にぎるんじゃない、むすぶんです ── 。あえて「おむすび専門店」を名乗るふたつの大切な理由【大阪】

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「にぎるんじゃない。むすぶんです」

だから、おにぎりではなく「おむすび」

 

そう語るのは、おむすび専門店「オトメゴコロ」の店主、義本紀子(よしもと のりこ)さん。

 

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▲おむすび専門店「オトメゴコロ」の店主、義本紀子さん

 

 

食材の宝庫、大阪・泉州に激ウマ「おむすび」あり!

大阪のかなり南に位置する「泉佐野市」

関西国際空港を擁し、大阪湾に面するこの街は、府下で一、二を争う漁獲量を誇る魚どころ。内陸部では農業も盛んで、「くいだおれの街 大阪」の台所を支えています。

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そんな海の幸、山の幸にあふれる泉佐野市に2009年に開業したのが「オトメゴコロ」

そして「オトメゴコロ」のおむすびが、「めちゃめちゃうまい!」「米も海苔も具材も絶品で、もうたまらん!」「何個でもイケるわ!」と、オトメのみならず幅広い世代から大変な好評を博しているのです。

 

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店頭に「泉州(せんしゅう)おむすび」と染められたのぼりがはためく「オトメゴコロ」。「泉州」とは、大阪府の南西部のこと。このお店がある泉佐野市をはじめとした13の市町を指します。

 

泉州の特徴は「食材の豊富さ」大阪府は三日月のように縦に長く、大阪市よりも和歌山県に近い場所にあるここ泉州は漁業が元気。さらに田園地帯が広がり、畜産と酪農も行われ、林業とともにきのこ栽培も根づき、フレッシュな自然の恵みにあふれた一大生産地帯なのです。

 

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▲南海本線「泉佐野」駅から南へ徒歩5分の場所にある、おむすび専門店「オトメゴコロ」

 

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▲「泉州おむすび」とは、いったいなに?

 

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「オトメゴコロ」の店頭にも、泉州産の採れたて野菜が並んでいます。

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▲泉州の生産者から直接届く新鮮野菜が店頭に並ぶ

 

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▲「むすびたて」のおむすびを並べる義本さん

 

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▲テーブルも、おむすびっぽいデザイン

 

本当に「にぎっていなかった」

店長の義本紀子さんは、この緑豊かな泉佐野市で生まれ育った、生粋の泉州っ子。そんな義本さんがとにかくこだわるのが、「おにぎり」ではなく「おむすび」

義本さんが、あえて「おむすび」と呼ぶ理由は、ふたつあります。

まずひとつは「にぎらないから」

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▲ごはんを手のひらに乗せる義本さん。ここから完成まで、まったくにぎらない

 

日ごろは「朝5時から仕込む」というおむすびをつくる過程を見せていただきましたが、「にぎる」という行為は、まったく、一瞬たりとも、いっさい確認できませんでした

炊き立てごはんを手のひらに乗せ、「ふわ、ふわ」と2回、まさに軽く「むすぶ」といった手つき。その力まない所作の美しさには、ほれぼれとします。

 

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▲義本さんがほれ込んだ貝塚市産の「ヒノヒカリ」

 

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▲炊き立てごはんを手のひらにそっと乗せる

 

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▲やさしく、ふんわりと「むすぶ」。ごはんに力を入れない

 

おむすびは「ほろっ」とほどける食感が命

しかし、反面「こんなにごはんがゆるゆるで、崩れてしまわないのか?」と不安になるほどエアインなのです。 

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▲にぎっていないので、ごはんのなかに空気がたっぷり含まれている

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:心配になります? ゆるくても、袋に詰めたときに、お米自体の粘りの力で、時間とともに自然といい感じにまとまってくれますよ。なのできつくにぎらなくても、ちゃんといい感じにかたちになってくれますよ。それに、おむすびは口に入れたときの「ほろっ」とほどける食感がとても大事。にぎってしまうとその「ほろっ」がなくなっちゃう。なので、あえてにぎることはしないんです。

 

お米は貝塚市・木積(こづみ)産の「ヒノヒカリ」。冷めても甘みとうま味がしっかりと残り、粘りがあって、ほおばったときに食べ応えを感じるのが、この品種を選んだ理由。

義本さんは仕入れだけではなく、ときには稲刈りも手伝いします。このお米は、そこまでしてでも手に入れたかった、オトメの命なのです。木積ヒノヒカリのおいしさを伝えたいので、「海苔を巻いているおむすびは一種類のみ」。

 

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▲泉州の木積という場所で育つ「ヒノヒカリ」

 

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そんな宝物のようなお米を、義本さんは強くにぎらず、慈しむようにむすびます。こんなににぎらないのであれば、確かにこれは「おにぎり」とは呼べません

 

具材を真ん中にとどめる意外な方法

もうひとつ、「一般的なおにぎり」でやりがちな「ごはんのかたまりに指で具材を押し込む」あのアクション。これもまた、義本さんがつくる「おむすび」にはないのです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:穴を開けて具材を詰めると、具が真ん中に入らず片寄ることがあります。ギュッと具を押し込むことで、ごはんのエアリー感もなくなってしまう。なので私はこうするんです。

 

そう言って義本さんは、手のひらにほわりと軽~くごはんをよそい、その真ん中に具材を置き、もう片手につまんだごはんでハンバーガーのバンズのようにはさみました。こうすることで具材がちゃんと真ん中にとどまり、しかもおむすびならではのソフトな食感を損ねないのです。

 

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▲具は「北庄司酒造の酒粕入り焼きねぎ味噌」。これをまずごはんの中央に乗せる

 

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▲その上から、白ごはんを重ねる。ごはんのかたまりに指で穴を開けたりしない

 

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▲ほわりとむすんで

 

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▲上からごはんをかぶせ、手のひらで少々のフォローを加え、これでOK。「こんなにゆるゆるで崩れないのか?」と心配になるが、袋に詰めるとお米が自らの水分と粘りの力で、自然とおむすびになってゆくのだそう

 

「あなたと泉州をむすびたい」から「おむすび」

もうひとつ、義本さんがおにぎりではなく「おむすび」と呼ぶ理由、それは「あなたと泉州を結びたい」という気持ちから

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:泉州にはにぎやかな漁港があるし、農業も活発です。うちの具材も、2種類をのぞいてすべて泉州産。近郊で採れたものばかり。ちゃんとお顔を知っている生産者さんの畑から直接いただくものも多く、素材はどれも新鮮ですよ。でも、こんなにもおいしい食材でいっぱいな街なのに、同じ大阪の人ですらそれを知らない人が少なくないんです。私はおむすびを通じて、泉州にもっと関心を持ってもらいたい。そして観光に訪れるようになってほしい。そんな願いをこめて、今日もおむすびをつくっています。

 

泉州は、「あきんどの街」「ヒョウ柄おばちゃんの街」といったステレオタイプな大阪像とは異なる文化圏。そして都心から離れているため、同じ大阪に住みながら「泉州? 行ったことないわ~」「何市がどこにあるのか、位置関係がようわからん」という大阪人も少なくはないのです。

もしも梅田やミナミの街頭で通行人に白地図を見せて「泉州、ここは何市でしょうクイズ」を出題したら、正解率はそうとう低いでしょう。

 

塩(えん)むすびで、いいご塩(えん)

同じ大阪に住んでいる人でも気がついていない泉州の魅力。そして「おむすびに泉州の美味を包み込むことで街のよさを伝えたい」という義本さんの思い。それが表れている食材のひとつが、阪南沖で漁がある高級品「泉州海苔」

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▲地元の海でつくられる、しなやかで香りがよい「泉州海苔」。大阪で海苔漁がおこなわれていることは、同じ大阪人にも広くは知られていない

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:お客さんから「え! 海苔って大阪でも採れるの?」って驚かれます。まだまだ知られてないんですよね……。泉州の海苔は、とにかく香りがよいのが特徴です。おむすびを袋から出しきらずに、袋で鼻を覆うようにして食べるんです。そうすると磯の香りを堪能できますよ。

 

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▲袋から出しきらず、鼻を近づけてまず海苔の香りを楽しむところから始めるべし

 

実際に試させてもらいましたら、ほんまや。海の香りに包まれ、しばしうっとり。

 

塩は岸和田市の鯨屋という製塩所で生まれた、やわらかなしょっぱさの「羊水塩」。そして塩だけで味わう超シンプルなおむすびが、その名も「塩(えん)むすび」

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▲泉州塩業 鯨屋製「羊水塩」。まろみのあるしょっぱさが特徴

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:「塩むすび」は、10個に一個くらい、海苔で笑顔を描いてるんです。「当たり」? いや、とくに特典があるわけではないんですけれど(笑)。ちょっとでもハッピーな気持ちになってもらえたらうれしいなと思って。結婚式の披露宴で配ったら、新郎新婦のふたりだけにこの笑顔が出たこともあるんですよ。

 

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▲「塩むすび」に海苔で顔を描く

 

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▲だいたい10個に一個の確立で笑顔が出る。笑顔が出たからと言って「もう一個おまけがもらえるわけじゃありません」とのこと

 

なんとまあ、いいご塩(えん)でしょう。

 

泉州産にこだわった具材を、ほぼ自家製で

最高級の米、塩、海苔。こういったおむすび三大構成要素に包みこまれる具材も多種多彩。

定番では、南大阪府内で唯一のブランド豚「犬鳴ポーク」のそぼろおむすびや、お寺の裏の梅林で採れるという梅干しのおむすびがラインアップ。

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▲ブランド豚「犬鳴ポーク」のそぼろ。アクセントとなる生姜ももちろん泉州産

 

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▲梅と塩と赤じそのみで漬けられた「金熊寺の梅干」

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:梅干は泉南市「金熊寺(きんゆうじ)」のご近所に住むおばあちゃんが漬けているものを使っています。自分がおむすび屋さんを始めるまで、泉州で梅の実の栽培から漬けるまでをやっている場所があるなんて知らなかったです。そんなふうに「どこそこの野菜はおいしいから使ったらどうや?」「漁師の○○さん紹介したるわ」など、お店をやり始めてから人づてに教えてもらった食材もたくさんあります。

 

梅干などスタンダードなおむすびのみならず、季節商品も充実。

「山ぶき佃煮」「葉ごぼう佃煮」「みょうが」「とうもろこし」「貝塚みつば」「木積たけのこ」「泉南の森育ち原木しいたけ」「泉たこめし」「あめ色泉州たまねぎ」「泉州キャベツのリゾット風」「彩誉にんじんのきんぴら」などなど、四季折々の味覚をおむすびに包みこみ、その種類はトータル50タイプを超えるというから驚き。

店頭に並ぶのは、そのなかからチョイスされた10種類ほど。微妙な季節の移ろいで、おむすびは日々表情を変えるのです。

 

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▲旬や仕入れの状況に応じて並ぶおむすびが変わり、店頭にてその日のメニューが伝えられる

 

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▲具材もほとんど自家製する。これは近海で水揚げされたちりめんじゃこを素材とした「泉州ちりめん山椒」

 

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▲昆布の佃煮も自家製

 

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▲ナガイモや自然薯(じねんじょ)などヤマノイモ属のつるに付随する肉芽「むかご」。炊き込みごはんにするとおいしい

 

今日のおむすびラインアップをSNSやブログで告知

義本さんは時期に手に入る最上の食材を見計らいながらメニューを決め、時には新商品を生みだし、Facebookやブログにアップ。それを読んだお客さんが購入しにやってきます。

SNSを駆使しての告知は親近感を芽生えさせ、「泉たこめし、たこの味がお米に染みて、ほんまにおいしかったわ~」と話が弾みます。

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こういったコミュニケーションのおかげで、1日でおよそ220個も売れるというからスゴい。おむすびという古来からある素朴な和食とインターネットがうまくマッチングしている好例がここにありました。

 

グラフィックデザイナーから、おむすび職人へ

そんな義本さん、もともとは料理の世界の人ではありません。おむすび屋さんを開くまでは、実は意外な仕事をしていたのです。

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:大阪市内でグラフィックデザイナーをやっていました。

 

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▲デザイナー時代の義本さん

 

義本さんの前職は広告などのグラフィックデザイナー。

「おむすび」の専門店を始めたきっかけは、デザインの仕事で、泉佐野市の町おこしに参加したことで幕を開けます。

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:それまで、生まれ育った街やのに、いや、生まれ育った街やからこそ、泉州のよさを意識したことがなかったんです。そして地元の媒体にデザインでたずさわるようになって、「こんなにいいところやったんや」って気がついたんです

 

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f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:犬鳴山の滝、水間寺、池上曽根遺跡、いにしえの街並み、豊かな自然、秋風に揺れる彼岸花、ほっこりする魅力にあふれてる。「この泉州の素晴らしさを伝えて、もっと人の集まる場所にできへんやろか」と思案しました。

 

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さらに義本さんは地域振興イベントに参加することで「泉州にはおいしい食材がある」と実感。そうしてなんと、デザイナーの仕事をやめ、大胆にも「おむすび職人」になる決意をします

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:当時の泉佐野市は全国紙で話題になるほど財政難にあえいでいました。そんな苦境を脱するには「継続できる町おこしでないと効果がない」と考えたんです。そして「おむすびなら地元の食材をふんだんに使えて広く紹介できるのでは」と。そうひらめいた時、「私のやりたかったことは、これやったんや!」って、心も身体もアツくなりました(笑)。

 

そうして義本さんは自宅が所有していたガレージを改装し、この「オトメゴコロ」を立ち上げました。屋号「オトメゴコロ」は、35年前に廃業した酒造会社の日本酒の銘柄からいただいたもの。

 

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▲ガレージを改装して造られた「オトメゴコロ」。周囲もガレージなので初めて訪れた人はその”セルフビルド感覚”あふれる立地に驚く

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:「かつて泉佐野市にあった銘酒の名をいまに残し、伝えていきたい」と、この名をつけました。店頭販売を始められたのは2月で、「恵方巻のシーズンで、世間はお寿司を食べてるのに、なんでおむすびなんや」と笑われました(笑)。

 

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▲おむすびを普及させるため、おむすび柄の三角巾をつけることも

 

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▲小学生から届いた感謝状

 

一枚のふろしきが生みだす「ゆるいつながり」

泉佐野市を、ひいては泉州を活性化させたい。そのためには「活動が継続できることが大事」。そこで義本さんがあみだした町おこしが「おむすび」と、もうひとつ「ふろしき手づくりマーケット」

「ふろしき手づくりマーケット」とは毎月第3土曜日に「ふろしき1枚分のスペース」を自由に使ってそれぞれが市を開くという手づくり市。登録も予約もなし。「好きなときに来て好きなときに帰る」という、ゆるぅいルールの催しなのです。

 

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▲義本さんが運営する、ふろしき一枚分のスペースで手作りの品を販売する「ふろしき手づくりマーケット」。毎月第3土曜日、泉佐野ふるさと町屋館にて開催される

 

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▲義本さんが行くところ、おいしさと楽しさが待っている

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:なんでも続けるのは難しいことやと思うんです。一時の勢いだけでは続かない。だから地道なことかもしれないけれど、無理をせず、いまできることにじっくり取り組みながら私は町おこしを継続していきたい。「おむすび」も「ふろしきマーケット」も、そんな気持ちで始めたんです。

 

絶品! 泉州の郷土料理「芋づる佃煮」

では私も、義本さんの想いが詰まった「おむすび」をちょうだいします。いただいたのは秋メニュー「さつまいも」「芋づる佃煮」「泉州海苔」

 

では、ひとくち……。

 

「ん? んん!? んんん!? !? んッ!」

 

な、なんですこれは。マジですかこれは。
う、う、うますぎますよ!

 

お米はしっかり噛み応えがありながら、はらりとくだけます。これはカ・イ・カン。塩味にはまるみがあり、海苔は「そう簡単には破れないぞ」と言わんばかりの弾力を感じます。

ああ、さつまいものやさしい甘み(泣)。男泣きを禁じえません。 

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そして「芋づる佃煮」の野趣の深さと「しゃりん」とした食感。

うまいですねこれ!

食べ物だという認識すらなかった芋づるが、こんなにおいしかったとは。香りも歯触りもいい。もはや事件ですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:「芋づる佃煮」は昔からある常備菜で、おむすびにしたら最高なんです。ご年輩の方には懐かしく、若い方には珍しい食材。このおいしさ、もっと知ってほしいわ。深まる秋を感じてほしいです。

 

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▲さつまいもだけではなく、つるも手に入れる。そのため収獲作業をお手伝い

 

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▲唐辛子を入れてピリ辛に

 

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▲ごはんに空気が多く含まれているため、具材の香りが米ひと粒ひと粒に染み渡っている。とにかく、うまい!

 

「たこ焼き」「串カツ」「きつねうどん」だけではない、大阪に古くから根づいているお総菜を、もっと見直さなきゃな。滋味に満ちたおむすびをがぶりとやりながら、しみじみとそう思いました。

 

そんな義本さんは「将来の夢がある」と言います。

 

f:id:Meshi2_IB:20181023185942p:plain義本さん:関空の売店で、このおむすびを販売したいんです。日本中、世界中の人たちに泉州のおいしさを知ってもらいたい。そして「泉州に来てよかった」と思ってもらえたらうれしいです。

 

まるで羽が生えているかのように軽やかな気持ちにさせてくれる「オトメゴコロ」のおむすびなら、いつかきっと空を駆け巡り、世界の人々と手を結ぶ日が訪れるでしょう。

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*「おむすび」は「ちりめん山椒」と「泉南の森育ち原木しいたけ」は200円。ほかはひとつ150円にて販売中。

 

お店情報

泉州おむすび「オトメゴコロ」

住所:大阪府泉佐野市市場西3-4-31
電話番号:072-462-0014
営業時間 :8:00〜18:00 売切れ御免
営業日:火曜日・水曜日・木曜日
ブログ: https://ameblo.jp/otomegocoromusubi/

 

書いた人:吉村智樹

吉村智樹

よしむらともき。関西ローカル番組を構成する放送作家。京都在住。街歩きをライフワークとし、『VOWやねん!』ほか関西版VOW三部作(宝島社)、『ジワジワ来る関西』(扶桑社)、『街がいさがし』(オークラ出版)、『ビックリ仰天! 食べ歩きの旅』(鹿砦社)など路上観察系の書籍を数多く上梓している。

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