたという若女将。

すでに結婚して、写真店を一緒にやっていた若旦那が飲食で働いていたこともあり、「やってみないか」と声がかかったのだそうです。

 

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f:id:Meshi2_IB:20180305170651p:plainもともと飲食の仕事をやっていましたが、そばはやったことがなかったんで、先代の女将さんについてダシのとり方とか、勉強しました。2016年の4月にお店を継いで、そこから1年ぐらいは先代の女将さんがお店に出てくれたんです。今でも女将さんはたまにお店を手伝ってくれるんですよ。

 

そして、完全に二人でお店に立つようになったのは2016年の10月でした。

 

── 代が替わって、それまでの常連さんが離れてしまったというのはよく聞きますが、そういうことはなかったのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170201p:plain1年間、お店に出ていたんで、切り替わったときはスムーズにいきましたね。常連さんも私たちが後を継ぐって、知っていたんで。そばも、ダシの分量もかえしも変えませんでした。ただ、作る人間が変わったんで、微妙な変化はあったかもしれませんけど。

 

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f:id:Meshi2_IB:20180305170651p:plain味が変わったって言われて、濃くしたところで薄い味が好きな人は離れちゃいますし、薄くすれば濃い味が好きな人は離れちゃう。結局、自分を信じてブレずにやらなきゃいけない、というのは思いますね。自分の舌を信じて、同じものを提供するのがベストです。

 

基本は変えず、しかし自分がいいと思うものを信じて作り続けたという「八兆」のそば。しかし、ひとつだけ大きく進化させたのが、天ぷらだと言います。

 

ではこのへんで、そんな進化した天ぷらの一つ、ゴボー天そば(420円)をいただきましょうか。

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ザクッと切ったごぼうにニンジンもチラリ。

厚すぎず薄すぎずの衣からフワッとゴマ油の香りが立って、かぶりつくと野菜の甘みがじんわり広がるんです。

いや、かき揚げもそうですが、ここの野菜は本当においしいです。

 

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f:id:Meshi2_IB:20180305170651p:plain日替わりで出している野菜は、家庭菜園で採れたものを使ったり、佐渡出身の店員さんが山菜とか持ってきてくれるんですよ。

 

これまでの変わり天ぷらは他に、ズッキーニ、みょうが、えのき、ふきのとう、こごみにパクチーとさまざま。

インスタグラムで告知されることもあるので、興味ある方はぜひチェックを!

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170651p:plain栗の天ぷらは、マッシュしてモンブランみたいにしたんですが、皮をむくのがとにかく大変で……またやるかどうかは微妙です。

 

スムーズにいったという代替わりですが、それでもやっぱり苦労したというのが生活の変化。

早朝から開店する立ち食いそば店だけに、「朝から晩までやることが終わらない」(若女将)という生活にはしばらく慣れなかったそうです。

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170201p:plain他は注文の計算ですね。口頭で注文を受けて、すぐにいくらか伝えなきゃならないのが、なかなか慣れなくて。春菊に玉子とおにぎり、って言われてもすぐに金額が出てこないんですよ。今ではもう慣れましたけどね。

 

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二人でお店に立つようになってもうすぐ1年半。

若旦那は「八兆の二代目は若女将」と言うけれど、これまで夫婦で力を合わせてお店をまわしてきたのは間違いないところです。

しかし、下世話ながらどうしても気になってしまうんですよ。

 

── 家でもお店でも夫婦で一緒って、いろいろ面倒だったりしないんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170201p:plain前に写真店をやっていたときも、ずっと一緒だったんでそれほど苦ではないですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180305170651p:plain仕事中はそれほど話さないんですが、それはもう言わなくても動いてくれるから。無駄話は確かにしませんが、嫌で話さないというわけではないんです。家でも仕事で気になったことがあったら、ちゃんと二人で話します。

 

ベタベタではないけれど、ツーカーの関係。

なんとも理想的な夫婦関係じゃないですか。

なるほど、若旦那が調理、若女将が接客をするという流れるようなコンビネーションを見れば、よくわかります。

すみません、「いつも一緒で嫌にならない?」なんて質問をした、自分の下衆(げす)さが恥ずかしいです。

 

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「お店を預かっている、という気持ちでやっている。長年の積み重ねがあって今があるんで」という若女将。

守るべきところはちゃんと守り、変えていくところは大胆に変える、代替わりの理想は、夫婦二人の協力があってこそ実現できたようです。

 

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それでは最後にもう一杯。

いわゆる天かす使用で野菜のうま味が味わえる、冷やしたぬき(460円)をいただきましょうか。

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このたぬきがそばに絡まったところ、たまんなくおいしいんですよ!

 

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二代目「八兆」として、順調な歩みを見せているお二人。

お店の雰囲気が以前と変わったこともあり、以前より若いお客さん、特に女性が増えたんだとか。

ぜひこれからも長く、おいしいおそばを食べさせてください! 

ごちそうさまでした!

 

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お店情報

八兆

住所:東京都世田谷区船橋1-9-45
電話番号:03-3425-3956
営業時間:月曜日~金曜日 7:00~17:30、土曜日 9:00~15:00
定休日:日曜日・祝日
Instagram:https://www.instagram.com/jun1910/

www.hotpepper.jp

 

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書いた人:本橋隆司

本橋隆司

フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。立ち食いそば好きが高じて2013年に『立ち食いそば図鑑 東京編』を、2014年に『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。そばであればだいたい好き。最近、注目しているのは細うどん。

撮った人:安藤青太

安藤青太

カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『DK 男子高校生萌え』『書店男子』など。最新作は『TOKYO餃子図鑑』。好きな立ち食いそばは「コロッケそば」。

東京ソバット団

早く安く美味く、そして面白い立ち食いそばの魅力を広めるために結成。団員は現在、本橋と安藤の2名。

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