納豆王国・茨城で絶大な評価を得る「舟納豆」の秘密に迫る【ネバうまアレンジ付】

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地元の人々にとって「ごちそう納豆」的な立ち位置

 

納豆の生産量全国一といえば、茨城県。

水戸を中心に、納豆は県内で広く生産されています。

水戸発ブランドとして有名な「くめ納豆」や、創業100年を超える老舗ブランド「天狗納豆」などは全国的にも定番の商品ですね。

 

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納豆づくりの中心都市、水戸に行ってみました。

駅周辺のおみやげショップに並ぶ納豆商品の充実ぶりには、びっくり!

そして街を歩けば、飲食店や居酒屋さんに納豆メニューがあるわあるわ。 

 

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納豆キムチや「納豆×刺身」などは基本中の基本。

納豆オムレツや納豆春巻き、納豆のから揚げに磯辺揚げなど、あるもんですねえ。とある店では納豆料理だけで15種類もあり、うならされました。

 

そんな納豆ワールド、茨城。私はふと、疑問に思いました。

納豆名産地で育った地元の人々に評判のメーカーって、どこなんだろう?

と。地味な聞き込み調査を続けたところ、よーく聞かれた答えが、「舟納豆(ふななっとう)」だったんです。

 

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今日はおいしい納豆が食べたい、と思ったときの"ごちそう納豆"です。

 

ささやかな自分へのごほうびに。

 

詰め合わせを、お使い物や差し上げ物にもします。

 

そんな声が実によく聞かれた、「舟納豆」。

東京でも、銀座にあるアンテナショップ『茨城マルシェ』(現 IBARAKI sense)や、ごく一部の百貨店でも買えるんです。さっそく試してみたら、これが評判どおり、おいしい。粒立ちがよくて食感がしっかり。なにより、香りがいいんです。

茨城マルシェ」では常に商品ランキングの上位というのも、納得!

茨城マルシェでは売り切れのこともあります。訪問前に確認を!

 

サイトをみれば、まだまだ様々な商品があり、いろいろな納豆の楽しみ方が考案されているよう。メシ通レポーターの白央篤司、大の納豆好きであります。さっそく舟納豆の製造メーカーへ取材に行ってきました!

  

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やってきました常陸大宮市、山方(やまがた)。

上野駅から特急「ひたち7号」に乗って水戸で下車、水郡線「山方宿駅」で降りて徒歩7分程度。ちなみにこちらの山方、あの山形県と読み方が同じという縁で、秋には本場さながらの芋煮大会も開かれるところ。

 

舟納豆が生まれる現場に潜入

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こちらが、舟納豆をつくる「丸真食品株式会社」の販売店。

その裏手には……

 

 

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久慈川が流れ、山がその対岸にありました。

取材日は4月の初旬、土手には菜の花が咲き、ツクシやヨモギが茂り始めていましたよ。こんな風光明媚なところで、舟納豆はつくられているんだな。

 

さあ、お店を訪れるとしましょう。 

 

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迎えてくださったのは、 マネージャーの会沢 智(あいざわ・さとし)さん。

 

きょうは遠いところを、よくいらっしゃいました!

 

どうぞよろしくお願いします!

 

会沢さんは早速、舟納豆がつくられている現場に連れていってくださいました。

工場の入り口で白衣と帽子をかぶり、入念に手洗い、足裏の消毒をしてから、内部へ。

 

ああ、豆を蒸している香りがする! 

 

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この大鍋で、豆類が一気に蒸しあげられていきます。

ほのかに甘く、生命力あふれる豆の香りが工場内に満ちていました。

 

 大豆はまず水に浸して、それからスチームで一気に蒸すんです。豆の産地や状態、そして季節によって浸す水温と時間、圧力、蒸し時間は微調整します。(会沢さん)

 

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蒸し上がったばかりの大豆。 蒸されたばかりの豆のにおいって、甘いんだなあ。

  

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左の人が大豆をかき出し、右の人が専用の器具で納豆菌を吹きつけています。大量の豆をかき出すのはけっこうな力仕事。

 

筋肉つきますよ!
納豆菌ならぬ「これがホントの納豆"筋"だ」なんていって、みんな笑ってますけどね。

 

と、現場のみなさん。

 

大型の蒸し器がずっと稼働しているので、当然のことながら暑い!

帽子と白衣が体をぴっちり覆っているので、なおさらだと思います。慣れるまでは、さぞかしくたびれるだろうなあ……。

 

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「夏なんかそりゃあ暑いですよ! もちろん冷房もきかせますけどね(笑) 」と、現場を案内してくださった、製造部工場長の廣木和弘(ひろき・かずひろ)さん。

  

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こちらでは蒸しあげられた黒大豆に納豆菌を吹きつけ、パック詰めが行われています。

このあと発酵室に入れられて、豆は発酵し、納豆へと育っていくのです。

 

豆の種類にもよりますが、18~20時間ぐらい発酵室で寝かせます。気温や湿度はすべて季節や豆の発酵状態によって微調整します。発酵が終わったら、その後冷却して、包装。これで納豆のできあがりです。(廣木さん)

  

黄金色に輝く納豆は、弾力も粘りも申し分なし

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すべての工程をこなせるようになるまで、丸3年はゆうにかかったという廣木さん。「舟納豆」が支持される理由を、率直にうかがってみました。

 

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やっぱり、納豆のおいしさは豆の良さに尽きると思っています。「舟納豆」はすべて茨城県産の大豆100%でつくられています。この小粒の大豆は、納豆菌の繁殖にとても適しているんですよ。そして納豆づくりはまず浸水から始まりますので、水の良さも大事です。水道水を使用していますが、源流は地元の伏流水。この水がおいしいんです。機械化も最小限におさえて、人の手と目でチェックしながらつくっていることも、おいしさにつながっていると思います。(廣木さん)

 

そして「とにもかくにも、食べてみてください!」と案内してくれたのが、先ほどの店舗内に設置された試食スペース。こちらが充実でした!

 

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「どうぞお試しくださーい!」 

 すべての商品を試食できる太っ腹なスペース。これがうれしいんだなあ。専任の店員さんがアテンドしてくれるのです。まずは看板商品の「舟納豆」(1パック 141円)からスタート!

 

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なんときれいな黄金色!! 

色ツヤがいいなあ。食べてまず感じるのは豆の食感の良さ、その弾力。噛んでいて気持ちがいいほどです。粘り具合も実にしっかり。

 

うまいっ!

 

ありがとうございます。豆のおいしさを存分に味わっていただきたいと思っております。従いましてわが社のタレは薄味で、量も少なめなんですよ。そして「経木(きょうぎ)」という松の薄く切ったものを納豆とパッケージの間に挟んであるのですが、それも香味アップにひと役買っているんです。(会沢さん)

 

まさに納豆天国! おすすめ商品一挙紹介

納豆商品はこれ以外にもたくさん!

バリエーションの豊かさと企画力が「舟納豆」の魅力でもあるんです。以下、一部をご紹介しますよ。

 

こごいら納豆&黒船

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個人的におすすめがこの2つ!

 

まず写真右が「こごいら納豆」(1パック 281円)といって、切り干し大根と、刻んだ大根の葉が入ったもの。

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これ、茨城郷土料理で「そぼろ納豆」といわれるものなんです。

ただ一般的な「そぼろ納豆」は、切り干し大根と納豆を醤油で味つけして、混ぜて寝かせたもの。ここで大根の葉もさらに混ぜこむのが、「舟納豆」のオリジナル。

ぽりぽりとした大根の食感が加わることで、納豆に新たなおいしさが加わります。

 

この「こごいら納豆」、ごはんにのせて、熱々のだしをかけて茶漬け風にするとまたおいしいんです。ぜひ試してみてください。(会沢さん)

 ※評判の商品なので品切れのこともあり

 

 

そして写真左の「黒船」(1パック 216円)は黒大豆を使った納豆。

f:id:Meshi2_Writer:20160414121929j:plainこれ、すごく食べやすい! 粘りはしっかりとあるのですが、味わいすっきり。黒豆らしい香りの良さもあって、私はおやつ感覚で食べてしまいました。

 

茶々丸

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山形県の川西町というところでとれる「紅大豆」を使用した「茶々丸」(1パック 389円)は、大粒の赤豆を使った納豆です。

 

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これが蒸される前の紅大豆。

 

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この納豆のふっくら加減、実に見事でした。ほどよく炊かれた煮豆を食べているような気になるほど。豆自体のおだやかな甘みをも楽しめる納豆なんです。

 

お酒のつまみにおすすめ「ワイン de ナットーネ」

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大の酒好きの私としては個人的にイチオシなのが、こちら!

「ワイン de ナットーネ」、トマト&バジル味とチーズ味(各216円)。

 

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開けてみると、こんなふうにチーズ風味のペーストが入っていて、それを納豆につけて食べるもよし、全体にからめるもよし。豆はさきほどの「紅大豆」が使用されています。意外な相性の良さにびっくりすること、うけあい。

 

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クラッカーにのせて軽く黒コショウをひいたら、これがまたうまいんだ!

 

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ワインはもちろん、ビールや日本酒のつまみにもいいんですよ。ゆでたてパスタにからめてもいいだろうなあ。

 

社員さん直伝のアレンジ料理 ア・ラ・カルト!

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さて、納豆といえば私は断然「白めしと一緒派」なのですが、ここでマネージャーの会沢さんから「待った!」が入りました。

 

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やっぱり納豆は単品で食べたいですねえ。納豆のおいしさを純粋に味わえるじゃないですか。(会沢さん)

 

うーむ。

そりゃあ納豆メーカーとしては、純粋に単体のおいしさを味わってほしいだろうけれどなあ……。

 

いやいや、それだけではないんですよ。うちで働くみんなは、かなり自由にアレンジして楽しんでますもん。(会沢さん)

 

えっ!

それ、すごく知りたい みなさん、どんなふうに納豆を食べているんですか!?

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というわけで、「舟納豆」が誇る販売担当のみなさんに聞いてみました。

興味深いアレンジがいっぱい!

 

◇納豆バゲット

まずよく聞かれたのがこちら。切ったバゲットに納豆をのせ、とろけるチーズなどを加えて軽く焼くのだそう。朝ごはんにもいいそうです。やってみたら確かにおいしい。ピザソースを足してみれば、これまた好相性!

 

◇唐辛子&ニンニク&ゴマ油

刻んだニンニク、ゴマ油、唐辛子で納豆を和えるというレシピ。「酒のつまみに最高!」とのことで、やってみたら確かにうまい。唐辛子ではなく七味でやるとさらに手軽にできますよ。

 

 ◇納豆汁

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山形秋田南部の郷土料理としても知られる、納豆汁。

味噌汁に軽く叩いた納豆をのせたものですが、とある店員さんから、

 

「すった豆腐を入れてもおいしいんです。もうどれだけ大豆好きなんだって感じですね(笑)」

 

とのお話を聞いて、早速ためしてみました。うーん……う・ま・い!

味噌と納豆と豆腐、それぞれの大豆のうまさが交互に押し寄せて、実に飲みよいものでした。一緒に入れる具はなんでもいいようですが、里芋やニンジンなどを入れて豚汁風にしてもおいしい。

ちょっと胃が弱ってるとき、食欲のないときなど、具無しのみそ汁をつくって、このやり方で食べたら体にも良さそう。味が薄いときはちょっと醤油を垂らしてもおいしい。

 

そのほか、

「アボカドを刻んで納豆をのせて、好みのドレッシングをかける」

「トマトと玉ネギを細かく刻んで、納豆に混ぜて、好みのドレッシングをかける」

 

といった、ドレッシングとの合わせ技が聞かれました。サラダにトッピング感覚で納豆が使われているようですね。

 

いやー、納豆アレンジ料理……奥深いなあ。いろいろ教えてくださった「舟納豆」のみなさん、本当にありがとうございました!

 

ちなみに、私からも一品、納豆アレンジテクを。

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スジコ on 納豆

これ、新潟の親戚に教えてもらって以来、ハマっています。うまいんですよ!! コクのあるもの同士が相乗効果でうま味を高めあう感じ。一度やってすっかりやみつきになりました。ぜひおためしを!!

 

さて、2016年茨城納豆の旅もそろそろ終わり。取材帰りに常陸大宮市のスーパーに寄ってみたら、なんと……

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納豆用の小粒大豆が売られていました。さすがに自宅で作る人はあまりいないようですが、販売されてるのがすごいですね。思わず買ってしまいましたよ(笑)。

茨城の納豆文化の深さ、厚さ、感じ入りました!

 

【最新情報】
7月10日(日)納豆の日にちなんで、ねばーる納豆レシピコンテスト開催中。最優秀賞は納豆1年分!
お気軽にご参加ください。詳細はこちら

 

お店情報

丸真食品株式会社

住所:茨城県常陸大宮市山方477-1
電話番号:0120ー042ー770
営業時間:9:00〜18:00
定休日:元日のみ
ウェブサイト:https://www.funanatto.co.jp/

※本記事は2016年3月の情報です。

 

執筆・撮影:白央篤司

白央篤司

フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」、郷土料理をメインテーマに執筆をつづける。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。

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コーヒープレゼンター芸人・平岡佐智男を知っているか?【コーヒールンバ】

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昨今のバラエティ番組で目にする「◯◯芸人」。

リアクション芸人、ガンダム芸人、家電芸人など……数多くの「◯◯芸人」たちが混在する中、皆さんはこんな唯一無二の「◯◯芸人」をご存知でしょうか? 

それがコーヒープレゼンター芸人、 平岡佐智男。

 

平岡佐智男(ひらおかさちお)

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松竹芸能所属のお笑いコンビ「コーヒールンバ」として活動。その傍ら、コーヒープレゼンター芸人として自らのカフェイベント「SACHIOPIA COFFEE(サチオピア・コーヒー)」では店主も務める(月に1回程営業、開催)。趣味は全国のコーヒー店を巡ること、特技は利きコーヒーという全身コーヒーまみれの芸人!

 

普段は、松竹芸能所属のお笑いコンビ「コーヒールンバ」としてコント・漫才などを演じている期待の若手お笑い芸人、平岡さん。

なんと、自ら定期的に場所を借りて「SACHIOPIA COFFEE」というカフェ営業も行うというコーヒー熱がハンパないお方!

 

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今回の「SACHIOPIA COFFEE」営業の場は、新代田にある某カフェ。コーヒープレゼンター芸人へのインタビューをお送りします!

 

大手有名コーヒーチェーン店で店長に

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──そもそもですが……なぜ「コーヒー芸人」ではなく「コーヒープレゼンター芸人」なんですか?

 

僕自身、実際にコーヒー店で社員として働いていた経験があるんです。ですので、ただコーヒーが好きなだけでなく“人にも美味しいコーヒーをオススメしたり入れたりできる”という自負から、ちょっと長いですがそう名乗らせてもらっています。

 

──コーヒー店の社員さんから、お笑い芸人になったということですか?

 

正確に言うと、その前に1度芸人をしていて辞めてるんです。その後、当時芸人をしながらアルバイトをしていたコーヒーチェーン店に社員として入社したんですが、気付いたらやることがなくなってしまいまして…(汗)

 

──社員なのにやることがないってどういうことですか!?

 

アルバイト時代にシフトリーダー的なポジションをやっていたのもあって、社員になってから新店舗の店長に任命されたんです。自分も気合いを入れて、時には怒鳴ったりしながら新人スタッフを徹底的に鍛えていったんです。「バリスタマシンのグループヘッドは温めなけれダメだろぉ!!!」とか。その甲斐あってか、いざ店がオープンすると、もう完璧な店が出来上がってしまったんです。

 

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──それって、とても良いことじゃないですか!

 

完璧なだけに、自分は後ろで座っているだけですべてがパーフェクトに回って一日が終わるんです。そこで「オレ、もう必要なくね?」と自分の役目の終わりを感じてしまって。鍛えすぎて自分の居場所がなくなってしまったという……。そんな時に今の相方・西原に声をかけてもらって、またお笑いの世界に戻ることにしたんです。

 

──そこから再出発したということですね。そして今のコンビ名にもコーヒー(「コーヒールンバ」)が入っています

 

事務所(松竹芸能)の先輩に挨拶しにいった時、アメリカザリガニの平井さんに「コーヒー店やったんやったら、お前ら今日から『コーヒールンバ』や!」と急に言われまして。そこで半ば強引にコンビ名が決まりました。普通、若手は先輩のライブの照明係とか受け付け係とかを担当しなければならないのですが、僕はなぜかコーヒー係に任命されまして、色んな先輩芸人の楽屋でコーヒーを入れてましたね。

 

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──楽屋からコーヒー活動がスタートしてたわけですね(笑)。コーヒープレゼンター芸人としては、現在どのような活動を?

 

コーヒー店巡りはもちろん、最近ではバリスタやラテアートの大会の司会などもさせてもらっています。でもやはり今最も力を入れているのは、今日お越しいただいている「SACHIOPIA COFFEE」ですね。

 

世界にひとつの「サチオピア・ブレンド」

「ちょっと今からコーヒーを入れますね」と席を立った平岡さん。店のメニュー「サチオピアブレンド」を飲ませていただけるとのこと。

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もちろん豆もオリジナル。今回は知る人ぞ知る某名カフェさんに特別に焙煎していただいてるんだとか。

 

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慣れた手つきでコーヒー豆をコーヒーミル(豆を砕く機械)へ。

 

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 サーバーにお湯を注ぐ。敷いてあるペーパーをあらかじめ濡らしておくと、一番おいしい最初の1滴目がペーパーに吸い取られてしまわずに済むんだとか。

 

さすがの豆知識や手つきに見とれているうちに、お待ちかねの「サチオピアブレンド」が完成。

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……これは美味しい!

リンゴやキャラメルを思わせるフレーバー、フローラルでずっと続く甘い余韻が特徴。

ブラックコーヒーが苦手な筆者もそのまま楽しめる味。ちなみにこれで1杯500円とのこと。安っ!!!

 

フード&スイーツもチョー本格的

そして、「ご一緒にどうぞ」と差し出されたのが……

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こちらもお手製の野菜たっぷりキーマカレー(800円)。

セロリやヨーグルトが入ったキーマカレーにブロッコリーのタルタルソース和えが添えられている。コーヒーとの相性もバツグン。

 

あっというまにカレーをたいらげ、コーヒーとのコンビネーションの余韻に浸っていると…

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デザートに手づくりパンナコッタ(500円)が!

かかっているカラメルソースは、先のサチオピアブレンドのコーヒーとレモンで作っているとのこと。

 

そして……

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自家製カスタードのバナナクリームパイ(500円)

でかい! かなりボリューミーだが、ほどよい甘さであっというまに完食。

 

初心者でも出来る! コーヒーを美味しく飲むための5箇条

そんなこんなで「SACHIOPIA COFFEE」のメニューを堪能した筆者。平岡さん自身も開店前の準備が落ち着いたようなので、ここでちょっとコーヒーブレイク(?)。コーヒー初心者の筆者でも出来る簡単な「豆」知識を聞いてみることに。

 

その①:インスタントコーヒーは、まず水でよく練るべし!

実はインスタント製品にも美味しい飲み方があるんです。
カップにインスタントコーヒーを入れたら、そこにスプーン1杯分の「水」を入れ、練ってなめらかになってからお湯を注いで下さい。
溶け残りを防ぐこともでき、コクのあるコーヒーが出来上がりますよ。

 

その②:ミルクと砂糖は、入れる順番を間違えるな!

コーヒーを頼んだ時に必ずと言っていいほどついてくるミルクと砂糖。これにも入れる順番があります。
ホットの場合は、必ず砂糖→ミルクの順で入れて下さい。これが甘さの偏りなく飲むための順番です。ミルクを先に入れるとコーヒーの温度が下がってしまい、後から入れる砂糖が溶けにくくなってしまうんです。

 

その③:コーヒーの容器のフタは外さずに飲むべし!

よく目にする穴のあいたフタ付きカップ。わざわざフタをして穴を開けてあるのには、意味があるんです。
例えばカフェラテなどの場合、フタを外して飲むと、中のミルクとエスプレッソが混ざり合わずに口に入ってしまうんですが、フタ付きカップの穴から飲むと、両者がバランスよく出てきて美味しく味を楽しむことが出来ます。

 

その④:コーヒー豆の長期保存は冷凍庫で!

コーヒー豆は、果実などと同じ生鮮食品です。なので、すぐに飲まれるなら常温保存で良いのですが、長期保存する場合は冷凍庫をオススメします。
冷蔵庫で保存する方もいますが、この方法だとコーヒーが持つ脱臭作用によって、冷蔵庫内のニオイがコーヒーに移ってしまうデメリットがあるんです。

 

その⑤:沸騰したお湯は少し冷ましてから入れるべし!

コーヒーを入れる際、お湯の温度が高すぎると、苦味成分が出やすくなってしまうんです。
したがってまずお湯が沸騰したら少し時間を置いて入れ始めてください。豆の種類にもよりますが、個人的には85℃ 前後がオススメです。

 

さすがはコーヒープレゼンター芸人!

ナルホドづくしな「豆」知識に関心していると、「SACHIOPIA COFFEE」が開店する時間に……。

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開店するやいなや、瞬く間に店は満席に。注文を取ったりコーヒードリップにと、かなりお忙しそうな平岡さん。その表情は、まさにガチのコーヒー店員さんそのもの!

 

居場所の無くなった我々は、しばらくその様子を見届け、退散することにしました。

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コーヒープレゼンター芸人が本気で入れるオリジナルコーヒー。あなたもぜひ「SACHIOPIA COFFEE」で堪能してみては?

 

SACHIOPIA COFFEE」関連情報は以下のリンクで!

 

書いた人:石田ケント

石田ケント

1988年生の放送作家。法政大学卒業後、独学・フリーで活動開始。考案した番組に日本テレビ「言わせろ!リアクションワード」「超年の差バトル! 神童 VS 老神」「衝動に負けましたSP」「なれそめザペアレンツ」など。日本テレビやTOKYO MXの番組の企画・構成、コント脚本を中心に活動中。担当レギュラー番組等はTwitterをご覧下さい。

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【姫乃たま】奥渋「SONE BAR」で考える“マルチな才能”とは【今夜もヒミツ酒:7軒目】

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誰にでも秘密はあります。たとえば、故郷などないような顔をしている酒場の人たちにも、きっと。おいしいごはんとお酒に緩んだ、その口元から溢れる、あなたの秘密を教えてくれませんか。

 

日替わりマスターの店「SONEBAR(ソネバー)」

前々から気になる飲食店ばかりが軒を連ねていた通りに、いつの間にか「奥渋(おくしぶ)」なる名前が付いていました。渋谷東急本店を駅から離れるように奥へ。

ついさっき外国人観光客とギャルカップルのための殿堂、ドン・キホーテを通過したばかりとは思えない、しっとりとした賑わいに満ちています。

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老舗の人間は「あそこのお店、ランチで奥渋カレーなんて出しちゃって、商魂たくましいというかなんというか」と笑います。曖昧な笑顔に、商店街を感じました。

 

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奥渋の真ん中あたりでピンクの看板を見つけたら4階の「SONEBAR」へ。

ちょっとクローズドな雰囲気。これが隠れ家というもの?

 

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このお店では、様々な本職を持つマスター達が、日替わりで出迎えてくれます。火曜日のマスターは、俳優・パフォーマーの「けーすけ」さんだと聞いていたのですが、扉越しにのぞくと、あれ? 誰かいますね……。

 

この方が、けーすけさんかな?

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ネット記事的なおとぼけを済ませて、着席。

 

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はい、この方が今夜のマスター、けーすけさん。 毎週火曜日の夜限定でお店に立っています。さっきのワンコは、彼の相棒のマンゴーちゃん。

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カウンター、広めのソファー、そして背の低いテーブルが置かれた店内には、日替わりマスター達が、それぞれ持ち込んだであろうポスターやオーナメントが、それぞれの場所で落ち着いていました。

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カウンターの中で働くけーすけさんを愛犬のマンゴーちゃんがソファーから見守ります。

 

パトカー運転手役で大暴走したデビュー作

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――あ、はじめまして、地下アイドルの姫乃たまです。アイドルと言いつつ、今日みたいにライターとして取材したり、いろいろやりながら、フリーランスで活動してます。けーすけさんは俳優だとうかがっていたのですが、ツイッター(@k_suket)を見ていると、なんだか毎日違う仕事をしていらっしゃるので、勝手に親近感を抱いておりまして……あはは。あの、肩書きってどうしていますか?

 

けーすけさん(以下敬称略):元々「せーじ・けーすけ」っていう漫才コンビで、1990年にデビューしたので漫才師だったんですよ。事務所が渡辺プロ(渡辺プロダクション)でなまじ大きいもんで、最初から俳優とか声優の仕事もさせてもらえてたね。ただ3年くらい前にコンビが解散して以降はピンなんで、いまの活動としては俳優が多いかな。

 

――そのコンビ名からして……元相方は、せーじさん! いまどうしてるんですか?

 

けーすけ:そうそう、せーじ。いまはバルーンアーティストやってます。僕もやってるんだけど。だから肩書きは、俳優と声優とバルーンアーティストとMCと歌手と、ペット・トリマーアシスタントもやってて、あ、あとここのバー店主と……

 

――あわわわ、ありがとうございます、ありがとうございます……多いなあ!!(笑) ありがちな質問ですけど、俳優業デビューのきっかけはなんだったんですか?

 

けーすけ:当時のマネージャーさんに神戸の劇団に所属してたって言ったら、けーすけは演技できるんだねってことになって。事務所が大きいので、吉田栄作さんの、いわゆるバーターでね、映画『代打教師 秋葉、真剣です!』(1991年)に警官役でデビューしました。監督は亡くなりはったけど、那須博之さん。ビー・バップと同じで、渋谷の本物のチーマーが出演してて、パラララ~♪ってバイクで来て、また撮影終わるとパラララ~♪って帰って行く。また那須監督って向こう見ずというかトッポイ人でね、「けー(低い声)」って僕のこと呼んでくれるんだけど「けー、パトカー運転できるか?(低い声)」って言われて、「できます!!」って即答して。

 

――あれ、スタントの経験ないのに、いいんですか?

 

けーすけ:そりゃもううれしいから! 監督に声かけられてね。免許持ってるし、いけるやろって気持ちで。何回かテストした後、本番前に監督が来て、「けー、そこのカーブでブレーキ踏むなよ……パトカーがブレーキランプ点けたらダサいだろ……(低い声)」って。助手席の俳優さんは本気にしてなかったみたいで「ブレーキ! ブレーキイィィ!」って叫んでたけど、アクセル全開でカーブ曲がったら監督にほめられてねえ。でもその撮影、あまりに危険で、午後にプロのスタントマンが事故りはって。その直後、事務所の人からはめっちゃ怒られたわ。「運転はスタントマンの仕事なんだから!」って。ただ、それを見てたマネジャーさんは、上司から「だったらお前が現場付いてけえ!」って二重で怒られてた(笑)。

 

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助手席で叫んでいた俳優さんを笑いながら再現中

 

――わははは、このしっかり落としてくる感じに、元漫才師を感じます……! 青春映画の仕事が多かったんですか?

 

けーすけ:女の子は知らんと思うけど、映画『湘南爆走族』に地獄の軍団って出てくるでしょう。その中の瀬島渉の役もやってたよ。赤い字で「呪」って書いてあるマスク付けて……。

 

――(一同ネット検索で写真を見て)わはははは、本当だ!! 「呪」って書いてある!

 

アキバのアイドルイベントでは「売れっ子MC」に

――秋葉原の電気店って週末にグラビアアイドルのDVD発売イベントやるじゃないですか。けーすけさんはああいうイベントで司会もされていますよね。一時期MCで引っ張りだこだったと聞いてますよ。

 

けーすけ:真鍋かをりちゃんの最後のイベントでMCやったの僕ですよ。安田美沙子ちゃんの初めてのイベントも僕。自慢です。いまはMCの仕事だいぶ減ったけどね。ソフマップ、石丸電気、LAOX……ピークの時は土日で8本! 1本だいたい2時間だから、週末は秋葉原だけで16時間も働いてた。

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――下手したらアイドルより働いてますね(笑)。

 

けーすけ:ほら、あの秋葉原の事件あったやん。ソフマップの前の道路で車突っ込んだ悲惨な事件ね。僕、あの日はたまたま早い時間空いてたんやけど、いつもなら丁度あの時間に渡ってたんよね。いろんな人が心配して電話かけてきて。でもその日の午後はイベントがあったから、すぐ後に警察がいる事件現場渡ってソフマップに行って。お客さんもちらほら来てたけど、こんな日に何やってんのかなあって。あと、昔あった「ヤマギワソフト」って知ってる?

 

――うーん、知らないですね。ソフマップみたいなお店ですか?

 

けーすけ:そうそう。あそこでもイベントやってたんやけど、ある日、前日にバラしになったことがあって、それはさすがにあかんでって言ったら、「会場が火事になっちゃったんです……」って電話が。それはしょうがないなと。で後日、延期になったDVDのイベントを改めてやったんやけど、タイトルが「BURN」やってん。堀口としみちゃんの『BODY BURN』。あれはいまでも忘れられない。

 

――ちょっと、それは話が出来すぎじゃないですか……!

 

亡き先代オーナーは伝説のDJ

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――ところで「SONE BAR」ってどうしてマスターが日替わりなんですか?

 

けーすけ:先代オーナーの曽根さんが、飲みすぎで店をたたむことにした時に、いまのオーナーが引き継いだんだけど、最初はふたりで店をまわせないから、仲間の常連さん達が手伝ってて、その時の名残なんでしょうね。

 

――けーすけさんは先代の時からいらっしゃるんですか?

 

けーすけ:いや、僕はいまのオーナーになってすぐ。なので7年前からかな。この仕事始めるまで、お酒はほとんど飲めなかった。

 

――へえー、意外!

 

けーすけ:飲めないし、まったく知らないから、お客さんにハーフ&ハーフって言われて、「……すいません、なんのハーフですか?」って聞いちゃって「何言ってんねん、ビールと黒ビールや!」って呆れられて、厨房入ってからやっと黒ビールがないことに気がつくようなレベルやったわ。

 

――ははは、すごく勉強されたんですね。

 

けーすけ:もうほんとに基礎的なところからね。でも「モスコミュール」とか「スクリュードライバー」とか、カクテルの名前ってなんでこんなんなのかなあって気になり始めてから面白くなったなぁ。

 

――じゃあ、せっかくなのでカクテルを飲みます……!

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けーすけさんがカクテルを作り始めると、この連載のカメラマンである沼田学さんが何かに気が付きました。

 

沼田学(以下、沼田):なんか、レコードたくさんありますね。けーすけさん音楽好きなんですか?

 

けーすけ:いや、僕はそっち方面よくわからないのよ。サマソニってのも知らんくて、僕はてっきり埼玉のソニックシティでやるからサマソニやと思っててん!

 

沼田:えー、あれ、「SONEBAR」のSONEって……もしかしてDJ曽根さん?

 

けーすけ:そうそう! へえ、やっぱり音楽好きの人には有名なんだ! なんかうれしいなあ。

 

沼田:ほげえええええええ!!!

 

もう一度、えっ、と驚いてしばらく硬直した沼田さんは、えっえっえっ、とさらに驚き、曽根さんのMIX CDを聴いていたこと、いかに曽根さんがすごいDJだったかを話し始め、リキュールをシガーカップに注ぐけーすけさんが「イベントのチラシ、トイレに飾ってあるよ〜」と言い終わる前には、トイレに向かって駆けだしていました。

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トイレには、レジェンドDJゆかりのフライヤーが

 

ジントニックからは、器用で凝り性なけーすけさんらしい味がしました。

 

先代のDJ曽根さんがどれだけすごかったかは、沼田さんに3回くらい教えてもらいました。「道ばたで会うといつも酔っ払っていたけど、生前から天使のような優しいおじさんだった」とは、けーすけさんの言葉。3年前に逝去された曽根さんは、本当に天使になったのかもしれません。

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同じビルの2階、おでん屋「まめひろ」から、休憩時に一杯だけ飲みに来た店長さんと乾杯

 

けーすけさんの秘密。大物芸能人のスタイリングを勝手に……

――そうだ、この連載、こっそりヒミツを教えてもらう連載なんですよ。すっかり忘れていたので、無粋にもほどがありますが、何かヒミツを教えてください……!

 

けー すけ:僕ね、渡辺プロの頃、N・Hさんの付き人を一時期だけやってたんだけど、当時N・Hさんが14本とかレギュラー持ってる頃でめっちゃ忙しくて。今でも大物やけどね。で、彼のスタイリストさんがまだそんなに売れてなかったN君(現在は超有名ファッションデザイナー)やってん。それでも当時から忙しい人やったから、14本分の衣装を一気にドサッと預かるのね。それで僕がスケッチブックと照らし合わせて、番組ごとにN・Hさんに渡すんやけど、よーわからんねん。衣装っていっても14のスタイリング、そんなに大差あるわけじゃないからね。赤いチェックのシャツっていっても、同じようなのが何枚もあるような有り様で。

いま時効やから言えるけど、だんだんどれでもいいような気がしてきて、僕がテッキトーに渡してた。だからあの当時のスタイリングは半分くらい僕やね。そもそもスタイリング放棄してるけど。わははは。

 

――わはははははは! これ書いていいのかしら。私も結構いろんな活動をしているんですけど、肩書きが多くてよかったことってありますか?

 

けーすけ:フットワークが軽くなるのはいいかなって思う。ピエロになって子どもたちにバルーンアート作って、スーツに着替えてグラビアアイドルの司会やって、ちょっとお色気系のVシネマに出たり……とか、そういう日があるのは面白いね。N・Hさんの付き人をしていた時、「みんな僕に何屋さんって聞くけど、それは世間が決めることで、僕は現場に合わせた職業になる」って言ってた。あれ、いま考えたら名言やなーって思う。

 

――私も時々何をしている人なのかわからないと言われるので、その名言を思い出すことにします。

 

けーすけ:俳優って究極のコスプレイヤーやと思うねん。アメリカだと映画の俳優は映画、CMはCMっていうふうに活動領域が限られているのが普通やけど、日本の芸能界はボーダーレスだし、ある意味でそこが醍醐味やろ。いろんな仕事して楽しんだ方がええと思うで。

 

私の目を見ながら真剣に話すけーすけさんは、手元の乾き物を思い切りカウンターにばらまきました。

 

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落ちた乾き物を悩ましく見つめ、自分で食べ始めたけーすけさんを、ソファからマンゴーちゃんと、オーナーのacoさんが見守っていました。

明日、けーすけさんは、acoさんが先生をしているベリーダンス教室の発表会で、司会をするそうです。

 

今夜の一品

けーすけさんのジントニック(800円)

お酒はほとんど飲めなかったというけーすけさんが、猛勉強の末、持ち前の器用さと凝り性を発揮して作ってくれます。

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今夜のお店

SONEBAR(ソネバー)

住所:東京渋谷区神山町17-1 第2渡辺ビル4F
電話番号:03-3465-4841
営業時間:21:00~5:00(日によって異なる場合もあります)
ウェブサイト:http://sonebar.jimdo.com/

 

書いた人:姫乃たま

姫乃たま

1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。16才よりフリーランスで地下アイドル活動を始め、ライブイベントへの出演を軸足に置きながら、文筆業も営む。そのほか司会、DJとしても活動。フルアルバムに『僕とジョルジュ』があり、著書に『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)があ る。

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UFOや「超能力者」ユリ・ゲラーなど、たくさんの超常現象番組を作った伝説のディレクター矢追純一氏へのインタビュー【後編】!

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12歳のときから思ったことがその通りになるとはどういうことか。それは満州生まれの矢追純一氏が10歳のときに終戦を迎えたときのお話になった。

 

世の中ひっくり返ったなかに2年いた

「ものすごい長い話になるんだけどね。本を読んでもらうほうがいいんだけど。いま本屋さんに並んでいる『ヤオイズム(三五館)』という本にも書いてあります。父親が日本の建設省の役人をしてて、満州に出向してそこで生まれたんです。僕と妹ふたりの3人ですね」

 

「そこでけっこう豪勢な暮らしをしてたんだけど、ある日突然玉音放送があって、日本が負けましたと。使用人の中国人がふらっと現れて“お前らは負けた、うちらは勝った。ここはお前らの土地じゃないから今すぐ出て行け”と、着の身着のままでうちから放り出されて。日本人はみんなそういう生活になったわけ。みんないいところのお嬢さん奥さんだから生きてく術がないじゃん。みんな苦労したし。子供を中国人に預けた人もいれば、身を売らなきゃいけなかった人もいたし、餓死した人もいた」

 

「そういう、世の中がひっくり返ったなかに2年間いたわけだよ。まわり全部敵だからさ。日本人以外は敵。昨日敵だから今日も敵ってやつで」

 

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「うちのおふくろは何歳であろうとぜんぶ平等に扱う人なんです。親父は終戦の1年前に死んでしまったんですね。急病で。親子4人で暮らしてたところに晴天の霹靂がきた。母親は贅沢しか知らないような人だったんですけど、終戦の日を境に人間がガラッと変わりまして。放り出されたその日にどっかから部屋を借りてきて、君たちここに座んなさいってね」

 

「昨日までは坊っちゃん嬢ちゃんだったかもしれないけど、今日からはホームレス。お母さんは自分で食べていくのが精一杯だから、君たちの面倒は見られないからそのつもりで、と言い渡されまして。で、ホントになんにもやってくれないんですよ」

 

──終戦のタイミングに、日本国内ではなく満州にいらっしゃったのですね。

「そうです。それで、“これを売ってこい”と、かろうじて持ち出した着物を俺に渡して。売ってきなさいったってどこで? みたいな(笑)。でも、泣いてもなんでも絶対に家に入れてくれない。しょうがないから道端に立って。日本語しかできないんだけど、通りすがりのアメリカの兵隊とかロシアの兵隊とかに“どうですか”というところから始まり、だんだん人間らしくなってきたわけ。その前は俺は人間失格だったから。学校にも行かないし、身体が弱いからしょっちゅう入院してたし。対人恐怖症でしたし」

 

「でもそういう経験のおかげで、ちょっとはたくましくなって。いろんな人とケンカしなきゃいけない。盗られないようにがんばらないといけないしね(笑)」

 

「それから2年後に、やっと最後の引揚げ船に乗って帰ってきたんだけど、それまでの間にいっぱい人が死んだ。たぶん、あなた達が想像してる状況とはぜんぜん違うと思うよ。本で読んで、わかってるつもりになってるのとは」

 

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「とにかくそこで悟ったんですよ。物とか金とか地位とか名誉とか財産というものは、一夜にして消えるものだから、信頼を置く必要はない。そんなものはいらねえと。命だけでも助かってきたのはすごいじゃないかと。そうなったときに、物欲とか金欲とか名誉欲とかプライドとか、命に対する欲も無くなったのね」

 

──そういった経験をされて、食に対する欲望はどうですか。 

「食欲はすごくあるよ。でも子供の時の空腹感というものではない。不思議と。目の前にあれば食うけど、なければないで仕方ないじゃんって。1日3食食わなきゃいけないって間違った迷信がいまでも流行ってるけど(笑)、あんなもんウソで。1食でも足りるわけだし。そういう義務感だか、決められたことに従おうという“ヒラ社員根性”を直さないと(笑)」

 

身分的にはどうあれ、本人がどういう根性なのかが大事

「ヒラ社員根性で生きているから、みんな苦労するし精神的にも安定しないわけ。でもよく考えてみたら、世の中も株式会社みたいにできているわけで。社長はヒラ社員たちに本当のことは言わないで秘密にしといて、ヒラ社員はがんばれ、一生懸命に、努力、根性、間違ったことをするな、正しいことをしろ、悪い道に行くな。まじめにやれ……なんだかわけがわからないですよ(笑)。なにをもって正しいか正しくないかも、決まってないじゃない。これみんなヒラ社員への教育だよね。社長はそんなことは考えてないもんね。それを“常識”というのね」

 

「みんなそういう親に育てられているので、それが頭にこびりついてて、なんか食わないと大変なことになりそうな気がして、食うためには働かないと大変だぞって話になって。ずっと強迫観念で生きているわけですよ。でもそれは“ヒラ社員根性”だから」

 

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「身分的にはどうあれ、本人がどういう根性なのかが大事なんじゃないの。いろんなものに縛られるのは、それは制約としてはしょうがないのね。浮世の義理というんだけどね。それは適当に流して、自分がどういうふうに生きていくかが決まってないとダメですね。僕は、自分が思ったことはぜんぶその通りになるからなにもしないんですよ。勉強もしないし、努力もしないし、まじめじゃないです」

 

「うちの母親は勉強すると怒る人だったので。男は身体を鍛えなきゃダメだからうちの中でウジウジ勉強してんじゃねえと。明日試験だから勉強してるんだと言ったら、“試験だから勉強しないといけないってことは学校でサボってるに違いないから、そんな学校行かせない”って言われちゃう。うちの中にいると怒られるので一日中外で遊んでないといけない。晩飯食ったらまた行かないといけない。だから、いまだに勉強とかゲームとか一切できないです。トランプも無理」

 

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──原体験の中で思い出に残る食べものってありますか。

「そんな特別なもの、思いつかないね(笑)。引揚げ船で帰ってきたときに佐世保に着いたんだけど、上陸許可までに何日もかかって、そこで完全殺菌されるわけですよ。DDT(※)で。上陸して、引揚げ者の一時的な避難所みたいなところに入って。そのときに初めて、ふかふかの中華まんじゅうをくれたんです。ひとり1個ずつ。これはうまかったね。それまで大変だったからね」

※DDT:太平洋戦争直後、シラミ対策などの目的で米軍により持ち込まれ、使用された殺虫剤。頭髪や全身に噴霧された。発がん性物質のため現在は使用禁止。

 

「みんなそうなんだけど。日本にいた人はいた人で大変だったと思うんですよ。東京大空襲とか原爆とかあったからね。外地にいた俺たちみたいなのは、これはまた大変だったわけですよね。だから、命があるだけでも奇跡なんだよね

 

方針だけ決めて『なにか目に見えないもの』にお任せする

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「うちはもっと奇跡で、母親がすごいから食うものに困ったことない。毎日、白い飯で肉を食ってた。そのかわり4歳の妹も働かされて。そういう生活があったから今日の僕があるわけですけども、怖いものがまずないんですよね。命もいらないから」

 

「“命だけはどうぞお助け”ってみんな思ってるけど、それは無理だって。だいたい自分がいつ死ぬか分かってないやつが“命だけは”って、それは無理でしょって。歩道を歩いたって後ろから轢かれちゃう時代だからね(笑)。んなものどこ行ったってすぐ死ぬよ。いまここで突然脳になにか詰まっても死ぬわけだからね、脳溢血かなんかで。若いからって安心してられないじゃない。自分がいつ死ぬか分からないのに、命だけはお助けをってのは無駄でしょって思う。その1個の執着をなくすと、思ったことがその通りになるわけ。そんなものに執着してるからダメなわけで」

 

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──UFOや不思議な事に興味が湧いてきたのはなにかきっかけがあるんですか。

「興味なんて、ぜんぜんないです。いまもないです」

 

──そうなんですか!? とても意外です。

「そんなに特別にそれだけに興味を持つってのも変な話でね。人間はもっといろんなことをやるじゃないですか。まあ趣味でマッチ箱を集めるのに一生懸命って人もいるわけでさ。それはそれで結構なことなんだけど。僕は何ひとつ趣味はないし、これが好きだとか、これをやらなきゃとかいうことも一切ないので」

 

「自分がやりたいことしかやらない。自分からなにかやろうとは思わない。呼ばれるとしょうがないから行くみたいな。しょうがないというと語弊がありますけども。僕自身がなにかを選ぶのは無理だと思ってるんですよ。それほど頭良くないから。

みなさんはきっと自分が頭いいと思うから自分の才覚で生きていこうと思うんでしょ。えらいなと思うんですけど、自分の才覚で生きていこうと思ったら、そりゃ無理だと。自分の脳をパソコンだとすると、その脳はね、大したパソコンじゃないじゃないですか。大した体験もしてないのでほとんどのことがわかってないじゃないですか。知識もこんなに狭められた中で、知ったかぶりしてわかった気になってるだけであってね(笑)。日本の中で上から数えたら自分は何番目かって、そりゃ絶対下から数えたほうが早いでしょってレベルなわけじゃないですか。そいつが自分の才覚で生きていくったってそれは無理です。東大に入って、財務省に入ってって、そういう計算でやってもなかなかそうは簡単にいかないのは、基本的に人間は頭が悪いからですよ」

 

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「どうやって生きていくかっていう計算をやめて、自分のおおまかな方針だけ決めて、あとはお任せする。“なにか目に見えないもの”にお任せする」

 

「それは神さまとかじゃあないよ。なんだかわからないけど、目に見えない流れですね。世界の流れ、宇宙の流れ。そういう流れの中に乗ればいいのであって。その流れの中で必死に泳いで、俺はこっち行くったってそれは無理でしょって。まず第一に、どの人もみんな生きていく上での方針が決まってないんだよね。死ぬまで生きていくんだからさ。こういう方針でいこうかなってのがないんだよ。だから自信がないわけ。つい他人のほうに目が行っちゃうわけ。ひとはどうだろう、俺はこれでいいんだろうか。それはひとが決めるんじゃなくて、あんたが決めることでしょって。ぜんぶ他人任せになっちゃうんだよ。自信がないから。そうすると女性にもモテないんだ(笑)」

 

とっておきのバーを教えてあげる

親の教えで白米はあまり食べない、そもそも食べることに執着もないというが、お酒の席ではかなり食べる方だという。

 

「そんなに大量には食べないと俺が言うと、矢追さん、ものすごく食べてますよって言われるんだけど、酒飲んだときは食べるのね。お酒は、酒だけでは絶対飲めないんですよ。なにか食べるものがあって飲むので。たとえば中華なら日本酒は合わないから、ビールか紹興酒でしょ。そういうふうに食べるもので飲む酒が決まるんです。飲んで食って飲んで食ってってやってるもんだからここまで入ったら(喉元に手をやる)終わりになるわけね(笑)。基本的にそんなに飲まないし、食べる量も多くない。そのかわり、うまいものを食べたい」

 

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──好物はありますか。

「そんなのはないです。おいしければなんでもいい。ありがたいことにいろんな食べ物が世の中にあるんでね。とくに東京はね」

 

「おいしいものを安く食べたい。高くておいしいものはいくらでもあるから。だいたい高いものっておいしくないんだよね、基本的に。高いってことは格好つけてるわけですから、“格好代”が高いわけです。“俳優のどなたさんがおいでになりました”とかさ。庶民的なところで、なおかつおいしいところはけっこういっぱい知ってます。私は勘がいいですからね。そこははずさないです」

 

──ピンとくるわけですね。

「餃子はね、代々木の駅前の店が並んでるとこで。餃子屋やラーメン屋が3軒くらい並んでるんで間違えて入らないようにしないといけないんだけど。でっかい餃子 さんの店と書いてあるところ。ここは中国人がやってて、目の前で皮から作ってるんです。ここの餃子はおすすめします」

 

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「あ、そうだ。とっておきのバーを教えてあげる。新宿の新南口、階段降りたとこそのまま行って、線路沿いにちょっと行った左側のビルの5階なんですよ。『JazzBarサムライ』と書いてあるけど俺たちは“猫屋敷”と呼んでるのよ。サムライとまったく関係ないのよ。古めかしい扉を開けると、たぶんみんなびっくりするねえ」

 

「猫屋敷って呼ぶ理由は、猫の置物がいっぱいあるの。壁際に何百個とあって。とにかく怪しげな屋敷って感じなのよ。大きな猫の置物があったり、呪文が書いてある掛け軸があったり、提灯の中に仏様があるようなのがあったり、ありとあらゆる変なものがいっぱいあるわけ。これはまず入ったときに“おおっ”となりますよ。店内にはジャズがかかってて。これは俺の好きなとこなんですけど、最近なかなかジャズがかかってるバーってないんですよ。ほとんどのやつが耳が悪いんで、音楽を聴くためにバーに行かないんですね。いい音を出すのはジャズバーくらいなんですけど、ジャズバー自体があんまりないんですよね。なんか得体のしれないBGMをそれとなくかけてて、誰も聴いてないみたいなとこが多くて(笑)」

 

──謎めいているお店ですね。

「その店はジャズがかかっていて、親父が髭をたくわえてて、なんかちょっと変わってる感じなんですね。客には一切関わらないという方針なのか、いらっしゃいくらいは言うけど、あとは勝手なとこに座れって感じですよ。で、注文すら取りに来ません。こっちから呼ばないと来ない。なにやってても干渉しないからすごく楽なんですよね」

 

「しかもすごいかわいい女の子がいて。これが店主の娘さんらしいんだけど。めちゃくちゃ親孝行な娘だと思ってさ。たぶんまだ20代前半か、ひょっとしたら学生かもしれないんだけどさ。すごいかわいい、美人なわけ。この子が手伝いに来てるのね。お給料もらってないのね。その……怪しげなバーに手伝いに来るところが、えらいなと思ってさ。親孝行だねーって言うんだけどさ。その子も一切しゃべらないし。行ったほうがいいよ。安いし。いつまでいても文句言わないし。そこでたとえばミーティングとか会社の打ち合わせをやるといいと思うよ。けっこう座れると思うな。20人くらいは。とにかく居心地がいいから居着いちゃうよ」

 

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きっと本当に、とっておきのバーなのであろう。

 

我々にそのバーの話をする矢追純一氏は、楽しそうに、そして自慢げに語るのであった。皆さんもちょっと行ってみたくなりませんか。あの矢追さんがお勧めする、ちょっと怪しい、猫屋敷のようなそのバーに。

矢追純一氏・近著『ヤオイズム』(三五館)絶賛発売中。

 

参考情報

 

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。好きな立教OBは中島かずき。

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【小鳥遊しほ】タメ口に照れる独身デザイナーのお宅で、鶏もも照り焼きをふるまいます

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イラストレーターにフードコーディネーター、コラムニスト、そしてモデルとして超マルチに活躍する小鳥遊しほが、世の悩める人々のために自ら家へ足を運び、料理を作り、ややナナメ上から人生相談にまで乗ってしまう企画。

人の数だけ悩みはある。悩んでいても腹は減る。小鳥遊しほは、人類にとって永遠のテーマともいうべきその2つの問題を、同時に解決いたします!

 

小鳥遊しほのメシ付き人生相談
第2回:タメ口に照れる独身デザイナーのお宅で、鶏もも照り焼きをふるまいます。

こんにちわ。小鳥遊しほです。

さぁ、やって参りました「メシ付き人生相談」第2です!

やったー、やったー!

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前回は、独身男性3人暮らしのシェアハウスという無縁の地へ足を踏み入れたわけですが、今回はいったいどんなお宅が待っているのでしょうか。わくわくすること山の如しです!

 

本日の舞台はココ。

 

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ボケてて読めませんね。

 

小田急線で新宿から約15分。

スーパーや飲食店も多くとても住みやすい街、そう「経堂」です。

私も昔、下北沢に住んでいたので小田急線大好きです! このまま私を箱根まで運んでほしいです! いますぐ温泉につかりたいです!

  

さて働きます。

 

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駅前のスーパーで買い物を済ませ、男性宅へ。

今日は旬の食材を使ったお酒がすすむくんメシにしようと思います。

 

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ビールもばっちり買いました。足りるかなぁ。

 

てくてくすること数分。

 

本日の訪問先発見 

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渋めのアパートです。

ネギを片手にクールなポーズをキメてみる。

 

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さぁ、ドキドキのピンポン。

 

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ピーンポーン。

 

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ガチャ。

 

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「あっ。はじめまして、こんばんは。今日はよろしくお願いします」

 

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ちらっ……。

 

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「……」

 

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こわい!

笑えー! 笑ってくれーーー! 頼むーーーー!

 

本日の家主は、ゆうきくん26歳。私より1歳年下です。

笑顔で迎えてはくれなかったけど、企画に参加してくれたからには多分いい人だと思う。多分。

 

ひとまずお部屋に通してもらいました。

 

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めっちゃダンボール。

めっちゃ0123。

どうやら引っ越し後なのだとか。

あ、ごめんね。バタついてるとこ……。

 

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「いつ越してきたんですか?」

 

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「えーっと3カ月前とかですねー」

 

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(……半年後もこのままだろうなー( ^ω^ ))

 

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やたらとモフモフしたぬいぐるみが。

愛媛今治市のPRキャラクター、バリィさん(左)が好きなんだそうです。

 

デザイナーになりたくて上京

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「ゆうきくんは何をしてる人なんですか?」

 

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「デザイナーです」

 

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「かっこいい。なんでデザイナーに?」

 

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「小さいころからの夢だったんです。就活で悩んだり、紆余曲折あったけどなんとか実現できました」

 

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小さいころからの夢を、実際に叶えるってすごいことだと思う。

 

さっそく調理タイム

本日の食材はこちら!

 

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旬のカツオに春キャベツ。

さてどんな料理になるでしょう。

 

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エプロンもつけて、準備ばっちり!

 

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「あ、好きと聞いてたカツオ買ってきました」

 

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「やったーーー!」

 

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わかりやすく喜んでくれました。かわいい。

(好き嫌いは事前にアンケートをとっています。)

 

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包丁を握ると人が変わる

……なんてことはないですが、包丁を持ったら緊張感も持ちます。

手を切ると、痛いからです。

 

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鳥もも肉は余分な脂をとりのぞきます。

 

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玉ねぎは涙で前が見えなくなります。

 

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手元をのぞかれるのは、そこそこ緊張する。

いつもより下手な切り方になるのでやめてほしい。でも本当はうれしい。

 

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じゅーーー。

 

じゅわーーーー。

 

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料理が出来上がっていくうちに、ある大きな問題に気づきます。

 

テーブルがない

 

そうか、そういうおうちもあるか。

適当に床とかで食べるのか。

でもなー。今日は料理4品もあるんだよなー。さすがになー……。

 

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「任せてください!」

 

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え? 折りたたみ式のなにか出てくるの?

 

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まさか

 

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「じゃーーーん!」

 

こっこれは、必殺ダンボールテーブルやーー( ^ω^ )(引越し後あるある)

無事テーブルも用意されたので料理を運びます。

 

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お通しの味噌キャベツでーす。

 

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カツオとキムチのユッケでーす!

 

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枝豆と塩昆布のまぜごはんに

 

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たっぷり九条ネギの鶏もも照り焼き(春関係ないけど食べたかった)

 

ビールのこと考えてたら塩分高めなメニューになってしまったが、まぁそんな日もアリでしょ。

 

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さてさて、ひとまず乾杯します。

 

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「カンパーーーーイ」

 

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「くーーーーーー!」

 

わかる、わかるよーー!!

 

今日もがんばってよかった!

生まれてきてよかった! 大人になってよかった!

うぉー! お母さんありがとーーーーー!!

(という瞬間の顔ですね。)

 

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さて、最初のひとくちを食べてもらうこのハラハラする瞬間たるや。

 

ドキドキ。 

 

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「んんっ……?」

 

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「おぉっ! うまい! 普通にうまいっ!」

 

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やったーーーー! (「普通に」は余計だけどー!)」

 

お悩み相談開始

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「ところで早速なんですけど、聞いてほしい悩みがあるんです」

 

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「はい、なんでしょう。私でよければ」

 

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人とのコミュニケーションがうまく取れなくて

 

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「ほう、コミュニケーション?」

 

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「そうですね、例えばタメ口の使い方がわからないんです」

 

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「使い方……?」

 

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「小鳥遊さんや上司に敬語なのは当たり前じゃないですか。でもボク、同僚とか年下とか新卒の子とかにまで敬語になっちゃって変な目で見られるんですよ……

 

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「えっ、なんで(笑)」

 

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「ボク的にはその方がラクというのか、自然というのか……。でもきっと人によっては壁を感じますよね」 

 

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「ん〜、まぁ確かに失礼には当たらないけど、変といえば変だね」

 

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「ですよね。男女問わずそうなんです」

 

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「へぇ〜。『タメ口でいいよ』って言われても、敬語になっちゃうの?」

 

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「かなりぎこちなくなります(笑)」

 

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「じゃあ、いいよタメ口で( ^ω^ )

 

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えっ

 

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「今からタメ口で話してみようゲームしましょう」

 

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「わ、わかりま……わかっ……た///」

 

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「おっ、照り焼き食べてね、食べてね」

 

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「おいしい?」

 

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「おいしい(ぎこちない)」

 

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「鶏好き?」 

 

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「鶏好き(ぎこちない)」

 

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「彼女は?」 

 

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「彼女いない(ぎこちない)」

 

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「あーそっかぁ。さびしい?」 

 

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「さびしい。常に」

 

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ぶははははは!!

 

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「ごめん、耐えれなかった(笑)。まぁ、ギリタメ口だね」

 

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「お酒の力をかりてなんとか(笑)」

 

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「あ、お酒好きなんだね。飲みに行ったりはするの? 友達とか誘ってさ」 

 

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「あんまり行かない。誘い方がわからない。ボクは友達だと思ってても向こうはどう思ってるかわからなかったりするし。でもひとりではいけないし」

 

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え、なにそれ。さびしい泣ける

 

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「誘うのもなんでも、周りの目とかすっごい気になってしまう……

 

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「コミュニケーションが苦手な人、人見知りの人って被害妄想がありそうなイメージ」

 

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「思い当たる節が(笑)」

 

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被害妄想ってさ、自分を“被害者”にした妄想なわけだから、だれかを勝手に“加害者”にしてるってことじゃない例えば『話しかけても無視されるのでは……』って考えるのって、勝手にその人のことを“無視をするような人”に見立ててるってことだから超失礼だと思うのよね。相手のことを思うんだったら被害妄想癖は治そう! と私は日頃思っているわけです。もし本当に無視してきたらそのときは嫌っていいと思うけど(笑)」

 

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「なるほど目からウロコです。たしかに」

 

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「案外みんなさびしがり屋だしさ、誘われたらうれしいってことのが多いはず」

 

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「なんかひとりで過ごすうちに、いつのまにか“友達をつくる”とはなんだろうとか思うようになっちゃって。友達とはいったい……と(笑)」

 

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「うーん。まぁ、ひとりの時間がたくさんある人って何かに打ち込んでいたり、趣味も多くて……なんてこともあるし別に問題はないとは思うのね」

 

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「はい。ボクも趣味は多い方です」

 

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「友達ってのはさ、そんな仕事や趣味を円滑にこなしたり潤したりするために居るんじゃないかな

 

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「なるほど……」

 

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「だから『友達をつくろう!』って思ってつくる必要はないけど、仕事で失敗したときとか、人と一緒に行きたい場所を見つけたときとか、なんかそういう衝動で飲みにでかけて人と仲良くなったりしてみたらいいんじゃないかな」

 

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「そうか……」

 

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「何事も動機が不純なときはうまくいかなかったりするし。人と会いたい、しゃべりたいってときに、トライ!

 

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「(笑)。トライしてみます」

 

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話も落ちつき笑顔も増えた、ゆうきくん。

このあと残さずごはんを食べてくれました。

 

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「あ、前回の記事で格言みたいの書いてましたけど、うちホワイトボードとかなくて……。どこに書きます?」

 

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「いやっ、格言残すのが恒例プランなわけでは……!(笑)」

 

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「あえてダンボールとかでもよさそうですね!」 

 

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(書くこと決まっておる……( ^ω^ ))

 

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「ココとかどうでしょう!」

 

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ペン、貸してください!

 

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何事もいさぎよさって大事だけど。

 

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ひとんちの床に寝そべって格言を残そうとする、私の職業はいったい。

 

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世の中、何事も経験。

 

やってみなくちゃわからないことだらけだし、

いつ始めても遅くなんかないと思うのですよ。

 

そうだ、明日は今日よりがんばろう。

 

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明日は明日の風がピュゥです。

 

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「では、そろそろおいとましますね」

 

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「ありがとうございました! 明日あたり同僚と飲みにいけるようがんばってみます!」

 

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「がんばってね! 大丈夫きっとうまくいく!」

 

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「あ、ちなみに」

 

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「はいっ!!」

 

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タメ口使うゲームはしないほうがいいよ、確実に負けるから

 

気づけばすっかり敬語に戻っていたゆうきくん。

いいんだ、いいんだ。その少しの挑戦が人を成長させるのさ。

がんばれ26歳。

がんばろう一人暮らし。

 

さぁ、つぎはどんなお宅が待っているのでしょうか。

また会う日まで。

 

※本記事は2016年4月の情報です。

 

写真:石川真魚

 

書いた人:小鳥遊しほ(たかなし しほ)

小鳥遊しほ

1988年7月6日、愛知県生まれ。イラストレーター、フードコーディネーター、モデル。美容師、調理師の免許、その他8個の資格を持つ。雑誌の連載、TVやアプリのイラストレーション、企業やアパレルブランドとのコラボなど幅広く活動。書籍『くまっているのはボクなのに。一問一頭』(KADOKAWA)

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「超能力者」ユリ・ゲラーをベジタリアンにした男・矢追純一氏インタビュー【前編】

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UFOや「超能力者」ユリ・ゲラーなど、たくさんの超常現象番組を作った伝説のディレクターというイメージのある矢追純一氏。日本テレビ在局中から、社員であるにもかかわらず書籍の出版や舞台演出など独自の活動を様々にやってきた。

 

「会社から文句言われたら辞めるから。別にひとつのところにいなきゃいけないってことでもないし、世の中にやることはいくらでもあるので、ひとつの会社に入っちゃたらずっとそこにいようってのはだいたい間違ってる。とっとと辞めればいいんです(一同笑)」

 

1960年に日本テレビに入社したのち、超常現象を扱うドキュメンタリー風オカルト番組を数多く手掛け、ネッシー、ユリ・ゲラー、スプーン曲げ、UFOなど数多くのブームを起こした。自身も出演していたことで名物ディレクターとしても有名になった。

いまでも続くUFOやスプーン曲げなどのいわゆる超常現象のジャンルは、いわば彼が作ったと言って過言ではない。

 

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「私がUFOの番組を始めたのは、精神的に余裕がない人が多いから。精神的に余裕がないと、なにをやってもうまくいかないので余計にイライラするという悪循環に入るわけですね。“たまには立ち止まって空を見たら”というのがUFO番組の始まりです。それはいまでも変わらず同じコンセプトでやってる」

 

──現在は「宇宙塾」という活動をされてらっしゃるようですが。

「宇宙塾には老若男女いろんな人がいて、下は小学生から上は90歳代まで。みんな遠くから熱心に通ってくるんですよ。すでに1週間おきのセミナーで、もう6ヶ月やっているからね。九州も四国も、愛知県や山口県、北海道からも来るし、一番遠いのはニューヨークから通っているのもいるし。30年前に、世の中の人に役に立つことを少しはしてから死んだほうがいいかなと、余計なことを思って」

 

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マスコミは常識的なことしかやろうとしないから

──矢追さんはTVディレクターとして伝説的な番組を数多く制作されてきました。

「テレビの番組やいろんなところで、どうしてオカルティックなものやUFOをやるのかというとね、基本的にはたまには空を見て、心を豊かにというか、視野を広げなさいってのがひとつ。だけどもうひとつは、ジャーナリストとして、マスコミが常識的なことしか取り上げないのは問題だと思ってるわけです」

 

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──オカルト的なものはどうしても叩かれがちです。

「常識的なことをやらないと自分の失点になるので、みんな保身に走ってる。マスコミに関係する人は、それはダメなのね。保身に走っているようじゃ、マスコミにいちゃいけないの、ホントはね。で、無理して、俺の昔のUFOの番組みたいなの作りたいなと思ったところで、結局はお笑い芸人をいっぱい集めてごちゃごちゃにわからなくしてしまうことしかできないでしょう」

 

「実を言うと、常識以外の世界のほうが広いんですよ。当たり前のことながら。ヒラ社員教育に向いている者だけがマスコミを通じて出てくるんです。ほかはぜんぶ隠れてるんです。だから物事が中途半端にしかわかってないんです。それで本を読んでわかった気になってるんですね。知識人とかいって。だけどそれは違うでしょ。目に見えないというか、みんなが知らないようなことも知らないと。こういう世界に生きているんだから無理があるでしょということで、常識的でない、言い換えるとオカルティックなものをなるべくたくさんみんなに情報を流そうとしているわけです」

 

不思議な能力を持った人は向こうから来た

矢追純一氏はUFOだけではなく、スプーン曲げで有名な「超能力者」ユリ・ゲラーを初めて日本に紹介したディレクターである。テレビを見ていた子供もスプーンを曲げるなどの事例が相次ぎ、一夜にして社会現象となった。

同席していたプロデューサーの郡氏が、話題を振った。

「ユリ・ゲラーさんの時も、こちらから彼に会いに行ったわけじゃなくて、偶然なんですよ」

 

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「不思議な能力を持った人というのは向こうから来るんですね。ユリ・ゲラーの場合は、ある日、英字新聞を読んでたら、アポロ14号の宇宙飛行士エドガー・ミッチェルが自費で超能力研究所を開設したと書いてあった。なんで宇宙飛行士がって感じだし、自費ってのもね。英雄なんだから金はいくらでも集められるだろと」

 

「おもしろいから取材に行ったんです。けっこう立派なオフィスで。なんで超能力の研究なんて始めたのかって聞いたら、宇宙飛行士になるにはすごく大変だと。勉強しなきゃいけないし、身体も丈夫じゃないといけないし。過酷な訓練をした上で、こーんな狭い宇宙船に乗って、めちゃくちゃ不自由な思いをしながら行ったと。ツバを吐いたらこの辺に漂っていてまた自分にかかってくるし、ゴミを捨てたらこのへんに浮いてると。そんな空間の中で過ごしてやっと月面に着陸したときに、月の地平線に地球が登ってくるのが見えた、と」

 

──それはすごい光景でしょうね。

「ああ、なんてありがたいんだろう。あそこにしか俺の帰るところはない。いまここで宇宙服に穴が空いたらここで死ぬしかない。そんな貴重な地球なのに、そこに住んでいる人々は私利なのか私欲なのか知らないけど、金儲けとか戦争とかしているのが、本当にもったいない……それを伝えたいと強く思ったんだ、というのね。ほんとに月に行ったやつの言うことだから、言葉に重みがあるのね」

 

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「地球に帰ってきてどうしようかと思ったときに、まず、いままで政治は無力だった。宗教も役に立たない。科学はもっとダメだ。彼は科学者なんだけど『科学はぜんぜんダメだ、実際に宇宙に行ってみると、わかるよ』と言うんです。で、彼は人間が本来持っている潜在意識みたいなもの、心の奥底の良心みたいなものに訴えかけることしかないと思って『非営利法人 純粋理性研究所』というものを作った。理性……映画でいうと“フォース”だよね。“理力”というのかな。人間がずっと昔から持ってる魂みたいなもの、それを研究しようと思ったんだと」

 

ミッチェル先生、そりゃダメだよ

「で、そのエドガー・ミッチェルが、ついこの間、ユリ・ゲラーという青年をイスラエルから呼んだというのね。それはスタンフォード研究所との共同研究で……スタンフォードリサーチといえば、シンクタンク系で世界一のところだからね」

 

「どんなことやったかというと、触らずにスプーンが曲がるだとか、缶に入れてあるなにかを見つけるだとか、いろんなことやったっていうんだね。彼が一番びっくりしたのは、スタンフォードにあったデータ記録用のテープがあちこち消えちゃったと。ユリ・ゲラーにお前の仕業だろうというと“いや知らん”と。だけどあいつしか考えられないんだと(笑)。これはスタンフォード研究所としては大問題で」

──これはユリ・ゲラーがあやしいと(笑)。

 

「あとびっくりしたこととして、精密秤の上に重りと鉛を置いて平均をとっておいて、真空のガラス容器に入れて絶対に振動が伝わらないようにしたうえで、ユリ・ゲラーにこれを動かしてって言ったら“うん”って、じっと見てたらスッと、鉛のほうが軽くなってそのままになってたと。これはありえない。つまり物質が0.何ミリグラムでも無くなったら原爆の何十倍ものエネルギーが出るはずだから大爆発が起きてしかるべきなのに、音もなくスッと動いた。これは科学的にありえないと驚いたって」

 

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「そんなすごい奴がいるなら取材させてくださいよって言ったら、“いやもう怒ってどっか行っちゃった”と。毎日科学の実験とかでいろいろやらされて、ギャラもくれないから飯も食えないって(笑)。さすがに私も、ミッチェル先生、そりゃ彼も怒るでしょうって言いましたけどね(笑)」

──とても興味深いエピソードです(笑)。

 

「でまあ、ユリ・ゲラーはどこにいるかわかんないっていうから諦めたの。私は壁は乗り越えない主義なんです。壁は迂回するの。無理はしない主義なんです」

 

「次の取材でニューヨークの心霊科学研究所というところに行って、幽体離脱をするアレックス・タナウスの取材をして、夜にそこが主催のパーティがあった。隣にアメリカの太ったおばさんが座って“あんた日本人でしょ。私の友達の日本人があなたと話がしたいっていうから電話を代わってくれる?”って。相手は日系三世くらいで日本語は一切できませんっていう人だったんだけど。あなたはどういう仕事をしてるんですかって言ったら、なんと“ユリ・ゲラーさんという人の秘書をしている”と言うんです(笑)。なに? と。パフォーマンスもなにもしなくていいなら時間取ってあげるというので、お願いしますと。取材も無しでというのでハイと言って、取材班を連れて行ったわけ。ダメもとでね(笑)」

 

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「高級マンションの5階かな。エレベータを降りたらバッとドアが開いて、ユリ・ゲラーが飛び出してきて“お前が来るのはわかってたよ、夢で見た”とか言って。“お前は前世で俺の兄弟だ”って(笑)。突然の話ですね」

 

──矢追さんが来るとわかっていた、と。

「取材班も一緒に入れてもらって、いろんな話をしてるうちに、“なんか見せて欲しいか。なにか金属を持ってたら出せ”っていうので、ちょうど数日前にニューヨークの煙草屋で買った、パイプに煙草詰める十徳ナイフみたいな道具がポケットにあったのを出した。スプーンみたいになってる部分を持って、ユリ・ゲラーがこすってるうちにどんどん曲がっていって、ポキっと折れちゃった

 

「その一部始終をカメラで撮ってたんだけど、そのカメラマンがいちばんそういうこと(オカルト的なこと)が大嫌いなヤツなんだよね。そいつが“矢追ちゃん、これすごいよ”と。これ、ずっとカメラでアップで撮っていて見てたけど、すり替える隙がないって。そんなもん、まずすり替えるモノが無いだろって(笑)」

 

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「だけど、どんどん曲がっていって折れて落ちるまでがアップで撮れたっていうから、じゃあすごいんだろうと。そういう能力は人間誰にもあるかもしれない。それはひょっとしたら世の中のためになるかもしれないんで、日本の科学者に見せたらなにか新しいことがわかるかと。そのころの私はまだ科学ってどのくらいのものかってあまりよくわかってなかったんです」

 

「それでユリ・ゲラーに、日本に来てくれないかって言ったら“お前がぜんぶ仕切るんだったら行く”って言うから、めちゃくちゃ安いギャラで来てもらったんですよ

 

ユリ・ゲラーを菜食主義者にしちゃった

「日本に連れてくる前、ニューヨークにいたときにユリ・ゲラーに、お前ジャパニーズレストラン行ったことあるかって聞いたら無いっていうから、連れてってやろうかって言ったら喜んで来たわけ。天ぷらやすき焼きなんかをいろいろ食べてね。俺が連れてくまでは日本食を知らなかったんだよね。アメリカ人ってみんな知らないっていうか、金ないと行けないんだよね。高いから。行ける人はエリートなの」

 

──当時は海外では日本食はそんなにメジャーではないですからね。

「そこで、うまいとか、生まれて初めてこんなの食べたとか言ってるわけ。一番感動したのは味噌汁だっていうの。これはなんだって聞くので、大豆を発酵させたペーストがベースだと。白い四角いのは何だというので、これは豆腐だと。畑の肉と言われているタンパク質豊富なもので、動物性の肉よりも身体にいいと。なんとなく、超能力にはあまり肉は良くないんじゃないか、と言ったら“うーん、そうだな”って、納得した様子だった。で、その次に行ったときには彼は完全に菜食主義に変わってたの(一同爆笑)」

 

「それまではね、こーんなに太ってたの。肉が大好きで、やたらステーキ食べてたんですよ。でも、あの人も徹底するからさ。完全に菜食主義になってて、スープでも動物性のものが入ってたらもう飲まない。一切ダメなんだよね。日本に来た時も、コンビニでうどんを買ってきてそれに醤油かけて食ってるんだよね(笑)。食うものがないんです。魚もダメだから出汁も一切ダメ」

 

「彼のイギリスのお城みたいな家に遊びに行ったんですよ。テムズ川に沿ったでっかい家でね。昔のMansionってやつですね。これ、いくつベッドルームがあるのかっていう。庭にちっちゃな神社があったりさ」

 

──ユリ・ゲラーさん、そんなに大きなお屋敷に住んでいたんですか。

「メシになったらさ、こんなでっかいボウルに生の野菜がワーッと入ってて。ジャガイモでもナスでもこうやって生でガリガリ食うの。すごいなこの人、と思って。でも……それじゃ俺が食うものが無いじゃん(笑)。ユリ・ゲラーは、かわいそうだからお前のぶんはシリアルを用意しといたからって言うんだけど……それ以来、彼の家には行ってないんですけどね(笑)」

 

「超能力を扱う人は肉を食べないってイメージはあるけど、ホントのところは知らないよ。なにかひとつ決めると、みんなそこに行きたがるけど、こうじゃなきゃいけないって決まりなんてこの世の中に無いんだって。いろんな人の話を聞くと、みんなひとり合点で自分なりに知識としてこの中に詰め込んでいるものを出しているだけなんだよね。それは単なる知識であって、彼自身が体験してないから空虚なんです。空虚な言葉の遊びをするわけ。矢追さんって、こうなんですよね?って。でも、そんなの知らないよ。それぞれが好きなものを食えばいいんだよ」

 

スプーンを曲げるなんて、もったいないじゃん

──ほかにオカルトと食べものにまつわるお話はありますか。

「正直言うとさ、じゃあ雪男の糞はあったのかって。あったんだろうけど分析結果はどうなのか。じゃあネッシーは何を食べているのかって? それはわかりません。宇宙人がなにを食べてるかなんて、もっとわからん」

 

「でも、ロシアのメドヴェージェフが首相時代に、すでに宇宙人はロシアに住んでいる、と公表した話はあるね。2012年の2月に、記者会見のあとにリポーターから聞かれて本人が実際にそう答えた」

 

──うわ、メドヴェージェフが認めたんですか。

「で、そのロシアの宇宙人を監視しているという特殊部隊がいて、そこからの報告書で、こんなぶ厚いファイルで渡されると。ロシアの大統領になると、そのファイルと核のボタンを渡される。そういうことをちゃんとメドヴェージェフは言っていて、画像もあるから」

 

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──ということは、ロシアに住んでいる宇宙人は、普通にボルシチを食べてウォッカを飲んでいるかもしれないですね(笑)。

「そこまではわからないですけどね(笑)」

郡氏「矢追はジャーナリストなので、自分の目で見て取材して、そこでわかったことしか言わないんですよ。確認してないことは「わからない」という言い方になるんです」

 

──ところで、超能力は訓練すれば誰でもできるものなのですか。

「超能力によるけど。テレポーテーションなんかはけっこう大変ですね。素質がいる。でもホントはそんなものいらないんだよね。これをこっちにちょっと移動してどうするってことで。日常生活にあんまり関係ないよね。スプーンなんか曲げて、どうするのって。スプーンがもったいないじゃん? みんな目で見てアッと驚くようなことが好きなんだよね。だったらマジックを見たらいいと思うんだよね。最近のマジックは、ホントよくあれできるなってのがあるからね」

 

──スプーン曲げはともかく、女性にモテる超能力とかがあるといいなと思うことがあります(笑)。

「それは簡単で、“俺はモテる”と思うと、モテるよ。自分に自信がないからですよね(笑)。モテる人ってモテる雰囲気を持っていますよね。雰囲気が目に見えるならそれをオーラと言うのかもしれない。だけど、そんなものが見えてもしょうがないけどね(笑)。なんでも知りたがるけど、知ってもしょうがないことを知りたがるのが無駄というものですね。役に立つことを知らないと」

 

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「つらつら世の中を見てみると、みんなくだらないことに一生懸命悩んで、毎日を不安と恐怖の中で生きてる。それは気の毒だなって。ホントのことを知らないとこうなっちゃうんだねって。僕自身はちっちゃい時から、12歳くらいから、思ったことは全部ホントになっちゃうんで。食うために働くとかそういうことはない」

 

【後編】につづく。

 

参考情報

 

書いた人:鷲谷憲樹

鷲谷憲樹

フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。好きな立教OBは中島かずき。

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【レキシ】特別対談「歴史はメシで作られる!」池田貴史×永山久夫【後編】

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日本史に魅せられた音楽家・池田貴史(レキシ)と、食文化研究の第一人者・永山久夫が『メシ通』で初対面。

縄文から平安時代の歌人、さらに戦国武士まで「歴史を作ってきた食」をアツく語り倒した!【後編】 

※前編はこちら

池田貴史

池田貴史

福井県出身。1997年よりSUPER BUTTERDOG、2004年からは100sのキーボーディストとして活動。日本の歴史に造詣が深く、ソロプロジェクト「レキシ」として2007年アルバム『レキシ』でソロデビュー。ファンキーなサウンドに乗せて歌う日本史の歌詞 と、ユーモア溢れるステージングで話題を呼ぶ。現在までにアルバム『レキツ』『レキミ』『レシキ』を発表。2015年11月にはファーストシングル『SHIKIBU』が発売。さらに最新作として2016年6月22日には、5枚目となるアルバム『Vキシ』をリリース予定!

 

永山久夫

永山久夫

福島県生まれ。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食、健康食の研究のほか、NHK大河ドラマ「独眼竜正宗」「春日局」などでは当時の食膳の再現・時代公証も手がけた。テレビ、ラジオ、講演会の出演多数。『たべもの戦国史』(河出書房新社)『大江戸食べ物歳時記』(新潮文庫)『武将メシ』(宝島社)『古代食は長寿食』(保育者)など、著書多数。

 

戦国武士は毎日ご飯を5合も食べていた!?

池田:シングル『SHIKIBU』のプロモーション用に写真を撮影した時、十二単を着たんです。まぁ、これが重いのなんのって。着てるだけで体力がどんどん奪われていくぐらいなんですね。昔の人はこれを毎日着てたのかと思うと、まさに「おしゃれは我慢」なんだなって思いました。

永山:昔の人は、やっぱり基礎体力があったんでしょうね。たとえば戦国時代では武将が甲冑を着けていましたが、あれはだいたい45kgぐらいあるっていいますからね。自分の奥さんをおんぶして戦場で戦うようなものだから、相当体力がないともたない。

池田:だから平安貴族の女性も、筋肉ムキムキだったんじゃないか?って思ったんです。

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永山:あっはっは! まぁ筋肉ムキムキではないと思うけど、健康だったし、体力は相当あったでしょうね。当時は幼児死亡率が高かったですから、10歳までに半分ぐらいは死んでしまうんです。だからそれをくぐり抜けて20歳ぐらいまで生きる人は、遺伝子レベルから見てもかなり健康だったんでしょう。

池田:平安時代の貴族や役人たちは、どんなものを食べてたんですか?

永山:日本全国から集めた美味しいものを食べていたはずですよ。以前、平安時代の朝廷に仕える高級役人の食卓を再現したことがあるんですが、料理自体にはあまり味がついていない。そのかわり、食卓には4種類の小皿に入った調味料が用意されて。塩・酒・酢・醤(ひしお)を四種器(ししゅき)というんですが、これらを塩梅しながら食べてたんです。グルメな人はつけ方が上手かったんでしょうね。食材は乾物とか発酵食品が多いですから、それこそ歯が弱いと生き残れない。

池田:平安人は歯が命。

永山:ははは、まさに。絵巻にも残ってるんだけど、虫歯の男が二人の女性に囲まれて、みんなでてんこ盛りのご飯をガツガツ食べているんですよ。

池田:『まんが日本昔ばなし』に出てくるような盛り付けですね。

永山:もちろん白米ではないですから、咀嚼能力がないと食べられない。しかも、炭水化物ばかり極端に偏ってるし、現代からすれば健康のバランス的によくないはずなんだけど、当時は肉体をフルに使ってますから、あれぐらいの大盛を食わないとエネルギー供給ができないんです。戦国時代の武士になると、一日に5合のご飯を食べてますから。

池田:えーーーっ! 5合もですか? メガ盛りどころの話じゃない。

永山:重さにして約750g、米だけで2600kcalぐらい。今、日本人の成人は一日に2000kcal食べてないもんね。それなのに糖質がどうのこうの気にしてる。糖質は脳に不可欠なエネルギーなんですが、その供給が足りてないところに、ずーっとスマホなんかをいじってるでしょ? つまり脳が極端な栄養不足になっているんです。携帯電話が普及してたかだか20年ぐらいだけど、ホモサピエンスとしてはまだそこに対応しきれてない。このままでは人間の頭脳もスマホが代用するようになって、ロボットが支配する未来がやってきてしまいますよ。

池田:なんか話がすごいところに広がってきましたね(笑)。永山先生が、だんだん松本零士先生に見えてきました!

永山:だから私はここで、現代の食生活を見つめ直して過去の歴史から学んで、食文化のルネッサンスを起こす時期に来てるんだろうと思います。

池田:なるほどね。未来を見据えつつ、過去の食生活の歴史から学ぶ、と。では、どの時代の食文化に学ぶべきなんですか?

永山:それはね、やっぱり縄文時代なんですよ。目指すべきは、縄文です!

f:id:Meshi2_IB:20160319153730j:plain永山氏が過去に再現した古代食の数々。先生は徹底した実践派でもあるのだ、コスプレも含め

 

楽器? それとも酒器? 縄文土器の謎

池田:レキシの曲に『狩りから稲作へ』というナンバーがありまして、歌詞の中で〈縄文土器 、弥生土器、どっちが好き?〉というフレーズがあるんですよ。

永山:おお、いいですねぇ!

池田:先生は縄文土器と弥生土器、どっちが好きですか?

永山:もちろん縄文です!(キッパリ)。縄文土器を見てください。あんなに創造性が強く、エネルギーがこもってる土器というのは、世界に類を見ない。

池田:本当にその通りです。実は2015年、青森の三内丸山遺跡の縄文大使に任命されまして、去年の夏には6本柱のところでライブをやったんですよ。

永山:それは素晴らしいですねぇ。三内丸山遺跡はすごいですよ。あの遺跡を見るだけでも、縄文人のエネルギーや知的能力が相当高かったことがわかる。三内丸山からは鯛の骨が出土していて、大きさが1mぐらいあるんです。それも途中でぶつ切りになってるわけでもなく、ずっとつながった状態で出土している。そのまま残ってるということはつまり、身(肉)を削いで食べる技術を持っていたということです。さらに、調理面でいえば土器を用いて煮炊きする文化はすでにあった。世界の中でも土器を一番最初に作ったのは縄文人じゃないかと言われてますからね。

池田:縄文土器も、皮を張って太鼓として叩いてたんじゃないかっていう説も聞いたことがあります。

永山:有孔鍔付土器(ゆうこうつばつきどき)ですね。これは、まわりに穴が空いているんですが、それにも2つの説があって、ひとつは皮を張って太鼓にしたという説。もうひとつは密閉して山葡萄なんかの実を入れて、発酵させてお酒を作るための道具だったんじゃないかという説。どっちも非常に文化的ですよね。

池田:縄文人の知恵や創造力って、本当にすごかったんだなって思いますよね。当時の食文化から、他にどういうことが見えてきますか?

永山:縄文時代っていうのは、草食ではなく、肉を食べる人間が多かったといいます。タンパク質を多く摂取するので、テストステロン(男性ホルモンの一種)が多く分泌されてくる。現代社会では忙しく仕事をしてるとテストステロンが減ってしまうものなんですが、テストステロンが旺盛な社会っていうのは、植物なんか栽培しようって気が起こらないんです。なぜ縄文時代に農耕が発達しなかったというと、あんな面倒臭いことはしたくなかったというのが大きいでしょう。石斧一丁を腰に下げていれば、イノシシやシカを追いかけて捕れるんだから。そのほうが美味いし、健康にもいいし、女性も喜ぶわけです。

池田:たしかに(笑)。

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永山:その季節にしかないものしか食えないわけですし、何が旬か、どれがうまいかという情報が常にインプットされてる。だから一番ナチュラルな食文化ですよね。さらに言えば再生産可能な収奪というか、来年同じぐらいの量が収穫できるのを見越した分しか食べなかったと思う。そうはいってもだんだん人口が増えてきてしまう。これ以上増えると自然を破壊をしてしまうんじゃないかということで、人間は農耕を選択した。それが弥生時代ですよね。

池田:人が増えてしまったからこそ、まさに「狩りから稲作へ」移行した。そこで、食文化に大きな転換が起きたわけですね。俺も以前から「縄文に学べ」って言ってるんです。狩りを主体にした生活をしていた時は、土地を所有していないから、みんな平和だったんじゃないかと。小競り合いはあったとしても、土地を奪い合うような戦争は起きなかった。そこに現代人が学ぶところは、本当にいっぱいあると思うんですよね。

永山:国としての日本の歴史はおよそ2000年ぐらいだけど、その前に縄文時代は1万年続いてたわけなんです※。農耕をはじめないで、1万年も狩猟生活してるんですよ。これは世界の不思議なんです。縄文人は知恵もあったし、男性もテストステロンが出てるから生命力が沸き立つような生活をしていた。つまり100パーセント人間力を発揮して生活していた時代が、縄文時代だと思うんです。これが平安時代になると、知性が先行してくるんですけどね。だから考えるに、縄文時代の人間力と平安時代の知性、この二つの文化が、今後日本がどういう選択をしていけばいいかという時に重要なサジェスチョンになると確信しています。

※諸説あり

 

現代人よ、縄文の食文化に学べ!

池田:縄文と平安。二つの文化に学べ、と。

永山:実は、この二つの文化を橋渡しをする、ある食べ物が存在するんです。それは何かというと……イワシなんです。

池田:おおお、最初のテーマに戻った!(笑)。

永山:イワシの骨は縄文時代の貝塚からもたくさん出てますから、当時一番獲れた魚だったのでしょう。頭から食べられてカルシウムもトリプトハンも摂れるし、DHAやEPAといったオメガ3も摂取できる。平安時代に紫式部が食べたとすれば、創作を続けるために自然と身体が欲してたんだと思いますね。

池田:たしかに、身体が自然と欲する感覚ってありますよね。

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永山:そういう風に、身体の底からの呼び声を敏感にキャッチできる人こそ、感性や表現力も豊かになっていくんだと思います。今の時代は、人間の舌は何を好むかを計算し尽くした加工食品がいっぱい生み出されていますよね。誰が食べても美味く感じるし、リピートしたくなる。スナック菓子なんかが代表的だと思いますが、そういうのを食べるのは主に若い人や子供たちですよね。頭の中に味の情報をインプットする大事な時期に、そういったものばかり食べていては、味覚が半分壊れてしまってるようなもの。資本主義社会に住んでる以上、大量生産・大量消費は否定できませんが、選択する能力も備えていかなければいけないと思うんです。

池田:とはいえ、いきなり縄文に戻れって言っても、海に潜って魚を獲ってっていう『いきなり! 黄金伝説。』みたいな生活をするのはさすがに無理。でも、せめて自然の流れに逆らわずに食ってた時代にまでは戻りたいですよね。年中行事ぐらいは意識するようにして生活していく、とかね。

永山:みんなスマホやゲームで脳がクタクタになってますから。日本人に限らず文明の必然みたいなものだけど、脳が衰退して滅びるのは時間の問題でしょう。それをなるべく引き延ばすには「縄文に学べ!」と言いたい。人間性を回復させるには、根本的に食に対する意識を変えるしかないと私は思うんです。これからは食の時代がやってきますよ!

池田:食はすべての物事に関わってくる。だからこそ、食は大事なんだね。なんか今日は、すごく大切なことに気づかせてもらったような気がします。ありがとうございました!

永山:こちらこそ! ありがとうございました。

f:id:Meshi2_IB:20160319153804j:plainうなぎが入った煮こごり(480円)に、骨せんべい(330円)。ごちそうさまでした!

 

撮影:松木雄一

 

お店情報(取材協力)

山吹

住所:豊島区南池袋1-27-8サンパレスビル
電話番号:03-3971-1287
営業時間:11:00~21:15(L.O.20:45)
定休日:無休
ウェブサイト:https://www.hotpepper.jp/strJ000145739/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:宮内健

宮内健

1971年東京都生まれ。ライター/エディター。『バッド・ニュース』『CDジャーナル』の編集部を経て、フリーランスに。以降『bounce』編集長、東京スカパラダイスオーケストラと制作した『JUSTA MAGAZINE』編集を歴任し、2009年にフリーマガジン『ramblin'』を創刊。現在は「TAP the POP」などの編集・執筆活動と並行してイベントのオーガナイズ、FM番組構成/出演など、様々な形で音楽とその周辺にあるカルチャーの楽しさを伝えている。

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