サウナエッセイ漫画『湯遊ワンダーランド』著者・まんきつさんと行く“五感ビンビン飯”【巣鴨散策編】

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『週刊SPA!』にて、サウナへの愛や救済を緩やかに描いた人気連載『湯遊ワンダーランド』が涙の完結。コミックス最終巻の発売に合わせ、著者・まんきつ(元・まんしゅうきつこ)さんの日常に密着した取材を、前後編にわたってお届けします。

 

前編となる【散策編】の舞台は豊島区巣鴨。『湯遊ワンダーランド』作中にも登場する“五感ビンビン飯”の最右翼「台湾」を目的地に、地蔵通商店街を巡っての初夏満喫。

“食”とサウナの関係から、漫画への想いまで、ゆるゆると聞いてきました。

 

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▲老舗と新参が入り混じる東京の縮図、巣鴨地蔵通商店街

 

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▲「こんにちは〜」とまんきつさん登場!

 

『湯遊ワンダーランド』完結。“まんしゅうきつこ”から“まんきつ”へ

──『湯遊ワンダーランド』はついに最終巻が発売されましたね。本当にお疲れさまでした!

 

湯遊ワンダーランド3

湯遊ワンダーランド3

 

 

まんきつさん:ありがとうございます!

 

──今日は巣鴨散策に同行させていただきます。『湯遊ワンダーランド』にも登場する「台湾料理 台湾」を目指しつつ、いろんなお話ができればと思っていますが、まずは読者が混乱すると思うので、ペンネームの改名について教えていただいてもいいですか?

 

 

まんきつさん:はい。『湯遊ワンダーランド』の連載が終わったタイミングで、“まんしゅうきつこ”から“まんきつ”に変えました。担当編集の高石(智一)さんには「それって改名というよりは略称ですよね。なんでそんな中途半端な名前にしたんですか?」って言われましたけど、これにはいくつか理由があるんです。
わたしって昔から、自分が“被験者”になる感覚というか、自分の人生を素材に実験をしてしまうようなケがあって……。自分でもわからないうちに、危ないほうの道ばかり選んでしまう傾向にあったんですね。

 

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──危ないとわかってはいても、それで自分がどうなってしまうのかを見てみたいという……

 

まんきつさん:その好奇心に抗えなかったんです。わたしがアル中になったのも、自分すら喜ばないペンネームで活動を続けていたのも、そういう“人体実験”をしていたのかもしれないですね。
なぜそういう道を選び続けてきたのかというのは、幼少期の家庭環境にまでさかのぼるんですけど、そのことも『湯遊ワンダーランド』の最終話である程度は描き切れた感覚もあったので、まずは自分を苦しめていたペンネームとお別れしてみようと思ったんです。

 

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▲元気と幸福を呼び込む赤パンツ屋さん「巣鴨のマルジ」にて。頼もしい股上の一着を勧められ……

 

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▲……そのまま放置されるまんきつさん

 

──ネタバレになってしまうので書けませんが、本当に素晴らしい最終話でした。連載当初から追ってきている読者も、あのラストは想像していなかったと思います。

 

まんきつさん:あれを描けたことで、憑き物が落ちたところもあって……。
ただ、だったらなおさら、“まんしゅうきつこ”から思い切り離れたペンネームにすればいいと思うじゃないですか。

 

──そうですね。

 

まんきつさん:それはこの世にただひとり、「“まんしゅうきつこ”のままでいてほしい」という人がいて、それがうちの息子なんです。
もう中学2年生になるんですけど、「お母さん名前変えたいと思うんだけど」と相談したら、彼だけは「狂っててカッコイイよ! 変えない方がいいよ! その名前だから仕事がきてるんだよ!」とまで大反対してきて……。
息子は5歳ぐらいから漫☆画太郎先生の『地獄甲子園』の大ファンで、わたしが読み聞かせしてあげられない日は「がたろ〜う、がたろう読んで〜!」と寂しがって眠らないくらいだったんで、ちょっと他の子とは感覚が違うのかもしれませんが、そこまで言われちゃ完全に“まんしゅうきつこ”を捨て去るわけにもいかないですよね。
息子も最後は「“まんきつ”ならいいと思う」と納得してくれました。渋々ですけどね。

 

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▲「台湾」に向かう道すがら、「ファイト餃子」でテイクアウト。「まだ時間も早いので、そのあたりで食べちゃいましょうか」

 

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▲“そのあたり”とは本当にそのあたり。人通りのない工事現場で取材を続行

 

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▲たっぷりの油での揚げ焼きながら、意外なほどにあっさりと食べられる、"大人のスナック"

 

“まだ迷ってるサウナー予備軍”の背中を、そっと押すことができれば

 ──そもそもサウナや水風呂について描こうと考えたのはなぜですか? 連載開始当初のことって覚えてらっしゃいますか?

 

まんきつさん:連載を始めた頃は、とにかく「楽しく漫画を描く」ということだけを考えていたんです。もともとは『アル中ワンダーランド』の続編として、家族との関係を描いていこうと思っていたんですけど、ネームを考えれば考えるほど苦しくなっていって……。半年ぐらい悩んでしまっていたんですね。
そこで、高石さんから「テーマを変えてみませんか? 興味のあるものを描いてください」と言われて思いついたのが、サウナだったんです。

 

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▲『湯遊ワンダーランド3』。 全国書店(と一部サウナ)にて絶賛発売中

 

まんきつさん:(サウナは)もともと知人や弟に勧められて通い始めたんですけど、水風呂に入れるようになってからは完全に開眼して、サウナが生活の一部にまでなっていたので、これならネタに悩むことなく書けるんじゃないかなって。
サウナについて描こうと思った瞬間から、初めて水風呂に入れた瞬間のことは、ドーンと見開きで描こうと決めていましたね。あのシーンが描きたいがために連載を始めたようなところもあります。

 

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『湯遊ワンダーランド』より/©kitsuko mashu / fusosha 

 

まんきつさん:わたしが楽しく描けているときは、まずはそうした絵が浮かんでいることが多いですね。あとはその絵の前後を埋める作業になるので、比較的スラスラいくんです。たとえばサウナで常連のおばちゃんと喋っていても、その場で絵が浮かんで、ネームの部分まで固まってくるので、あとはそれを絵に起こす作業になります。
……ただ、最初にいくつかの描きたい絵がある場合、その絵をうまくつなげるための辻褄に悩んでしまうんですよね……。描きたい絵と絵の間のストーリーにも虚構を入れたくないので、実体験であったり、実際に聞いた会話を入れていくんですけど、それが案外なだらかにいかなくて。
そう考えると、わたしは(実際の作画よりも)構成の部分で悩んでいることが多いですね。

 

──まさに「漫画が描けない」という回もあります。

 

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『湯遊ワンダーランド』より/©kitsuko mashu / fusosha  

 

まんきつさん:あれももちろん実体験です。たぶん漫画家さんって、仕事を続けるうちにだんだんとコツを掴んでいくものだと思うんですけど、わたしの場合はそれが全然なくて。なんとか締め切りギリギリに原稿をアップして、「やっと終わった~」と一息ついた瞬間に、「あれ? どうやってこの漫画描いたんだろう」って、まるで他人事のような気持ちになるんですよ。
連載がひとつ終わるとなぜか書き方がリセットされちゃっていて、次のを描き始める段階になると、いつもネットで“漫画  ネーム  書き方”と検索しちゃう。漫画家の友だちに会っても、いつも「どうやって描いてるの?」って聞いちゃいますし。

 

──どうしてもアイデアが浮かばないときに、していたことはありますか?

 

まんきつさん:料理ですね。ぼーっと手を動かしているとアイデアが浮かぶことも多いですし。
漫画ってものすごく時間がかかるじゃないですか。構成、ネーム、作画、修正とやっていると、1本に1ヶ月ぐらいかかることも多いですし。その反面、料理ってすごく短時間で結果が出ますよね。キッチンに立って材料を並べた瞬間から、結果が目の前に見えている、という状態なので、それ自体が快感なんです。
だから漫画が描けない時期はお菓子づくりにハマっちゃって。毎日のようにシフォンケーキを焼いて、ビスコッティを焼いて、パウンドケーキを焼いて、「これって誰が食べるんだろう」ってぐらいつくってました。

 

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──結果がすぐに出るといえば、サウナや水風呂もそうじゃないですか?

 

まんきつさん:そうですね。ただ、わたしの場合、サウナは煮詰まったときに行くというよりも、平日の昼間に入って、そこから漫画にとりかかって、という流れが多いかな。
できることなら朝起きてすぐ入りたいんですよ。朝ランニングしてから仕事に行く人とかいるじゃないですか。まさにあの感覚です。サウナにいった後は頭の中がデフラグされた状態になるので、そのほうが「よーし描くぞ!」って気持ちになれるんです。あ、だから毎回リセットされちゃうのかな……。

 

──サウナって、行けば行くほど耐性がついてしまいませんか?

 

まんきつさん:そうなんですよね~。通い始めた頃は本当に頭の中がキレイになって、やる気も出たし、スラスラ書けていたんですけど、だんだんと「サウナがすべてを解決してくれるわけじゃないぞ」ってことに気づいていくんです。サウナにすごい万能感を期待している人もいると思うんですが、決してそうではないと思います。
ただ、あの気持ちよさに目覚めると、間違いなく人生は楽しくなると思いますよ。ある女性の読者から、「『湯遊ワンダーランド』を読んでからすっかりハマって、今では毎日のようにサウナに通ってます。素敵な趣味ができました!」みたいなファンレターをもらったときは本当に嬉しかったです。

 

──“少し前の自分”から送られてきた手紙のようですね。

 

まんきつさん:そうなんですよ! 自分自身、もともとすごく落ち込みやすい体質だったんですけど、サウナですごく上向きになれましたし、そうすると、いろんな人に勧めたくなりますよね。でも、まだ知らない人にとってのサウナというのはやっぱりハードルが高い。いくら言葉で勧められても、なかなか行く気にはならない場所だと思うんです。

 

──3巻に登場する“サウナー佐和子”の彼氏のように。

 

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『湯遊ワンダーランド』より/©kitsuko mashu / fusosha  

 

まんきつさん:“コウちゃん”ですね。でも、わたしだって弟に「水風呂入れ」と言われ続けてきましたけど、言葉だけじゃなかなか入ろうとは思えなかったんですよ。でも、それが漫画という表現であれば、すんなり興味を持ってくれる人もいると思うし、そういう“まだ迷ってるサウナー予備軍”の背中をそっと押すものとしてこの漫画が読まれるのであれば、それはすごく嬉しいことだと思いますね。
あ、そろそろお店につきますね。天気もいいので外で食べましょうか。

 

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▲「台湾」に到着。お母さんとそのお友だちが席を準備してくれる

 

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柔らかすぎる角煮と固すぎる鉄玉子。巣鴨が誇る“五感ビンビン飯”

まんきつさんが案内してくださったのは、巣鴨地蔵通り商店街の喧騒から離れた住宅街で営業を続ける台湾料理店、その名も「台湾」。プルンとした透明な脂身とホロホロと崩れる肉の旨みを、箸の力だけで両断できるほどに柔らかな「角煮」が食べられる名店だ。

 

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▲「イラッシャイひさしぶりー!」と、本当にお元気な名物お母さん

 

まんきつさん:わたしはサウナ入るとめちゃくちゃお腹がすくんですよ。汗をかいているときから、「出たら何食べようかなぁ」と考え始めちゃいますね。
この店は知り合いの編集者さんに教えてもらったんですけど、とにかく角煮の大きさとおいしさに驚いて。これを定食にして1,000円って、ちょっと信じられないですよね?

 

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▲「角煮定食」(1,000円)

 

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▲「こういう料理は思い切って食べないと。なんなら手づかみでいきましょうか?」

 

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▲「わたしの唇、てっかてかになってますよね? ここではそれでいいんです!」

 

まんきつさん:角煮の柔らかさとは対照的な「鉄玉子」(150円)の硬さというのも衝撃的で。これはタレで煮込んだ玉子を乾燥させて、また煮込んでっていうのを繰り返すことで、ここまで小さくなってるみたいです。

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▲ふつうサイズの鶏卵が、うずらの玉子大にまで縮んだ「鉄玉子」。今回オーダーしたのはもっとも硬い"3週間もの"

 

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▲「これ、うまく噛まないと歯が折れます。思い切り投げれば凶器にもなります」

 

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▲歯型もクッキリ。黒蜜にも似た甘みが感じられ、一度食べれば癖になる味わい!

 

──今はグルメ漫画の戦国時代ですけど、『湯遊ワンダーランド』の“食の回”のファンはすごく多いと思うんです。1巻にも2巻にも「五感ビンビン飯」という回がありますが、まさにこの言葉がサウナと“食”との関係をピタッと言い表していますね。

 

まんきつさん:サウナの後ってとにかく身体中の感覚が敏感になっているので、その魔法が解けないうちに、なるべく美味しいものを身体に入れてやろうという気持ちになるんです。まさに「五感がビンビンになってる状態でのごはん」ってことですね。

 

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▲お母さんオススメの「鶏肉の紹興酒漬け」(800円)

 

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▲豚肉もたっぷりの「トマトたまご炒め」(1,500円)

 

まんきつさん:サウナの後は、味覚も嗅覚もふだんの自分とは違っているんですよね。身体が原始の状態にまでリセットされているので。

 

──原始の状態?

 

まんきつさん:たとえば卑弥呼の時代の人たちって、みんな視力も聴力もよかっただろうし、第六感的な超能力というのも持っていたらしいんですけど、現代になるとどうしても、そういう感覚は濁らざるを得なくて、いろんなことに鈍感になってると思うんです。

 

──サウナはそういう“濁り”を落としてくれる場所でもあると。

 

まんきつさん:これはいろんなところで話してることなんですけど、ジャニーズとかの男性アイドルって、サウナ好きがすごく多いんですね。アイドル商売って、人の“念”とか生霊みたいなものに常にさらされているので、彼らも無意識にそういう状態からのリセットを求めてサウナに通っているんだと思うんですよ。

 

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まんきつさん:わたし自身も人の“念”とかをすごく感じやすくて……いや、決してお化けとかが見えるわけじゃないんですけど、しょっちゅう夜中に目が覚めてしまうんです。でも、次の日にサウナに入ると、そういう憑き物が、床にストンと落ちる感覚があるんです。ハッキリと気持ちが軽くなるし、歩いてもあまり重力を感じずに、フワフワする感じ。

 

──サウナの前が、いかに重たかったかを実感する。

 

まんきつさん:新しい身体になる感覚ですね。でも、その時間って決して長続きはしないので、なんとしてでもその時間に美味しいものを食べたくなるんですよ。

 

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▲ニンニク好きにはたまらない「青菜炒め」(800円)

 

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▲まんきつさんも初体験の「パイナップルケーキ」(250円)。「コレは砂糖なしネ。台湾の昔からのやり方でつくってるのヨー」とお母さん

 

──まんきつさんの好物ってなんですか?

 

まんきつさん:牡蠣とお寿司と鰻かなぁ……とくに生牡蠣は大好きすぎて、毎年箱で届けてもらって、自分で剥きながらお腹いっぱい食べるということを繰り返してますね。……ただ、最近は本当にどうしちゃったんだろうってぐらい食欲がなくなっちゃって。
実は今日も、さっきの餃子を食べたあたりから、ちょっと無理してます……すごい食べてた時期もあったんですけどね……わたしの身体は健康なわけがないので、一度人間ドックにいったほうがいいと思うんですけど……。

 

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──取材、中断してもいいですよ?

 

まんきつさん:今はまだ……なんとか。みなさんが手伝ってくれれば食べられます。
今日はちょっと耳も聞こえにくくてすみません。わたし、アル中だったときに“耳管開放症”になっちゃったんですよ。これは中耳と上咽頭を繋いでいる管が開いたままになってしまう病気で、急激に痩せたりするとなるんです。
アル中になる前は53キロぐらいあったんですけど、固形物が食べられなくなってからは42キロにまで落ちてしまって……。半年ぐらいかけて体重は元に戻りましたけど、少し食べないでいると、また(管が)緩んでしまって。

 

──食べ物の話はやめましょう。

 

まんきつさん:そのぶんサウナの話をしましょう! 次回は高石さんも来てくれるし、サウナに入ってからの“原始状態”でお話しできると思うので、“食”に関してはそこで挽回しますね。 

 

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▲「鉄玉子」のお土産に惹かれつつ、「ごちそうさまでした! またきます!」

 

「サウナさえあれば、人間は水温2℃度でも耐えられると思います」

 ──『湯遊ワンダーランド』2巻の終わりは、日本各地の温浴施設への行脚を、“聖地への階段”と称したコマで終わっていますが、今のまんきつさんは、階段のどのあたりにいると思われますか?

 

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『湯遊ワンダーランド』より/©kitsuko mashu / fusosha

 

まんきつさん:どうかなぁ……有名なところでもまだ行けていないところは結構あるので、まだまだ中腹ぐらいかもしれませんね。熊本の「湯らっくす」にも行けていないですし……(しばらく考えて)いや……本当に行きたいところはだいたい制覇できてるのかな……漫画には描いてませんけど、ほかにも紹介したかったところってたくさんあるんですよ。それはもったいなかったなって。
最近のベストは京都「白山湯」高辻店です。とにかくサウナが熱いんです。ただでさえ温度が高いのに、いちばん上の段に座った常連のおばちゃんが、下の段を目がけて勝手に水をバシャバシャ撒いていて、ものすごい蒸気が上がってる。びっくりするぐらい湿度も高くて、温度計を見たら110℃ぐらいを指してて。

 

──うわぁ。

 

まんきつさん:そのぶん水風呂は本当に気持ちよかったですね。水質もすごく柔らかくて。
水風呂といえば北海道の「天然温泉 ホテルパコ釧路」もすごいですね。めっちゃくちゃ冷たくて、肌がビリビリするんです。行くたびに水温計を忘れてしまって漫画には描けなかったんですけど、たぶん2℃ぐらいです。
ちょうどこないだ名古屋の男性専用施設「サウナ&カプセル ウェルビー栄」の“女性限定解放DAY”に行ってきたんですけど、そこは大きな冷凍庫の中に水風呂があって、水がほとんどアイスみたいになってるんですね。それに入ったときも、やっぱり水が肌に刺さるような感覚があって、すぐに「ホテルパコ」のことを思い出しました。

 

──よく映画や小説の中で、凍った湖にハマって死んでしまうって描写がありますけど、あれもたぶん2℃ぐらいですよね。北海道なら、むしろ水の中のほうが温かいのかもしれません。

 

まんきつさん:そうですよね。いきなり沈められるとかじゃなければ、人間は2℃でも耐えられると思います(笑)。

 

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▲「台湾」を後にし、ゆるゆると歩くうち、「とげぬき地蔵」で知られる高岩寺へ到着 

 

──最近、新たに開拓された首都圏のサウナはありましたか?

 

まんきつさん:漫画の連載が終わってからはもっぱら近所のサウナに通っているので、新しいところにはあまり行けてないですね。
そこのサウナは本当によく行っているので名前は出したくないんですが、サウナは90℃で湿度も高くて、水風呂が14℃。外気浴もあるし、お風呂も種類があって、スーパー銭湯なのに1回あたり600円ぐらい。回数券を買えばもっと安い。
その施設のために引っ越したわけじゃないんですけど、たまたますごく好みのところが見つかったんです。女性用で14℃台の水風呂ってなかなかないので、そこで十分満足しちゃうんですよね。

 

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まんきつさん:やっぱり近所に自分にピッタリの施設を見つけられたときの喜びは大きいです。サウナは本当に好みというか、自分に合うか合わないかの世界だと思うので、知名度や口コミというのはアテにならないところがありますし、何事も先入観はよくないですね。

 

──それは漫画にも言えることだと思います。『湯遊ワンダーランド』が、“サウナ漫画”というジャンルへの先入観で読まれないというのは本当に惜しいことだと思いますね。

 

まんきつさん:わたしの漫画を最近読んだ人のツイートを見ていると、「こういう漫画を書く人だったんだ」って声が意外と多いんですよ。ペンネームのイメージもあって、ふつうにキラキラしているOLさんなんかは絶対手に取らない漫画だと思うんですけど、今後はなんとかそういう人にも届くといいなと思ってますね。
あ、せっかくなのでちょっとお参りしてきてもいいですか?

 

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……と、最後は「とげぬき地蔵尊」の「洗い観音」におすがりしていたまんきつさん。

 

まんきつさん:「どうか耳が聴こえるようになりますように」って、お耳はよーく拭かせてもらいました。

 

──今日は本当にありがとうございました!

 

まんきつさん:体調悪くてすみません。次回は「湯乃泉」の館内着でお会いしましょう!

 



後編は『湯遊ワンダーランド』編集担当の高石智一さんをお迎えしての「対談編」をお届けします。

まんきつさん指定の集合場所は、「湯乃泉 草加健康センター」。熟練のサウナーたちも「埼玉の聖地」と絶対の信頼を置く、湯と“食”の楽園です! 首から洗って待つべし!

 

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お店情報

台湾料理 台湾

住所:東京都豊島区巣鴨3-39-9
電話:03-3940-4300
営業時間:11:00~15:00/17:00~21:00(4のつく日は中休みなし)
定休日:日曜・祝日(4のつく日は営業。年に数回、最低半月程度の休みあり)

www.hotpepper.jp

 

書いた人:善行積太郎

善行積太郎

三度のメシよりメシが好き。お酒はもっと好き。酒飲んですぐ寝るのはもっと好き。原稿も写真もやります。性善説を念頭に記事をつくっています。

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