料理人に「家庭でできる手軽な一品」を教えてもらうシリーズ、今回は「フィンランドの家庭料理」を教わります。
ご存知ですか?
2019年は、フィンランドと日本が外交関係を樹立して100周年を迎えるアニバーサリー・イヤーだということを。
では、皆さんは「フィンランド」と聞いて、何を思い浮かべますか?
「フィンランドといえば、やっぱりムーミンじゃない?」
「私はマリメッコのかわいい雑貨かな」
「そりゃ、サウナっしょ。そもそもサウナって、フィンランドの言葉だし」
「ボクはサンタクロース!」
遠き北欧の国、フィンランド。
100年の長きにわたるお付き合いの中で、日本にもフィンランドの文化がずいぶんと溶けこんでいます。2006年にはフィンランドを舞台にした日本映画「かもめ食堂」が大ヒットし、この地に憧れる若者がさらに増えました。
ならば、食べ物はどうでしょう。フィンランドの食べ物と聞いて、あなたが連想するものは何?
「う~ん、やっぱり、ミートボールかな。ジャムをつけて食べるタイプの。雑誌やテレビの北欧特集で、よく紹介されていますよね」
ご名答!
- フィンランド名物、それは「ミートボール」
- 京都の町家を改装したフィンランド・カフェ
- テーマは「サブカルとフィンランド」
- オーロラに感動しすぎてあわや凍死寸前に……。
- フィンランド”風”オリジナルミートボールに挑戦!
- ミートボールは一度にたくさん作るべし
- 玉ねぎは、すりおろしちゃえ!
- じゃがいもだって、すりおろすぞ!
- 意外すぎる食材、それは木綿豆腐
- 「豆腐め、消えろ!」と念じてこねる
- 見た目にも柔らかいミートペーストができあがり
- 一度目の「焼き」。味の決め手はバター
- 軽く焦げ目をつけて肉をいったん休憩させる
- 指でちぎれるスライスチーズが便利
- クリームソースでミートボールを「煮焼き」
- 「ディル」をなんとか手に入れてほしい
- ブルーベリージャム+レモンで本場に寄せる
- 肉のしょっぱさとジャムの甘さが絶妙にマッチ
- 本場のフィンランド式ミートボールが食べたくなったら
フィンランド名物、それは「ミートボール」
フィンランドで親しまれる「Lihapulla」(リハプッラ、下写真)。
ミートボールにクリームソースとリンゴンベリー(コケモモ)のジャムをつけていただく定番料理です。夫婦の約8割が共働きというフィンランドでは、一度にミートボールをたくさん焼きます。それを冷凍保存して、好きな時にささっと食べる時短料理でもあるのです。
あのフィンランドの、ジャムを塗るミートボールが食べたい! 日本のスーパーマーケットで揃う食材で、自宅で外交関係樹立100周年を祝いたい。
京都の町家を改装したフィンランド・カフェ
そう考えた僕は、京都にある一軒のフィンランド・カフェに、日本で再現できるミートボールレシピの考案をお願いしたのです。
やってきたのは、京都の上七軒(かみひちけん)。京都でもっとも歴史が古い花街として知られ、芸妓さんや舞妓はんたちが行き交う華やかな場所でもあります。
そんなしっとりとした風情が残る街の、「築何年なのか記録が残っていないほど古い」という町家を改装し、フィンランド・カフェ「ポーヨネン」がオープンしたのが今年2019年の6月。
扉を開けると、ほおお。フィンランド映画のポスターや、雑貨、関連書籍が並ぶ、ぐっと知的な雰囲気。
京都ならではの「おくどはん」(かまど)とフィンランド・カルチャーが同居し、ひとつ屋根の下で外交関係が樹立したかのようなお店です。
▲店内には京都ならではの古い「おくどはん」(かまど)が現存
テーマは「サブカルとフィンランド」
フィンランド・カフェ「ポーヨネン」をひとりで切り盛りするのが、えみぞうさん。
長く金融関係の会社に勤めたあと、2年の旅生活。帰国後に物件管理人さんから声をかけてもらい、念願だったカフェを開いたとのこと。
店の名は、大好きなフィンランドのアコーディオン奏者、キンモ・ポーヨネンにあやかったもの。
お店に置かれたZINEやCDなどを手に取ると、「おしゃれなフィンランド」だけではない、理念やメッセージ性を感じます。
えみぞうさん(以下、敬称略):お店のテーマは「サブカルチャーとしてのフィンランド」。たとえばフィンランドでは今、コミケが盛んなんです。日本の薄い本(オタク系同人誌の俗語)に影響を受けて漫画やイラストを描き始めた女の子も少なくはありません。図録などで、そういう人たちの作品も紹介していけたら。
▲フィンランドの若者たちの間では、日本のコミケが大人気。日本の同人誌の影響を受けてイラストを描き始めた女子も少なくないという
日本のコミケに憧れる若者たちが世界中にいるという話を耳にしたことがありますが、フィンランドもそうなのですね。
オーロラに感動しすぎてあわや凍死寸前に……。
そんなえみぞうさんが、フィンランドにハマったきっかけは?
えみぞう:友人から、「オーロラを観に行かない?」と誘われたんです。選択肢はカナダか、あるいはフィンランド。どちらも必ずオーロラに遭遇できる保証はありませんでした。けれどもフィンランドなら、雑貨だったり、音楽やカルチャーだったり、私が好きなものに触れられる。「最悪、オーロラが見られなくても後悔はしない」と思い、フィンランドを選びました。この選択が、も~、大当たりだったんです。
大当たりですか。実際にオーロラを観ることはできましたか。
えみぞう:はい。大きなオーロラを観ることができ、感激しました。
▲見事に目的は果たせたがこの後が危なかった……
えみぞう:ただ、感激のあまりオーロラポイントに長い時間いすぎて、宿へ帰ろうとしたらホテルのドアが全部閉められて中に入れなくなってしまい、パニック状態に陥りましたが。
▲「オーロラに感動しているあいだにホテルから締め出された」と恐怖体験を語るえみぞうさん
ええ! それはヤバい。だって零下でしょう?
大げさではなく、凍死の危険性がありますね。
えみぞう:お尻まで雪に埋もれて動けなくなった経験もあります。それでも、フィンランドが大好きですね。フィンランドには1960年代後半から70年代にかけてのデザインが建物などにそのままたくさん残っています。私はこの時代のレトロが大好きなので、どストライクでした。
▲えみぞうさんが「一番好き」だと言うペタヤヴェシの教会。古い絵本のような愛らしいデザイン
フィンランドは建国してまだ100年と少し。歴史が浅いですから、ちょうどいい頃合いのレトロが楽しめるんですね。
えみぞう:そうなんです。それに街全体に少し陰りがあって、いい意味でテンションが低いのが、私にはちょうどよかったな。フィンランドにいるとリラックスできるので、これまで14回、行ってるんです。
14回もですか! 筋金入りですね。
フィンランド”風”オリジナルミートボールに挑戦!
そして、こちらポーヨネンさんでは、フィンランドのフードも楽しめますよね。
えみぞう:うちで提供しているフィンランドの軽食は、ミートボールと、サーモンスープ、「カレリアン・ピーラッカ」(米のミルク粥を、ライ麦粉などをこねた生地で包み焼きしたもの)の3種類です。
▲サーモンスープ(800円)
▲カレリアン・ピーラッカ(800円)
えみぞう:ただ、うちではどの料理も食材や調味料の多くを北欧から輸入して作るので、正直に言って、そのまんま日本のご家庭で再現するのは難しいんですよね……。
そうですよね……。フィンランドのミートボールを自宅で作りたかったのですが、やっぱり無理な注文でしたよね。
えみぞう:いえいえ。自宅用のレシピ考案のご依頼をいただいてから、「日本のスーパーマーケットで入手可能な食材でできる、フィンランドの味に“近い”ミートボール」の作り方を考えてみました。かなり試行錯誤しましたが、おいしいと思いますよ。あくまで「フィンランド風」ですが。
ありがとうございます! むしろ「フィンランド風」のほうが、この記事のみのオリジナルレシピなので、楽しみです。
作り方を教えてください!
えみぞう:やってみましょう!
ミートボールは一度にたくさん作るべし
フィンランド風ミートボール(1人前)
*この記事のためのオリジナルレシピです。お店で提供している食材とは異なります。
【用意する食材】
- 合い挽きミンチ(牛5:豚5) 500グラム
- 玉ねぎ(中くらい) 1個
- じゃがいも(中くらいサイズ、できれば男爵) 2個
- 木綿豆腐 1丁
- パン粉 適量
- 牛乳 100ml程度
- 塩 小さじ1杯
- こしょう 適量
- ナツメグ 適量
- バター 20g
- キューブタイプのブイヨン 1かけ
- スライスチーズ 1〜2枚
- ディル 適量 ※なければバジルかオレガノを用意
- 低糖タイプのブルーベリージャム (コケモモのジャムのかわり)大さじ1杯
- 市販のレモン果汁 適量
むむ? 1人前にしてはミンチの量が多くないですか? これでミートボールがいくつ作れるんですか?
えみぞう:ん~、約60個(笑)。多いですよね。ごめんなさい。ミートボールそのものは、1人前だけを作るのが難しいんです。なので、たくさん作って、余ったら冷凍しておいてください。あとでカレーライスやシチューなど他のメニューにも使えますから。『ルパン三世』風のミートボールスパゲッティも作れますよ。
ああ、あの名作映画『カリオストロの城』の……。
わかりました。ということは、1人前のミートボールの個数は決まってはおらず、「60個まで好きなだけ」なのですね。いいじゃないですか、豪快で。
玉ねぎは、すりおろしちゃえ!
では、まずは下準備から。パン粉に牛乳(20ml程度)を入れてふやかします。
えみぞう:うちではライ麦のパン粉を使っているので褐色ですが、もちろん、一般的に販売されている白いパン粉でかまいません。
次はお野菜。玉ねぎの頭とお尻を切り落とし、皮をむいて……。
お! 玉ねぎをおろし金でおろすんですか。
これは意外。玉ねぎは刻まないんですね。
えみぞう:そうなんです。玉ねぎは「みじん切り」と書かれているレシピが多いです。けれども、うちは食感をなめらかにしたいので、すりおろします。とはいえフィンランドのミートボールはそもそも家庭料理ですし、必ずこうしなければならないというルールはないのです。フィンランドでは、ミートボールに野菜をまったく入れないご家庭もあるんですよ。
えー、「肉だけ」バージョンもあるんですか。まさに真のミートボールだな。それはそれで食べてみたい気も。
おろした玉ねぎを、パン粉が入ったボウルへ移します。
じゃがいもだって、すりおろすぞ!
続いて、じゃがいもの皮をむきます。おお、じゃがいもも、すりおろすのですね。
えみぞう:すりおろします。種類は男爵いもがいいですね。すりおろすと適度な粘りが出るので。
男爵いも、いい黄金色をしていますね。じゃがいもを、ミートボールのつなぎにするのか。
おろしたじゃがいもも、パン粉と玉ねぎが入ったボウルへ移します。
意外すぎる食材、それは木綿豆腐
続いて用意するのものは……。
えみぞう:これです。
えみぞう:木綿豆腐です。
ええ? も、も、も、もめんどーふ?
マジですか?
フィンランドのミートボールに木綿豆腐。ハンカチーフじゃなくて?
えみぞう:ええ。これには理由があるのです。
いやまあ、そうでしょうね。
えみぞう:日本にも冷凍食品などで北欧のミートボールが売られています。私も食べてみたんですけれど、決定的に違うのが「硬さ」。フィンランドのミートボールやソーセージは、ふにゃふにゃに柔らかいんです。
▲オーロラ待ちのあいだは「とても柔らかい」というソーセージを路上で焼いて食べていたという
えみぞう:初めてその滑らかな食感を経験した時は、「舌の上で溶けちゃう」と思ってビックリしたんです。肉や野菜の質が違うんでしょうね。あのとろけるような口あたりを再現するために、木綿豆腐を入れます。
フィンランドのミートボールって、そんなにも柔らかいのですか。それにしても、ミートボールに木綿豆腐とは。あの……大丈夫でしょうか。
えみぞう:大丈夫、大丈夫。木綿豆腐が絶対にいい効果を生みだしますから。任せてください。
わかりました。全幅の信頼をおかせていただきます。
「豆腐め、消えろ!」と念じてこねる
ボウルに木綿豆腐とミンチを入れ、
まずは塩。あとでミートボールにクリームソースを絡めるので、塩は軽めに。
こしょう。
臭み消しにナツメグを投入。
ボウルに入った食材の「揉みこみ」を始めます。
どれくらいの時間、こねればいいでしょうか。
えみぞう:目安は、豆腐がわからなくなるくらい。「豆腐め、消えろ!」と念じながらこねます。豆腐のつぶ感がなくなった頃には、いい感じに空気が押し出されています。こね終わるタイミングがつかめる点でも、豆腐を入れるのがいいんですよ。
なるほど、木綿豆腐が、ある意味でタイマーの役目を果たすのですね。
見た目にも柔らかいミートペーストができあがり
こねこね。
そうこうしているうちに豆腐の行方がわからなくなり、ねっとりとしたミートペーストができました。
野菜をすりおろしているので見た目にも粘り気があり、豆腐のおかげでふわふわ感もあり、焼く前からすでにうまそうです。このまま(生だからNGとわかっていても)バゲットに塗って食べたいくらい。
一度目の「焼き」。味の決め手はバター
続きまして、一度目の「焼き」。フライパンを火にかけ、バター20gを溶かします。
えみぞう:かつて「味はバターで決まります」というCMコピーがありましたが、フィンランド風ミートボールに関しては本当にバターが味の決め手です。
手に水を塗り、ミートペーストを丸めてボール状にし、
熱してバターが溶けたフライパンへ投入。
丸めたミートペーストを続々とフライパンへ置きます。
軽く焦げ目をつけて肉をいったん休憩させる
フライパンを回し、溶けたバターをミートボールに絡めます。バターのいい香りがたちのぼってきましたね~。ミンチからも脂がにじみ出て、食欲をそそる景色になってきました。
えみぞう:全体的に「表面に焦げ目がついたな」という程度で火を止めてください。一度目の焼き入れは、あまり火を通しすぎないように気をつけて。余熱で中心まで温まりますから。
熱いバターをまとって、”ミートボール感”が出てきたら、
トングなどで、はさんでひっくり返します。
まんべんなく焦げ目がついたら、
フライパンから取り出します。
軽く焼いたミートボールをいったん、キッチンペーパーを敷いたトレイの上に移します。
この時点で、もう、うまそお。つまみ食いしたい欲が抑えられない!
※ミートボールのストックを作るためにひとつのフライパンで何度か焼く場合は、2回焼くごとを目処にいったん油を拭き取ってください。ミンチから溶け出た脂と剥がれ落ちたミンチ肉がパチパチ跳ねるのを防ぐためです。大まかに拭き取ったらまたバターを投入してください。
指でちぎれるスライスチーズが便利
2度目の「焼き」の前に、クリームソース作り。
用意するのは、キューブタイプのブイヨン。
キューブを1/3サイズに切り落とします。
ガラスのコップ(容量200ml程度のもの)に水を半分入れ、
水に加えて、さらにコップの9分目になるまで牛乳を注ぎます。
鍋には、先ほど切り落としたブイヨン1/3を投入。
コップの中のミルク液を鍋に入れ、中火にかけながら混ぜつつ、ブイヨンを溶かします。
液体が沸騰してきたらスライスチーズを用意(普通のチーズよりもスライスチーズのほうが指で裂きやすいです)
スライスチーズ1枚分を指でちぎりながら加え、
チーズを溶かしつつとろみをつけ、クリームソースのできあがり。
クリームソースでミートボールを「煮焼き」
さきほどトレイに移しておいたミートボールをフライパンへ再投入。
クリームソースにからめながら「煮焼き」します。
木へらでまんべんなく転がし、
くぅ~、これはヤバーい。めっちゃうまそう!
これ嫌いな人、いないでしょ。
チーズのおかげでとろっとろで、エロティックですらあるなあ。
「ディル」をなんとか手に入れてほしい
クリームソースを和えたミートボールを皿へ移し、
余ったソースもミートボールにとろりとかけます。
ここで、「ディル」という名のハーブをふりかけます。
えみぞう:「ディル」(ウイード)は、なんとかして手に入れてほしいな。本当に香りや風味がいいんです。日本だとS&BやGABANなど大手のスパイスメーカーから発売されていますし、生鮮コーナーで生の状態で売られている場合もけっこうあります。
えみぞう:ディルがもしもご近所で売られていない場合は、バジルやオレガノで代用してください。
ディルをまぶすことで、夢に描いていた「フィンランド・ミートボール」に、だいぶん近づいてきました。
ブルーベリージャム+レモンで本場に寄せる
フィナーレは、遂に憧れの「ジャム」ですね!
えみぞう:うちではフィンランド製のコケモモのジャムを使います。フィンランドではジャムを調味料として使うので、そんなに甘くないし、日本のジャムよりも酸っぱいんです。
えみぞう:ただね、日本ではこれがなかなか手に入らないんです。
甘みが少ないフィンランドのコケモモジャムですか。フィンランドの味を日本の家庭でそのまんま再現するのが難しいとおっしゃっていた最大のポイントが、ここなんですね。
えみぞう:そうなんですよ。なので今回は、低糖のブルーベリージャムに市販のレモン果汁を加えます(生のレモン果汁でもOK)。レモンを加えることで、本場のジャムに、まあまあ近い味になるんですよ。
代用品は、低糖タイプのブルーベリージャムでなくてはだめですか?
えみぞう:いいえ。これも、お好みですから。「甘い方がおいしい」と思う方もおられるでしょう。いちごジャムだってマーマレードだって、きっと合いますよ。いろんなジャムを試してみてください。
ブルーベリージャムを器へ移し、
市販のレモン果汁をチューッと注入。
レモンで酸味を加えたブルーベリージャムを添えて……。
完・成・です!
肉のしょっぱさとジャムの甘さが絶妙にマッチ
では、いただきます。ドリンクはフィンランドのお酒「オリジナルロングドリンク ジン&クランベリー」。
まずは、ひとくち……。
うわあ、うま~い(涙)。
なんですかこれは。
めちゃめちゃおいしいんですけど!
ミートボールのしょっぱさとほのかに甘いジャムが猛烈に合う。フワッとした食感のミートボールが、ジェル状たっぷりのソースによって、肉のうま味がさらに引き立っているのです。
レモンを入れたことで爽快な酸味をともなったクールなブルーベリージャムが、アツアツで情熱的なミートボールと友達になろうと強い握手を求めています。
対するミートボールは微笑みをたたえつつ、豊かな包容力でその要望に応えています。
このペア、友情を感じるほどにまぶしくマッチしているのです。
今回はフィンランドではポピュラーなコケモモのジャムでも試してみたのですが、旧友という感じで、もちろん馴染むおいしさ。ほっとするお味ですが、新鮮な感動という点では、個人的にはブルーベリージャムのほうが上回ったかな。
レモン割りのブルーベリージャム、これは胸を張ってお勧めです。
そして、木綿豆腐がいい!
言われなければ絶対にわからないほど存在感を消してはいます。しかしながら、なだらかでやさしい食感は木綿豆腐が生みだしたもの。国境を越え、両国をつなぐ堅実な仕事をしています。
思えば「麻婆豆腐」をはじめ豆腐はミンチと相性がいいし、木綿豆腐のバター焼きはおいしいし、この料理に合わないハズがない。それにしてもミートボールに木綿豆腐がここまでしっくりくるとは。
キンキンに冷たいジンと熱いミートボールを交互にやっていると、もうフォークを持つ手が止まりません。強い意志を持って制止しないと、60個のミートボール、ぜんぶ食べちゃいそう。
いや~、おいしかった。あくまで「フィンランド風」ではありますが、胃の中でフィンランドと日本が結ばれた、そんな気持ちです。寒い国で生まれたメニューが、これほどまでに人の心を暖かくさせるのか。そんな驚きのひと皿でした。
えみぞう:雪に閉ざされるフィンランドは、冷蔵庫の中にあるものをさっと焼いて作るシンプルな料理が多いんです。素材の味をそのまま楽しめるので、日本人の口にもよく合います。ぜひ、ご家庭にもフィンランドの料理を取り入れてみてください。
本場のフィンランド式ミートボールが食べたくなったら
日本との外交関係樹立100周年を超えて、これからも末永くおつきあいをしたいフィンランド。
京都へお越しの際は、かわいいだけではない、もう一歩踏み込んだフィンランドを堪能できる「ポーヨネン」でおくつろぎください。もちろん、本場のミートボール(800円)も味わえますよ。
取材協力:油井康子
店舗情報
フィンランドカフェ「pohjonen(ポーヨネン)」
住所:京都府京都市上京区真盛町726-35
電話:090-1147-0572
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日、水曜日(臨時休業あり)
オフィシャルサイト:https://www.facebook.com/pohjonenkyoto/
書いた人:吉村智樹
よしむらともき。関西ローカル番組を構成する放送作家。京都在住。街歩きをライフワークとし、『VOWやねん!』ほか関西版VOW三部作(宝島社)、『ジワジワ来る関西』(扶桑社)、『街がいさがし』(オークラ出版)、『ビックリ仰天! 食べ歩きの旅』(鹿砦社)など路上観察系の書籍を数多く上梓している。
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