こんにちは。メシ通レポーターのタベアルキストYamauchiです。
各担当者が自分の好きな料理を徹底的にマニアックに掘り下げ、みなさんに魅力を伝える当シリーズ第7弾。
今回はついつけ汁につけないで食べてしまう、「つけ麺」の自家製麺の魅力に迫ります。
「食べ歩きマニア道 ハードボイルド・◯◯の世界」とは──
国内の飲食店を中心に足を運び、これまで食してきたメニューは、のべ1万食以上。“食”に真摯(しんし)に向き合うタベアルキストたちが、特に気になるメニューを挙げ、食材や調理法などに着目し、みなさんにお届けする企画です。
しおらーめんの名店
▲町田汁場 しおらーめん 進化 本店
2007年に町田市にオープンした「町田汁場 しおらーめん 進化」。
駅から徒歩で15分ほど、通りから奥まった目立ちにくい場所にあり、オープン当初こそお客さんがなかなか来なかったこともあったようですが、そのおいしさが口コミで広がり瞬く間に行列店になりました。
そして、ラーメン情報各誌で塩ラーメン部門の1位を取るなど全国に名を知られた名店になり、「進化」のラーメンを食べるためだけに町田まで来るお客さんも増えています。
2012年には、本店とは全く異なる小田原系ラーメンをモチーフにした「醤油ラーメン」を提供する2号店を新中野にオープンし、話題になりました。2014年には、新中野から町田駅前に移転して、本店とは異なるメニューで一日中行列の絶えないお店になっています。
▲町田汁場 しおらーめん 進化 駅前店
店内は店主こだわりのロックテイストあふれる内装で、常にハードロック系のBGMが控えめに流れています。
スタッフもみな優しく丁寧な接客で、ゆっくりくつろいで食事をすることが出来ます。
自家製麺への切り替え
2015年に入ると、本店の向かいに製麺所を作り、自家製麺を始めました。
看板メニューの「しおらーめん」を手始めに、ひとつひとつのスープに合わせた麺を開発し、各メニューを順番に自家製麺に切り替えていきました。
それ以前からもとてもおいしいラーメンが、自家製麺に切り替わることで更においしくなるという驚きを、何度となく味わいました。
その日の気温や湿度に合わせた調整だけでなく、日々のスープやタレの改善に麺も合わせていける自家製麺のアドバンテージは計り知れないものがあります。
何年もかけてブラッシュアップされたスープがあるからこそ、迷うことなく自家製麺に打ち込めるのだと思います。
「麺を作らないラーメン屋はスープ屋だ」
という、支那そばや創業者 佐野実さんの言葉が思い出されます。
「しおつけ麺」誕生
2016年に入り、自家製麺への切り替えを前にして、唯一「白醤油つけ麺」だけは販売を終了してしまいます。
「白醤油つけ麺」も評判のメニューだったので残念な気持ちもあったのですが、全てをリニューアルするという話を聞き、新しいつけ麺への期待が日に日に膨らんでいました。
そして2カ月が経ち、新たに「しおつけ麺」が提供されることになりました。
▲しおつけ麺(900円)
他のメニューはスープに合わせて麺を作りましたが、「しおつけ麺」だけは、まず麺のイメージがあり、麺を作りあげてから、その麺をいかすスープを作るというアプローチになりました。
麺が主役の「つけ麺」ならではかもしれませんが、それだけ良い麺が出来たからだと思います。
このつけ麺のためだけに有田焼の器を特注し、「つけ麺」自体はすでに完成しているのに、その器が出来るまでは「しおつけ麺」の提供を開始しなかったほどのこだわりようでした。
そうして満を持して提供が始まった「しおつけ麺」。
そのおいしい食べ方がカウンターに貼られています。
もちっとしつつもしっかりコシのあるしなやかな麺には、昆布水とわじまの水塩が絡めてあり、それらが麺の甘味を引き立ててくれているので、つけダレにつけずにそのまま食べてもおいしいです。
まず麺の風味を味わうために、最初はつけダレにつけないで食べ始めると箸が止まらなくなり、ついついそのまま食べ続けて、つけダレを使うのを忘れてしまうほどです。
最近は、麺はそのままつけダレにつけないで食べ、その合間につけダレをスープとして飲むという食べ方に落ち着きました。つけダレの温度も下がりにくいし、この食べ方が個人的にはベストだと思います。
そして、この麺のすごさはそれだけではありません。通常のゆで時間より長めにゆでると、全く異なる表情を見せてくれるのです。
通常、麺をゆで過ぎてしまうと、コシもなくなりボロボロに崩れていってしまいますが、この麺は全然違います。
しっかりゆで切るとプルプルの食感になり、その舌触りを楽しめる麺へと変化します。
そのまま食べておいしいのはもちろんのこと、ぶしゅかん果汁をかけて食べると、みずみずしい和スイーツを食べているかのような感覚になります。
これはもう「つけ麺」という定義を超越した、新しい麺料理と言っても過言ではないでしょう。
つけダレにつけてもつけなくてもおいしく、ゆで加減でいろいろな楽しみ方が出来る。いったいどうしたらこんな麺が出来るのでしょうか。
「しおつけ麺」を堪能した後に、向かいの製麺所で製麺の工程を見せていただきました。
製麺の極意
「しおつけ麺」用の麺の小麦は、「スーパーはるゆたか」(強力粉と中力粉のブレンド)をメインに、「さぬきの夢」(中力粉)、「春よ恋」(強力粉)をブレンドして使用しており、その日の気温や湿度に合わせて、微妙に配合を調整しています。
真っ白な美しい麺肌は「スーパーはるゆたか」、独特なコシは「春よ恋」、もっちり感は「さぬきの夢」によるところが大きいです。
製麺機のミキサーで小麦をから混ぜしてから、
ぬちまーすや岡崎おうはんの卵などの入ったかん水を入れ、練り上げます。
練り上がった時の温度が重要で、他の麺と比べて少し高めの温度にする事で水が入りやすくなり、これがかんだ時の風味と舌触りの滑らかさにつながっています。また、ゆで切ってもおいしい秘密もここにあります。
低速でしっかり練りこんで、出来上がった麺塊の温度を確認したら圧延です。
まずはバラ掛けして麺帯にします。
出来上がった麺帯を合わせて、さらに圧延していきます。圧延するたびに麺肌のキメが細かくなっていくのが良くわかります。その手触りは、まるで赤ちゃんの柔肌のようです。
2回圧延したら、そのまま少し置いて熟成させます。この熟成加減も、麺の仕上がりのポイントになっています。
熟成が完了したら、麺を切り出します。
「進化」では、各メニューごとに最適な太さになるように異なる切刃を使用しており、つけ麺の麺は16番の角切刃で切り出します。
麺を食べやすくするために少し短めにして、2玉で一人前になるようにしてあります。そうする事で、麺を箸で取り、つけダレに少しだけつけて食べることが出来るようになっています。
こうして出来上がった麺がこちら。
その白さは、ため息が出るほど美しく、小麦の良い香りが写真からも伝わってくるようです。
麺箱に入れてすぐに冷蔵庫で保管し、打ち立ての風味をいかすために、あまり時間を置かずに使います。
「進化」の歩き方
「進化」のメニューは本店と駅前店を合わせて7種類ほどあり、全ておいしいので、いつもどれにしようか悩みます。
でも、初めて行かれた場合には、まずは看板メニューの「しおらーめん」をおすすめします。
その次にどれを食べようか迷ったら、「しおつけ麺」を選んでみてください。それまで「つけ麺」に対して抱いていたイメージが180度変わってしまうと思います。
「しおつけ麺」は、本店のみで提供されています。駅前店にしか行った事がない方も、少し足をのばして本店まで行き、ぜひ「しおつけ麺」を食べてみてください。
まず最初は普通のゆで時間で。そしてこの麺のとりこになってしまったら、「麺柔らかめ」を試してみてください。その結果、普通の「つけ麺」に戻れなくなってしまっても、責任は取りませんが……。
お店情報
町田汁場 しおらーめん 進化 本店
住所:東京都町田市森野3丁目18-17 ウイング森野103
電話番号:042-705-7122
営業時間:平日 11:00~15:00/18:00~21:00、日曜日・祝日 11:00~17:00
定休日:月曜日
Facebook:https://www.facebook.com/shinka.ramen
Twitter:https://twitter.com/shioramenshinka
住所:東京都町田市森野1-12-13 ワールドビル2F
電話番号:042-851-8797
営業時間:11:00~15:00/17:30~22:00
定休日:無休
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※金額はすべて消費税込です。
※この記事は2017年1月時点での情報です。