ぶりの旬は冬という固定観念を覆すぶり料理専門店

ぶりの旬といえば冬のイメージが強いが、そんな固定概念を覆すぶり料理専門店がある。その名も「ぶり中野」。天然ぶりだけではなく、年中脂の乗った養殖ぶりにも力を入れる同店が、ぶりにこだわる理由とは?

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冬は天然ぶりが旬の季節。たっぷりと脂を蓄えたこの時期のぶりは美味しく、“冬に食べるべき魚”というイメージが定着しています。しかし、「ぶりの旬は一年中だ!」と言わんばかりに、季節に関係なく一年中脂の乗ったぶりが食べられるお店があります。

 

その名も「和びすとろ ぶり中野」。全国的にも珍しいぶりの専門店として2016年のオープンから今年で4年目を迎えます。

 

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▲東中野駅から徒歩3分、「ぶり中野」というインパクトある店名が目に飛び込んでくる

 

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▲店内に入ると、「鰤(ぶり)」と書かれたハッピや、ぶりのポスターなどが飾られ、ひと目でぶり推しが伝わってくる

 

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▲仕込み途中のぶり。身の色がピンクで美しい

 

一体なぜ、ぶりの専門店をオープンしたのか? 店長の望月さんにお話を伺いました。

 

天然を凌ぐほど美味しい養殖のぶり

望月さん:私は前の店長から引き継いで店長になったので、お店の立ち上げには携わっていないのですが、前店長いわく、当時は普通の居酒屋に飽きているお客さんが増えているように感じたそうです。だったら専門店の方が面白いんじゃないかと考えてオープンしたとのことです。

 

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──そこでぶりを選択するところが珍しいですよね。

 

望月さん:1番のポイントは、養殖のぶりなら一年中食べられるということ。実は養殖のぶりって、天然を凌ぐほどに美味しいんです。それを手頃な価格で食べてもらえたら、というのがはじまりです。

 

──店名の「ぶり中野」は、元女子プロレスラーのブル中野さんにちなんでいるのですか?

 

望月さん中野区のお店だし、ぶり専門店だし……という感じでの命名みたいです。実際にブル中野さんもいらしてくださって、美味しいと言っていただきました。店名に関しても、本人のお墨付きです。

 

──ぶりの旬は寒い季節だというイメージだったので、気軽に一年中食べられるなんて意外でした。ただ、素人からすると養殖のぶりよりも天然のぶりのほうが、評判がよさそうな気がするのですが……。

 

望月さん昔は、「養殖はちょっと臭い」と敬遠する人もいましたが、今の養殖ぶりは、かなり進化しています。
例えば、愛媛県宇和島市で養殖されている「チョコブリ」は、チョコに含まれるカカオポリフェノールを配合した飼料を与えていて、色鮮やかで美味しいんです。
うちは、天然ぶりと養殖ぶりを食べ比べてもらえるよう、盛り合わせにして出しているので、ぜひいろんなぶりを試してみてほしいですね。

 

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▲左から、鹿児島の鰤王(養殖)、佐渡の天然寒ぶり、愛媛県宇和島市のチョコブリ。刺身の種類は日替わり(価格は時価)

 

──チョコブリというネーミングも可愛いですね。では、さっそく盛り合わせの、チョコブリからいただきます。

 

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──当たり前ですがチョコレートをエサに養殖されたとはいえ、ぶり自体はチョコレートの味は全くしないですね。ただ脂の甘みが口の中に広がって、日本酒が飲みたくなります! 

 

望月さん一緒に盛り合わせている、鹿児島鰤王という養殖ぶりも、栄養バランスが整えられたエサで養殖されていて、一年中安定した高品質のぶりを提供してくれます。

 

──鰤王もプリプリの弾力にほどよく脂が乗っていて美味しいです。2種類の養殖ぶりを食べてみて、養殖魚の概念が変わりました。

もちろん、佐渡の天然寒ぶりも、日本海の荒波にもまれただけあって、身が引き締まっていて美味しいですが、チョコブリ、鰤王も負けず劣らずの旨味があって、養殖、天然それぞれのぶりが好きになりました。

 

望月さんぶりは出世魚なので、冬の間はぶりなのですが、モジャコ(稚魚)→ワカシ→イナダ→ワラサ→ぶり、という風にどんどん出世していきます。夏の間は、脂が少ないさっぱりしたイナダやワラサになるので、養殖のぶりの方が一年中脂が乗っているんですよね。

 

常識を覆す白いぶり大根

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▲ぶり大根の仕込み中。煮えたら一度冷まして味を染み込ませる

 

──他の好評なメニューはなんでしょうか?

 

望月さんの時期はぶりしゃぶ鍋がよく出ますね。さっとお湯に通してめしあがってください。

 

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▲ぶりしゃぶ鍋1人前1,408円、締めのうどん1人前440円(写真は2人前)

 

──こちらも養殖のぶりですね。しゃぶしゃぶにすると、刺身とは違ったぶりの美味しさが引き出されます。出汁にひたすことで脂がほどよく抜けて、旨味が引き立ちますね。箸が止まりません。

 

望月さんしゃぶしゃぶにつけるポン酢も自家製なんですよ。

 

──ぶりのレアカツというメニューも気になります。

 

望月さんうちのメニューは、いろんなお料理の「ぶり版」を意識していて、板長さんが面白いメニューを考えてくれています。ぶりカツは、肉を揚げたカツのぶり版ですし、ぶりわさびというメニューは、タコワサのぶりバージョンですね。

 

──ぶりを使っての大喜利みたいですね。レシピを開発するのが楽しそうです。

 

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▲ユニークなぶり料理を開発している板長さん

 

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▲ぶりのレアカツ(770円)

 

──レアカツは、衣がサクサクで中はほどよくレア。タルタルソースと絶妙にマッチして、これはビールが進みそうです。

 

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 望月さんぶり大根もぜひ味わってほしいです。一般的なぶり大根は、醤油やみりんで味付けしていると思うのですが、うちのぶり大根の味付けは塩と柚子なんです。見た目にも意外性があると思います。

 

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▲ぶり大根(858円)

 

──ぶり大根といえば茶色っぽいイメージですが、ぶり中野さんのぶり大根は白くて美しいですね。

 

望月さんうちは、ぶりを1本丸々仕入れるので、「ぶりのあら」がたくさん出るんです。ご家庭でぶり大根を作る時、ぶりの切り身だけだと出汁が出にくい場合は、市販の出汁などを使って味を深めていくと思います。
でも、あらを使えばぶりの旨味がどんどん出てくるので、シンプルな味付けでもぶりの旨味がたっぷりと大根に染み込みます。あらにも身がついていますし目玉などをツマミに飲みたい方にも人気です。

 

──確かにあらは、身がしっかりついているし骨までしゃぶれますね。酒のアテとしても最強だと思います。このぶり大根は、ぶりの味が染み込んだ「大根が主役」という感じもして、ぶり専門店だからこそのメニューですよね。

 

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▲日本酒の種類も豊富で、酒好きを唸らせる

 

──ぶりづくしのお料理をたくさんいただきましたが、素材はすべてぶりでも、味わいはどれも斬新で飽きません。ぶりという魚のポテンシャルの高さを知ることができました。

 

望月さんこのお店を通して、養殖のぶりの美味しさを伝えられたらいいなと思っています。天然の魚はもちろん美味しいです。
ただ一方で、海の天然資源は大切にしないといけません。養殖のぶりであれば全国で手に入りますし、ハーブやかぼす、すだち、オリーブ、お茶の葉っぱをエサにするなど、各地で工夫されていてどんどん美味しさが追求されています。養殖のぶりを通して、もっとぶりが日本人の身近な魚になるといいなと思っています

 

春夏秋冬いつでもぶりを堪能できる「ぶり中野」。ぶりの意外な調理法なども楽しめて、リピート決定の良店ではないでしょうか? いろんな種類のお料理を楽しみたいなら、2人以上での訪問をおすすめします!

 

撮影:松沢雅彦

 

お店情報

和びすとろ ぶり中野

住所:東京都中野区東中野1−45−4
電話:03-6338-6281
営業時間:18:00~翌3:00(L.O. 2:00)
定休日:不定休

書いた人:松子

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石川県出身の、都内在住のOL。アラフォー。チェーン店で酒を飲むことがライフワー ク。365日毎晩どこかの酒場に出没中。趣味は海外旅行で、いろんな国の料理を食べ ること。とにかく、コスパよく美味しい酒が飲みたい!

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