理想の納豆パスタを追い求めて
納豆パスタを作ろうと思いました。きっかけは、知り合いに「うまいよ」と教えられた某レストランの納豆パスタが、あまりにうますぎたからです。
納豆パスタはその店の看板料理だそうで、複雑なうま味がからみ合ったそれはまさに、ごちそうと呼ぶにふさわしい一皿でした。
納豆パスタ=シンプル手抜き料理、という偏見を持っていたことを大いに反省すると同時に、納豆パスタのレシピを求める旅が始まりました。そして見つけてしまったのです。私の理想の一皿を。
納豆パスタの宿命(さだめと読みます)があるとしたら、それは「納豆という武器」に頼り切ってしまうことでしょう。そのまま食べてもうまいだけあって、「うま味の塊」ともいえる納豆の味に依存してしまう。
たとえば、パスタに納豆とめんつゆをあえて、刻んだ大葉をのせたら完成。こんなパスタを見たことがあるでしょう。さっぱりしておいしいけど、なんだか違うんだよなあと思っていました。はっきり言えば物足りない。なぜか。
おそらく日本に住む我々は、「納豆ご飯」のイメージから脱却できていないからです。
納豆ご飯至上主義が、納豆パスタにおいても蔓延しているのです。夕食が納豆ご飯だけだったら少し寂しいじゃないですか。
だから、私は全力で納豆のうま味に挑みました。「納豆がなんぼのもんじゃ」という気迫で納豆パスタ作りの旅に出たのです。
納豆パスタの作り方
ということで材料はこちら。
(1人分)
- パスタ(2.2mm) 100g
- サラダ油 大さじ1
- アンチョビ 1片
- ニンニク 2片
- しょうゆ 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 酒 小さじ2
- 鶏ガラスープの素(顆粒) 小さじ1
- カレー粉 小さじ1/2
- バター 5g
- 納豆(できればひきわり) 1パック
- 納豆のタレ(付属のもの。できればかつお出汁を含むものがオススメ) 適量
- からし(納豆付属のもの) 適量
- 粉チーズ お好みで
まずは大きめの鍋に湯(分量外)を沸かし、塩(分量外)を加えて、パスタを茹でます。今回はぶっとい2.2mmのパスタを使います。茹で時間はなんと16分。これだけ時間があれば、具材の方もその間に調理できるからいいですね。
サラダ油、アンチョビ、みじん切りにしたニンニクをフライパンに入れて火にかけましょう。弱火から中火でニンニクがきつね色になるまで炒めます。おなじみのパスタの作り方ですね。ちなみにアンチョビにはたっぷりグルタミン酸が含まれています。
ニンニクが色づいたら、しょうゆ、みりん、酒を入れ、軽く沸騰させて煮切り、これらを味の基礎にします。
次に入れるのが鶏ガラスープの素。
鶏ガラスープにはイノシン酸とグルタミン酸が多く含まれていますので、これでうま味が分厚くなります。アンチョビとニンニクに、しょうゆ、鶏ガラスープのうま味をのせていくイメージです。
そして、カレー粉を投入。スパイスを投入することで、味わいに華やぎが生まれます。
これは口に入れた瞬間の風味につながります。
料理好きの方は「具材が入っていないだけで、カレーの作り方と変わらないじゃん」と思うでしょう。確かにそうかもしれません。だって私はカレーが大好きですから。
ほぼ完成、なのですが、せっかくなので、隅々までうま味を充実させましょう。ここで投入するのはなんとバター。これが全体にコクを出してくれます。
ということで、納豆を迎え入れる準備ができました。もうおいしそうでしょう。
これまでの納豆パスタは、納豆に頼りすぎていました。いってしまえば、弱小チームに納豆という助っ人打者を呼んだようなもの。あとは任せたとばかりに、彼への期待が強すぎたんですね。納豆におんぶに抱っこではチームが強くなることはありませんし、彼もそのうち嫌気がさして故郷に帰ってしまうことでしょう。
でもこのチームは違います。どこからでも打てる実力打者をそろえていますし、バランスもいいし、知名度もある。このままでも優勝できそうなメンバーをそろえたうえに、さらに納豆という助っ人を迎え入れようとしている。それぞれが互いを高めあい、いい結果をもたらすことは確実です。
4番・指名打者を投入します。タレとからしをよく混ぜてからどうぞ。薄めの味付けが好みの方は、タレは入れなくて大丈夫です。ようこそ、我がチームへ。
納豆を入れたら箸でくるくると混ぜながらなじませます。ご覧ください、チームと一体になった納豆を。粘りのあるバッティングが期待できますね。
さて、気がつけば16分が経過しました。お湯をしっかり切ったパスタをフライパンに入れて、納豆とあえます。お箸でくるくる。パスタがスープをすって色づいたらオーケーです。お好みで、最後に粉チーズをかけてもいいと思います。
カレーとしょうゆの香りが食欲を刺激します。ああ、お腹がすいてきた。
完成です
いかがでしょう、このビジュアル。
最初の一口で、「うま!」という言葉が思わず出ます。太めのパスタと納豆を一緒に噛み締めると、うま味ががっぷり四つに組み合ってきます。
これは洋風の納豆ご飯なのではないかと感じます。納豆しか具はないのですが、とにかくうまい。
それはそうでしょう。あらゆるうま味が重ねられているから。
通常だったら「トゥーマッチ」になってしまいそうな調味料づかいですが、それもすべては納豆のうまさに負けないため。全体にパンチがあるので、調味料の量を少し控えめにしてもおいしくいただけます。
今回はひきわり納豆を使いましたが、普通の納豆でもおいしくいただけます。
納豆パスタが手抜きご飯から、ごちそうに昇華する瞬間を見届けた皆さんはきっと幸運な人です。
ぜひ一度お試しください。
書いた人:キンマサタカ
編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)
- Twitter:@nada_y_nada