こんにちは! 料理家の美窪たえです。
本日は、鶏肉とたっぷりのニンニクを煮込んだジョージア発祥の鶏肉料理「シュクメルリ」をご紹介いたします。
「シュクメルリ」といえば、大手チェーン店の定食メニューに登場したのをきっかけに日本でも知られるようになりました。
今回紹介するシュクメルリは、たっぷりのニンニクと鶏肉を、水とオリーブオイルを乳化させたとろみスープで煮込む、材料のシンプルさがポイントのレシピです。仕上げにバターでミルキーなコクを加えれば、牛乳や生クリーム、シチューの素などを使わなくても極上のうま味スープが完成します。
使用する材料は、鶏もも肉、ニンニク、塩、黒胡椒、オリーブオイル、水、バターのみ。コツを押さえれば、身近な材料で簡単にシュクメルリを作ることができますので、ぜひ挑戦してみてくださいね。スープのおいしさを二度楽しむ、リゾットのアレンジもご紹介します。
材料(2人前)
- 鶏もも肉……1.5枚(400〜450g)
- ニンニク……1玉(6〜7片、約50〜60g)
- 塩……5〜6g(小さじ1強)
- 黒胡椒……適量
- オリーブオイル……大さじ2
- 水……200cc
- バター……10g
「シュクメルリ」の作り方
分量をご覧いただいてわかる通り、材料は非常にシンプルです。だからこそ、それぞれを「しっかり使うこと」がこのレシピのポイントになります。早速作り方をご紹介していきます。
1.皮をむいたニンニクを半分に切ってまな板に置き、木べらをのせて手で強めに押す、または叩くようにして、軽くつぶします。
ニンニクに割れ目が入ったら、包丁でざくざくと粗みじん切りにします。こうしてニンニクを軽くつぶしてから刻むと、ただ包丁で切るよりもぐっと香りが出やすくなり、見た目にもニンニクの存在感がしっかり残るので、料理の仕上がりにインパクトが出ます。
そして最も大事なのは「ニンニクの量」です。
普段ニンニクを使う際は、1片や小さじ1くらいが多いと思いますが、今回使用するニンニクは「1玉」です(6〜7片、約50〜60g)。
「ニンニクを食べるためのお料理」ともいわれるシュクメルリでは、ニンニクは薬味ではなくメイン食材。また、数少ない重要な材料の一つですので、ここは必ず生のニンニクを刻んで使うようにしてください。
2.鶏もも肉は4cm角程度に切り、両面に塩(分量の半分)、黒胡椒を振ります。鶏肉の部位は、柔らかくてコクとうま味の強い鶏もも肉が、短い煮込み時間でもおいしく仕上がるので最適です。
3.フライパンにオリーブオイルを入れて中火で温め、鶏もも肉の皮目を下にして並べます。少々オリーブオイルが多いように感じるかもしれませんが、料理が完成したときのおいしさに直結しますので、ぜひ分量通り使ってみてください。
本日のレシピは材料が非常にシンプルで、この後に「水」を加えて軽く煮込んでいくだけです。ここで安易にオイルの量を控えてしまうと「水炊き風」になってしまいますので、ご注意ください。
鶏もも肉は一度入れたらあまりさわらず、皮目に焼き色が付くまで3分ほど焼きます。
皮目にこんがり焼き色が付いたら裏返し、裏面は軽く1分ほど焼いて一度取り出しておきます。後で煮込みますので、ここで完全に火を通す必要はなく、あくまでも表面にいい焼き色を付けることが目的です。
この香ばしいお肉の焼き色が煮汁に溶け込むことで、スープのうま味の一部になりますので、色を意識してしっかりと焼き付けてくださいね。
4.そのままのフライパンに粗みじん切りしたニンニクを入れ、弱火にして軽く炒めます。ニンニクはカリカリになるまで炒めるのではなく、さっと香りが立って温まれば十分です。
5.水を加えて中火にし、かき混ぜながら沸かします。ここがこのレシピで1番のポイントになる工程です。
鶏のうま味がたっぷり溶け出したオリーブオイルと水を加熱しながら攪拌(かくはん)することにより「乳化」させ、それをスープとして具材を煮込んでいくのです。
6.スープが乳化して軽いとろみが付いたら残りの塩を加え、鶏もも肉や漏れ出た肉汁なども全て加えて、蓋をして8〜10分煮込みます。
7.煮込み時間が経過したら、バターを加え、軽く混ぜて溶かし込みます。バターは最後の仕上げに加えることで、少量でも豊かな乳製品の風味を残すことができますよ。
そしてあっという間に「シュクメルリ」の完成です!
「シュクメルリ」の楽しみ方
それでは、熱々のうちにいただきましょう!
まずは、やけどに注意しながらスープを一口。鶏もも肉とニンニクのうま味、オリーブオイルの香り、バターのコクが混然一体となり、水で煮込んだとは思えない奥行きが感じられます。
油分はやや多めに使っていますがくどさは全くなく、優しいとろみが体を芯から温めてくれます。ニンニクもかなり大量に入れているはずなのに「もっと入れても良かったかな……」と思ってしまうほど、まろやかになじんでいます。
メインの鶏もも肉は、ぜひスープと一緒に味わってみてください。短時間で軽く煮て仕上げていますので、適度な歯ごたえと鶏もも肉自体のうま味が、ニンニクの甘さとともに堪能できます。
見慣れた材料だけで作ったとは思えない、よく知っている鶏肉料理とは一味も二味も違う爆発的なうまさがあります。ワイン発祥の地と言われるジョージアで生まれた絶品料理は、当然ワインとの相性も最高! ぜひ試してみてくださいね。
「シュクメルリ」は二度おいしい。おすすめはチーズリゾット
バターが香るシュクメルリはもちろんパンにも合いますが、ごはんとの相性も抜群です。ごはんをスープに浸して食べるだけでもいいのですが、一手間かけて、残ったスープで作るリゾット仕立ては最強のおいしさ。
今回はアレンジメニューとして、シュクメルリのスープを使って作る「チーズリゾット」をご紹介していきます。
材料(1〜2人前)
- シュクメルリのスープ……約80cc
- ごはん……150g
- 水……大さじ2〜3
- 卵黄……1個分
- 粉チーズ……大さじ2
- 黒胡椒……お好み
作り方は簡単です。
フライパンにシュクメルリの残ったスープを入れて中火にかけます。沸騰してきたら、ごはん、粉チーズを加えて混ぜ合わせ、水を入れて柔らかさを調整してください。
お皿に盛り付けたら卵黄をトッピングして、黒胡椒を振ったら完成です。
乳化したスープのうま味をごはんが吸収して、さらに粉チーズでコーティングされているため、濃厚なうま味を感じることができます。卵黄を崩せば、さらにコクが加わってあっという間に食べきってしまうほどのおいしさです。
ニンニク風味のスープに粉チーズで味の想像は付きそうですが、実際食べてみるとそのおいしさは想像を超えてきます。この締めのリゾットのためにまたシュクメルリを作りたくなるほどのおいしさですので、ぜひお試しください!
まとめ
今回ご紹介したシュクメルリは、材料の種類が少ない代わりに、それぞれの「分量をしっかり使う」ことがポイントです。カロリーやニンニク臭など恐れずに、最大限のおいしさをぜひ堪能してみてくださいね。
書いた人:美窪たえ
料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。