孤食はそんなに後ろめたいことなのか?福岡の路地裏本格カレー「ダメヤ」が“おひとりさま推奨”を掲げる理由

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私事で恐縮だが、つい1年前までコーヒーと自家製ケーキの専門店を13年間自営していた。いわゆる「おひとりさま」しか入れないお店で、その特異性ゆえ、メディアに取り上げられることも多かったが、こうした自店のコンセプトに深く共感してくれた人もいた。

そうした共感者の一人が、東京から遠く離れた九州の福岡で、カレー専門店を始めていたと最近になって知り、大層驚いた。

 

その名はダメヤカレー店

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▲ダメヤカレー店はリノベーションしたアパートの1階。この通路の奥に……!?

 

自分のお店は「結構人」といったが、店名は“人がいいくらいしか取り柄のないダメ人間”の意味で、ダメヤという店名とも通ずるものを感じずにいられない。

 

ダメヤ、果たしてどんなお店でどんなカレーを出しているのだろう? 気になりすぎる!!

 

そう思っていたある日、当のダメヤ店主(自らをダメヤマズターと呼ぶ)から直接連絡が来た。

「九州に招待するので、ウチで一緒にコラボイベントしましょう!」

つまり、ダメヤの店内で限定のカレーとコーヒーとケーキのセット販売をしようというのだ。

 

おいおいチョット待て!

 

僕はもう店舗を閉めていて、通販など店舗を持たない形にしている。しかも自家製ケーキだけでコーヒーは1年近くまともに抽出していない。

購入した豆がイベント当日に最良の状態でお出しできるか、これはかなりのばくちだ。

この話をいただいたタイミングで、光文社から自著東京「裏町メシ屋」探訪記』という文庫を発行することになった。

karibe.blog.jp 

するとダメヤ店主は「発売記念イベントにして、コラボ営業中に本の販売もすればいいじゃないですか!」と食い下がる。

結局、背中を押される形で去る5月25日、福岡へ飛ぶこととなった。

 

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▲これがその概要。コラボなのに「おひとりさま」限定という、世にもレアなイベントとなった

 

カレー&コーヒーで60食売り上げた

福岡でのイベントは5月26~27日の週末2日間の開催された。

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▲イベント開催中の店先

 

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▲入口は重い扉で閉ざされている

 

こちらはもともと一人で食べる「孤食のグルメ」を推奨しているお店なのだが、今回の企画では、

おひとりさまで過ごす時間を企画の主旨としております。ペア以上でのご購入は歓迎ですが、おひとりさまの空間を保つため、入店時に席は離れた形をとらせて頂きますので御理解ご了承ください。

と普段以上に「孤食」が推奨されていた。

 

それでも、計8時間ほどの営業ながら予約だけで60食以上を売り上げた。

カレーだけならもっと売れるだろうが、その場でドリップするという回転率の悪い喫茶店的なコーヒーのサービス方法では考えられない数字だ。

 

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▲イベント営業中、コーヒーをドリップする筆者(厨房内、手前)

 

イベント当日のメニューにはカレーの解説のほか、ダメヤと結構人との出合いや考え方などが延々とつづられていた。

 

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▲筆者はこういうものを喜々として読む方だが、普通にカレー食べに来たお客さんは果たして読むだろうか?

 

今回のイベントは前売り制を取ったため、ほとんどが常連客で完売。

しかも昨今の福岡ではなじみがないという深煎りのブラックアイス珈琲(経験上、豆のブレが少ない深煎りで、香りが強くスグに香味が楽しめるアイスでの提供を選択した)も全員完飲してくれたのも正直驚いている。

 

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▲カレーの後にお出ししたチーズケーキとアイス珈琲。いずれも筆者の手によるもの

 

自分もイベント終了後に、カレーをまかないとしていただいた。

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【チキンカリー】

深く炒め込んだ玉ねぎを8時間かけてとったチキンブイヨンに溶かしこみ最小限のスパイスで仕上げた、化学調味料不使用のカレー。(以上メニュー解説より)

 

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玉ねぎをよく煮込んだザラッとした食感でモッタリした印象がなく、オイルのバランスがよくてコクも感じられて、適度なスパイシーさも相まって非常にうま味が感じやすい割に食べやすい。

サフランライスもコクザラなカレーになじみすぎず、主張しすぎず、いい受け止め役で引っかかる部分なく食べられた。

 

【パオパジ】

じゃがいも・トマト・カリフラワー・にんじんなどをマッシュし、自家製ブレンドスパイスにて仕上げました。バターの風味、アムチュールという酸味のあるマンゴーパウダーの風味が特徴です。印度のムンバイ地方の食べ物でパンと共に食べます。パオはパン、バジは野菜の意。(以上メニュー解説より)

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これは初めて食べる料理で、香りや見た目にカレー感はあるが、それがなければ野菜の煮込みっぽいようなニュアンスの料理に感じた。

油気はあまりなくて、辛さもほとんどない。野菜の甘みが前に出ていて、それを焼かれたコッペパンにのせて食べる。優しくも若干の酸味も感じさせ、かすかに漂うスパイスの特徴もある独自の味が口中に広がる。

見た目にはやや少なく見えるかもしれないが、すべて平らげると結構な量。味わい深さも手伝って満足感がハンパない。

カレーというと、とかく極端にスパイシーなものや辛さに走りがちだが、スパイスを使った野菜・肉・スープのコンビネーションを楽しむ料理としての懐の深さを感じさせてくれるワンプレートだった。

それにしても、福岡という地でなぜこのようなカレー店を一人で自営し、「孤食空間」を掲げているのだろうか。そのキッカケや経営のこと、さらには個人店のあるべき姿にいたるまで、おひとりさま専門店を営んできた身としてイベント終了後に直撃してみた。

 

料理好き→ラオタ→カレーオタ

── マズターは高校まで九州にいらしたと聞いてますが、子どもの頃から料理に興味があったんですか?

 

ダメヤマズター(以下マズター):母親が若い頃から村上祥子さんっていう料理研究家の料理教室に通ってて、今思えば和洋中問わずちょっと変わったメニューが家では出てましたね。書きためた手書きのレシピブックがあったので、作ってみたりしてました。

 

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▲まだまだお見せ出来る段階にないと厨房で帽子を目深にはにかむダメヤマズター

 

── あぁ、たまにそういうお母さんいましたよ。あいつんちで食ったことないもん出てきたよ! みたいな。

 

マズター:それから高校に入ると、帰りはラーメン店に寄り道。友だち誘っていくんですけど、最初は付き合ってくれてもあまりにラーメンが続くんでしまいには嫌がられながら。

 

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▲高校の時、あこがれのラーメン店主になりきるため作ったという帽子

 

── 分かります(笑)。その後、東京の映画学科のある大学に進学されたんですよね。

 

マズター:当時は本気でラーメン職人になりたかったのですが、東京に出てから、食べ歩きの幅が一気に広がった。東京に行くとカレー専門店ってのが街にあるじゃないですか。上野に行ったら「アーグラー」ってインド料理店があったんです。ランチ食べたらメチャクチャうめぇと。そしたら自分で作りたくなっちゃう。で、アメ横の大津屋ってスパイス専門店でスパイスを買って家で作ってみたわけです。でも、人に食べてもらって喜んでもらえるようなインド式カレーにはいたらずで。やはりインド人でないと核心の部分はつかめないのかな、と本気で思ってました。

www.hotpepper.jp

 

インド式カレーに、味とスタイルを魅了され……

── 当時日本人で本格的なインドカレーをやってる人はいなかった?

 

マズター:東京の笹塚にM's Curry(エムズカレー。マスター他界により残念ながら閉店)ってお店があったんですよ。カウンターだけのお店なのにいつも並んでて、皆んな黙々と食べてる。そこでインド式のチキンカレーを日本人に合うような味に仕上げてて、オレやりたいなって心に響いたんですね。映像の仕事もいろんな断片を組み立てて一つの作品にするので料理と似た部分は多いですが、どうしてもユーザーとの距離感がある。カウンターのお店だと、ダイレクトにユーザーの反応がわかるのが最大の魅力ですね。で、その後、インド・パンジャブ州出身の方のリアルな北インド料理店に出合って。これまで食ってきたインド料理で、ここまでぶわぁーっとくるのないなと思って。それで何度も頼み込んで教えを請うたんです。

 

── それは、お店の味に影響されて?

 

マズター:北インド料理店は、完全に自分が今作ってるカレーの基礎になってますね。これ、日本人シェフのほとんどがやってないインド人シェフの秘技なんです。M's Curryの方は、リスペクトを込めたメニューとして、スープキーマをやってるんです。味は全然違うんですけど、ビジュアルは似てるようにして、器も似てるの使って、表面に生クリームとパプリカを散らして。

 

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▲垂れてる感じがシズル感満点のスープキーマ(1,000円)

 

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▲こちらは一番好評というナス入りキーマ(1,150円)

 

── それはレギュラーでは出されない?

 

マズター:今も時期によって出してはいますよ。

 

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▲時折出すという純インド式プレート:ターリー(キーマ・バターチキン)

 

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▲純インド式:フィッシュマサラ

 

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▲純インド式:チキンビリヤニ

 

マズター:M's Curryはスタイルにも感銘を受けてて。カウンターのキャパ的にもまぁ助手はいるときもありましたが、一人だとこうやれるかなぁと。ジャズが大きめに流れてて、マスターはコックコート着てたりして。マスターが急逝したのが残念ですが、その精神の片りんでもと勝手に受け継がせてもらっています。

 

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▲ダメヤオリジナルのコックコート

 

── 年代的に2000年くらいだと思うんですけど、ラーメンでもそれまでは東京で行列店というと背脂のコッテリとしたのを出すロードサイド店が主流でした。でも「青葉」や「武蔵」が評判店になって、そこから影響受けたお店が脱サラしてカウンターだけの個人店を郊外に出したりして、売切御免で味も魚介とか素材にこだわったものを出す傾向が生まれたりしたんですが、そういうのと似てますね。

 

マズター:そうかもしれません。似たような流れというのは少し後かと思いますが、カレー業界でもありますね。結構人もそのくらいのオープンですよね。路地裏で、一人で、作務衣着て。

 

── そうです。珈琲だけど青葉インスパイア系でしたから(笑)。個人が目の届く範囲で、出すものに責任持ってやるとなるとそういう形になってしまいますよね。

 

映像業界からカレー店主へ

── そうやって食べ歩くうちにいっちょ自分でも飲食業やってみっか! となったわけですか。

 

マズター:うーん、まぁその頃は映画の大学出て映像関連の仕事ひとすじでしたから、いつかは飲食をと思いつつも漠然も漠然で。フィルム撮影からデジタル撮影に、ほとんどが転換してしまった時期で、業界そのものが縮小傾向になってて。その中で自分のポジションを考えた時に、売れっ子監督とかってわけじゃないし、自分の代わりはいくらでもいると。30歳を過ぎた先、このままいっても先は見えてると。自分から映像を取ってしまえば、得意といえるのが料理しかもう無かったので、カレー、ラーメンのお店というのが選択肢としてリアルに存在したんです。やるなら今だ、人生を賭けてみようと。

 

── 自分の場合もちょうど30歳前後でそういう転機が来たのでよく分かります。それでスパッと映像を諦めて九州戻ってカレー店に転身したんですか?

 

マズター:独立してたのでスパッとは辞められず、カレー店をやりながら映像も何とかこなしていこうと。なので開けたり閉めたりの営業となるので「ダメヤ」という店名にしました。それに、飲食経営の自信もなく、「どうせダメだろう」というニュアンスも込めて(笑)。その時点ではカレーとラーメンを両方、出せるお店と計画しました。

 

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▲当時考えていたカレーとラーメンの手書きイラスト

 

── そこでラーメンではなく、カレー専門に絞ろうと決断したというのは?

 

マズター:先々を考え親元に近い九州で物件を探して、福岡で探してたら一番安いのが、今でも創業店のある野芥(のけ)だったんです。Google マップ見て、「あ、天神から電車で15分だ」と。しかも大通り沿いでストリートビュー見たら車がビュンビュン走ってるし。これだったらオレ一人食うくらいいけるんじゃないかって。契約してから4カ月後くらいに初めて現地に行ったんですよ。

 

── えぇ!? 遅すぎじゃないですか。

 

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▲野芥店の外観。シブ好みである

 

マズター:不動産屋さんに「人気物件ですから!」とか上手いこと言われてスグその日に契約しちゃって。で、行ってみたら目の前がラーメン店だった。だから必然的にカレー店にせざるを得なかったと(苦笑)。

 

「孤食のグルメ」の真意とは

 ── ところでダメヤでは、おひとりさま推奨というか「孤食のグルメ」というコンセプトを掲げていますよね。これは野芥で始めた当初から掲げられてたんですか?

 

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▲ブログに書かれている孤食のグルメ推奨店の記載

 

マズター:突然、福岡の郊外で始めて誰も来ないという現実を突き付けられました。どうやったら、お客さんに来てもらえるか? そう考えた究極に、味だけしか望みはなかったんです。自分の信じた味だけで、どれだけ人を呼べるか? という勝負しようと。続けていると、週に1度、一人で来てくれる方がいたんです。こういう方たち(孤食者)を大切にしよう、と。それでデートとか、お話しが主で来る方は他に行ってくださいという考えが強くなってきた。

 

── 「クリスマスイブはカップル禁止」と耳にしましたが。

 

マズター:多く並んでるお店で、とびとび1席ずつ空いてるのにカップルだと⼊店しないとか、そういうのもなんだかなぁって思ってたんで。イブだけは孤食者が気負うことのない居場所(聖域)を作りたかった。もちろん通常はカップルでも食事にきちんと向き合ってくれる方は歓迎です。とにかく、過去の⾷べ歩きで体感していたことと、野芥での創業時の経験が、「孤⾷のグルメ推奨」というコンセプトをつくり上げたのだと思います。

 

── 僕の場合は路地裏でやってたから近所迷惑になるので、仕方なく一人ずつ静かに入ってきてくれないとやっていけませんでした。コーヒーのドリップに時間がかかるとか、席数が取れないというハード面の制約もあったし。さらに古本喫茶としてスタートしてるので、勉強や読書客が多くて結果として「おひとりさま専門店」になっていった経緯があります。

 

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東京の下町・谷根千エリアでかつて筆者が切り盛りしていた「結構人ミルクホール」の外観。住宅街の中にあったため、騒音には神経質に成らざるを得なかった

 

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▲一人席で配置された谷根千時代の店内

 

── それで、変わったお店だぞって本とかに取り上げられると、影響されて「ボクも『おひとりさま』のお店やりたいんです~」って来る人も出てきちゃって。

 

マズター:それはなんか違いますよね。

 

── 飲食としてやりたいことがあって、そのための手段なのに、「おひとりさま」が目的化してしまうのはどうなんだろうって。

 

マズター:おいしく食べる、食べ物との向き合い方の一つとして、自分なりに突き詰めた果てに「おひとりさま」という形態があったわけで。

 

── まさに。それですごく思うのが、家族とか友達とか皆んなと食べるほうがおいしいし、正しい食事のあり方だ、正義だみたいな教育ってあるじゃないですか。それだとただワイワイしゃべってて結局なにを食べたのかあんまよく覚えてない(笑)。

 

マズター:味なんか分かんないですよね。そもそも食に集中にしてないですから。

 

── 食事がコミュニケーションのツールになってるわけですよね。それはそれでいいんだけど、その価値観だけ賞賛されるのはどうなんだろうと。よく考えたら、食べてる瞬間って結局一人なわけだし。

 

マズター:そうそうそう。そうしたずれた価値観の押しつけによって、孤食が恥ずかしいと思ってる人、ちゅうちょしてる人がいたらもったいない。

 

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▲似たような境遇と考え方に話が盛り上がるダメヤマズターと筆者

 

── 食べる瞬間は一人なんだったら、一人で集中して食べられる空間があってもいい。定食でも、最初ご飯だけ食べてこういう味で、おかずはこうで、それでご飯におかずのせて一緒に食べたらどんな味がするだろうとか意外と考えてる。ご飯でも炊きたてと冷めてからでは、食感とか甘みが違ったりするじゃないですか。そういう変化を楽しむのも、食事のあり方の一つなんじゃないか。そういう楽しみって、他人としゃべりながらじゃなかなか味わえない。

 

マズター:一人で食べられれば、経時変化による味の考察も出来るし。自分なんかは料理するから、この調味料でこうやったらこういう味になるのかなとか考えながら食べるのがものすごく楽しいですよ。

 

おひとりさま=食事を楽しむためのひとつの方法

──「おひとりさま」推奨にしている理由が『メシ通』の読者にもうまく伝わってくれたら幸いなんですが。

 

マズター:全力で味わってほしいから、こっちも全力で100%のものを出そうとする、という感じですかね。食を楽しんでもらいたい一心なんです。あと、他人同士が隣り合うので、不快な思いをせず楽しめる環境も提供したい。だから貼り紙が増えたり、ブログで書いたりしちゃう。今は、そういう飲食店での最低限のマナーを学ぶ場所がなかったりするので。

 

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▲メニューとともにさまざまな掲示であふれる店内

 

── 飲食業を営む立場として、自分が提供しているものに対してこだわるというか責任を持つって当たり前じゃないですか。出す側が食材に対して、よくわかってないものを出すわけにはいかない。だから自然と「これはこういうふうに食べたほうがいい」みたいな言い方になる。

 

マズター:それはあくまでお客さんに一番おいしいと思ってる食べ方を案内してるだけで。

 

── でもそれをやると、どうしても「こだわりの押し売り」というイメージが付いて、面倒くさいお店みたいなくくりにされがちですよね。 でも、個人でお店をやる必要性って、店主が自分で手の届く範囲で作ったものを、お客さん側は目の前で受け取って楽しむっていう、それ以外ないと思うんですよね。

 

マズター:大人数でワイワイしたいときは、そういうシチュエーションに見合ったお店を選べばいんです。選択肢があるわけだから。

 

── 個人店で一人で一つの食事を楽しむっていうのは、大げさに言っちゃうとカルチャーだと思ってるんです。なんでもウエルカムで聞き入れて、カウンターのお店ならではの楽しみ方が出来なくなっちゃったら、そのカルチャーが衰退しちゃうんじゃないか。

 

マズター:そこは嫌われても言うところは言って、個人店としてのやり方を通していかないと、近い未来、どこも金太郎あめみたいなお店ばかりでは面白くない。それこそカルチャー、食文化が衰退していきますよ。

 

── そんな中で、ダメヤのような存在が、コンセプトとして明確に「孤食のグルメ」みたいなものを掲げてくれていると本当にありがたいし、一人で食べたい人間にとって格好のお店になっていると思いますよ。

 

マズター:そうは言っても、ブツブツとブログに書いたり、注意書きをバンバン貼ったったりしてるお店によく来てくれるなって思いますよ(笑)。

 

── ウチのミルクホールも貼り紙ガンガンしてたんで、なんとも言えないですけど(笑)。

 

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▲結構人ミルクホールの店頭に掲げられた注意書き。情報量多し!

 

マズター:僕は少なからず結構人ミルクホールの影響は受けているんです。やる側になったからには刈部さんに来てもらって一緒にやりたいっていうのがあったんで。

 

── 自分もお店を辞めた後にまさかこのような形で厨房に立つとは夢にも思ってなかったですよ。

 

マズター:一緒にできて楽しかったですよ。お客さんから店同士のコンセプトがリンクして、意義のあるイベントでしたね、との声もありました。また機会があったらぜひやりましょう!

 

次回のコラボ営業の予定はまだ未定だが、ダメヤは今も福岡の路地裏で孤軍奮闘している。

個人でお店をやっていくのは本当にシンドイ。とはいえ、福岡にはダメヤの姿勢を応援している声が多いようだし、気概を持った個人店がますます出てくる予感がした。

福岡にお立ち寄りの際はダメヤに行って「個人店の今」を体感してほしい。そこにしかない味や空気を少しでも多くの方に堪能してもらえたら、これ以上望むことはない。

 

お店情報

ダメヤ 薬院店

住所:福岡福岡市中央区薬院3-7-30
電話番号:非公開
営業時間:下記ブログを参照
定休日:不定休

dameya.jp

 

書いた人:刈部山本

刈部山本

スペシャルティ珈琲&自家製ケーキ店を営む傍ら、ラーメン・酒場・町中華・喫茶で大衆食を貪りつつ、産業遺産・近代建築・郊外を彷徨い、路地裏系B級グルメのブログ デウスエクスマキな食卓 やミニコミ誌 背脂番付 セアブラキング、ザ・閉店 などにまとめる。メディアには、オークラ出版ムック『酒場人』コラム「ギャンブルイーターが行く!」執筆、『マツコの知らない世界』(TBS系列)「板橋チャーハンの世界」出演など。2018年5月には初の単著となる『東京「裏町メシ屋」探訪記』(光文社)を出版。

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