元スポーツ選手の飲食店、というのはいろいろありますが、なかでも現役中・引退後問わずお店を経営するプロレスラーは少なくありません。
試合観戦後に名レスラーのお店に行って試合談義に花を咲かせる……ファンにとってそんなぜいたくはありませんが、レスラー手作りのご飯を食べながら試合を見られたらもっとサイコーですよね。
そんなゴキゲンなご飯を届けてくれるのが、元女子プロレスラー・木村響子さんのお店、「ピンクのキッチンカー」。
会場の前に停めるスペースさえあれば、どこでもそこが木村さんのお店になるのです。
今回この「ピンクのキッチンカー」に、現役アイドルにして『ぶらり路上プロレス』(Amazonプライム)での参戦歴もあるという、せのしすたぁのまおさんと取材にうかがいました!
選手時代の木村響子さんは、団体でデビュー後、早々にフリーランスとして活動開始し、多くの女子プロレス団体に参戦。
そのたけだけしいファイトは特にヒール軍として輝き、特にタッグ戦においては多くの団体のタイトルを奪取。
またデスマッチや総合格闘技といったあらゆる戦いに挑み、その強さを極める姿勢は女子プロレスファン以外にも支持を集めました。
現役時代の「反骨のアフロコング」という異名に、強烈なビッグブーツが忘れられない木村さんがなぜ「ピンクのキッチンカー」なのでしょうか?
新木場 1stRINGにやってきました
ということでやってきたのはこちら。
まおさんと共に訪れた、今回の木村さんの出張先は関東のプロレス好きなら知らない者はいないリング常設会場の「新木場1st Ring」。
この日はREINA女子プロレスの興行。
木村さんも同団体は初めての出店なのだとか。
開場1時間以上前に木村さん運転の「ピンクのキッチンカー」が到着。
その名前どおりの全身ピンクで猫フェイス、町中で見てもインパクトがあります。
到着次第テキパキとテーブルを広げたり、ドリンクの用意をする木村さん。
注文口のまわりには、何種類ものメニューがずらり。
普通この手のキッチンカーというと、3種類か4種類が普通。
それが日替わりで定番の弁当にフランクにタコライスにスイーツに……
……とこれ一台で多すぎません!?
開場時間近くになると、会場入口にお客さんが集まってくると同時に、木村さんのお店にも注文が入り始める。
またお客さんだけでなく、ついさっきまでリングで練習してたジャージ姿の選手たちもお店にやってくる。
レジェンドでもある木村さんへ挨拶しにくる選手もいれば、なかには試合後の食事を注文する選手も。
ちなみに「ピンクのキッチンカー」は、お客さんからその日の出場選手への「差し入れ」もOKなんだそう。
そのあたりは選手として活躍した木村選手が築き上げた関係性ならでは。
ここ新木場1stRingに出張することの多いこのキッチンカー、現役時代の木村さんを見ている人はもちろん、団体問わず広くプロレスを見ているお客さんにもすっかり顔なじみ。
このキッチンカー営業を初めて約半年、「新木場1st Ring」ではさまざまな団体でお店を出してるだけにもう名物のひとつです。
さて、さっそく自慢の料理を食べてみましょう!
まずはこの日の日替わりメニュー「猪(イノシシ)キムチ丼」(800円)。
まず一見してまおさんが、
お肉もおいしそうだけど、色がきれい!
とびっくり。
もっとご飯の上にお肉とキムチがゴロッとしたものを想像してたら、豆の緑に人参の赤が目に鮮やか。
プロレスラーのご飯=肉々しさ優先、と勝手に思っていました……
女子力高い!
木村さん曰く、
子どもにご飯を作っていた時、こういうものを作ると喜んでいたから、思わず入れちゃうんですよねえ。
……主婦目線も入ってましたか。
食べてみたまおさんの感想は、
猪肉ってあんまり食べる機会がないじゃないですか? 食べにくいのかなって思ったけどすっごくおいしいです! もっと野性味ある感じの味かなって思っていたけど、すごく食べやすい。お肉の味付けも濃くて、ご飯にもしっかり染みてるから食が進みますね。それに豆とかトマトみたいなさっぱりさせる野菜も入ってて。これを食べてプロレスも見られたら大満足だと思います!
たしかに女子にはちょっと多めかも? と思わせるくらいのボリューム、普通のキッチンカーで出すイメージの3割〜4割増しくらいはあります。
そしてもう一品、定番の「ステーキ弁当」(1,000円)。
こっちの丼はお肉がこんがりしてる! 厚みもあって歯応えがしっかりしてる。ソースもいろいろあって、今日はこっちを食べよう、とか、あっちを食べよう、みたいに、別のものをかけて食べられるから楽しい。今日はにんにく醤油だけど、チーズとかマスタードも合いそうだし、これ毎回食べたくなりますね。
たしかに焼き加減が絶妙。
牛肉や豚肉とも違う風味がそそります。
こちらも先の野菜に加えてポテトも添えられていてバランスもいいんですよね。
しかもソースがにんにく醤油にバーベキュー、マスタードなど選べるそうで、これはしばらく飽きなさそう……。
まおさんも「猪肉がこんなにおいしいって知らなかった!」と満足顔。
これ、会場近くに住んでたら、木村さんのツイッターをチェックして弁当を買いに来てしまいそう。
そのレベルのおいしさです。
ということであらためて、木村さんにこのキッチンカーを始めた経緯と猪肉へのこだわりをうかがってみました。
「引退してから何をしよう、なんか細々と商売できたらな」
── このキッチンカーはどのぐらいやられてるんですか?
2017年5月からやっているので 、もう半年ぐらいですかね。本当はもっとかわいいデザインでやりたいんですけど、本当に忙しすぎて仕込みに追われていて、まったくもう手探りのまま進んでます(笑)。
── こういうお店をやろう、っていうのは レスラー時代から考えていたんですか?
いや、それが全然考えていなくて。ただ20歳の時インドネシア人と結婚していたんですけど、それでバリとか行った時に「日本食のキッチンカーをやったらはやるんじゃないかな?」と思っていて。
── なるほど!
でも実際やるとかは考えていなくて、引退してから何をしよう、なんか細々と商売できたらなくらいに思っていたんですね。あと猟師になろうかな、とか。
── えー、猟師ですか!
それで猟師の人と友達になって、いろいろ聞いたんだけど生計を立てるようになるまでが大変だって話で。でもそれで友達になった猟師さんと物々交換で猪のお肉とかもらうようになったんですよ。そしたらめちゃくちゃおいしくて! 本当に感動して、それをホームパーティーに持って行ったんです。そしたら皆もめちゃくちゃ感動して、もういろんな人に猪肉を食べさせたいなって思うようになったんです。それでお店をやろうと。
── 確かに今日食べた猪肉はむちゃくちゃおいしかったです!
でもお店を最初から作ろうと思ったら、お金がかかるじゃないですか。それでじゃあキッチンカーだったら人のいる場所に移動できるし、いくらぐらいするんだろう? と思って調べたんです。そしたらこれ(キッチンカー)が中古で出ていたんです! もう一目ぼれして「これ誰かに買われる前に買わないと!」って免許も持っていないのに買ったんですよ(笑)。
── えー、免許ないのに!
免許も3週間前にやっと取れました。それまではいろんな人に運転してもらって、もう行き当たりばったりで。
── すごい! 車に初心者マークついてましたけど、本当なんですね(笑)。
1月に引退して、車を買ったのが3月。 4月から教習所に通って5月にオープンです。本当、人生ノリだけで生きてるなって(笑)。
── じゃあこの「ピンクのキッチンカー」はこのままで売られていたんですね。
前はクレープ屋さんだったみたいです。転々と売買されていたみたいなんですけど、最初に作った人の思い入れをすごい感じるんですよー。車内までピンクと白で統一されていて。プロレスで稼いだお金、全部この車買うのに突っ込んだんですよ。
── えーーー!!!!
けっこう高くて 。我ながらギャンブラーだなーって(笑)。
── あと猪がメインというか、スイーツ以外はほとんど猪肉を使った料理ですけど、それだけ猟師の人にもらった猪のお肉がおいしかったんですね。
本当に猪肉を食べて感動したんで! ジビエとか昔から好きで、何度かいろんな動物のお肉とか食べてたんですけど、やっぱり猪肉が脂が乗っていて私は好きなんですよ。それでお店を出す時に考えたのが、猪肉と牛肉と豚肉とかあったら、みんな猪肉は選ばないじゃないですか。それで猪一本に絞ったんです。
── 正直、もっと野性味ある感じというか臭みとかあるのかなと思ったら全然なくって驚きました。
猪ってそのくせを消すためにみんな鍋で食べるんですよね。でも私はステーキで食べてほしくて、それで猟師さんに教えてもらった調理方法で料理しています。うまいこと頑張って仕込んで柔らかく仕上げています。
── あと野菜を入れたり、人参が型でくり抜いてあったり見た目もいいし、健康を気使っている感がありますよね。
子どもに作ってあげていた頃の感覚が残っているんですよね~。だから人生無駄はないですよね(笑)。 若い頃にお店を始めていたら、そこまで考えていなかった。あと選手をやっていたおかげで、試合する選手にも差し入れとかも出来るし。
── ちなみに過去最高で何食分くらい出ました?
最高だと……WAVEの大田区体育館大会の時に150食くらい出たんじゃないですかね? ご飯をどれだけ追加しても追いつかない! 今日は平日なのでひとりですけど、週末だとレスラーにバイトしてもらったりもしてるんですけど、それでも追いつかない時もありますね。
── では最後に木村さんの将来の夢は?
将来の夢? うーん、「ピンクのキッチンカー」で猪長者になって、山奥で猪料理を食べられるお店を……山奥じゃ誰も来ないか(笑)。やっぱり、猟師に憧れがあるんですよ。前世猟師だったんじゃないか? くらい。今度知り合いの猟師さんの猟を見せてもらいに行くんですよ。
── じゃあ将来は店主から猟師に(笑)。
そうですねえ、車の免許の次は狩猟免許ですね(笑)。銃もけっこう高いので、猪長者になって今度は猟銃を買えればいいかな!
プロレスラーとしての人生は終わっても、次の夢に向かって走り出している木村さん。
現役時代はタッグベルトを数々と取りましたが、これからは「ピンクのキッチンカー」と猪肉をタッグパートナーに、プロレスファン以外にもこのうまさを届けてくれそうです。
お店情報
営業日や出店場所などは木村響子さんのtwitterで確認!
※この記事は2017年12月の情報です。
※金額は全て税込みです。