【ピンク色した憎いヤツ】「さくらでんぶ」を応用した意外でおいしい食べ方を皆さんにご共有いたします

ちらし寿司や太巻きくらいにしか使い道がないと思われがちな食材、さくらでんぶ。しかしその優しい甘味とうま味は、タイやタラといった白身魚由来のものであり、実は調味料としてのポテンシャルも高いのです。

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さくらでんぶを愛しすぎてしまった

さくらでんぶ、ご存知ですよね。

大人から子どもまで広く愛される、あのピンクの食材です。私はそのさくらでんぶが大好きなんです。

ほんのり甘くて、華やかさもあって、巻き寿司に入っていると、そのやさしい甘さになんだか嬉しくなってしまいます。

お祝いごとに欠かせないイメージもあり、スーパーで見かけると気分が高揚する食材のひとつです。

 

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舐めてもおいしいさくらでんぶ。

でもね、ちらし寿司や太巻きに入っているイメージしかないという方が多いのではないかと思います。

実際にそうやって使われることがほとんど、というかそれ以外の使い道を多くの人は知らないのではないか。

 

私は不安に駆られました。さくらでんぶの素晴らしさを皆に知ってほしい。

彼、いや彼女かもしれないが、ともかく彼らの底力を知ってほしい。

 

ということで、本日は私が愛するさくらでんぶの活用方法をご紹介したいと思います。もし冷蔵庫に残っているあの子のことを思い出したら、今すぐ取り出してください。

これが、さくらでんぶ第2章の始まりです。

 

さくらでんぶを「納豆」に入れる

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北海道では、納豆に砂糖を入れると言います。

関東の人はそれを聞くと「え?」と思うようで、実際に私もその食べ方を試そうとは思いませんでした。

 

そんなある日、自宅で仕事をしていた私は締め切りに追われていました。それでもお腹はすくわけで、納豆とご飯で昼食を簡単に済まそうと思い、冷蔵庫をあけました。

 

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納豆だけでは寂しいな。生卵も追加するか。

そう思って冷蔵庫の中を見回した次の瞬間、目に入ったのがさくらでんぶでした。

さくらでんぶを投入すれば、うま味が追加されるのではないかと気づいたんです。

言い方はちょっとあれですが、失敗しても大した損失ではありませんし、寂しい昼食にちょっとした彩りを添えてもいいかなと、少しだけ冒険心が生まれたんです。

 

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ということで、納豆にさくらでんぶ、さらに生卵を入れてまぜまぜ。

混ぜすぎると泡立ってしまうのですが、それも悪くないと私は思っています。生卵を入れると納豆のネバネバが消えてしまう気がするので、再びまぜまぜ。

納豆は混ぜれば混ぜるほどうまくなると聞きますが、締め切りに遅れる勇気は私にはありませんから、30秒ほど混ぜたのち、ご飯を用意します。

 

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そこに思い切り、まぜまぜした納豆をかけてしまいます。

俗に言う納豆卵かけご飯というやつですが、ひとつ違うのはさくらでんぶが追加されていること。

ピンクが混ざったおかげで黄色に深みが増した気がします。というか色味はマスタードイエローに近いですね。

ちなみに、納豆についていたタレとからしも入れてあります。味付けは、納豆のタレとさくらでんぶの2本立て。

ということで、さっそくいただきましょう。

 

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ひと口目。

口の中に最初にやってくるのは卵のまろやかさ。次に納豆のあの風味が口の中を支配します。

その直後、甘さが口いっぱいに広がります。

これがさくらでんぶの仕事であることは間違いありません。

納豆はそのまま食べてももちろんうまいけど、さくらでんぶを入れることでうま味が持続する効果がある気がしました。

そして、納豆の持つ独特のえぐみも消えています。

これはうまいぞ! 生卵のおかげでつるつるとお腹に入っていきます。

陳腐な表現は使いたくないのですが、これはもう飲み物です。でも、味も最高においしいからしっかり噛んで味わいたい。

うまいから流し込みたい、でも噛み締めたい。そんな葛藤が私を苦しめます。

あっという間に完食。ああ、おいしかった!

 

結論:とにかくうまくなる。甘さが強くなるので、好みは分かれそう。うま味が持続する。

 

さくらでんぶを「肉豆腐」に入れる

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ということで、次の料理に挑戦。私の大好きな肉豆腐に、さくらでんぶを投入します。

 

まず、油をひいた鍋で豚肉を炒めて、肉の色が変わったら醤油、砂糖、みりんを2:1:1の割合で投入。ここに酒を適量とたっぷりめの水を入れ、豆腐とネギを投入してグツグツ煮込みます。

 

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煮込む際はクッキングペーパーを落とし蓋にすると、あくを吸ってくれてスッキリした味わいになります。

肉豆腐のレシピは星の数ほどあるのですが、実は水ではなくだし汁を入れるレシピが散見されるんですね。

これは味に深みを出す役割があると考えられるのですが、このパートをさくらでんぶに担ってもらいましょう。

 

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というわけで、どさっと大さじ1程度さくらでんぶを入れてみました。

入れすぎると甘さが勝って味がぼやけてしまうので、もし試す場合は最初、小さじ1くらいから入れてみてください。

さくらでんぶが少なすぎてまずくなるようなことはありませんので、トッピング感覚で全体の味を見ながら少しずつ入れて、調整していきます。

 

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さくらでんぶを入れて煮込んだら火を止め、味を馴染ませるために1時間ほど放置した肉豆腐をさっそくいただきます。

うん、これもうまい。作っている時から、失敗しない自信はあったのですが、肉のうま味、つゆの甘さが一体となって、おいしさが倍増しています。

しかも、甘さがちょっとだけ優位なので子どもでもおいしくいただける親しみやすい味になりました。

高級割烹ではまず出てこないけど、親しみやすい街の居酒屋で定番メニューになりそうな味だと思いました。さらに一晩寝かせると味が落ち着いて、味に深みが出てくるのでそちらもぜひ試してください。

 

結論:味に奥行きが出る。一晩寝かせるとさらにうまい。

 

さくらでんぶを「パスタ」にも入れてみる

ここまで読んで、今すぐさくらでんぶを買いに行きたくなったあなた。きっといい人だと思います。

というわけで、さくらでんぶの魅力を全方位に知らしめるために、最後はパスタに投入したいと思います。

これもきっとおいしくなりますよ。

 

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今回作るのは「プッタネスカ」です。簡単にできてうまいので、私は自宅でこのパスタを作ることが多いんです。

まずはアンチョビとニンニクをオリーブオイルでじっくり炒めます。ニンニクから香りが立って焦げる直前までじっくり火を通しましょう。

これがうま味の土台となるからです。

 

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ケッパー(ケイパー)も軽く刻んで入れ、火を通したら、トマトジュースを入れます。

トマト缶でももちろん大丈夫。実はこの缶詰(あるいは100%トマトジュース)を使うことがこのパスタのレシピを簡単にしている要因なんですが、実は缶詰などのトマトの味って一定じゃないんですよね。

トマトの甘さが強いものもあれば、味が薄いものもある。

産地や品種にもよるのでしょうが、いつも特売で缶詰を購入しているので、私は味にはほとんど期待はしていませんでした。だったら、ここにさくらでんぶを追加して、味に深みを出そうという絵を描いたんです。

 

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隣のコンロではパスタを茹で始めました。

さて、トマトソースにさくらでんぶをお好みの量、投入しましょう。ぱらぱら。

さくらでんぶがトマトソースと混然一体になりました。中火でしばらく煮詰めると、トマトソースにとろみがつきます。

最後に塩で味をととのえたら5分ほどでソースの出来上がり。

茹で上がったパスタとソースを、フライパンで和えていきます。

 

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お皿に盛り付けたら完成です。

ああ、おいしそうだ。パスタソースをしっかりと煮詰めると、パスタに絡みやすくなるので、もう少し時間をかけて煮詰めてねっとりとしたテクスチャにしてもいいと思いますが、今回は簡単レシピなのでトータル10分ほどで完成とします。

さっそくいただきましょう。

 

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食べる前からわかってはいましたが、とてもおいしいんです。

このパスタはアンチョビがうま味のベースとなっているのですが、そこに同じ魚介のうま味を持つさくらでんぶを投入しているのだから、合わないわけはないんです。

そして、特筆すべきはソースのうまさ。

ひと玉400円ほどの高級トマトを使ったような、上品なうま味を持ったソースに変化を遂げているんです。

きっとピンクの魔法使いが、トマトソースに魔法をかけたんでしょう。

甘さが強めなので、ここにタバスコを多めに振ってもおいしいです。チーズをかけてみても、さらにおいしい。ああうまい。

平日の昼さがり、自宅でこんなにうまいパスタが簡単にできるんです。ありがとう、さくらでんぶ。

 

結論:高級トマトを使ったかのようなパスタソースに変身する。

 

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ということで、さくらでんぶの魅力、伝わったでしょうか。

淡いピンクに騙されていましたが、さくらでんぶは最高のうま味調味料なんです。

ちらし寿司を作った時に余ったりしたら、ぜひお試しください。

 

書いた人:キンマサタカ

キンマサタカ

編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)

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