みなさんこんにちは! メシ通レポーターのタベアルキストOkadaです。
タベアルキストたちが特に気になるメニューを挙げ、食材や調理法などに着目し皆さんにお届けする「食べ歩きマニア道」シリーズの第5段です。
ここ数年で盛り上がりを見せている「日本酒」。過去にも何度かブームとなったことがありますが、製法や冷蔵技術の進歩によってこれまで以上に美味しい「日本酒」を飲めるようになったのが評判の一因と言えそうです。また、居酒屋さんだけでなく、肉やフレンチなどにあわせて提供するお店も出てきています。
では「日本酒」はどのように飲むことが多いでしょうか。おそらく冷やして飲む、いわゆる「冷酒」のスタイルが一般的かと思います。なぜ「日本酒」を冷やして飲むのかというと、火入れをしないで製造される「生酒」が広まったことが一つの要因として上げられるでしょう。
「生酒」は加熱処理による酵母菌や雑菌の殺菌をしていないため、品質を保つためには低温保管が必要です。そのため、冷やして飲むことが多くなっているといえます(ちなみに「日本酒」の飲み方における「冷や」というのは”常温”のことを指します) 。
一方で、「日本酒」にはもう一つの飲み方、温めて飲む「燗」があります。燗酒は奈良時代ころから飲まれるようになり、江戸時代中期以降に民衆に広まったとされています。歴史があり、日本酒の伝統的な飲み方と言えるかもしれません。
燗酒にするメリットとしてはいくつか考えられますが、冷酒では(冷えているがゆえに)表に出てこないうま味や香りを引き出せる、というところが一番ではないかと思います。場合によっては冷酒よりも美味しく変化するようなものもあり、お酒を楽しむ幅を広げることができます。しかし燗酒が得意でなかったり、まだ飲んだことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方にご紹介したいのが、2016年10月にオープンした「SAKE Scene 〼福」です。(〼は枡記号)
燗酒の魅力を世界へ伝えたい
こちらは、国際利き酒師の資格をお持ちのオーナーである女将が、「燗酒を世界へ」をコンセプトに2016年10月に開いたお店です。そして燗酒を作るのは、「燗酒の魔術師」とも呼ばれる燗付け師の方。お二人のコラボレーションで、お酒を温めることで冷酒では味わえない風味を引き出し、世界へ広めていこうという思いが込められています。
お酒はお二人で味を確かめるのはもちろんのこと、蔵元とも交流を深めて厳選した銘柄を提供されています。印象的なのがカウンターの奥にある冷蔵ケース。「生酒」のシールが貼られた銘柄も多く保管されています。一般的に、冷酒にするようなお酒は燗酒にしてはいけないとも言われがちですが、生酒も燗にすることで新たな美味しさを提供していただけます。
おいしい燗酒を作る2つのポイント
おいしい燗酒を作るポイントは、”温め方”と”温度”の2つ。まず温め方は、電子レンジや直火ではなく湯煎がベスト。写真は通称「かんすけ」と呼ばれる器具で、肩にかかっている”ちろり”にお酒を注ぎ、これをかんすけに浸して温めます。湯煎でじっくり温めることで、まろやかにする効果があります。
そして温度。燗酒を注文したら徳利が持てないほど熱々にして提供された、ということもあるかもしれませんが、風味が飛んでしまっては元も子もないので温度の上げすぎは厳禁です。そのため、温度計も使って温めます。さらに、「〼福」ではタイマーも併用していました。ちょっと目を離してもタイマーで引き上げのタイミングを逃さない配慮をされているわけですね。とにかく温度を上げすぎて風味を飛ばさないよう、常に目配りをしていたのが印象的でした。
いよいよ燗酒をいただきます
それでは、燗酒をいただきましょう。日本酒のメニューはなく、自分の好みを伝えるなど、お店の方と会話をしながら提供いただくスタイルです。
▲隆 純米吟醸 足柄若水 無濾過生原酒 (900円/180ml)
若水という酒米を使った銘柄です。冷酒だと割と固めに感じる味わいかもしれませんが、温めることでふくよかなうま味が出て、その後から感じる酸味がほどよく味を引き締めてくれていました。
▲季節のポテトサラダ ホタテと蟹のあんかけ(800円)
ぜいたくなあんがかかった一品。香り高く、ポテトサラダも一段上の美味しさに感じられました。
▲すっぴんるみ子の酒 特別純米無濾過生原酒(900円/180ml)
タンクから直接瓶詰めすることから”無濾過”と付けられています。スキッとした酸味が印象的ですが、温度が下がるごとに甘みもよく感じられるようになり、その変化を楽しみながら飲むことができました。
▲たら白子炙り 緑の辛いソース(800円)
味噌をつかった辛みソースが白子の味を引き立てます。また、るみ子の酒のキレの良さが白子の濃厚さによくマッチしてくれました。
▲長珍 純米吟醸無濾過本生 生生熟成5055(500円/90ml)
製造年月、つまり瓶詰め年月は2016年の11月ですが醸造年度が27BYですので、1年間熟成した銘柄になります。熟成によるものか、非常に厚みのあるうま味と酸味ですが口当たりはソフト。加えて、もともとあるトロみが温められることでクリーミーになり、重厚かつ滑らかな味わいを堪能しました。
▲不老泉 山廃仕込純米酒(500円/90ml)
これは火入れ3年熟成の銘柄です。山廃仕込は酸味が強くなるものが多いですが、この不老泉は酸味は比較的おとなしめ。まろやかなうま味と甘みが特徴的で、燗酒のためのお酒と言ってもよい味わいでした。
燗酒にすると「味が開く」と表現されることがありますが、その言葉通り、冷酒に比べ味の広がりが生まれ、それぞれの銘柄がより魅力的になることを実感しました。みなさんにも是非、「〼福」でおいしい燗酒を味わっていただきたいと思います。なお「燗酒を世界へ」ということで、お店には英語のメニューも用意されています。海外からのお客様をおもてなしする際には、お連れしてみてはいかがでしょうか。
燗酒を楽しむイベントも随時催されていますので、お店の公式ホームページやFacebookをご覧ください。
お店情報
SAKE Scene ます福
住所:東京都港区芝大門2-11-20 簗場ビル1階
TEL:03-6450-1559
営業時間:18:00~23:30
定休日:日曜日
ウェブサイト:http://sakescene.com/
Facebook:SAKE Scene 〼福
※この記事は2016年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。