30分かけてつくる!? オタクが考えた究極のスクランブルエッグとは【理系メシ】

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「男の料理」というと、肉を塊で焼いたり酒を一本まるごと鍋にぶち込んだり、豪快かつ予算度外視、うまけりゃ正義、後片付け? よくわかんない、だったと思う。

では「オタクの料理」とは? 

タカタッタターン!

『Cooking for Geeks 第2版ー料理の科学と実践レシピ』(発行:オライリー・ジャパン/発売:オーム社)という本がある!

オタクによるオタクのためのオタクな料理本、それがこの本。

Cooking for Geeks 第2版 ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)

Cooking for Geeks 第2版 ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)

 

 出版社のオライリー・ジャパンは、一部の理系人間の間では有名なサイエンス雑誌『Make:』の出版社だ。

 

一般にオタクの料理というと、手抜き・インスタント・一発ギャグ的な、ようはネット発の“合法ドラッグ”、シソ(シソをニンニク醤油に漬けた料理)や悪魔のトースト(砂糖を振りかけて焼いたバタートースト)のようなものを想像するが、その内容はめっちゃハード!

科学的にねっちりと料理を解説する本である。

 

最近、お高いお店で出される分子料理という、液体窒素でアイスクリーム作ったりするやつの原理原則が事細かく説明されている。

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この本をぺらぺらと読んでいくと……「スローなスクランブルエッグ」なる記事を見かけることになった。

 

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30分かけてつくる!? たかがスクランブルエッグに!?

意味不明である。

通常、スクランブルエッグと言えば、こうつくるはずだ。

 

普通のスクランブルエッグのつくりかた

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卵を割って、

 

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よくかき混ぜて、

 

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塩を少々入れて、

 

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牛乳を少し入れて、ふわっとさせて

 

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火は中火。

 

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フライパンにバターを溶かして、

 

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熱くなったフライパンに卵を流し込んで、

 

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大きくゆっくりかき混ぜて、

 

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完成。

 

トロっとフワっと、うまし!(by 柳沢きみお)。

冷蔵庫から卵を出して皿にフォークを突き立てるまで、10分もかからない。

この料理で、何をどうしたら30分かかるというのだ? 

同書によると、超弱火でフライパンの温度を卵のタンパク質の凝固温度をほんの少し超える71度以下に抑え、絶え間なく我慢強くかき回していくと「まるでチーズやクリームのような風味が生じる」(同p.180)のだそうだ。

著者の場合は出来上がるまで20分かかったという。そして、「一度は試してみる価値はある」(同)というのだが、マジか?

 

30分かけるとスクランブルエッグがチーズやクリームのように……想像できない。

論より証拠、そんなに言うなら、試してみようじゃありませんか。

 

30分かけてスクランブルエッグをつくる

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まず卵を3個、かき混ぜる。ここは普通に。混ぜるのは箸でも泡立て器でも。

 

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火は超弱火

 

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フライパンはテフロン。バターも何も引かず、卵を投入。

味の変化がみたいなら塩を入れるなと書いてあったので、入れない。

 

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ちょっと熱くなってきたな、と思ったらすぐに火から離す。

 

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これを延々と30分やるわけだ。

……だるいな、これ。

 

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10分経過。なんとなく全体にゲルっぽい、もったりした感じが。

 

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これ、やってみるとわかるけど、とてもせわしない。

ちょっとでも放っておくと卵が固まってくるのだ。固まらせてはいけないので、混ぜ続ける。混ぜて、混ぜて、疲れてきた。

 

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ほら、もう20分……だんだんかき混ぜるというよりも「練る」?

 

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正直、どうでも良くなってきたけどね、足もだるいしね。

まだなのかよ。ゴールが見えない料理は作りにくい。

これがどうなったらチーズなんだよ。

 

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お? おお? 固まった? 急速かつ迅速に固まった?

 

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30分後、たぶん完成。もうこれ以上はひっついて固まって扱えない。疲れた。でもこれはさあ、スクランブルエッグじゃないだろ? スクランブル=かき回してないよね。練ってるよね。

 

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カスタードクリームだな、ようするに。

キャラメルとカスタードクリームの中間ぐらい? 

たしかに見たこともない、奇妙な食べ物になったが、おいしいのか?

 

‥‥目玉焼きの黄身? 

目玉焼きの黄身だけをなめているみたい。たしかにクリームだけど、これは甘くないとダメじゃないの? このままじゃおいしくな‥‥

 

良いこと思いついた!

 

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バタートーストにコッテリと塗って、塩を振って食べたら……バルス! 

これだろう、これはうまいぞ、おい。

『天空の城ラピュタ』の目玉焼きのせトーストを究極に進化させた、どこまでも目玉が最後まで終わらない、超ぜいたく目玉焼きのせトーストではないか!

 

まさにおっしゃる通り、一度はやってみる価値がある。彼氏彼女のために作って出したら、これはウケる。間違いなくウケる。こんな朝ごはん、もうね、出会いに感謝だろう。

これを出されて、感動しない相手とは別れた方がいい。

安い、ただの総菜を手間ひまで一流に変える、まさにリアル美味しんぼ。

オタクな料理の神髄はこういうことなのだと理解したわけだ。

 

※この記事は2017年1月の情報です。

 

書いた人:川口友万

川口友万

サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。

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