「八寸」こそ日本酒最強のアテである
みなさんこんにちは、カゲゾウです。会席・懐石料理コースの中頃で出される「八寸(はっすん)」は、その名のとおり八寸(約24cm)四方の木盆に、海のごちそうや山の旬の幸を数種類盛ったぜいたくなお皿です。
「おいしいものをちょっとずつ」が楽しめる八寸を肴に日本酒をチビチビやる。
これ以上の幸せが他にあるでしょうか。
もちろん通の方に言わせれば、「酒は手の甲に盛った塩をなめつつ飲むものだ!」とか
「コノワタ・ウニ・カラスミの三大珍味を外すなんてこのタワケが!」など、百家争鳴(ひゃっかそうめい)必至のことでしょう。
そもそも八寸は料理の盛り合わせですから、季節によって食材も変わるオールスターズなわけで、他のアテと比べること自体が反則ではあります。
それでもお店で亭主が趣向を凝らした八寸が出てくると、見た目だけでもテンションがあがりますし、「どれから食べようかな~」なんて迷い箸するのも楽しい。
時には八寸にある皿でコースを勝手に構成し「入りは××でフィニッシュは〇〇かな」なんて脳内ミニ料亭をやっちゃうときもあります。
見ても食べても考えても愉悦にひたることができる。
八寸こそやはり日本酒の最高のお供なのです。
そこで今回は「家で八寸」をテーマに5品ほど小料理を作り、料亭のまねごとをしてみました。
一の皿:「カニカマのカニミソ和え」
女性がよく「がんばったご褒美に」なんてスイーツ食べに行ったりしてますけど、ぶっちゃけカゲゾウも、取り掛かっていた重めの案件が片付くと「よっしゃー!! 今日はご褒美解禁や、高めの純米酒いったれー」と酒屋さんに駆け込みます。
その際「合わせる肴もちょっとぜいたくに」と、ウチの最頻出のレシピがこれです。
【材料】
- カニカマ:適量
- カニミソ(缶詰):適量
- 小ネギ:少々
【作り方】
カニカマをほぐしカニミソと混ぜ、彩りに小ねぎを散らします。以上。
画像見てもらえばレシピがなくてもいいくらい簡単です。
カニミソの量は味見をしながら適当に調整してくださいね。
コツというほどではありませんが、見た目も本物のカニ肉みたいなちょっとお高めのカニカマにするといいみたいです。
もうね、めっさゴージャスでリッチな味わいなんですよこれが!
あえちゃうと本物のカニのほぐし身と変わりませんよ(いや、本物と並べて食べ比べたわけではないのでテキトーいってますが)。
ここにトビッコも混ぜちゃおうかなっていつも思うのですが、ぜいたく過ぎてバチが当たりそうでまだ試してません。
ニの皿:「アボカドのみそ漬け」(なかむらみつのりさんのレシピ)
どうぜなら『メシ通』で紹介されている料理で八寸を構成してみようと思い、あとの4皿は他のライターさんのレシピを参考にしてみました。まずはこちら。
スライスしたアボカドを、みりんを混ぜた白味噌漬けにして一晩冷蔵庫に置いときます。
ただでさえトロ~リなアボカドがよりトロ~リになり、しかもその身には白味噌とみりんの優しい甘みがしっかり染みていて、ひと口食べれば……。
むっは〜! あまトロうまっ!!
マジでお酒に合います。これだけでも一瞬で一合が蒸発するレベル。まだ暑い日が続くので冷え冷えなのもうれしい一品です。
三の皿:「卵黄のしょう油漬け」(筋肉料理人さんのレシピ)
続いてはこちら!
これも前の日から仕込む系です。
卵黄をめんつゆと刺身しょう油の混合液に漬けて冷蔵庫に一晩。
で、見てくださいよこの琥珀(こはく)色に輝く艶と色合い。
日本酒好きならこのヴィジュアルだけで二~三献いけちゃいますね。
浸透圧で中の水分が抜けるからなのでしょうか。仕込み時はトロトロだった卵黄が一晩立つと一部半熟のような硬さがでてきます。
これが栗のようなテクスチャーで、柔らかいところと硬いところのグラデーションが楽しめます。
卵黄はお月様のように見えますし、秋にぴったりのアテですね。
四の皿:「さんまのペッパーグリル」(魚屋三代目さんのレシピ)
ここらでメイン的な料理もほしいところです。
秋の旬の代表格といえばやはりさんま。こちらを作ってみました。
さんまに塩を振ってしばらく置き、ローズマリーを腹に挟んで焼きます。
ガリガリとペッパーミックスをかけることも忘れずに。
焼きあがったらレモンをギュッと。
これ、香草と一緒に焼いているせいかとてもさわやかにさんまがいただけます。
またペッパーミックスのパンチが効いてます。このおかげで皮までうまい。
ガリガリと追いペッパーまでしてしまいました。
魚屋三代目さんもいっているように、日本酒だけではなく白ワインでも焼酎でもバッチリ合いそう。今回の八寸においては不動のセンターです。
五の皿:「しいたけのチリマヨホイル焼き」(エダジュンさんのレシピ)
海のさんまに対し、山の旬としてこちらのレシピを選んでみました。
こちら、ほんと作るのがカンタン!
しいたけにマヨネーズ&チリソース&酒を塗ってオーブントースターで焼くだけ(うちにはないので魚焼きグリルで焼きましたが)。
焼いてシコッとしたしいたけの身にマヨとチリがとトロッとまとわりつき、素材とソースが混然一体。
頬張るとうっとりしてしまいます。
マヨネーズだけだと単調になってしまうところ、チリソースの甘辛さがいい感じのスパイスとなってますね。
チリマヨの組み合わせがいいので、他の食材でも試したくなりました。
もちろんお酒もぐいぐい進む!
「八寸」は箱庭……いや宇宙である
家で八寸に挑戦してみましたがいかがだったでしょうか。
八寸は用意する人間にとっても箱庭を作るような楽しさがあると思います。
▲最近の100円ショップは食器類も充実しており豆皿もたくさんあります。今回の八寸でいうとカニカマとシイタケのお皿が実は100円(+税)だったりします
100円ショップで売っている、色とりどりの豆皿を見繕っていろいろと盛りつけしてみるのも楽しいです。
料理を考え、敷物を選び、豆皿を吟味し、盛りつける時間はとてもクリエイティブでした。
「八寸」で画像検索すると、その多様さに驚かれることだと思います。
料理だけではなく季節のかざり花やかざり葉をあしらったものや、時にはオブジェも使ったジオラマのような八寸もあります。
皿の中にひとつの小宇宙があるといったらいい過ぎでしょうか。
今回は5品すべて手作りしましたが、みなさんがご家庭でやる場合は4皿でも3皿でもいい。出来合いのお総菜を使ったり、タラコのように切って出すだけでもいい。
豆皿がなければ、ひとつの大皿にちょこっとずつ料理を盛るだけでもぜんぜんアリです。
なんちゃって八寸、ぜひ家でやってみてください。
きっと普段とは少し違う、ぜいたくな飲みタイムになると思いますよ。
書いた人:飯炊屋カゲゾウ
1974年生まれの二女一男のパパ。共働きの奥さんと料理を分担。「おいしいものはマネできる」をモットーに、料理本やメディアで紹介されたレシピを作ることはもちろん、外で食べた料理も自宅で再現。家族と懐のために「家めし、家BAR、家居酒屋」を推進中。「双六屋カゲゾウ」名義でボードゲーム系のライターとして活動中。「子育屋カゲゾウ」名義で育児ブログも更新中。
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