やわ麺でダシが美味しい「因幡うどん」が時代を経ても愛され続けるワケ【うまい・安い・腹いっぱいの博多スピリット】

博多うどんの代表格「因幡うどん」が満を持してメシ通に登場。長年愛されてきた優しいダシ&やわ麺、さらにかしわ飯の魅力にも迫ります。読めばハラヘリ必至!

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▲基本メニュー(店舗によって内容及び価格が異なります)

 

こんにちは。福岡在住ライターの大塚拓馬です。

 

以前、福岡のうどん三大チェーン(ウエスト・資さんうどん・牧のうどん)を取材した記事を執筆し、たくさんの反響をいただきました。

 

www.hotpepper.jp

 

福岡にはこの三大チェーンをはじめとして、さまざまなうどん店がありますが、その中でも博多うどん」と呼ばれるジャンルがあります。

 

その博多うどんの代表として、多く名を挙げられる存在が「因幡(いなば)うどん」です。

 

なぜ因幡うどんは「博多うどんの代表」と言われるほど、福岡県民に支持されるのでしょうか。

 

そこで今回、福岡の人たちに「博多うどん」として親しまれている因幡うどんの社長に、直接「博多うどん」についてお尋ねしてきました。

因幡うどんのおいしさの秘密から意外な事実まで、たっぷり聞いているのでうどん好きの方にはぜひ読んでいただきたいです。

2019年12月に誕生した「因幡工房」へ

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取材で向かったのは、福岡博多区上牟田で2019年12月にオープンした「因幡工房」。

 

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セントラルキッチン的な機能を持つ因幡工房には、店舗もあり、食事もできるようになっています。

 

そんな真新しい工房で、因幡うどんの代表取締役・原田善治さんにお話をうかがいました。

 

そもそも因幡うどんは「博多うどん」なのか

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▲インタビューを快く受けてくださった原田社長

 

──因幡うどんは福岡の人から「博多うどんの代表」と呼ばれることも多いお店です。

 

原田社長:博多うどんの代表格と呼んでいただけるのはありがたいことですね。ただ、私どもは「博多うどん」にこだわっているわけではありません。

 

──えっ! そうなんですか?

 

原田社長:はい。博多うどんというよりは、因幡うどんであり続けることにこだわっています。因幡うどん伝統の製法と味を守り続けることで、結果的に「博多うどん=因幡うどん」というイメージを守れれば良いなとは思いますけどね。

 

──因幡うどんは、いつ頃から「博多うどんの代表」と呼ばれだしたと思いますか?

 

原田社長:昔からファンの方が多く「博多にあるうどん店」として、地元で愛されていました。「博多うどん」という言葉は、博多でも昔は一般的に馴染みがなかったですね。「讃岐うどん」という言葉は昔からありましたけれども……。

 

──たしかに福岡の人が「福岡はうどんが名物」とはっきり認識したのも、ここ10~15年くらいの話だと思います。

 

原田社長:昔から福岡に自然と根付いていた食文化に、後から「博多うどん」と名前がついている状態なので、定義は難しいですね。「博多うどん」と呼ばれるどのお店にも素晴らしい個性がありますし、一概には言えません。

 

因幡うどんが考える「博多うどん」とは

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▲まごうことなき大定番、肉ごぼう天(税込720円、渡辺通店の場合。店舗によって異なります)

 

──あえて「博多うどん」という言葉を使うなら、博多うどんの特徴はどんなものだと思いますか?

 

原田社長:ふっくらとしてやわらかい麺の食感、せっかちな博多っ子をお待たせしないようにと考えられたゆで置き麺、思わず飲み干してしまううま味の濃いダシではないでしょうか。

 

──ダシは重要ですよね。他の地域だと、うどんは麺が主役の場合が多いように思えます。対して福岡のうどんはダシと麺の両方が主役という共通点があるように思います。

 

原田社長:昔から「ダシを食べる」と言われており、「ダシも食べ物だ」という考え方がありますね。麺はそんなダシを活かして絡みやすくするために、やわらかくなっていると言えます。

 

──博多うどんの文化を広めるためにも活動をされていらっしゃいますね。

 

原田社長:承天寺(博多駅近くにある「饂飩蕎麦発祥之地」の石碑があるお寺)を案内したり、讃岐うどんと博多うどんを食べ比べたりするツアー参加者の方々にうどんを提供したり、博多の文化を知るフォーラムにパネラーとして出席してうどんを提供したりしました。こうした活動を通じて、他県の方はもちろんですが、福岡の人にも博多のうどん、因幡うどんを知っていただきたいという想いがあります。

 

──博多うどんの代表として、因幡うどんが文化発信地になるといいですよね。

 

原田社長:そうですね。博多の文化発信、伝統維持、地域貢献に努めることは因幡うどんの使命だと思っています。

 

こだわり①生地はすべて足踏みで

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▲このふわっとやわらかい麺をぜひ味わってもらいたい

 

──因幡うどんの麺のこだわりについて、教えてください。

 

原田社長:ふっくらした柔らかさと、もっちりした弾力を出すことですね。もっちりした弾力を出すために、生地は機械だけでなく必ず足踏みの工程を入れています。

 

──全店舗で使う生地をすべて足踏みですか! 大変ですね……。

 

原田社長:足踏みがないと良い麺は作れません。足踏みをすることで麺のもっちり感を引き出すのはもちろんですが、踏み具合で良い生地になっているかがわかるんですよ。

 

──足踏みは生地の状態を確認するという意味合いも含んでいる、と。

 

原田社長:そうです。足踏みのしかたは、各職人の体重によっても違うので「何回踏みなさい」というものでもありません。職人はよい生地の踏み心地を覚えるのです。

 

──かなり繊細な作業なんですね。

 

原田社長:そうですね。その日の気温や湿度などの気象条件で、最適な水分量や塩度も変わるんですよ。その機微は足踏みをしないとわかりません。

 

こだわり②ゆで置き麺ならではの「やわ美味さ」

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──因幡うどんの麺はゆで置きですよね。ゆで置きにしている理由は、やっぱり早く提供できるからですか?

 

原田社長:うどんはゆでるのにとても時間がかかる食べ物で、ゆで置きの最大のメリットは早く食べられるという点なのは間違いありません。しかし、それだけではないんですよ。

 

──えっ。ゆで置きを使う理由は、提供時間の短縮だけじゃないんですか?

 

原田社長:はい。ゆで置きにすることで、ふんわりとやわらかな食感を出すというのも重要な目的です。因幡うどんが求める麺を提供するには、ゆで置きがベストなんです。

 

──ゆで置きって、てっきり提供時間を短縮するために仕方なくやっているのかと思っていました。

 

原田社長:「ゆで置きの時間」というのも重要なんです。ゆで置きの時間が短いのも、長すぎるのもよくなく、ゆで置きの時間加減も難しいんですよ。

 

──ゆで置きの時間が短くても良くないなんてことがあるんですか? 短ければ短いほど良さそうですが……。

 

原田社長:因幡工房でゆでる温度や時間にもよりますが、ゆで置きの時間が短いと、店舗でゆでた時にふっくらとした麺になりません。

 

──あの因幡うどんならではの「やわらかさ」が出なくなる。

 

原田社長:そうです。できたて、ゆでたてのゆで置き麺を店舗で調理すると、麺がふんわりと膨らまないんですよ。

 

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▲因幡工房でゆでた麺は各店舗に運ばれる

 

──そうなると、ゆで置きの間も調理時間のうち……みたいなものですよね。

 

原田社長:いつゆでるかというのも計算したうえで、麺を納品する必要があります。そのタイミングが非常に大切ですし、工場を移すと、麺をつくる環境、ゆでる環境、保管する環境、冷蔵庫の温度設定などでも味が変わりますので。

 

──おいしい麺を提供し続けるのって、本当に大変です。

 

原田社長:安定しておいしい麺が提供できるように、職人の感覚は可能な限りデータ化、数値化するようにしています。日々変わる環境に対応するため、日夜研究・テストをしながら、今でも試行錯誤を続けていますよ。

 

──試行錯誤ということは、今でも麺の改良を続けていらっしゃるんですか?

 

原田社長:幅広い年齢層のお客様の声にお応えできるように、昨年から麺を改良中です。足踏みや工場でのゆで・ゆで置きの時間等の全てを見直しています。

 

──全て見直しですか! これから改良される麺が楽しみです。

 

原田社長:出来が悪い時は、お客様からお言葉をいただくこともありますが、お客様の声を商品に活かすためにも、日々勉強しながら更にクオリティの高い商品づくりに努めてまいります。

 

こだわり③一滴残らず飲み干せる「ダシ」

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▲この優しいダシがやっぱり最高なのだ

 

──因幡うどんといえば、やっぱりダシが決め手だと思います。ダシのこだわりを教えてください。

 

原田社長:天然の素材にこだわっています。北海道産の羅臼天然昆布、長崎の五島・島原産いりこ、大分の日田にある原次郎左衛門の醤油、赤穂の塩など創業時から変わりません。

 

──こだわるほど原価も高くなるのではと……。

 

原田社長:原価率が高いのは間違いないです。たとえばいりこに関しては、魚の状態で仕入れて、工場で削ってダシを取っています。削りだめもせず、毎日自社工場で削った削りたてのみを使用しているんですよ。

 

──自社で削ってるんですか! どうしてダシのためにそこまでやるんでしょう。

 

原田社長:最後の一滴まで飲み干せる美味いダシをつくりたいからです。季節に応じて味を替えており、夏はややさっぱり、冬はややこってりとわずかに異なります。材料は変えることなく、混合割合や煮込み時間の調整で季節に合った味をつくっているんですよ。

 

──そこまで繊細につくったダシの味を管理するのは大変じゃないですか?

 

原田社長:通常、ダシは自社工場で取った後、日に1~2回、缶に入れて各店舗に持って行きます。ただこの因幡工房ができたことで保管の精度が上がり、管理しやすくなりました。各店舗のダシもよりいっそうおいしくなりましたよ。

 

こだわり④相性抜群の「かしわ飯にぎり」

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▲伏兵と呼ぶにはあまりに存在感のある、かしわ飯にぎり(1個税込110円)

 

──かしわ飯にぎりもファンが多いです。

 

原田社長:かしわ飯にぎりは、うどんとの相性を考え、素材のうま味が染み出るようにつくっています。化学調味料をはじめとした、余計な味付けや混ぜ物をせず、あっさりふんわりと仕上げていますね。

 

──いつ頃から店舗でかしわ飯にぎりを提供し始めていたんですか?

 

原田社長:約50年前ですかね。その当時から、博多のうどん店ではかしわ飯のおにぎりがサイドメニューとして提供されていました。因幡うどんでは、創業者宅のお手伝いさんがつくるかしわ飯がおいしかったことから、メニューに採用したようです。

 

──因幡うどんのかしわ飯にぎりはまさに「家庭の味」なんですね。

 

原田社長:スーパーやコンビニで売られているようなかしわおにぎりとは色が全然違うでしょう。味を濃くせず、飽きのこない素朴な味わいにこだわっています。

 

こだわり⑤店舗の臨場感

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──因幡うどんの店舗は福岡の中でも中心部に出店されています。

 

原田社長:基本的には地元のビジネンマンの方々が利用しやすい場所に出店しています。今後出店する店舗は、コンパクトでお客様との距離が近く、カウンター越しにお客様と会話ができるような臨場感のあるお店にしたいと思っています。そのモデルとなるのが、ここ因幡工房の併設店です。

 

──郊外店を出す予定はないのでしょうか?

 

原田社長:郊外ですとどうしても広い店舗が必要となりますので、今のところは考えていません。ただお客様からの要望も多いので、良い物件があればチャレンジしたいと思います。

 

──お客様との距離や臨場感にこだわる理由をお聞かせ願えれば……。

 

原田社長:麺、ダシ、天ぷらの全てにおいて、天然素材のみを使用して自社工場で製造しており、その食材をシンプルに調理する姿をお客さんにご覧いただきたいと思っています。麺釜によるゆでや、徳利によるだしの提供など、特殊な調理器具を必要としない博多のうどん店らしい厨房の姿も見ていただきたいです。

 

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──厨房との距離が近いと、お客様とのコミュニケーションも活発になりそうですね。

 

原田社長:見られることで働く者のモチベーションも上がります。緊張感が違いますので。お客様の表情をよく見て、そこからたくさんの気づきを得て、どんどんブラッシュアップをしていきたいですね。

 

──今後はどれくらい店舗を増やそうと考えていますか?

 

原田社長:現在の8店舗から、ひとまず16~17店舗くらいにはしたいなと考えています。サッと食べたいという需要があるところに出店したいですね。

 

──東京に進出したいというお考えはありませんか?

 

原田社長:東京に出したい」という想いはあります。全国展開や知名度を上げるということではなく、東京で頑張っている福岡の方々がホッとできるような、そういう場所をつくりたいです。

 

──それは素晴らしい。福岡出身者は大喜びで宣伝してくれますよ!!

 

原田社長:私も東京へは出張で行きますが、東京にいると福岡が恋しくなるんですよ。自分自身も「東京にあるといいなあ」と思いますし、要望も多いですからね。実現したいですね。

 

社長直伝! ごぼう天うどんの食べ方

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──因幡うどんでよく注文されるメニューはやっぱりごぼう天うどんですか?

 

原田社長:そうです。うどんの注文の半分はごぼう天うどんですね。その次にえび天、肉うどんと続きます。肉ごぼう天うどんも多いですよ。

 

──ごぼう天うどんのおすすめの食べ方があれば教えてください。

 

原田社長:まずはダシをすすってください。そのあと、麺とごぼうを味わう。最後はほどけた天ぷらと一緒にダシを飲み干すのが最高だと思います。

 

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──いいですね……食べたくなってきました。ほどけた天ぷらと一緒に飲むダシはほんっとにおいしい。いつもの2~3倍おいしく感じます。

 

原田社長:天ぷらのごぼうや油のうま味とダシがよく合うんですよ。ダシを飲み干してもらえると嬉しいですね。

 

──因幡うどんのごぼう天やえび天は、衣が主体で独特ですよね。創業時からあの形態の天ぷらですか?

 

原田社長:創業時からです。天ぷらも日に日に改良していて、おいしくなっていますよ。さらに改良するつもりです。

 

あの「一風堂」創業者も大ファンだった

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──2016年、株式会社 力の源ホールディングス(ラーメンチェーン 一風堂の経営会社)が、有限会社因幡うどん(当時)及び関連会社から、因幡うどんの事業を承継し、現在に至ります。福岡の人間にとっては、このニュースが記憶に新しいのですが、力の源HDが手を挙げた理由や、当時の状況を教えてください。

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原田社長:実は創業した旧会社では後継者不在や、店舗・工場設備の老朽化による資金繰りの悪化により、廃業を考えていたと聞いています。

 

──え!! あの因幡うどんが廃業の危機だったなんて……。

 

原田社長:そうです。博多を代表するブランドであり、博多のうどん文化を引っ張ってきた因幡うどんの火を絶やしてはならないという想いで、私どもが手を挙げさせていただきました。

 

──旧会社が事業承継の相手に力の源HDを選んだ一番の理由は何だったんでしょうか。

 

原田社長:福岡の「同業者ではなく、多展開している総合粉食」の企業であるということですね。加えて、一風堂創業者の河原成美が因幡うどんの大ファンだったことも影響しています。私を含め、福岡で因幡うどんを愛している人間が運営するという流れで決まりました。

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──事業承継後に取り組んだことはどんなことでしょうか?

 

原田社長:従業員の意識改革や職場環境の整備にはかなり力を入れました。働きやすい環境をつくると同時に、因幡うどんで働くことの「誇り」を取り戻したいと思ったのです。そして、何よりも「原点回帰」ですね。

 

──事業承継して「原点回帰」とは、すこし意外です。

 

原田社長:私自身、創業者(杉正男氏)を知りません。事業承継の数年前に亡くなっていたからです。因幡うどんを復活させるためには、創業者の想いを私自身がよく理解し、その想いを仲間に伝えることが必要と考えました。

 

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▲因幡うどんの創業者である故・杉正男氏(写真提供:株式会社 力の源ホールディングス)

 

うまくて 安くて腹 いっぱい

──創業者の想いを引き継ぐためにどのようなことをされているんですか?

 

原田社長:因幡うどんの歴史を勉強しています。生前のアルバムを見たり、創業者の娘さんに想いや言葉をうかがったり。過去に因幡うどんが掲載された雑誌などをお借りして、とにかく資料を集めています。

 

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▲原田社長が持つパソコンは因幡うどんの資料でいっぱい

 

──すごい。まるで学者さんですね。

 

原田社長:ちょっとこれを見てください。

 

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──かなり古い雑誌の紙面ですね。「うまくて 安くて 腹いっぱい」とあります。

 

原田社長:「うまくて 安くて 腹いっぱい」これが創業時からの因幡うどんのポリシーなんです。この言葉に創業者の想いが詰まっています。福岡は飲食店の相場が安いですもんね。福岡で生き抜くには、この言葉が本当に大切なんだと実感しますよ。

 

──福岡は安くてもおいしくないお店はすぐなくなりますもんね……。事業承継をきっかけに、因幡うどんが歩んできた歴史の重さに目を向けるようになったと。

 

原田社長:様々な調査により、最近年表も完成しました。因幡工房の店舗内にも掲示しています。

 

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▲因幡工房店には因幡うどんの大きな年表がある

 

──この年表ずっと見ちゃいますね。めちゃめちゃ面白い!

 

原田社長:因幡工房店には他にも歴代の丼の現物があり、因幡うどんの歴史を感じられる店舗になっています。

 

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──ここまで調べあげて歴史を大切にされるのはどうしてですか?

 

原田社長:因幡うどんを100年続く企業へ導きたいと考えているからです。長く続くためには、引き継がれていく伝統が必要です。

 

──今おっしゃった「伝統」とはどのようなものでしょうか?

 

原田社長:歴史や創業者の想いはもちろんですが、原料や製法へのこだわりも伝統ですね。今は第二創業期と考え、それらを整理しています。

 

復活した新業態「食事処 ニュー因幡」

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──僕自身、いろんな飲食店に取材して学んだのですが、伝統を守るには変化も必要だとおっしゃる経営者も多いです。

 

原田社長:その通りです。力の源グループは「変わらないために変わり続ける」という理念を持っています。伝統の味を守りつつ、新たな商品も出ているんですよ。

 

──どのような商品があるんでしょうか?

 

原田社長:まず、スタッフの提案で季節限定商品を開発するようになりました。また、福岡空港店では一風堂自慢の鶏白湯スープを使った博多鶏うどん」をご提供していますし、また若い人に新しいうどんの魅力を知ってもらおうと「特製 博多細うどん」という商品も登場しています。

 

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▲温かいゴマつけダレで食べる「特製 博多細うどん」(税込700円)

 

──博多1番街にある「食事処 ニュー因幡」には、さらに様々なメニューがあると聞きました。

 

原田社長:「食事処 ニュー因幡」は因幡うどんの食堂型の店舗です。うどん以外にも朝食メニューや丼もの、お酒のアテになる一品料理を用意しています。

 

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博多1番街にある「食事処 ニュー因幡」

 

──なぜ「食事処 ニュー因幡」をオープンすることになったんですか?

 

原田社長:もともとあった「因幡うどん博多1番街店」が契約満了で明け渡す予定だったんです。でも、何か提案があれば再契約できると言われまして。施設側は「夜に強いお店が欲しい」と要望がありました。

 

──なるほど。それで夜に強いお店として、この新しい形態が誕生したわけですか。

 

原田社長:いえ、実はこの形態の店舗は新しいわけではないんです。昭和40年代から平成の初めまで同名の食堂が実在していました。食事処 ニュー因幡は復活オープンなんです。

 

──え、そうなんですか!!

 

原田社長:1枚だけ写真が残っていまして。その写真と当時のお話を頼りに計画しました。

 

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▲かつての食事処 ニュー因幡の貴重な記録

 

ちょい飲みでも大納得のお値打ち感

──新「食事処 ニュー因幡」はどんなメニューがおすすめですか?

 

原田社長:朝7~9時の朝定食は390円(税込)でうどん定食はもちろん、煮魚定食やハムエッグ定食が食べられます。毎日行列ですよ。

 

──390円ですか! それは並ぶでしょうね……。

 

原田社長:夜の飲みのメニューも良いですよ。私どもの商品はダシが命なので、ダシを使った煮込み料理を主に出しています。ダシを使うとやっぱりおいしいものができるんですよ。

 

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▲「だし」煮込み牛すじ(税込490円)

 

──うわ、このボリュームで490円ですか……。美味そう。

 

原田社長:大根だったら、190円(税込)ですよ。

 

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▲「だし」煮込み大根。立体感がすごい

 

──めちゃめちゃ安いじゃないですか!

 

原田社長:ビールも390円(税込)ですし、締めにうどんも食べられます。お店を全面改装して入りやすくしたところ、女性一人のお客様も増えたんですよ。

 

──福岡市内の、赤坂明治通店にもちょい呑みメニューがあるそうですね。

 

原田社長:赤坂明治通店は因幡のだしを使ったおでんをウリにしています。おでん3品と生ビールかハイボール、焼酎のセットが580円(税込)です。

 

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▲因幡うどん 赤坂明治通店

 

──うわあ、また超良心的プライス。なんでそこまで安くするんですか?

 

原田社長:「うまくて 安くて 腹いっぱい」が因幡うどんのポリシーだからです。コンビニで弁当買っていくよりかは、温かいものを食べたいよね、という理由で選ばれるお店になりたいです。

 

──こんなお店が東京にできたら、ほんっとに最高でしょうね。

 

原田社長:東京の新橋駅前でよくやってる、テレビのインタビューで「因幡うどんを食べてきた!」って言ってくれる酔っ払いを見るのが私の夢なんです。なんとか実現させたいですね。

 

──本日は貴重なお話をありがとうございました!!

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愛される理由は安さとおいしさへのこだわり

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まさか因幡うどんがここまで品質にこだわって、うどんをつくっていたとは。

てっきり「提供スピード重視」だと思いこんでいたゆで置き麺に、あれほど深い品質のこだわりを持っていることにも驚きました。

 

因幡うどんが博多うどんの代表として支持される背景には「うまくて 安くて 腹いっぱい」という、福岡の食文化を一言で言い当てた素晴らしい理念があったんですね。

 

因幡うどんは現在を第二創業期と位置づけし、これからが本当の再スタートです。これから因幡うどんがどんな発展を見せるのか、一博多うどんファンとして、楽しみにしています!

 

福岡にお越しの際はもちろんですが、因幡うどんは通販でも購入できるので、興味のある方はぜひ一度その味を体感してみてくださいね。

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お店情報

因幡うどん 因幡工房店

住所:福岡福岡博多区上牟田1-16-20
電話番号:092-483-0178
営業時間:11:30〜14:30
定休日:日曜日・祝日

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書いた人:大塚たくま

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福岡に住む九州を愛するライターで二児の父。グルメ、旅行、子育てに関する記事を多数執筆。便利で心を動かす記事を書きたい。取材が大好きで、情報量の多い記事を目指しています。

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