今なぜ「婚活料理教室」が盛況なのか?成婚100組以上のスゴ腕主催者が明かす、ある傾向とは

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料理は人柄が表れる。調理だけではなく、準備や後片付けも含めて、キッチンでの立ち振る舞いが異性のハートを掴んだりするのである。

そこに着目した婚活料理教室が全国的に大盛況らしい。しかし、具体的にそこで何が行われているのか、どんなタイプの人が参加しているのかはあまり知られていない。

 

あえて調理工程の多いメニューを

名古屋市南区にある「名古屋クッキングスクール」は、9年前から婚活料理教室を開催している、いわば先駆け的な存在。

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スクールを主宰する料理研究家の杉浦友祐さん(写真下)に、婚活料理教室についてアレコレ聞いてみた。 

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───そもそも、婚活料理教室をはじめようと思ったきっかけは何だったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦さん(以下敬称略):当時、私の周りで婚活をしている人が多かったんですよ。東京では婚活料理教室が盛りあがっているということも耳にしていたので、じゃあウチでもやってみようかと。これまで約100回ほど開催してきましたが、報告があっただけで100組以上はゴールインしています。ちなみに参加費は、男性が7,000円、女性が4,800円です。

 

───それはスゴイ! 婚活料理教室は、どんな流れで行われているんでしょう?

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:まず、事前に名前と年齢、血液型、職業、趣味・特技、自己PRなどプロフィールを用紙に記入してもらいます。女性と男性、双方に用紙を渡します。それをもとに自己紹介してもらった後、その日に作る料理の説明をします。その後、くじ引きでグループ分けをして、調理をはじめます。

 

───具体的にはどんな料理を?

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f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:もともとウチはフレンチやイタリアンのような華やかなメニューではなく、家庭料理が中心なんです。協力し合って調理できるように、餃子や春巻き、唐揚げ、ポテトサラダなど調理工程の多いものになりますね。料理が完成したら、他のグループの参加者とも話ができるように立食で食事をしてもらいます。参加された方が作った料理以外にあらかじめ私とスタッフが作った料理を12、13品出しますから、まさに婚活パーティーですね。

 

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モテる人、モテない人の共通点とは

───やはり、お互いを知るには料理は効果的なんでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:共同作業ですし、作りながら好きな料理の話題になったりしますから、ある程度の距離感は縮まるのではないかと。それに、料理を作っている参加者の暮らしぶりもなんとなくイメージできますよね。包丁を持ったことがない人が参加されることもありますが、食器を準備したり、皿を洗ったりと、調理以外にもやることはたくさんありますから。

 

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───料理ができないからモテない、というわけではないんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:それは間違いありません。片付けながら次の作業を準備したりと、手際の良い人は好感度も上がりますね。逆にマイナスなのは、何でもやりっぱなしの人。それと「自分は何もできないから」と言って、ただ見ているだけの人。

 

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───どんなタイプの男女が参加されるんでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:女性の場合、婚活なんてしなくてもモテるのでは? と思う方が多いです。一方、男性は……恋愛経験の少ない人になりますね。奥手だったり、端っから女性に興味がなくて親や親戚に勧められて参加するケースもあります。

 

実際に成婚したカップルに話を聞いてみた

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:実は私、調理の指導以外に男性と女性の間を取り持つ、いわばキューピット役でもあるんです。今日、ウチの婚活料理教室が縁となって結婚したカップルに来てもらったんです。せっかくなので、経験者にお話を聞いてみませんか?

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そんなわけで、ご登場いただいたのはひと組のご夫妻。

 

佐々木隆行さん(44歳)、亜澄さん(36歳)夫妻が参加したのは2010年8月。半年後に隆行さんがプロポーズして、婚活料理教室から1年後に結婚した。

話を聞いてみると、妻の亜澄さんは会社帰りにここの前を通りかかって、ネットで検索。婚活料理教室のことを知り、参加することにした。

 

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一方、夫の隆行さんは2回目の参加。前回は気になった女性に声もかけられず、自信を失っていて参加する気はなかった。

ところが。

 

f:id:Meshi2_IB:20190805151528p:plain隆行さん:もともと先輩の勧めで参加したのですが、その先輩に「絶対に行った方がいい!」と説得されて……。どちらかというと、仕方なく参加しました。

 

ちなみに隆行さんは今も昔も料理はチャーハンや焼そばくらいしか作れないという。

杉浦さんも当時を振り返る。

 

f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:いやぁ、隆行さんと初めて会ったときのことは私、一生忘れませんよ。何しろ、約10年前とはいえ、ケミカルウォッシュのジーパンとヨレヨレのTシャツ姿で来たんですから。もうちょっと何とかしてくださよ、って思いましたもん(笑)。

 

「できない」なりに協力する姿勢が◎ 

婚活クッキング中、隆行さんは違うグループにいた亜澄さんに一目惚れ。立食での会食時に勇気を振り絞って声をかけた。そして、杉浦さんの好アシストでお互いに連絡先を交換することができた。

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隆行さんに対する亜澄さんの第一印象はどうだったのか。

 

f:id:Meshi2_IB:20190805152029p:plain亜澄さん:悪くはなかったですよ。ただ、同じグループに気になる人がいましたし、私に好意を持ってくださる方もいましたから。

 

隆行さんは杉浦さんに相談しながら、積極的に亜澄さんへアプローチ。杉浦さんも親身になってアドバイスをした。

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f:id:Meshi2_IB:20190805145901p:plain杉浦:まずは外見から変えようと思い、洋服を買いに連れて行ったり、美容院にも付き合いましたよ。もう、完全に料理研究家の仕事から逸脱していました(笑)。だから結婚を前提に付き合うことになったと報告を受けたときは本当に嬉しかったですよ。

 

当時、亜澄さんは一人暮らし。いつか好きな人と一緒に買い物へ行き、一緒に料理を作るような生活ができたらと思っていた。

隆行さんと付き合い始めてまだ間もない頃にそれは現実のものとなった。ただし前述したとおり、隆行さんが作れるのはチャーハンや焼きそばくらい。亜澄さん、大丈夫だったんですか? 

 

f:id:Meshi2_IB:20190805152029p:plain亜澄さん:それが……。夫は料理が全然できなかったんですよ。でも、できないなりに協力してくれたのが嬉しかったですね。そのおかげでお互いの距離は縮まったと思います。

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その後、めでたく2人は結婚へ。現在は2人の子供にも恵まれ、幸せに暮らしている。

 

ううむ。やはり、料理のできる/できないは関係なく、料理を作る中での気配りが最も重要なのだ。

真剣に結婚を考えている人にとって、婚活料理教室はかなり期待ができるのではないだろうか。

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店舗情報

名古屋クッキングスクール

住所:愛知名古屋市南区駈上1-11-29 新瑞南ビル1階
電話:052-693-5758
営業時間:11:30頃~19:00頃
定休日:要問い合わせ

※婚活料理教室は、8月24日(土)17:00~21:00(20代~30代の男女限定)、9月7日(土)17:00~21:00(30代~40代の男女限定)に開催予定。以降は要問い合わせ

nagoya-cooking.co.jp

全国どこにでもあるけどナゼか名古屋限定?最強オトコめし「チャーラー」とはなんなのか

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『メシ通』の読者様はご存じないと思うが、私は『永谷正樹のなごやめし生活』というブログを今年2019年の1月から毎日更新している。

nagoya-meshi.hateblo.jp

タイトルこそ「なごやめし」とあるが、日々思うことや考えていることなんかも書き綴っている。五十路のおっさんの戯言ゆえに訪れる人も少なく、閑古鳥が鳴いているブログだが、アクセス数がぐっと上がることがある。

 

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それが「チャーラーの旅。」という不定期連載。

内容はむろん、私がチャーラーを食べ歩いて、旨いチャーラーを……。

 

ええっ、なんだって?

 

チ、チャーラーが何かわからない?

 

担当編集・ムナカタもチャーラーの意味がわからず、ポカーンとしていた。何を言うとるのだ、中華屋ランチの定番、チャーハンとラーメンのセットに決まっているではないか。

どうやらチャーラーと呼ぶのは名古屋をはじめとした東海エリアだけのようだ。関西では「半チャンセット」というらしい。つまり、ハーフのチャーハンが付くということだが、ここ名古屋ではハーフじゃなく、まるっと1人前付く太っ腹な店だってある。だからチャーラーという呼び名の方がしっくりくると思うのだが。

とにかく、チャーラーの食べ歩きレポートを載せると、アクセス数がぐんと伸びるのである。ラーメンとチャーハンの組み合わせ自体は、全国区だってことなんだろう。

 

ラーメンは王道の中華そば

ブログで公開しているのは20軒ほど。その中でいちばん美味しいと思ったのが、地下鉄東山線中村公園駅を北へ3分ほど歩いたところにある『太陽食堂』。

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それもそのはず、ここには中華そばと焼きめししかメニューにない、いわばチャーラーの専門店なのである。

今やラーメンはミシュランガイドに載るほど料理の1ジャンルとして確立している。そこをめざさず、なぜチャーラーなのか。聞きたいことはいっぱいあるが、何はともあれ、ここのチャーラーを食レポしよう。

 

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まずは「中華そば」(並・680円)。

スープは鶏ガラと豚骨、昆布がベース。シンプルではあるものの、澄みきったスープを抽出するには相当な技術が必要である。

しかも、ここの中華そばは化学調味料を一切使っていない。麺はやや太めで噛み応えがあるのが特徴だ。出来上がりが楽しみ♪

 

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来た来た、これが「中華そば」。

このビジュアル!うん、これはラーメンじゃない。中華そばだ。誰もがイメージする中華そば。

具材は豚バラ肉を使ったチャーシューとメンマ、海苔、ネギ。やはり、これも王道。もう、見ただけで旨いことが伝わると思う。

 

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箸で麺を持ち上げて、フーフーしながら口へすすり込む。麺が纏ったスープの旨みと麺を噛んだときの小麦の味と香りが一体になる。

「あっさり」や「さっぱり」といった表現ではない。だからといって、今どきのラーメンのような複雑な味でもない。誰もが昔に食べたことのある、素朴でやさしい味わい。

心が和むなぁ。

 

頼もしい相棒、「焼きめし」

中華そばの美味しさに浸りきっていたら、相棒となる「焼きめし」(小・400円、中華そばとセットの場合300円)が目の前に運ばれた。

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これもまた、いかにも焼きめし。お米の一粒一粒に具材の旨みがコーティングされているのがよくわかる。しかも、何とも香ばしい香りが鼻腔をくすぐり、一刻も早くレンゲで掻き込みたくなる。

 

おっと、その前に焼きめしの調理プロセスを。

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焼きめしの材料は、チャーシューとネギ、玉子といたってシンプル。ただ、ラードで炒め、香り付けにネギ油を使うのが家庭のチャーハンとまるで違うところ(もちろん、それ以前に火力も圧倒的に違うが)。

 

中華鍋に火を入れてからものの2、3分くらいだろうか。あっという間に完成した。

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いよいよ実食。

おおーっ! 口の中で香ばしい香りとほのかな甘みがふわっと広がる。これは仕上げに用いたチャーシューのタレだろう。さらに米粒を噛むごとに染み込んだチャーシューの旨みがじんわり。

うっ、旨い……。

チャーハンを論じるのに、パラパラとかしっとりという類いの話は正直、どうでもいいと思えてきた。パラパラでもしっとりでも旨けりゃそれでいいのだ。

 

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不思議なことに、焼きめしを食べるとラーメンが、ラーメンを食べると焼きめしが食べたくなる。交互に食べると、それは美味しさの足し算ではなく、掛け算になるのだ!

チャーハンとラーメンのセットであるはずのチャーラーが1つの完成された料理とさえ思えてしまう。

 

試行錯誤の末に行き着いたオレ流「チャーラー」

では、これほどのチャーラーを作る店主とはいったい何者なのか。

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「そもそも、ラーメンがそんなに好きではなかったんです。昔から好んで食べていたのは、やはり昔ながらの中華そばでしたね」と、店主の前田健さん。

店を開く前は飲食店を営む父親の手伝いをしていたという。当時、中華そばは見よう見まねで作っていたが、本格的に学ぼうと一念発起。名古屋市東区の繁盛店『中華そば 白壁 あおい』の扉を叩いた。

 

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前田さん:ところが、父の店を任せていた人が辞めることになり、私が跡を継ぐことになりました。だから、3カ月くらいしか修業していないんです。それが2010年10月のことでしょうか。辞めた後も修業先の社長はとても親身になって相談にのってくれました。今でも親しくさせてもらっています。

 

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店をはじめるにあたって、前田さんがこだわったのはラーメン屋のラーメンではなく、幼い頃に中華屋さんや食堂で食べた懐かしい味わい。

オープン当初は中華そばと焼きめしのほか、味噌らーめんも用意していた。これもまた、注文ごとに具材の玉ネギとモヤシ、ひき肉を炒めてのせるというクラシックなスタイルだった。

 

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前田さん:まず、味噌らーめんがメディアに採り上げられたんです。その後に焼きめしも注目されました。その後、塩そばを作ったりもしましたね。どれも人気が出て、すごく嬉しかったんですけど、何か違うな、と。私のやりたかったのは、これだったのかと自問自答を繰り返しました。

 

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モヤモヤした気持ちが続く中、味噌らーめんと焼きめし、塩そばと焼きめしを作って食べてみた。すると、互いの味を打ち消し合っていることに気がついて愕然とした。

そして、味噌らーめんと塩そばの販売中止を決めた。あらためて中華そばと焼きめしのチャーラーにとことんこだわってみようと決心したのだった。

 

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前田さん:修業先の社長からは、ずっと「焼きめしをやめろ」と言われています。注文ごとに中華鍋を振らなければならないので手間がかかる上に肉体的にもしんどいですからね。でも、私はどうしてもチャーラーにこだわりたいんです。最近では社長も「お前はあえて苦難の道を選ぶ修行僧だ」って呆れてますけどね(笑)。

 

今も試食を繰り返しては中華そばと焼きめしのマッチングを第一に味を改良し続けている。とはいえ、中華そばだけ、焼きめしだけを単品で注文される客も少なくはない。そこは、中華そばも焼きめしも単品で食べた場合、あえて物足りなく感じるように作ってあるという。

 

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前田さん:ラーメン屋さんでチャーハンを出すお店もたまに見かけます。その多くはラーメンがメイン。チャーハンはサイドメニューなんですよね。チャーラーは単なるセットメニューではなく、ひとつの料理だと思うんです。美味しくて満腹になるチャーラーをこれからも作り続けていきます。

 

気軽に食べられて満腹になるのは当たり前。中華そばと焼きめしを交互に食べたときに感じる味の掛け算をどんどん広めていってほしいと願うばかりである。

 

店舗情報

太陽食堂

住所:愛知名古屋市中村区中村町7-40-5
電話:052-413-3700
営業時間:11:30~14:00、18:00~21:00
定休日:土曜日夜、日曜、祝日

www.hotpepper.jp

 

グランド喫茶「シヤチル」は、古き良き名古屋の喫茶文化をどうやってアップデートしたのか

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全国でも類を見ない豪華なモーニングサービスや小倉トースト、鉄板ナポリタンなど独創的なメニューが揃う名古屋の喫茶店。メディアでも頻繁に紹介されているので、名古屋にはそこら中に喫茶店があると思う人もいるだろう。

しかし、店主の高齢化やコーヒーチェーンの台頭などで今、窮地に立たされていることはあまり知られていない。ひと昔前と比べて飲食店の数が増えている上に、美味しいコーヒーであればコンビニでも売っている。「喫茶店はオワコン」という声すら聞こえてくる。

 

ロンドン住まいの相棒を呼び戻す

そんな中、名古屋市千種区今池にある喫茶店が話題を呼んでいる。

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それは、昨2018年5月、広小路通沿いの千種駅東交差点と今池西交差点の中間あたりにオープンした、その名も『シヤチル』名古屋に馴染み深い金のシャチホコの「シャチ」が店名の由来である。

 

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お店はサービス担当の安井俊介さん(写真左、30歳)と調理担当の山本篤志さん(写真右、34歳)の共同経営。2人はもともと友人同士だ。

店名をはじめ、店のコンセプトは主に安井さんが考えたという。

 

安井さん:東京の大学で空間デザインなどを学んだ後、インテリアデザイン事務所が手がけるレストランで働いていました。いつか名古屋で飲食店を開いて、そこから街づくりをしたいと思っていました

 

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転機が訪れたのは、昨年の1月。当時、イギリス・ロンドンで暮らしていた安井さんに山本さんから「一緒に店をやらないか」と連絡があった。そもそもなぜロンドンへ?

 

安井さん:ロンドン発のファッションや建築、カルチャーにずっと憧れていたんです。ロンドンで暮らしたいと思い、仕事を辞めて2017年の9月に渡英しました。本当は2年間滞在する予定でしたが、山本からの連絡を受けて半年で帰国しました。

 

朝と夜で業態を変えるのが名古屋の喫茶文化

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調理担当の山本さんは、イタリアンやフレンチなどの洋食出身。『シヤチル』をオープンさせる前は同じ場所で肉バルを営んでいた。安井さんは以前から山本さんの作る料理を高く評価していた。

 

安井さん:特に肉料理やハンバーガー、サンドイッチなどは絶品でした。一度試してもらえば絶対にリピートすると確信していました。肝心なのは、どのようにして食べてもらうきっかけを作るか、でした。

 

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そこで思い出したのは、ロンドンで暮らしていた頃、ノルウェーへ旅行したときに訪れた『FUGLEN(フグレン)』という店だった。東京渋谷浅草に出店しているのでご存じの方も多いと思うが、朝と昼はカフェ、夜はバーになる。安井さんはこのスタイルを名古屋でやりたいと考えた。

 

安井さん:昼間と夜で業態が変わるというのは、名古屋の喫茶店に似てると思いました。実は私の祖母と叔父が愛知県一宮市で『スイス』という喫茶店を営んでいたんです。夜にお酒を飲むお客さんはほとんどいませんが、鉄板ナポリタンやカレーライス、唐揚げ定食などしっかりとした食事が揃っていました。そんなことから喫茶店という業態も面白いと考え始めたんです。

 

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安井さんの祖母と叔父が営んでいた喫茶店『スイス』は、常連客に惜しまれながら2017年に閉店した。だが、かつてお店で使っていたコーヒーチケットや椅子、サイドテーブルなどは安井さんが受け継ぎ、『シヤチル』でリユースされている。

店内に入ると、洗練されたモダンな雰囲気でありながら、どこか懐かしさが伝わってくるのは、『スイス』の面影を残しているためだろう。

 

これぞ喫茶店! の分厚いたまごサンド

メニューは、昔懐かしいものもあれば、これまで見たことのない斬新なものまでさまざま。とくに喫茶店の定番であるサンドイッチの評判がすこぶる良い。

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中でもオススメは、分厚いオムレツをサンドした「たまごサンド」(650円)。昔の喫茶店では、こんなサンドイッチをよく見かけた。

 

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口を大きく開けて、パクリ!

甘~いオムレツをイメージしていたが、ほのかにダシがきいている。パンとオムレツの間にやや多めに塗られたカラシも心地良いアクセントに。コーヒーはもちろん、ビールにも合いそうだ。

 

チープだけど洗練されたナポリタン

もう一つ、名古屋の喫茶店の定番メニュー、鉄板ナポリタン。ここでは「ナイトナポリタン」(950円)という名称で提供している。その名の通り、18時以降の限定メニューである。

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安井さん:ナポリタンは、調理しながら鉄板も火にかけなければならないので、コンロを占有してしまうんです。混雑するお昼時は対応できないんです。夜、ビールを片手にナイトナポリタンを楽しまれる姿を見て、これもアリだな、と。鉄板ナポリタンは、昔、叔父がよく作ってくれました。「ナポリタンはイタリア料理でもなければパスタでもない。日本のスパゲッティだ」って言いながら。ウチのナイトナポリタンも、あえて気取らないチープな味に仕上げています。

 

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麺をフォークでくるくるっと巻いてひと口……。うん、ケチャップの酸味と甘味が何とも懐かしい味わい。

ただ、麺は喫茶店のナポリタンらしからぬアルデンテな仕上がり。聞いてみると、茹で置きではなく、注文ごとに茹で上げるという。たしかにチープな味ではあるものの、牛タンの塩焼きがトッピングされていたり、どこか洗練されている。ナポリタンに限らず、この「嫌みじゃない洗練度」がお店の特徴ともいえる。

 

ロンドンでヒントを得た極上ビーフサンド 

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安井さん:次は、これを召し上がってみてください。ロンドンで食べて、あまりにも美味しかったのでメニューにくわえました。現地ではベーグルを使っていましたが、喫茶店なので食パンにサンドしました。

 

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安井さんが勧めてくれたのは、「ソルトビーフサンド」(750円)。その名の通り、塩漬けにした牛カルビがたっぷり。直火とオーブンで2度焼いてあり、とろけるようなやわらかさが口いっぱいに広がる。

大きめのピクルスも肉とよく合う。無性にビールが飲みたくなってきた。こんなサンドイッチは巷の喫茶店で見たことがない。喫茶店よりもバーにありそうな一品である。

 

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ところで、シヤチルが名乗る「グランド喫茶」とはどういう意味なんだろう。

 

安井さん:店の雰囲気やメニューなど従来の喫茶店よりも1ランク上、という意味を表す言葉を考えたとき、“グランド”というフレーズが浮かんだんです。以来、“グランド喫茶”と名乗っています。

 

うん、このフレーズは40代以上にはレトロっぽく感じるし、若者にとっては新鮮に聞こえる。すごくイイところを突いていると思う。ここ『シヤチル』から新しい名古屋喫茶文化が生まれるような気がする。

 

店舗情報

シヤチル

住所:愛知名古屋市千種区今池1-5-9 オフィスイリヤビル1階
電話:052-735-3337
営業時間:月〜金曜11:30~23:00、土曜・日曜7:30~23:00
定休日:第2、第4月曜日

 

名古屋ラーメン界のラスボス、好来道場「薬膳ラーメン」のしみ入るうまさは地元民以外もきっとハマるはず

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名古屋のご当地ラーメンといえば、何を思い浮かべるだろうか。台湾ラーメンにスガキヤラーメン……あ、この前紹介したベトコンラーメンは愛知県一宮市が発祥だから違うか。

実はもう一つ、名古屋のご当地ラーメンがある。地元では有名だが、台湾ラーメンやスガキヤラーメンと違って、まだ全国的に知られていない。

その名も好来(こうらい)系ラーメン。「薬膳ラーメン」と呼ばれることもある。『好陽軒』をはじめ、『陣屋』『八事らーめん 好好』、『招福軒』、『味楽』、『拉ノ刻』など名古屋市内外にのれん分けした弟子や孫弟子の店が約10数軒あり、その発祥の店が1959(昭和34)年創業の『好来』だ。

 

独自のメニュー&注文システム

こちらが薬膳ラーメンの大元、好来(現『総本家 好来道場』)。

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なかなかシブい店構えだ。

 

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実際にここのラーメンを食べてみようと思う。まずは店内に入ってすぐのレジで食券を購入。

 

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メニューはこんな感じ。って、おそらく初めて来た人は「松」とか「竹」、「寿」とメニューにあっても戸惑うだろう。

よく見ると、小さな文字で「メンマ多し」や「チャーシュー多し」、「めん多し」と書いてある。さらには肉(チャーシュー)の枚数も。

そんな中からデフォルトのラーメンである「松」(900円)を選択。

 

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お金を払うと、注文したラーメンと番号が記された札を手渡される。そして、「松の17番の方~」と、呼ばれたら席へ案内される。

 

ダテに「道場」を名乗ってない

店内で目を引くのがこれ。店是五ヶ条。店是、すなわち店の方針である。

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そこには、

一、大金を求めないこと

一、本業以外の金儲けを禁ず

一、仕事を楽しむこと

一、雑草の如く生き抜くこと

一、自分に勝つこと

人事を尽くして天命を待つ

と、ある。

店の方針というよりも、もはや生き方である。店名に「道場」と付くのはダテじゃないのだ。

 

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店内の壁の至るところにありがたい言葉がズラリと並ぶ。中でも私の心に響いたのはこの2つ。

本当の幸せ者とは生涯に心から笑った回数の多い人

人に負けても己に勝てば渡る世間に鬼はなし

うん、いずれも深い。って、ラーメン店で私は何を思い耽っているんだ(笑)。

 

見た目シンプルながら深い味わい

そうこうしているうちにラーメン「松」が目の前に運ばれた。

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具材はチャーシュー3枚とネギ、メンマ。うん、実にシンプル。

スープが濁っているので、重たそうに思えるがそうではない。口に含むごとに野菜の甘みがじんわりと広がるのである。うまみというよりは滋味。これがまた、飲めば飲むほど美味しくなるから不思議だ。

 

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麺はやや太めのストレート麺。モチモチとした食感がすばらしく、食べ応えも十分。とろけるような食感のチャーシューや、大きくカットしたメンマも文句なしのうまさ。

見た目はシンプルながらも複雑というか、奥行きがあるというか、どこにもない、オンリーワンの味なのだ。

 

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しかも、テーブルの上にある、コショウとガーリックパウダー、自家製ラー油、ラーメンだれ、高麗人参酢で味変もできる。

私のおすすめは、麺を半分食べたところで高麗人参酢を回しかける食べ方。

 

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味がよりまろやかになるだけでなく、滋味もアップするのである。さらに、チャーシューの上に自家製ラー油を少しだけのせて食べてもうまい。

麺とスープをすすった瞬間「あぁこういうラーメンが食べたかった」と思わせる、衒(てら)いのない実直な味わい。地元民だけじゃない、万人を納得させるだけの力がこの1杯の中にこめられているのだ。

 

和食出身の三代目が店を切り盛り

それにしても、こんなに美味しいラーメンが60年前からあったとは驚くばかりである。

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お店を切り盛りするのは三代目の店主、大橋健次さん(73歳)。

 

大橋さん:店を始めたのは、私の女房の父、楓彰と母の千恵子。もともと千種区の大久手で創業した。その後、東市民病院の近くに移転した。その頃には、旨いラーメン屋があると評判になっていたよ。当時、ラーメンといえばうどん店か中華料理店で食べるものだった。今のように専門店は少なかったと思う。そこに着目したオヤジはすごいと思うよ。

 

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店はその後、楓夫妻の息子さんが二代目を継ぎ、店も現在地へ移転。

他にはない味ゆえに弟子入りを志願する人も多く、1970年代から90年代にかけてオープンした系列店の店主が修業したのもこの頃だという。まさに「道場」のような雰囲気だった。

 

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ところが息子さんは若くして亡くなってしまう。

現在の店主を務める大橋さんはもともと寿司職人だったが、10年ほど前に三代目として店を継いだ。『好来』から『総本家 好来道場』へと店名を変えたのもその頃。現在は弟さんと2人で店を切り盛りしている。

 

スープやチャーシュー、メンマにも独自のこだわりが

スープは鶏ガラと豚骨少々、たっぷりの玉ネギとニンジン、ニンニク。そして、名古屋のきしめんにも使われるムロアジがベース。それらを6時間以上かけてじっくりと炊く。

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大橋さん:今だから話せるけど、オヤジがやっていた頃は作り方もいい加減だった。完全に我流だったからね。私は和食出身で、だしのとり方を心得ているから、下処理にしっかりと時間をかけて、できるだけ丁寧にやろうと思った。だから、味も変わったと思う。

 

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チャーシューを煮込むのは、たまり醤油と水、塩のみ。それを注ぎ足して使っているから、深みのある味わいに仕上がっているのだ。

デフォルトの「松」で3枚も乗るのは本当にお得。また、7枚入る「寿」(1,100円)も人気だ。

 

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こちらは、メンマ。真竹の皮を剥いで、塩漬けにした後、醤油でさっと炒めて仕上げる。チャーシューと同様に実にシンプル。しかも、大きくカットされているので食べ応えも十分。

“メンマ多し”の「竹」には、20本近くのメンマが入るというからスゴイ。

 

「薬膳」と呼ばれるゆえんは……

冒頭でも触れたが、こちらの好来系ラーメンは「薬膳ラーメン」と呼ばれている。大橋さんによると、これもまた創業者の楓彰さんのアイデアらしい。

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ところが、この呼び名に大橋さんは違和感を抱いている。 

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大橋さん:健康ブームに乗っかろうと思って、名付けたんじゃないかな。実際、玉ネギやニンジン、ニンニク、高麗人参酢など身体によいものは使っているけど、薬膳と呼べるほど大層なものじゃないからね。ごく普通のラーメンだよ。

 

そう謙遜するが、このラーメンに魅せられたからこそ多くの弟子たちにのれん分けされ、名古屋で“好来系”というラーメンのいちジャンルを確立させたのである。

弟子や孫弟子の店はフランチャイズではなく、昔ながらののれん分けなのでお店によってメニューもかなり異なる。今回紹介した、すべての基本となるラーメン「松」から進化を遂げた一杯を出すお店もある。それらを巡って食べ比べするのも楽しい。

名古屋の知られざるラーメン文化のラスボス的存在「薬膳ラーメン」を、ぜひ他の地域の方々にも味わってほしい。

  

店舗情報

総本家 好来道場

住所:愛知名古屋市千種区春岡通6-1-16
電話:052-735-3655
営業時間:11:00~14:00(スープがなくなり次第終了)
定休日:日曜  ※ただし日曜が祝日の場合は営業

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こってりラーメンの代名詞「天下一品」に、おそうざいとデザートが無料の店舗があった!

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こってり系ラーメンといえば、京都発祥の「天下一品」だろう。こってり味が苦手な五十路の私でさえ、無性に食べたくなることがある。

とくに「天下一品」の本場である関西へ出張などで訪れたときに店の前を通ると、吸い寄せられるように入ってしまう。あの、ポタージュ状のどろっとしたスープはそんな魔力があるのだ。

 

他店舗とは一線を画す「サービスコーナー」

そんな「天下一品」だが、私の住む名古屋エリアでは、名古屋市内に4店舗。関西と比べてまだ数が少なく、食べたい! と思うときになかなか行くことができないのが痛いところ。

しかし、先日、国道19号線を名古屋から春日井方面へ車を走らせていたときに、たまたま店舗を発見。「天下一品 守山国道19号線店」(写真下)である。

 

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またまた吸い寄せられるようにして店へ入ってしまった。

実はここ、同じ「天下一品」でも完全に一線を画した店だったのだ。

 

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それは店に入ると、すぐわかる。入口付近に「サービスコーナー」なるカウンターがあるのだ。そこにはこう書かれてあった。

 

ラーメン一杯ご注文のお客様におそうざい・デザートが無料

 

ええっ、マジか。かつて他の天下一品の店舗ではこんなサービス見かけたことがない。

じっくりとチェックしたかったが、とりあえずは席に座ってラーメンを注文することに。ここはもちろん、看板メニュー「こってり」(745円)をセレクト。

すると、こちらの注文を受けた店員さんが間髪入れず「サービスコーナーをどうぞ」と言う。

言われるままに「サービスコーナー」へ足を踏み入れると……

 

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おおおおっっっ!

 

イチ、ニイ、サン、シ……。

おそうざいとデザートの計7種類も。しかもすべて無料だなんて。

 

メチャ太っ腹じゃないか!!

 

名バイプレイヤーぞろいの無料アイテム

「サービスコーナー」の内容は日替わり。この日の主なラインナップを見てみよう。

 

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まずは、トッピングの定番「ネギ」

こってりのスープとたっぷりのネギは相性抜群。てんこ盛りにして食いたい!

 

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次に「塩だれキャベツ」。箸休めにぴったりな上に、お酒のつまみにもなる優等生だ。これもたっぷりいっておきたい。

 

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これは「ニラにんにく」。ラーメンにのせると、タダでさえコクのあるスープに、より深いコクが生まれる。トッピング界のエースと言ってもいいだろう。

 

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「もやしナムル」もそのまま食べてもよし、ラーメンにのせてもよし、酒の肴としてもよしの三冠王。私ならコレだけで生ビール一杯は飲み干せる。

ほかにも「食べるラー油」「からしにんにく」があった。これらも味のアクセントになる名バイプレイヤーだ。

 

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この日のデザートは、なんと「ドーナツ」。ラーメン店にはちょっと似つかわしくないが、逆にそれが嬉しい。私のような五十路のおっさんもデザートは別腹なのである。思わず、たくさん皿にのせてしまった。

 

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おそうざいとデザート以外にも、薬味として「にんにくチップ」「おろしにんにく」、さらに「味噌ダレ」も用意している。ラーメンのみならず、ご飯や餃子にも使えそうで嬉しい。

 

やっぱり全トッピングいっときたい

おっと、「サービスコーナー」をチェックしているうちに注文したラーメン「こってり」が運ばれてきた。 

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あえてトッピングメニューを追加しなかったので、具材はチャーシューとメンマ、ネギとシンプル。これはこれで旨いんだよなぁ。

思わず箸をつけそうになったが、ここはグッとガマン。

 

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「サービスコーナー」でゲットしたおそうざいとデザート、薬味を一緒に並べるとこんな感じ。一気にご馳走感が増してかなりゴージャスな見た目になった。これなら一人メシも寂しくはない。

 

おそうざいをご飯の友にしてもよいし、酒の肴にしてもよい。楽しみ方は自由だ。が、今回はラーメンのトッピングに向いていそうなものをすべて使ってみることにした。それがこの一杯。

 

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これぞ、まさに男メシ!

にんにくを使っているのでスタミナがつきそうだ。これが「こってり」一杯分の値段で食べられるというのはかなりお得。

 

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さて、肝心な味だが、やはり想像通りパンチがハンパない

しかし、「こってり」のどろっとしたスープも負けてはいない。にんにくがスープのコクを増して、さらに旨く感じた。これもこれで旨い。

 

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ただし、いくら無料だからといって取りすぎ、盛りすぎにはご注意を。

食べ回しや食べ残しは1皿あたり100円のペナルティが科せられる。マナーを守って楽しく、を心がけよう。

 

全国で9店舗が無料サービス実施中

ところで、余計なお世話かもしれないが、チェーン店である「天下一品」で他店と違うこと、それもこんな太っ腹なサービスを実施しても問題はないのだろうか。

店長の鶴田和正さんに聞いてみた。

 

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「もちろん、チェーン本部の許可は取ってますよ。このサービスをはじめたのは、もう10年以上前ですね。もともと、ネギやニラにんにくは有料のトッピングでしたが、お客さんに喜んでいただきたいと社長が決断して、弊社の手がける天下一品チェーンの1号店である大阪の南摂店からはじまりました」と鶴田店長。

 

今回おじゃました「天下一品 守山国道19号線店」を運営しているのは、大阪府堺市に本社がある(株)大塚フーズ。愛知県では、ここ守山国道19号線店名古屋栄店名古屋錦店岡崎店の計4店舗を手がけている。

また関西では、南摂大阪府摂市)、四條畷店大阪府四條畷市)、堺深井店大阪府堺市)、和泉国道26号線店大阪府和泉市)、竹田店京都市伏見区)の計5店舗。すべての店舗に「サービスコーナー」を設置している。

 

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「サービスコーナー」では、今回紹介したもの以外に、日によっては高菜や春雨、ワカメなども並ぶという。

また、おそうざいやデザートは、100グラム162円でテイクアウトも可能なのだとか。自宅でインスタントの袋麺やカップ麺にトッピングするのも楽しそうだ。

  

店舗情報

天下一品 守山国道19号線店

住所:愛知名古屋市守山区瀬古東3-1822
電話:052-791-6700
営業時間:11:00~翌2:00(金、土、祝全日は翌3:00まで)
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

 

東海住みなら知らぬ者はいない「ベトコンラーメン」とはなんなのか

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愛知県のご当地ラーメンといえば、何といっても台湾ラーメンが有名。しかし、もう一つ台湾ラーメンと同様に、ニンニクと唐辛子のパンチがきいたラーメンがあるのをご存じだろうか?

その名も「ベトコンラーメン」。

 

ベトコン、と聞いてついベトナム戦争をイメージする方もいるかもしれない。

ベトコンラーメンとはいつ、誰が考えたのか。そして、なぜ、その名が付けられたのだろうか? その真相に迫ってみた。

 

特徴はニンニクをたっぷり使うこと

ベトコンラーメンを出す店は、愛知県を中心に岐阜県や大阪府、岡山県などにある。ひょっとしたら、今ではそれ以外の地域でも食べられるかもしれないが、発祥の店は、愛知県一宮市で1969(昭和44)年に創業した「ベトコンラーメン 新京本店」

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お店の入口にある「ベトコンラーメン」の文字がわかるだろうか。

 

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まずは、二代目店主の稲垣賀彦さんにベトコンラーメンを作ってもらった。

このプロセスを参考にすれば、ベースがインスタントの袋入り麺でも似たような味になると思う。ぜひ家庭でも試してほしい。

 

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ベトコンラーメンの特徴は、ニンニクの粒がゴロゴロ入っていること

ニンニクはあらかじめ低温の油でじっくりと揚げたものを使い、ベトコンラーメン一杯につき、8粒~10粒も入る。つまり、ほぼニンニク1個丸ごと入っていることになる。

 

f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:ニンニクを揚げた油もモヤシとニラ、豚肉を炒める際に使います。良質なニンニク油ですから、風味がまったく違います。

  

スープは鶏ガラ&豚骨ベース

では実際に工程に入ろう。

まずは中華鍋に油を引かずにニンニクを入れて、表面に軽く焦げ目ができるまで焼く。

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f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:これは香りを出すためで、ベトコンラーメンを作る上でもっとも重要な工程になります。

 

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次にモヤシを入れて、ニンニク油をかけて強火で手早く炒める。

モヤシがややシンナリしてきたところで豚肉とニラを投入して、さらに炒める。味付けは数種類をブレンドした醤油と唐辛子。

 

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醤油ダレが入った丼にスープを注ぎ、麺を入れる。ちなみにスープは鶏ガラと豚骨がベース。

 

f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:豚骨は砕かずに、丁寧にアクを取りながら煮ていくので、澄んだスープに仕上がるんです。ベトコンラーメンはスープが美味しいからこそ。だから、スープの仕込みも重要なんです。

 

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そして、炒めたニンニクとモヤシ、ニラ、豚肉を麺にのせて完成。

 

疲労回復や風邪のひき始めにも

これが「ベトコンラーメン」(Mサイズ・950円)。

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まずは、麺の上にのるモヤシから食べてみる。

うん、シャキシャキでニンニクのパンチがしっかりきいている。それはスープにもしっかり溶け込んでいて、飲むごとにパワーがチャージされたような気分になる。

 

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パンチのあるスープと麺の相性は抜群。麺の一本一本にも野菜とニンニク、スープの旨みがしっかりと絡む。モヤシを炒める際に唐辛子を入れていたので、辛いのを覚悟していた。

しかし、それは全体の味を引き締めるためのもので、逆に心地良い。もう、野菜とともに食べると、箸が止まらなくなるほど旨い!

 

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ニンニクはジャガイモのようにホクホクの食感。ほのかに甘く、ニオイはまったく気にならない。これも頬張るごとにパワーが満たされていくような気分。実際、疲れているときや風邪のひきはじめに食べに来る人も多いという。

美味しい上に身体にもよい。それが長年にわたって、地元の人々に愛されている理由だろう。

 

由来は確かにベトナム戦争だったが……

それにしても、ベトコンラーメンは何をきっかけに生まれたのだろうか?

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f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:うちのお店は私が小学生の頃に父がはじめました。父は満州国の新京市で生まれ育ちました。それが店名「新京」の由来です。満州から日本に帰ってきてからは、愛知県一宮市で服屋を営んでいました。

 

愛知県一宮市は繊維業が盛んで、1950(昭和25)年の朝鮮戦争の特需で空前の好景気に沸いていた。機織り機の音がガチャンと鳴ったら一万円儲かることから、“ガチャマン景気”と呼ばれ、繊維業は隆盛を極めた。

稲垣さんの父、稔さんの服店も例外ではなかった。ところが……。

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f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:オイルショックで打撃を受けて、倒産してしまったんです。あの頃のこともよく覚えています。それまで暮らしは裕福でしたが、一気に貧しくなりましたね。そこで、生まれ育った満州で食べた中国の家庭料理を出すお店をやろうと。当時はカウンター7席の小さな店でしたが、とても繁盛していました。父と母だけでは手が足りなくなって、中華料理の経験のある料理人を雇ったんです。

 

当時のお店の厨房は今のように換気がしっかりしておらず、稔さんは疲労と湿気で食欲不振になり、体調を崩すこともあった。そんなとき、雇っていた料理人がニンニクをたっぷり入れたモヤシの炒め物を作ってくれた。これがベトコンラーメンのヒントになる。

 

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f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:食欲がないときでも食べられるし、何よりも満州時代を思い出させる懐かしい味だったそうです。体調が悪いときや疲れがたまっているときは、それをラーメンにのせて、賄いで食べていました。それをお客さんに出したところ、おいしいと評判になったんです。
メニューにくわえるにあたって、名前を考えねばなりません。当時はベトナム戦争の真っ只中で、ニュースでも頻繁に取り上げられていました。そこで、ベトナム戦争を勇敢に戦う兵士をイメージして、ベトコンラーメンと名付けたんです。

 

次第にベトナム戦争は泥沼化していき、国内でも反戦ムードが広がっていった。悲惨なベトナム戦争を連想させるラーメンではあまりにもイメージが悪い。しかし、ベトコンラーメンという名前はすでに定着していた。

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f:id:Meshi2_IB:20190325205507p:plain稲垣さん:多くのお客さんから「ベトコンラーメンを食べると、身体の調子がよくなる」と言われていました。そこに着目したんです。つまり、食べるとベストコンディションになる、と。ベストコンディションを略して、ベトコン。名前はそのままに、由来を変えたんです。(稲垣さん)

 

本店で修業した人が独立し、お店を出したことでベトコンラーメンは愛知県や岐阜県から広がっていった。しかも、チェーン展開しているのではなく、昔ながらの「のれん分け」。ゆえに、店ごとに価格やメニューが異なり、食べ比べるのも楽しい。

絶好調なときはもちろん、絶不調でベストコンディションになりたいときも、パンチのあるラーメンが食べたいなら、ぜひ試してみてほしい。

 

店舗情報

ベトコンラーメン新京

住所:愛知県一宮市松島町5
電話:0586-73-5715
営業時間:
11:30~14:30(14:00L.O.)、17:30~21:00(金・土・祝全日は~22:00)
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

 

「世界の山ちゃん」が飲茶の新業態「世界のやむちゃん」で新規参入。その驚きの理由と練り上げられた戦略とは?

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「世界のやむちゃん」

この店名を聞いたとき、名古屋のみならず今や全国にその名をとどろかす手羽先の大型チェーン「世界の山ちゃん」をどこかのお店がパクった、もとい、オマージュでつけたのだろうと思った。

実は「やむちゃん」は「山ちゃん」の系列店。壮大な冗談ではない。その事実を知ってまたまた驚いた。

 

「私たちが狙っていたのは、まさにそのリアクションなんです!」

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そう話すのは、「世界の山ちゃん」を手がける株式会社エスワイフード・業態開発部副部長の堺和也さん(写真)だ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:店名を聞いて「おや?」と、思ったらまずネットで検索しますよね。そして、当店のウェブサイトにたどり着く、と。そういう想定のもとでお店のネーミングを考えました。

 

やむちゃんは、その店名からでもわかるように、扱うのは飲茶。なぜ、まったく異なるジャンルの業態を手がけようと思ったのか。堺さんに話をうかがうとともに新業態店の全容をレポートする。

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▲「世界のやむちゃん」はビルの2階。階段を上ると「世界の山ちゃん」のキャラクター“鳥男”がお出迎え

 

悲願だった別業態の出店

山ちゃんの別業態は、栄・女子大小路と最近鶴舞にもオープンした「ら~めん やどかり屋」とフランチャイズで別のラーメン店、さらにカフェレストランの計4店舗。

国内外に78店舗展開する山ちゃんにしては決して多い方ではない。

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▲2019年1月にオープンした「ら~めん やどかり屋 鶴舞店」(エスワイフード提供)

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:弊社の山本重雄前会長もかつては女性専用のバーや海鮮居酒屋店を手がけたこともありましたが、長くは続きませんでした。新業態店を出すことは山本前会長の悲願でもあったんです。

 

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▲山本重雄前会長(エスワイフード提供)

 

山本重雄前会長は、2016年8月に59歳の若さで亡くなった。今はその意志を継いだ妻の久美氏が代表取締役として手腕を振るっている。

 

「女性向けカジュアルな飲茶」という未開拓の市場

一方、堺さんがエスワイフードに入社したのは昨年6月。それまで別の会社で店舗開発の仕事をしていて、新業態店のためにヘッドハンティングされたという。つまり、半年でゼロから「世界のやむちゃん」を立ち上げたということになる。

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f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:まず、新業態を考えるにあたって、山ちゃんにこれまで来店されたことがないお客様、つまり、おもに女性をターゲットにしようと思いました。名前は知っていても、一度も来られたことがないという方は意外と多いんです。

 

女性が足を運びたくなるお店をと考えてみると、名古屋にも飲茶や点心のお店はたくさんある。しかし、その多くは高級志向。それこそ山ちゃんのように居酒屋感覚で気軽に行けるお店は少ない。ここに攻め入るべきマーケットがあると確信。本格的な飲茶をリーズナブルに楽しめることをコンセプトの一つとした。

 

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▲「世界のやむちゃん」のメニュー。点心は1個68円~とお値打ち価格

 

とはいえ、飲茶に関してはまったくの素人。小籠包ひとつ作ろうにも作り方を教えてくれる人がいなかった。だったら本場へ行ってみるしかない。堺さんはメニュー開発のスタッフとともに台湾へ行き、現地の点心を食べ歩いた。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:私自身、中華料理は15年ほど前にマネージャーとして働いた程度でまったくわかりませんでした。だから、自分が実際に食べてみて、おいしいと思ったお店の味を再現しようと。幸いにも台湾にも「世界の山ちゃん」はありますから、現地スタッフにも協力してもらい、一つ一つ作り上げました。

 

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▲「世界のやむちゃん」店内。ほどよい中華感!

 

店内は、台湾の路地裏をイメージ。壁や床もわざと汚してあり、インテリアもガーデン用のテーブルやチェアを使用していて、まさに本場の屋台の雰囲気だ。カメラを店内のどこに向けても「絵」になるので、SNSをも意識してのことかもしれない。

それと、店内には日本語が書かれたポップやポスターが1枚もないことに気がついた。これもリアルを追求してこのことだろう。

 

名付け親は中学生!?

新業態店は飲茶に決定したものの、店名の“やむちゃん”はまだ決まっていなかった。命名したのは、意外な人物だった。しかも、それは偶然に生まれた。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:弊社の代表が中学生の娘さんと話しているときに、「山ちゃんが飲茶のお店をやるなら、やむちゃんでいいじゃん」と。それがきっかけとなって店名が「世界のやむちゃん」に決まりました。私自身、そのエピソードを聞いて、体に電気が走りましたね(笑)。もう8割は成功したと確信しました。

 

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▲誰もが「おやっ?」と思うネーミングじゃないと、この時代なかなか覚えてもらえない

 

8割は成功したと感じても、残り2割で手を抜くと足元をすくわれる。そこで、いかにお客さんが足を運びたくなる仕掛けを作るかに神経を注いだ。

堺さんが着目したのは、よくありがちな飲茶専門店の点心は3~5個売りで、たくさんの種類を選べない点。ここに改善点を見い出し自社メニューに反映させた。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:日本中探しましたが、点心の1個売りをしているお店はなかったんですよね。ここに勝機があるんじゃないかと。

 

実際、やむちゃんのメニューを見ると、点心は全部で41種類もあり、1個から注文できる。つまり、数多くの中から選ぶ楽しさがあるのだ。

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▲手前の列左から右へ「巾着小籠包」(208円)、「珍珠丸子」(158円)、「うさぎ饅頭」(168円)。真ん中の列左から右へ「錦糸焼売」(148円)、「翡翠餃子」(168円)、「蟹肉焼売」(228円)。いちばん奥の列左から右へ「紅色ココナッツ団子」(148円)、「黄金饅頭」(228円)、「もち米焼売」(138円)

 

さらに1個ずつ「枡(ます)」に入っている点にも注目してもらいたい。いかにも女性ウケしそうな見栄えではないか。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:インスタ映えする器を探していたときに、打ち合わせ先でたまたま酒枡が置いてあったのを見つけたんですよ。底の部分に穴を開けたら、せいろの代わりになるのではと思ったんです。ただし、枡を作る職人さんはせいろとして使用することを想定していませんから、枡の厚みや高さ、使用する塗料などをテストしてはまた作って、の繰り返しでした。すべて完全オーダーメイドです。

 

“映え度”満点な飲茶メニュー

では、数ある点心の中でも評判のメニューを紹介しよう。

まずは、コンニャクの粉末でできた皮で包んだ「巾着小籠包」(写真下、208円)。弾力があって破れにくいので、通常の小籠包よりも肉汁を閉じ込めることができる。

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▲かなり熱々なのでヤケドに注意!

 

こちらは、「もち米焼売」(写真下、138円)。五目おこわを包んだ、焼売とちまきの中間にある一品。

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▲蒸し上げた餅米のもっちりとした食感と味付けのバランスが絶妙。2個、3個と注文したくなる

 

デザート系の点心では、フォンダンショコラを中華スイーツ風にアレンジした「黄金饅頭」(写真下、228円)がオススメ。

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▲頬張ると、チョコレートではなく、黄金ソース(カスタード)が飛び出す。彩り的にも思い切りインスタ映えしそうだ

 

餃子には「山ちゃん」のスパイスが

新業態店ゆえに、山ちゃんらしさはかなり薄めてあるのかと思いきや、そうではない。山ちゃんの看板メニューである「幻の手羽先」の、“幻”の名を冠したメニューが存在するのだ。それが「幻の名古屋餃子」(写真下、348円)。

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豚肉ではなく、鶏肉を使った餃子なのだが、食べてみると、山ちゃんの手羽先の味そのもの。男性にもおすすめの一品である。

 

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ご覧の通り、皿には山ちゃんの秘伝のスパイスがかけられていて、その上に餃子をのせている。

 

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これがジューシーな鶏肉のあんを見事なまでに引き立てているのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:いやぁ、本当にこのメニューは苦労しました。あんにスパイスを混ぜたり、皮にスパイスを練り込んだりしましたが、熱が加わると風味が飛んでしまうんです。でも、考えてみれば、手羽先も揚げた後でスパイスを振りかけているわけですから、最初からこうすればよかったんですけど(笑)。

 

筆者がお店へ行ったのは、午後2時。にもかかわらず、店内は満員だった。それも9割以上は女性客。オープン前に堺さんが思い描いていた光景がそこにはあったのである。

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▲メニューの表紙には「世界的飲茶」。つまり、訳すと「世界のやむちゃん」……。どこまでもシャレが効いている。ちなみにメニューは持ち帰り可能

 

新業態もまずまずのスタートを切った「世界のやむちゃん」。果たして今後、どのような展開になっていくのだろうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20190228183725p:plain堺さん:「世界の山ちゃん」は、いまや東京大阪にもありますから、名古屋以外の都市に出店したいですね。そして、いずれは飲茶の本場、台湾にも逆輸入という形で進出できたらと思っています。

 

東京大阪でも山ちゃんの知名度はすこぶる高く、かつての名古屋めしのお店というある種特殊なジャンルの(?)お店ではなく、リーズナブルでうまい居酒屋店チェーンとして認知されている。

また、海外のタイや台湾でもその名をとどろかせているだけに、他の都市や海外への進出はそんなに遠い夢ではないと思う。夢の「飲茶逆輸入」なるか?

 

店舗情報

世界のやむちゃん

住所:愛知名古屋市中区栄3-12-21-2 寿子ビル2F
電話:052-265-7538
営業時間:11:30~23:00 (料理LO 22:30 、ドリンクLO 22:30)
定休日:年末年始(12/31~1/3)

www.hotpepper.jp

 

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