【1体1体ぜんぜん違う】狛犬マニアに「狛犬の鑑賞ポイント」を聞いてきた【別視点ガイド】

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神社の入り口に置かれている狛犬(こまいぬ)。

左右一対になっていて、一方は口を開いた「阿(あ)像」、もう一方は口をきゅっと閉じた「吽(うん)像」だ。

 

目にする機会は数あれど、注目して見ている人はさほど多くないだろう。

「狛犬って、どこも同じでしょ?」

私もそんな風に思っていた。

 

「狛犬ってイカツイのもいれば、かわいいのもいて、1体1体ぜんぜん違うんですよ。職人さんが手作りしている民芸品でもあるので!」

 

と教えてくれたのは「狛犬さんを愛でる会」の主催者、ミノシマタカコさんだ。

普段はライターをしていて、月1回ほど「狛犬ハンティング」と称して、会員たちと狛犬探しの会をしている。

 

狛犬のメッカ、浅草にやってきた

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取材日は雪が降っていた。

「実物を眺めつつ、見どころを教えて欲しい」と希望を出したところ、浅草を指定された。やはり浅草は狛犬的にも良いらしい。

歩いていける範囲内でいくつも見応えのある狛犬があるそうだ。

 

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▲狛犬刺しゅうのオリジナルバッジ。ちゃんと口が「阿」「吽」になっている

 

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まず向かったのが浅草神社の夫婦狛犬。

ミノシマさんがハマるきっかけとなった狛犬だ。

 

境内の隅っこに置かれ「引退した年金狛犬だね」なんて言われていたが、夫婦という設定にして注目が高まったそうだ。

 

―― いつから狛犬が好きになったんですか?

 

ミノシマ:4年ぐらい前かな。最初は『昭和元禄落語心中』ってマンガにハマって、落語に興味が湧きまして。落語台本の書き方教室に通ったんです。

その講師の方のお師匠さんがたまたま狛犬界隈で有名な人で。

その方のホームページに、この夫婦狛犬が載っていて「なんだこれは!」と衝撃を受けたんです。

かわい過ぎるでしょ!

 

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ミノシマ:しっぽを見てください。くるんってハートになっててカワイイ!

造形の愛らしさ、場の雰囲気、楽しいポイントを見つけるのが鑑賞ポイントです!

石がどうとかスペックに入ってくのも面白いけど、議論になりやすいので……。

見ること自体の楽しさを追い求め「好きなように愛でようじゃん!」って趣旨で「狛犬を愛でる会」を発足しました。

 

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ミノシマ:足には羽がついてるのは「早く走るよー」って意味と先日先輩に聞きました。

これも作り手によってリアルな羽だったり、波みたいな線だったり、表現方法が変わります。

 

―― マンガ表現みたいですね。

 

ミノシマ:尾っぽが体にぴたって引っ付いているのは古い狛犬で、まだ立体的な彫りをする技術がない時代のもの。

技術の進化も見えるんですよ!

 

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境内には人間より大きな狛犬もいる。都内でも最大級のもの。

 

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「確定申告のタスキ巻かれちゃってるよ! 働き者だね!」

 

雪降る寒空の下、かいがいしく働く狛犬に思わず駆け寄るミノシマさん。

たしかに同じ神社の狛犬でも、サイズから顔つきからぜんぜん違う。

 

―― 狛犬ファンってけっこういるんですか?

 

ミノシマ:めっちゃくちゃいます!

「日本参道狛犬研究会」って老舗の会にも入って勉強しているんですが、年齢層は50〜90歳ぐらいでけっこう高いですね。

日本全国で1000体とか2000体とかそういうレベルで見ている人たちばかりなので、視点がスゴいですよ。

狛犬からさかのぼって、江戸時代の石の輸送ルートを調べる人もいます!

 

―― あ~~、1つの物事を突き詰めると知りたい範囲が広まる現象! 分かります。

 

ミノシマ:詳しくない人でも気軽にやれるようにfacebookページで「狛犬さんを愛でる会」を始めて、月1ペースで「狛犬ハンティング」に出かけてます。

 

―― 「狛犬ハンティング」ってなにするんですか?

 

ミノシマ:エリアをざっと決めて、ポケモンGO感覚で狛犬を探して歩きます。

裏にひっそり置かれているパターンもあるから、神社のまわりをぐるっと一斉捜索しています。

狛犬が大切に扱われていると神社の好感度がぐっと上がりますね。

参加人数は4〜8人ぐらいで、時間は基本的に10時から15時まで。

そのあとはたいてい飲み会になりますよ!

 

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▲金龍山浅草餅本舗 あげまんぢゅう5コ入(750円)

 

第1回の「狛犬ハンティング」が浅草だった。

知識がまだそれほどなかったので、本を持って、下調べして、旅のしおりも作って挑んだそうだ。

 

その土地のうまい物を食べるのもポイントの1つ。今回はほかほかのあげまんぢゅうをほおばった。

 

ミノシマ:参加者によって興味の強さが違いますし、狛犬だけ見ていても限界があります。その土地のおいしい物を食べるのも、「狛犬ハンティング」の楽しみの1つです!

 

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ガイド予定だった狛犬の1つが工事中で近寄れなった。

 

「うわ~~~~~~~! すごく好きな狛犬なのに~~~~!! こんなことってあるのか~~~~」

 

肩を落とすミノシマさん。

名残り惜しそうに、柵のすき間からのぞいていた。

 

この神社は、壊れた狛犬の部位を石垣の材料にしているそうだ。

台座や手足を再利用するのは、狛犬あるあるらしい。

 

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―― どんな狛犬が好みのタイプなんですか?

 

ミノシマ:個性があるのが好き!

モデルがあってマネしてるんだろうけど、パースが狂っていたり、顔がつぶれちゃっていたり、流線型のデザインだったのにヒゲがまっすぐになっているようなのを見ると「おっかしい!」ってキュンとします。

 

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▲好みのタイプを話して満面の笑み

 

ミノシマ:狛犬って職人さんが手作りしてる民芸品でもあるから、壊されたり捨てられたりするのが悲しいんですよ。

せっかく震災や戦争を乗り越えてきたのにって。

狛犬を愛でる人が増えたら、そういうことにならないと思うんです。神社も大切に扱うでしょうし。

御朱印を集めるのと同じように、カジュアルに狛犬巡りをするようになったらいいですね。

 

まとめ

いままで注目することのなかった狛犬だけど、ミノシマさんの情熱に触れたら一気に興味が湧いてきた。

 

なんだか気になるぞって方!

facebookページ「狛犬さんを愛でる会」をどうぞ。

 

書いた人:松澤茂信

松澤茂信

観光会社「別視点」の代表。「東京別視点ガイド」を書いてます。

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