【検証】名古屋駅の新幹線ホームで食べるきしめんがサイコーにウマい説、ホントのところどうなんだ?

f:id:nagoya-meshi:20180608113841j:plain

4年ほど前から、きしめんのおいしさに目覚めた私。以来、少なくとも週イチのペースで食べている。市内の有名店も数多く取材してきた。

だから、愛知県外の人からの「名古屋できしめんが食べたいんだけど」とのリクエストに応じることくらい今は朝メシ前である。

 

しかし、ひと昔前はそうではなかった。

おいしいきしめんを食べさせてくれるお店を知らなかったため、半ば苦し紛れに紹介していたのが……

f:id:nagoya-meshi:20180608113926j:plain

名古屋駅ホームのきしめん。

 

もちろん、何度も食べたことがあるし、おいしいと思っていた。

だが有名店の、手打ちの麺やつゆにとことんこだわったきしめんに出会って以来、すっかり足が遠のいていた。

それどころか、名古屋を訪れたお笑い芸人や芸能人がテレビで駅ホームのきしめんを絶賛していたりするのを冷ややかな目で見ていた。

一般の方々でも、誰だってこんなうわさを一度は耳にしたことがあるんじゃなかろうか。

そう、名古屋駅、東海道新幹線のホームで食べるきしめんがサイコーにウマい」説である。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114004j:plain

しかし、私自身、駅ホームのきしめんについて、どれだけ知っているのか。

今回は、駅ホームのきしめんのつゆを徹底的に分析して、名古屋めしライターとして人にすすめられるかどうかを検証してみようと思う。

 

名古屋駅のきしめんは2種類に分かれる

ってことで、入場券を買ってホームへと向かった。

f:id:nagoya-meshi:20180608114047j:plain

まず名古屋駅のプラットホームをチェックしておきたい。

  • 在来線ホーム=1・2番線~7・8番線、10・11番線と12・13番線まで計6本
  • 新幹線ホーム=14・15番線と16・17番線の2本

以上の合計8本のホームがある。

きしめんは、12・13番線を除くホーム内の全11店舗で食べられる。新幹線ホームだけでなく、在来線のホームでも食べることができるというわけだ。

 

「きしめんは、1961(昭和36年)に3・4番線と5・6番線のホームで販売したのがはじまりです」と話すのは株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィス名古屋営業所の桑原栄介さん。

現在、桑原さんの会社では、名古屋駅ホームのきしめん店「住よし」7店と「憩 いこい」(5・6番線大阪方)、「グル麺」(14・15番線東京方)の計9店を運営している。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114548j:plain

ややマニアックな話になるが、在来線1・2番線大阪方の「かきつばた」と新幹線16・17番線東京方の「グル麺」は、JR東海の子会社である株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズが運営している。

私もこれらのお店で何度も食べたことがあるが、「住よし」とは明らかに味が違っていた。つまり、以下のことが言える。

 

名古屋駅ホームのきしめんは、

  • 株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィス
  • 株式会社ジェイアール東海パッセンジャーズ

の2つの味に分類できる。

 

ダシはお店ごとにとっている

和風だしは時間が経つにつれて風味が抜けていくため、時間帯によっては多少の違いは出るだろうが、ネット上でよく目にする「お店ごとに味が違う」というのは、少し大げさかもしれない。

 

桑原さん:同じ「住よし」でも味が違うとなれば、「レシピはどうなってるんだ!?」と社内で問題になります。ファストフードチェーンのハンバーガーはどこで食べても同じですよね? まったく同じ材料を使って、まったく同じレシピで作っていますから、味が違うことはあり得ません。

 

桑原さんによると、「住よし」でいちばんのこだわりは、名古屋駅で電車を降りたときにふわっとダシが香るつゆだという。

このテのお店は業務用の濃縮タイプ、つまりお湯で割るだけのつゆを使っていると思われがちだが、市内の麺類食堂と同様に、ムロアジをベースにしたダシをお店ごとにとっているとか。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114640j:plain

これが削り節(写真上)。ムロアジや宗太鰹(そうだがつお)などをあらかじめブレンドしてある。

削り節でとったダシにかえしを合わせてつゆを仕上げるのだが、ダシの配合やかえしの調合は創業当時からほとんど変わっていないそうだ。

 

桑原さん:週末など多いときで1日に5~6回もダシをとることもあります。効率を考えると、濃縮タイプのつゆを使いたいところですが、それではまったくの別物になってしまいます。

 

一方、麺はというと、冷凍麺を使用している。

f:id:nagoya-meshi:20180608114709j:plain

創業時は乾麺を使っていたそうで、その後、ゆで麺になり、冷凍麺に切り替えたのは、新幹線ホームでは2003(平成15)年、在来線ホームでは2008(平成20)年のことだ。味以外に冷凍麺を使うメリットとしては、保存がきくことや1人前の分量が決まっていることなどが挙げられる。

 

これぞ駅の立ち食い店! コスパ抜群なきしめんメニュー

さっそく、きしめんをいただいてみよう。

f:id:nagoya-meshi:20180608113841j:plain

こちらが、シンプルな「きしめん」(350円)。

具材は、煮揚げとネギ、花かつお。

市内の麺類食堂では、さらにホウレン草などの青菜と朱色の名古屋かまぼこがのるが、コストやオペレーションの面で難しいのだろう。

でも、きしめんの具材の中でも要であると私が勝手に思っている煮揚げがのっていれば、ノープロブレムだ。

それよりも、つゆの香りの立ち方がハンパない。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114815j:plain

箸で麺をつまんで、ズルズルと勢いよくすすり込む。パンチのあるムロアジベースのつゆの味と香りが口の中でふわっと広がる。

うん、ちまたのきしめんと何ら遜色はない。冷凍麺も適度なコシがあり、現代の冷凍技術には驚くばかりである。

ただ、手打ちのきしめんは、コシではなく、もっちりとしたグミのような食感とやわらかいのど越しが特徴なので、やはり麺自体はまったくの別物だといえる。

誤解してほしくないのだが、冷凍麺が手打ち麺よりも劣っているというわけではない。たった350円でこのクオリティーは企業努力のたまものだろう。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114852j:plain

一方、こちらは夏季限定(5月中旬~9月中旬)の「冷やしおろしかき揚げきしめん」(570円)。

かけきしめんのダシとかえしの比率を変えて、濃い口に仕上げてあるが、ムロアジベースのダシがしっかりときいている。

大きなかき揚げは食べ応えがあり、大根おろしで後味もさっぱり。暑い夏の日に思い切りすすりたい。これが570円というのも驚きだ。

 

どのお店でも揚げたての天ぷらが食べられる!

さて、ネット上には駅ホームにあるすべてのお店を食べ歩いたツワモノもいるようだが、中でもやたらと評判がよいのは、3・4番線の「住よし」(写真下)である。

f:id:nagoya-meshi:20180608114924j:plain

前にも書いたが、名古屋駅ホームで一番最初に開業したからなのかというと、そうではないようだ。

何でも、駅ホームのきしめん店で唯一、揚げたての天ぷらを出しているらしい。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608114955j:plain

その証拠にお店の入り口には、こんな貼り紙が。

 

桑原さん:いやいや、それ間違ってます!「憩 いこい」を含めた在来線の6店舗にはすべてフライヤー(揚げ物用機器)が完備していますから、どのお店も天ぷらは揚げたてを提供しています。6店舗すべてに貼り紙もあるんですけどね。

 

ただし、どのホームも同じ設備というわけではないようだ。

 

桑原さん:実は、新幹線ホームのお店にはフライヤーがないため、ここ3・4番線のお店で揚げたものを運んでいます。ところが、どういうわけか「3・4番線が唯一、揚げたての天ぷらを提供している」という話になってしまったんです。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608115029j:plain

3・4番線は電車の本数がいちばん少なく、きしめんを調理して出すという仕事の量は、他のお店よりも少なくなる。その分、新幹線ホームのお店で提供する天ぷらを揚げる作業を負担してもらっているというわけだ。

だから、わざわざ3・4番線まで来なくても、在来線のお店であれば、天ぷらは揚げたてなのでご安心を。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608115057j:plain

これがエビと玉ネギ、ニンジン、春菊のかき揚げをのせた「かき揚げきしめん」(520円)。

このメニュー、実は新幹線ホームのお店での売り上げは不動の1位。在来線でも2位と評判は高い。

その秘密は、やはりかき揚げだろう。揚げるだけの業務用ながら、作り置きしたものとはまったく違う。玉ネギの甘さがつゆに染み出して、めちゃくちゃウマいのだ。

 

f:id:nagoya-meshi:20180608115124j:plain

ただ、ちまたのきしめんは、天ぷらや卵とじなどの場合、白醤油を使った白つゆで出される。いつ頃からそうなったのかは定かではないが、白醤油はたまり醤油と違って野菜などを煮込んでも色が染まらない。具材の彩りがよくなるために用いられていると考えられる。

このように、具材に合わせてつゆを変えるというのは、全国でも名古屋のきしめんくらいだろう。早く、安く提供せねばならない駅ホームのきしめんにそこまで求めるのは酷だとは思うが。

 

今回、名古屋駅ホームのきしめんのつゆと麺、天ぷらを検証してきたが、結論から言えば、かなりおいしかった。それは街中にあるお店と違って、駅という旅情を感じるシチュエーションも大きく関係していると思う。

また、市内の麺類食堂で出される手打ちのきしめんと比較するのは、ファストフードチェーンの安価なハンバーガーと、より値段が高い手作りのグルメバーガーを比べるようなもの。さして意味のないことである。

今回の取材で得たウンチクをひけらかしつつ、駅ホームのきしめんを人すすめてみようと思う(笑)。

 

お店情報

住よし

住所:愛知名古屋市中村区名駅1-1-4 名古屋駅内3・4番線ホーム
電話番号:非公開
営業時間:7:00~20:30(LO 20:20)
定休日:なし

※他のホームの店舗については、株式会社ジャパン・トラベル・サーヴィスのWEBサイトを参照

jt-s.net

www.hotpepper.jp

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

ド迫力の大盛りモヤシがそびえ立つ「ラーメン福」こそ名古屋の隠れ実力チェーンだ

f:id:rudders:20180619231622j:plain

名古屋のご当地ラーメン「ラーメン福」を知っているか

名古屋のご当地ラーメンというと、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。

スガキヤ? 筆者も子どもの頃、よう食ったわ。ぜんざいソフトと一緒に。

台湾ラーメン? 名古屋で台湾とはこれいかに。しかも最近は「アメリカン」だの「イタリアン」だの。「まぜそば」だのいろいろ出てきてカオス。まあ、でも今じゃダントツの名古屋ご当地ラーメンだ。

 

しかし!!!!!

実は名古屋には、ほとんど地元民しか知らない&地元では絶大なる評判を誇るラーメンチェーンが存在する。

その名を「ラーメン福」と言う。

f:id:rudders:20180619231657j:plain

▲筆者の自宅から一番近い(なんだそりゃ)ラーメン福師勝店(北名古屋市)

 

現在、名古屋市内を中心に、愛知県下で10店舗が存在する「ラーメン福」。その店構えは共通している。

いかにも昭和の風情漂う(←褒めてる)店構え。レッドとイエロー(お店によってはレッドとホワイト)のビビッドなカラーリング。店内はカウンターのみの潔さ。そこに、ひっきりなしに現れるお客さんたち。

 

f:id:rudders:20180620071148j:plain

▲コの字型のカウンターが埋まるラーメン福 土古(どんこ)店。店内はどのお店もこんな感じ

 

開店と同時に席が埋まり、ランチタイムには待ちが発生する。

しかし店内はどのお店もカウンターのみだからか、お客さんの回転がめっちゃ早い!!そのため、意外と早く席につくことができる。

 

f:id:hotpepper-gourmet:20180620100804j:plain

▲開店と同時にカウンターがどんどん埋まる

 

モヤシの存在感がハンパない

そして、店員さんがわっせわっせと運んでくるのは、山盛りのモヤシが強烈な存在感を放つラーメンたちだ。

f:id:rudders:20180620073120j:plain

▲ガンガン作ってガンガン出す!

 

これでも「ラーメン福」では“普通の”ラーメン。というわけで、野菜不足の人でもモヤシをわしゃわしゃ食べられる。

もはや食べているのが麺なのかモヤシなのか分からない。

f:id:rudders:20180619231834j:plain

▲モヤシがどっさり!「ラーメン福」の“普通の”ラーメン。しかし……

 

しかもそれだけではない。このモヤシ、注文時に「野菜多め!」という呪文の言葉を投げかけると、2倍近いボリュームの山盛りモヤシがトッピングされるのだ!

そのモヤシのインパクトは、まるで髪の毛が逆立ったスーパーサイヤ人である。

 

f:id:rudders:20180619231613j:plain

▲「ラーメン福」の魔法の呪文「野菜多め」。写真は早く撮らないとモヤシが重みに耐えかねて沈んでいく……

 

え、これってひょっとして二郎系なん? もしくは(二郎)インスパイア系なん?

そんな疑問が脳裏をよぎる。

しかし実は、二郎系とはな〜んの関係もない名古屋で独自に発達したオリジナルの流派なのだ。

コクがあってマイルドな味わいの背脂醤油スープ。そして麺は、二郎系のような極太ではなくいたってスタンダードなストレート麺である。むしろ二郎系のような攻撃性はなく、昔ながらの「古き良き」ラーメンの風情すら漂わせる。

 

f:id:rudders:20180619234556j:plain

▲麺はストレートの中細麺。二郎系の極太麺とは一線を画する

 

そして、メニューがめちゃめちゃシンプル。

麺ものは「ラーメン」(600円)とチャーシューメンの「特製ラーメン」(800円)の2種類のみという潔さ。

あとは、ギョーザ(350円)とかライス(100円〜)とか、わずかなサイドメニューが用意されているだけだ。

 

f:id:rudders:20180619231645j:plain

▲「ラーメン福」のメニュー表。潔いほどシンプル(一部店舗では券売機)。そして水はセルフサービス

 

「ラーメン福」のラーメンは、一見すると(モヤシの量以外は)ごく普通のラーメンだ。しかし、なぜか妙な中毒性がある。一度ハマると抜け出せない“沼”ポイントは、「食べ飽きない」ことにある。

今回は地元民しか知らない名古屋のご当地ラーメン「ラーメン福」の世界をご紹介しようではないか。

 

専務に話を聞いてきた

さて今回、取材にうかがったのは名古屋市港区にある「ラーメン福 土古(どんこ)店」。

この店舗の2階に、ラーメン福チェーンを統括する「株式会社アライ」がある。

f:id:rudders:20180619235236j:plain

▲ラーメン福土古(どんこ)店。2階が株式会社アライのオフィス

 

出迎えてくれたのは、株式会社アライ専務取締役の大倉悦子さん。

創業者夫妻の娘さんで、「ラーメン福」の成り立ちから現在までの歴史を知る、貴重な存在といえる。

 

f:id:rudders:20180619231628j:plain

▲話を聞いた専務の大倉さん。「私こんなガラじゃないですよ〜」という言葉を振り切って「イエ〜」と(無理やり)はしゃいでいただいた

 

まずは、「ラーメン福」の成り立ちから、じっくりと話を聞かせてもらった。

大倉さんによれば、「ラーメン福」のオープンは昭和53年4月のこと。現在の十一屋店(名古屋市港区)が1号店に当たる。

昭和53年といえば、今年(2018年)でちょうど40周年を迎える。名古屋民としては実にめでたいことではないか。 

 

f:id:rudders:20180620000604j:plain

▲開店当時の十一屋店。昭和を感じさせるが基本イメージは変わらない

f:id:rudders:20180620070008g:plain十一屋店は、私が中学2年生のときにオープンしたんです。当時は両親と、数人のパートさんだけのお店でした。

 

と、見せてくれた開店当時の写真は、ビックリするほどタイムラグを感じない「福っぽさ」が見て取れる。

40年間ここまでオリジンのテイストを受け継いでいる(しかも陳腐化しない)のは、もはや名古屋ラーメン界の生ける伝説である。

 

f:id:mesitsu:20180625100945j:plain

f:id:rudders:20180620000552j:plain

▲開店当時の十一屋店の外観と店内。ビックリするほど今の雰囲気と変わらない。ちなみに開店祝いの花を客が持ってくのは名古屋の風習である

 

ルーツは京都のしにせラーメン店のFC

さて、「ラーメン福」は開店当時は「ラーメン藤」という店名だったことは、オールドファンの中でも遠い過去の記憶となる。

しかし「ラーメン藤」と聞いて、ラーメン通ならピンとくる人もいるだろう。実はこの「ラーメン福」、元々は同名の京都のしにせラーメン店「ラーメン藤」のフランチャイズだった。脱サラした創業者(大倉さんの父)が京都の本店でラーメン作りを学び、名古屋で開店したのだった。

こちら、京都の「ラーメン藤 本店」。

 

この味は、京都生まれの名古屋育ちというわけだ。開店当時はタレを京都の本店から仕入れ、麺は岐阜の系列の製麺所で仕入れていたそうだ。

フランチャイズだけあり、当時は京都の味に忠実だったそう。しかし、転換期が1989年(平成元年)に転機が訪れる。

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain麺やスープを内製化することになり、平成元年の法人設立をきっかけに、グループを離れることに。そのとき、店名を『藤』から『福』に改めたんです。

 

そこから、独自の道を歩み始めた「ラーメン福」。

ちなみに現在の「福」と「藤」のラーメンを比べてみよう。こちら、現在のラーメン福のラーメン。

f:id:rudders:20180620001155j:plain

 

そしてこちら、現在の「ラーメン藤 本店」(京都)。

確かに約30年で、似て非なるラーメンに分化している。

 

深北☀️朝練から京都まで🍜食べに😋 #たまランチ#ラーメン#🍜 #ラーメン藤本店

freedomstyleさん(@freedomstyle7)がシェアした投稿 -

 

ちなみに「新福菜館」といい「天下一品」といい「横綱」といい、なぜか京都発祥で有名どころのラーメンはこってり風味が多いんだよなあ。「京都人は薄味じゃないのかよ」と妙な疑問が沸くのだが、それは今回のお題には関係ない……(以上、筆者の独り言)。

 

味のヒミツは羽釜でスープを炊くときの“グラグラ感”

そんな「ラーメン福」だが、実は根幹部分はシッカリとルーツの伝統を守っている。

スープを炊くのは、“京都式”のおくど(かまど)に3連星のように並んだ、熱効率の良い羽釜。これで朝から豚肉と背脂、そして野菜をグラグラと煮込んでいる。

f:id:rudders:20180619231730j:plain

▲昔から変わらない、「京都式」3連のおくど(かまど)と羽釜

 

この“グラグラ”が実は重要で、バーナーの火力で独特のコクとうま味がでる。それが、「ラーメン福」のスープのキモだ。

 

f:id:rudders:20180619231743j:plain

▲スープを羽釜でグラグラと煮込む。ひたすら煮込む

 

f:id:rudders:20180620072255j:plain

▲背脂が溶け込んだ醤油スープ

 

ちなみにスープは各店で仕込んでいるので、お店ごとに微妙な「個性」が出るという。だからコアなファンになると、お気に入りの職人さんが作ったお店に出入りするようになる。

たまにお店の配属が変わると、その職人さんを追っかけるファンもいるとかいないとか……。

推しメンか!!

 

魔法の呪文「野菜多め」はあくまでサービス

さて、「ラーメン福」の代名詞といえば、ボリューム満点のモヤシである。

普通にオーダーしても山盛りなのに、多くのお客さんは口々に「野菜多め!」とオーダーし、トングでモヤシがどーんと盛られてバンバンお客さんの前に出される光景は、圧巻だ。

しかも「野菜多め」でも、料金は同じ。無料サービスである。二郎系が名古屋に進出するはるか昔から、名古屋ではこんな光景が当たり前だったのだ。

f:id:rudders:20180619231819j:plain

▲トングでモヤシをつかみ、ドーン!と盛る。ちなみに「野菜少なめ」も当然できる

 

でも、何かおかしい。メニューのどこにも「野菜」の記述はないのだ。

大盛りにできるとも書かれていない。それでもお客さんは「野菜多め」と、当たり前の権利主張のようにオーダーする。

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain当店のラーメンは、普通でもモヤシの量が200グラム以上あって、十分多めです。ですから私の友達にも、開店当時から『モヤシラーメン』って呼ばれてました。

 

確かに言われてみれば、京都の「ラーメン藤」も野菜(モヤシとネギ)が多そうだ。

その流れを当然受け継いでいるわけだから、そもそもモヤシが多いというのは当然と言えば当然だ。

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain20年くらい前からですかね。お客様の中で「追加料金を払うから、モヤシを増やしてくれ」という方が現れたんです。それで、そういう方には無料サービスでモヤシを多めにしてあげていました。それが口コミで広がって、いつの間にか「野菜多め」が当たり前になっちゃって……(笑)。

 

なるほど。

「野菜多め」は、あくまでサービス

だから、メニューには載ってない……。 _φ(・_・メモシテオコウ。

 

f:id:rudders:20180619231749j:plain

▲野菜のボリュームは「モヤシ少なめ、ネギ多め」などトリッキーなオーダーもOK

 

ちなみに「野菜多め」でのモヤシの量は、350グラムほどになるのだそう。ただそうなると、やっぱり聞きたいのは「どこまで野菜多めにできるの?」ってことだ。

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain実は一時期エスカレートして「別皿でモヤシが欲しい」というお客様まで現れたんです。それはさすがにキツいので、お断りさせてもらいました。

 

いやー、いつの時代にもいるんだなぁ、そういうお客さん……。

 

ラーメンダレは何のためにあるのか

「ラーメン福」のカウンターには「ラーメンダレ」が置いてある。最近の二郎系ラーメン店にもよくあるアイテムだ。

普通は「味が薄いと感じた時に、かけて調整する」のが用途。しかし、「ラーメン福」はちょっと事情が違うという。

f:id:rudders:20180619231709j:plain

▲カウンターに置かれているラーメンダレ(左から2番目)

 

実は、大倉さん自身は

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain味のバランスを考えると、(野菜大盛りじゃなくて)普通盛りの方がおいしく食べられると思うんですけどね〜。

 

と、ミもフタもないことをおっしゃる(大汗)。

当たり前だけれどモヤシ自体には味がない。だから、モヤシの水分でスープの味は薄くなりがちだ。

それが「野菜多め」になると、余計のことだ。

 

f:id:rudders:20180620002328j:plain

▲当然、モヤシには味がない。モヤシが多いほど水分で味が薄まる

 

じゃあどうする、ということで登場したのが、カウンターに置かれているラーメンダレというわけだ。モヤシでスープが薄くなるのを、ラーメンダレで味を足すことで防ぐ。つまりは、「野菜大盛り」によって味が薄くなる弊害を解消する、苦肉のアイテムだったのだ。

 

おいしい食べ方をレクチャーしてもらう

以上の情報を踏まえ、おいしいラーメン福の食べ方を、直接レクチャーしてもらおう。

大倉さんいわく、「ラーメン福」のラーメンは、麺とモヤシを別々に食べるのではなく「麺とモヤシを一緒に食べるのが一番おいしい」そうだ。

 

f:id:rudders:20180620002559j:plain

▲中細麺とモヤシだからこそのコンビネーション。これが「ラー福」の極意!


二郎系のゴワゴワ太麺と違い、「ラーメン福」の麺はあくまでスタンダードなストレートな中細麺。小麦粉麺のシコシコした食感に、モヤシのシャキシャキした食感が加わり、「ラーメン福」のうまさがある。

そして、麺とモヤシの太さが近い。だから、一緒に食べても違和感がないのだ!

しかし問題は、麺の上にうず高く積み上げられたモヤシである。モヤシが麺の出現を邪魔しているのだ。なんとか、麺を上まで引き上げねばならない……!

そこで、大倉さんから的確なアドバイスが!!

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain私は、モヤシをレンゲで押さえて(山を崩れないように固定し)、モヤシの下から麺を引っ張り出してモヤシの上にのせるんです。こうすると、麺についたスープの味がモヤシにも染み込むので、さらにおいしいですね。

 

なるほど。

と、いうわけで、大倉さんに直々に実演してもらった。

youtu.be

 

この技は、

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain特に名前はありません(笑)。

 

とのことなので、“固めてひっくり返す”という意味を込めて「モヤシスープレックス」とでも名付けてしておこう。

この技のポイントは、なるべく早めに麺を引きずり出すこと。麺がスープを吸って重くなると、麺を引きずり出しにくくなるのだ。

 

f:id:rudders:20180620002822j:plain

▲麺がスープを吸う前に、モヤシの下から麺を引きずり出す

 

そのほか、上級者には二郎系でもおなじみの「天地返し」もいい。麺とモヤシをひっくり返すことで、モヤシがスープを吸っておいしく食べられるとのこと。

この技はなぜか、「ラーメン福」の公式サイトでも紹介されている。

ただし大倉さん自身が

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain私、あんまり上手にできないんですよ(笑)。

 

と言うくらいなので、多少のテクニックが必要とされる。

youtu.be▲公式サイトでも紹介されている「天地返し」

 

そのほか、筆者のオススメはモヤシの中央に穴を開けてそこから麺を引っ張り出す技法である。これはこれで、麺をほじくり出す前にチャーシューが出てきたりして、宝探しのような面白さがある(どこがだよ)。

こちらは個人的に動画にアップ。

「ドーナツスペシャル」とでも言っておこうか(すまんネーミングセンスが……)。

 

youtu.be▲モヤシの中央を突破して麺をレスキューする。しかし先に出てくるのはチャーシュー(笑)

 

胃袋を刺激する脇役も見逃せない

「ラーメン福」にはサイドメニューもある。オールスターを紹介しておこう。

 

スタミナ辛子

f:id:rudders:20180620003320j:plain

f:id:rudders:20180620003332j:plain

▲スタミナ辛子は入れる量に注意。一気に入れると味が変わりすぎる??

 

(かつての)京都本店にもあった唐辛子の薬味を独自に改良した、大倉さんのお母さん(=創業者)によるオリジナル。唐辛子やニンニク、ダシなどいろいろなものが入った、辛くて奥深い味わいだ。ラーメンの味が単調になったところに投入すると、ぐっと味が引き締まる。

 

f:id:rudders:20180620070008g:plain当時は、母が自宅の台所で作っていました。

 

ちなみにこのスタミナ辛子、350円で販売もしている。名古屋みやげにいかが?

 

ギョーザ

f:id:rudders:20180620003835j:plain

f:id:rudders:20180620003828j:plain

▲普通だけどうまい。それはラーメンもギョーザも同じ。これぞ福マジック!

 

ギョーザ(350円)は、前日に収穫された愛知県田原市産などのキャベツ、青森県産のニンニクなど鮮度のいいものを使用。肉多めでジューシーだ。中身のあんは土古店で集中して作り、各店で包んでいる。

 

チャーシュー

(通常の)ラーメンに入っているのはモモ肉のチャーシュー。

ほぐれているので、麺やモヤシと一緒に口に入る。味を複雑にする第3のアイテム。

f:id:rudders:20180619231803j:plain

▲こちら、ラーメンに入るモモ肉のチャーシュー

 

f:id:rudders:20180620004851j:plain

▲ラーメンに入るとこんな感じ。麺とモヤシとチャーシューのコラボ、これでまずいワケがない

 

かたや、特製ラーメン(チャーシューメン)に入っているのは、雌豚限定の肩ロース。こちらはシッカリした肉質で、食べ応えがあるのが特徴だ。

この肩ロースとモヤシを盛り付けたおつまみ「チャーシュー盛付」(500円)は、一人じゃちょっとツラいくらいのボリュームだ。

 

f:id:rudders:20180620010008j:plain

▲特製ラーメン(チャーシューメン)に入る肩ロースのチャーシュー。歯応えしっかりで食べ応えあり

 

f:id:rudders:20180620010015j:plain

▲こちら、おつまみの「チャーシュー盛付」(500円)。肩ロースとモヤシのボリュームがハンパない!グループで1つオーダーするのが正しい

 

玉子

f:id:rudders:20180620010707j:plain

▲玉子は玉子なので写真としてはどう面白そうに撮影しても玉子である

 

玉子(50円)はカウンターの上のザルにあり、セルフサービスで。

いたって普通のゆで玉子だが、そのまま食べても、ラーメンに入れても、ご自由に。なお店舗によっては、生玉子を提供しているところもある。生玉子を入れたら麺やモヤシに絡んで、新たな味のステージになる(かもしれない)。

 

f:id:rudders:20180620010714j:plain

▲とりあえずラーメンの中に入れてみた

 

幻の(?)テレビCMについて聞いてみた

実は公式サイトによると、「ラーメン福」はテレビCMを放映している。

しかし名古屋在住の筆者自身、そんなCM、見たことないのだ。いったいいつ放送しているのかを大倉さんに聞いてみた。

 

f:id:rudders:20180620070630g:plainあのCMは、スポット放送なんです。ですから、いつ放送されるとは言えないんですね。比較的多いのは年末年始。ランダムに入るので時間も分からないです。


うーむ。「見ることができた人には、幸せが舞い込んでくる」的な、都市伝説的なアレだと思った方がいいのだろうか。

 

ちなみに公式サイトで、そのCMは見ることができる。

youtu.be▲公式サイトには3つのTVCMが紹介されている

 

マスコットキャラクターについても聞いてみた

「ラーメン福」のマスコットキャラクターの名前は、そのまんま「福ちゃん」だ。お店の看板などで、丼を片手にスマイルを振りまいている。

f:id:rudders:20180619231702j:plain

▲福ちゃん(師勝店にて)。ちょっと萌えキャラ

 

実はこの福ちゃん、数年前、2代目にリニューアルしてちょっとカワイクなったそうだ(鬼太郎の猫娘か!)。

しかし2018年現在、お店の看板は、改装のタイミングで初代と2代目の福ちゃんが混在しているという。お店ごとに福ちゃんチェックをするのも面白そうだ。

 

f:id:rudders:20180620070630g:plainちなみにLINEスタンプもありますよ! ぜひ利用してください。

  

「ラーメン福」は当分、愛知県限定

そんな「ラーメン福」の今後は、どうなっていくのだろう? 東京進出などは考えているのだろうか。

 

f:id:rudders:20180620070630g:plain2013年(平成25年)に、のれん分け店舗「黄金店」(名古屋市中村区)が出店しました。ただ、のれん分けはできてもフランチャイズはできないです。スープの仕込みをマスターした人でないと、同じ味が出せませんから。

 

こちら、その黄金店。のれん分けということで、直営店とは少しカラーリングが異なって赤と白が基調。

 

f:id:rudders:20180620070630g:plainただ、今後はのれん分けの店舗が増えていくことになると思います。愛知県内でいえば、来年(2019年)に三河エリアで初めて開店を予定していますよ!

 

喜べ三河民! 平成が終わる頃には、三河で「ラーメン福」が食べられるぞ!!!
他県民の方々は、すいませんが愛知に来てください(っても、ちょっと郊外にしかないんだよな……笑)。

 

ちなみに名古屋南部の「ラーメン福」分布を見ると、まるでケンシロウの「胸の七つの傷」のように見えるのは筆者だけだろうか……。 

▲南部の支店に注目。わからなかったらここはスルーしてくれ

 

「40周年 至福祭」を見逃すな!

ちなみに「ラーメン福」では、6月22日(金)〜24日(日)の3日間、「40周年 至福祭」を開催する。

f:id:rudders:20180620011320j:plain

▲40周年の「至福祭」のポスターがこちら

 

ここでは、回数券(ラーメン11杯)を5,500円で販売。

超お得だ!
また、麺類1杯につき1枚スクラッチカードがプレゼントされ、「ラーメンを40日間無料で食べられるパスポート」(!!)などプレゼントが進呈される。詳しくは以下の公式サイトを参照のこと。行かない理由はないはずだ。

ra-menfuku.com

 

お店情報

ラーメン福 土古店

住所:愛知名古屋市港区川西通3-9
電話番号:052-653-1587
営業時間:11:00~23:00
定休日:火曜日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:イシグロアキヒロ

f:id:Meshi2_IB:20180419143927j:plain

名古屋を拠点に活動するフリーライター。カリブ海音楽と台湾ラーメンとキンキンに冷えたビールと朝ドラ「カーネーション」とハロプロをこよなく愛する。

過去記事も読む

東海地方のご当地セルフうどんチェーン「どんどん庵」は最強にお値打ち&使い勝手のいい満腹スポットだ

f:id:Meshi2_IB:20180419124118j:plain

さぬきうどんのブームに乗り、今や全国各地にあるセルフうどんチェーン。2000年代半ばから後半にかけてが出店のピークだったようだが、愛知県にはそれよりもはるか前からセルフうどんチェーンがあったのである。

愛知県を中心に展開する「どんどん庵」がそれだ。今回は、地元で知らない人はいないほど有名なご当地セルフうどん店の利用方法とその魅力にあらためて迫ってみようと思う。

 

まず麺を温めるべし

「どんどん庵」は、'78年、東区大幸に第1号店となる砂田橋店のオープンを皮切りに、現在では愛知県と岐阜県、三重県に35店舗展開している。

f:id:Meshi2_IB:20180419124142j:plain

今回は、観光やビジネスで名古屋に来た人も楽しめるように、名古屋駅太閤通口から徒歩4分の場所にある「どんどん庵 名駅西店」を訪ねた。

では、「どんどん庵」のシステムを注文から実食まで順を追って説明しよう。その合間にお店を運営する、株式会社サガミチェーンの広報担当者にこだわりポイントも聞いてみた。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124202j:plain

※写真の価格はイベント開催時のものです。

まず、メニューを選ぶ。

通常、陳列台に並ぶうどんときしめん、そばの丼から好みのものを選ぶのだが、ここ名駅西店は、スタッフさんに直接オーダーしてレジで商品を受け取るシステム。温かい麺のほか、つゆも麺も冷たい“ころ”やざる、カレー、味噌も用意している。

 

無類のきしめん好きの私はやはり、「きしめん」(並盛/300円)を注文。 

f:id:Meshi2_IB:20180419124221j:plain

次は、麺を温める作業。名駅西店では麺の温めもお店側でやってくれるが、ゆで釜を完備したお店では自分で行う。

うどんは15~20秒、きしめんは10~15秒、そばは5~10秒がだいたいの目安。おいしく食べるポイントは、しっかりと湯切りすること。それと、麺を温めるのと同時に、ゆで釜から少しずつ出ているお湯で丼を温めておくのもポイントだ。

 

「名駅西店はFC店でして、オーナーのこだわりを随所に反映させています。メニューを直接オーダーして麺の温めもしてくれるのもそのひとつです。また、玉子丼やカレーライスなど他店にはないメニューも用意しています」(広報担当者)

 

次にトッピングを選ぶべし

次は、天ぷらやフライなどのトッピングやおにぎり、いなり寿司などサイドメニュー選び。天ぷらは常時8種類、フライは常時4種類を用意している。

少し前に某セルフうどんチェーンでご飯と天ぷらを注文して作る天丼が話題になった。「どんどん庵」でもたまにその食べ方を見かけるものの、残念ながらお店としては推奨していないようだ。

f:id:Meshi2_IB:20180419124239j:plain

※写真の価格はイベント開催時のものです。

 

「天ぷらは、つゆに浸して召し上がっていただくことを前提に粉の配合を考えています。ですから、ご飯にのせて天丼にするのはあまりおすすめしていません。丼ものでは、どて丼やねぎトロ丼、かつ丼、醤油たれかつ丼を用意しています。ここ、名駅西店では、かつ丼がダントツ人気です」(広報担当者)

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124259j:plain

ちなみに、こちらが「かつ丼」(520円)。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124324j:plain

豚かつは厚すぎず、薄すぎず、絶妙な厚み。しっかりと煮込まれているので、衣には自家製の丼つゆがシミシミ。

そして、この玉子のとろみ加減! 具とご飯を見事に一体化しているではないかっ! チェーン店とは思えないほどのこのクオリティーの高さ、ダントツで好評なのは納得だ。

 

薬味はのせ放題!

f:id:Meshi2_IB:20180419124352j:plain

おっと、話が逸れてしまった。トッピングの選択だった。数ある天ぷらの中でも一番好評という「野菜のかき揚げ」(100円)をセレクト。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124404j:plain

注文したきしめんをレジで受け取り、その際に天ぷらの代金と合わせて支払う。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124421j:plain

そして、ゆで上げた麺の上に薬味のネギをのせる。入れ放題なので、いつも私はテンコ盛りにする(笑)。

しかし、今回は広報の方たちがいらっしゃるので写真映えする程度にしておいた。……って、なんてチキンなんだ、私は。

薬味はほかに生姜とワサビを用意している。ころやざるを注文したときにどーぞ。

※つゆを注いでからネギをのせるお店もあります。

 

選べるつゆ、自己流ブレンドもOK

最後につゆを注いで完成!「どんどん庵」では、赤と白の2種類のつゆのどちらかをチョイスする。

f:id:Meshi2_IB:20180419124450j:plain

サーバーに「名古屋味」と書かれた赤は、たまり醤油を使った名古屋では定番の味。

一方、「あっさり味」の白は、白醤油を使用。さらに、昆布もくわえて関西風に仕上げてある。ベースとなるダシは、名古屋のうどん店でよく使われているムロアジがメインとか。

 

「赤つゆと白つゆは、いずれも朝と夕方にお店でだしをとって仕込んでいます。白つゆは、さぬきうどんチェーンに対抗すべく、7年前に導入しました。地元で慣れ親しんだ赤つゆの方が人気ですが、3割のお客様は白つゆを選んでらっしゃいます。中には赤と白を半々とか、赤7と白3とかブレンドされる方もいます。自分流で楽しんでください」(広報担当者)

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124508j:plain

名古屋人の私はもちろん、赤。

つゆも多めに入れるのがおいしく食べるポイントだ。つゆを注いでいると、ダシの香りが鼻腔をくすぐる。たっ、たまらん! 1秒でも早く食べたい!

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124544j:plain

で、完成したのがこちら。シンプルな「かけきしめん」。

具が薬味のネギだけなので、少々寂しいものの、わずか300円で食べられるのはウレシイ。そばも並盛は300円。うどんは並盛280円と、一番安い。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124606j:plain

トッピングに選んだ「野菜のかき揚げ」をのせると、見た目も味も豪華に。つゆがじゅわっと染みた天ぷらがうまいのなんのって。

これで合計400円は安い。聞くところによると、創業当初はうどんが一杯100円だったという。何度か改定されて現在にいたるわけだが、280円~300円の麺類に100円~130円の天ぷら、100円~120円のいなり寿司・おにぎりをつけても、だいたい500円くらい。やはり、お値打ちだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124629j:plain

こちらは「いか天ぷら」(130円)をトッピングした白つゆのきしめん。写真だと分かりづらいかもしれないが、つゆの色はかなり薄い。赤つゆと違って、醤油臭さが少ないため、白つゆの方は後味がスッキリしていて、天ぷらとの相性が良い。名古屋のうどん店で天ぷらや玉子とじなどは白つゆで出されるのは、そのためかもしれない。

 

通っても飽きない豊富なメニュー

「どんどん庵」の素晴らしい点は、そのメニューの豊富さ。かなりの頻度で通っても飽きないほどの充実さなのだ。

f:id:Meshi2_IB:20180419124652j:plain

たとえば、ちょっと肌寒い日やこってり味が大好きな人にオススメなのは「みそきしめん」(390円)。

名古屋ならではの豆味噌仕立てのつゆに合う「温泉玉子」(80円)をのせると、なおうまい。

このつゆの味、東京大阪あたりの外食チェーンが見よう見まねで作った中途半端な名古屋風の味ではなく、子どもの頃からずっと食べてきた味そのもの。

もう、涙が出るほどうまい。

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124715j:plain

私、永谷のオススメは、きしめんの「ころ」に「いか天ぷら」と「大根おろし」(50円)をトッピングした「いかおろしきしめん」(合計480円)。これからのシーズンには毎日でもすすりたい一品である。

あ、薬味のネギを大量に、ワサビも多めにのせるのも忘れずに。ひと口目にそのまま食べた後、いか天の衣につゆが少しだけ染みたのを確認する。そして、染みていない方の衣に大根おろしとネギをのせてパクリ。

これがもう、もん絶するほどのうまさ! ワサビを溶かしたつゆにいか天をくぐらせても最高だ。

ぜひ、お試しあれ!

 

f:id:Meshi2_IB:20180419124840j:plain

 

お店情報

どんどん庵 名駅西店

住所:愛知名古屋市中村区則武1-11-16 コーポルネッサンス1階
電話:052-452-2831
営業時間:11:00~22:00(土曜日・日曜日・祝日は~20:30)
定休日:無休
ウェブサイト:https://www.sagami.co.jp/dondon-an/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

名古屋が世界に誇るトンデモ喫茶店「マウンテン」、実はホンモノ志向だった

f:id:Meshi2_IB:20180419140738j:plain

全国から「登山者」が絶えない

カフェブームに沸く日本にあって、豪華なモーニングセットやコメダ珈琲店など独自の喫茶店文化を築いてきた名古屋

そんな喫茶店のメッカ・ナゴヤにあって、その異色さで全国に名をとどろかす魔境がある。それがご存じ「マウンテン」だ。

f:id:rudders:20180412000710j:plain

▲すがすがしいアルプスの看板に今日も心が癒される

 

巨大でまさにマウンテンのような「かき氷」。

各種メディアを賑わせてきた「甘口スパシリーズ」。

そのほかにも数々の名物メニューが存在する同店のマニアたちからは、その味わいを堪能する行為をいつの間にか「登山」と呼ぶほどになった。

TwitterやInstagramには、そんな登山者の投稿があふれかえっている。

 

 

そんな異界的な重力が強烈な「マウンテン」だが、以前から気になっていることが2つあった。筆者は名古屋在住ということもあり、「マウンテン」は学生時代から何度も客として通っていたが甘口スパなんてオーダーしたことはなかった(つまり、毎回ちゃんと食事できるメニューを食べていた)。

そして仕事としても何度も取材しているが、取材するたび、店主はかねがね「ウチの材料はみんな一級品だでよぉ!」と、名古屋弁丸出しで自慢に自慢を重ねまくっていたことだ。

 

f:id:rudders:20180412000829j:plain

▲ゆったりくつろげる店内に座っていると心も貴族のように豊かになる

 

「マウンテン」は、みんなが思っているゲテモノ(?)メニューだけではない。

素材にこだわり、地元民が愛するメニューもそろえる、ちゃんとした喫茶店でもあるのだ。しかしそんな一面はまったくといってほどメディアで伝わっていない。

 

そんな「マウンテン」が、2017年1月で50周年を迎えた。個人経営の喫茶店が大々的な「50周年に感謝」と、新聞広告を打ったことも地元ではちょっとしたニュースになった。

 

 

しかし最近、しばしば「オヤジがお店にいない」と言う気掛かりな話を聞くことがあった。ここは一つ、久しぶりに“登山”をしてみようじゃないか。以前から気になっていたことも、店主にぶつけてみようじゃないか。ということで、「マウンテン」を久しぶりに訪問したのである。

 

f:id:rudders:20180412000714j:plain

▲2007年に改装された店舗は山小屋風である

 

創造主は元気に神々しく働いていた

前置きが長くなった。

ということで、2018年3月某日。「マウンテン」を取材に訪れた。このお店の取材アポイントは実に簡単である。「取材したいんですけど」「いつでもええよ」。以上。実にメディア慣れしている。そして訪れた「マウンテン」。そこに名古屋喫茶店業界のレジェンド、マウンテン店主・加納幸助氏が元気な姿を見せていた。

f:id:rudders:20180412000719j:plain

▲彼こそが創造主、加納幸助氏である

 

「おお、来たな。ナニ作る? 甘口抹茶(スパ)にするか?」

 

顔を合わせるなり、いきなり企画をぶち壊すようなことを言うのが幸助氏である。2人で立ったままの攻防が続く。

 

筆者:「いや実は……。今回はですね、マウンテンさんが実はちゃんとした食材を使った、本格的な喫茶店だってことを掘り下げたいんですよ!」

 

「おお〜そうか。うちの材料は、み〜んな上等だでよ。みんな。みんなだて!」

 

筆者:「ですよね」

 

「で、甘口(スパ)を作ってええんか?」

 

この空気感をご理解いただけるだろうか。しかしこれはいつものことだ。相手は神なのだ。実際、このお店に限っては、そのかみ合わなさすらもどこか愛しく感じられてくる。

ただし、このまま加納氏のペースに持ってかれてはいけない。なんとか軌道修正を試みつつ「まずは話を聞きたい」と言うことでテーブルに座っていただいた。

加納氏はマシンガントークの達人である。まずは加納氏は人生哲学をとうとうと語り始めた。

 

「俺はよぉ、自分の信念はずっと押し通して来たんだわ。自分が、こう! と思った仕事を貫かなかん。周りはヨォ……(以下略) 」

 

取材の趣旨から加納氏の言葉をひもとくと、要するに、自分は信念を持ってメニューを作っている。だから、食材にも妥協していない、ということだ(意訳)。

 

筋金入りのホンモノ主義

実際、「マウンテン」の食材はかなりのレベルに達したものばかり。驚かされるのは、その多くは自家製だということだ。代表的なものを解説していただこう。

まず、抹茶スパのスパソースなどに使われる抹茶は、日本有数の抹茶の名産地として知られる愛知県西尾市産である。

 

「やっぱり一番ええな! 安定してる。歴史のあるもんは、変なものとは違うでよ!」

 

西尾市といえば、筆者がファンのモーニング娘。'18、12期メンバー牧野真莉愛ちゃんの出身地である。特技は高速茶摘みだという。しかしまぁ今回の案件には関係ない。

 

 

次に、あんこの小豆は北海道の大納言小豆を使用している。

 

「ウチのあんこは、甘からず、辛からず。超一流のこだわりのあんこ。金賞もんだわ。食うならマウンテンのあんこ。作り方? 秘伝だて!! カカカカ」

 

食べてみるか? と言われ、あんこだけ試食。

うん、確かに絶妙な甘さでこりゃうまい。

しかし、なぜあんこだけ食べなきゃいけないのか……。

f:id:rudders:20180412082818j:plain

▲これが「金賞もん」という、あんこ。「マウンテン」の味の根幹をなす神食材である

 

なぜ土鍋? 考えるな、感じろ!

ここで突然、店主の加納氏に匠(たくみ)のスイッチが入った。

「今年の夏は暑くなる。だから、“しるこの氷”を開発したんだわ。今からとりあえず作ったるわ!」

と、おもむろに厨房に去って行ってしまった。

そして数分後、出てきたかき氷は……。

 

f:id:rudders:20180412000729j:plain

▲なんで土鍋????

 

え? 

な、なんで土鍋なの???

 

f:id:rudders:20180412000736j:plain

▲とりあえずお茶目なポーズの加納氏

 

その名も新メニュー「しるこの氷」(仮メニュー名、価格未定)である。

 

「この、土鍋で出すのがイイんだわ! カッカカカ」

 

使い込まれた茶色の土鍋&黒いしるこソースと、どうもフォトジェニックな感じではないが、加納氏はお構いなしである。

勢いに押されて山盛りの氷をほじくると、中から姿を現すのは自慢のあんこと抹茶アイス。

濃厚フレーバーの抹茶とくどくない甘さのあんこが絶妙なハーモニーを奏でる。もちろんキモは、氷にかかるしるこソースである。

うん、確かに食べれば「普通においしい」。ただし見た目のインパクトがそんな感情すら吹き飛ばしてしまうのである。

 

f:id:rudders:20180412000741j:plain

▲氷を食べ進めると自慢のあんこと抹茶アイスが顔を出す。マウンテン甘口夢の競演である

 

ちなみに、パスタには既にあんこソースを使った「しるこスパ」(900円)がメニューに記載されている。

こちらはインスタ映えするのかしないのか。と気になって後で画像を探してみたら、親切にTwitterで動画を上げてくれていた人を発見。そこに映っていたのは、もはやパスタとは名ばかりのあんこの地獄谷であった。

 

 

こういった「しるこソース」はもちろんのこと、パスタやかき氷のソースはすべて加納氏よる自家製。もはや開発とか創作といったレベルではない。錬金術である。

ちなみに、もっとも開発に苦労したのは見た目真っ黒な「イカスミのかき氷」(800円)のソースだそうで、

 

「まぁ、イカの臭みを取るのに一苦労したて〜、もう、ノーベル賞もんだでよ! カッカカカ」

 

お、おぅ……。

 

 

なぜ辛くした? やっぱり考えるな! 感じろ!!

加納氏のスイッチは入り続ける。突然、

 

「マンゴースペシャルも食え!」

 

と、言ってきた。

聞けば、宮崎県産マンゴーが話題になったときに思いついたかき氷のメニュー(800円)だそうで、これもソース作りに苦労したという。

f:id:rudders:20180412000813j:plain

▲熱弁を振るう神の勢いに圧倒される。実に神々しい

 

半ば言われるがままに口に運ぶと、うん! 甘いマンゴーの口当たりがおいしい、普通のかき氷だ(サイズは普通じゃないが)。

……と安心して食べていると、舌先がしびれる強烈な辛みが!

か、辛い。予想外の辛さである。なんだこれ!

 

よおく見ると、黄色いマンゴーソースのあちこちに、身を隠すようにオレンジ色のチリソースがかかっているのだ。

「辛ぇだろ〜が! これも発明だでよ。カッカカカ」

 

なぜマンゴーを辛くしたのかまったく理解できないが、これも好評メニューだという。おそるべし「マウンテン」。マンゴーの身をつぶして作ったソースと、5種類くらいの辛味をブレンドしたチリソース。

 

「複雑な味だから、辛くても食べられるんだて〜!」

 

と、細やかな工夫を披歴する。

f:id:rudders:20180412000818j:plain

▲中にはアイスが埋め込まれている。ここまで崩さずに食べるので必死だ

 

「マウンテン」のかき氷は、崩さずに食べるのが至難の技だ。

加納氏いわく

「上から氷を崩して溶かしながら食べやぁ。これは俺からの命令だと書いとけよ!」

というが、見事にボロボロと崩してしまった。

 

「なんで甘いものを辛くしたんですか?」と素朴な質問をぶつけると、

「辛いもんがあった方がいいがや。甘いもんばっかだでよ!」

ううむ。やっぱり、深いことは考てはいけない。

Don't Think, Feel!!!!

 

パスタの油炒めは名古屋人としてのこだわり(だという)

「マウンテン」の代名詞と言える「甘口スパ」のソースも、当然自家製である。ちなみにパスタは、業者が委託製造した特注麺。モチモチ感が強く、(食べたことがない人のために解説すると)食感はスパゲティとうどんの中間くらい。

意外と知られていないその特徴は、甘口スパでもゆで上げをそのまま使うのではなく、必ず油で炒めていることだ。

 

「ゆで上げはヨォ、すぐ冷めるんだわ。それに名古屋人は、何でも炒めんと納得せんのだわ! カッカカカ」

 

確かにゆで上げ麺そのままなら、パスタも白玉っぽい感じで食べられたかもしれない。しかし油で炒めてこそが、加納氏の哲学だ。「マウンテンのマウンテンたる理由」なのだ。筆者も名古屋人だが、「名古屋人は油で炒めないと納得しない」という話は聞いたことがない。しかしここは神の領域だ。つべこべ言ってはいけない。

私たちはゲテと高級デザートの結界をさまよう民に過ぎないのだから。

f:id:rudders:20180412000902j:plain

▲女性に大好評(だと思われる)「甘口バナナスパ」(900円)。当然パスタは油で炒めている

 

f:id:rudders:20180412000833j:plain

▲冬・春限定の「甘口イチゴスパ」(1,000円)。そりゃ写真撮るよね。そりゃインスタにあげるよね

 

あえてコーヒーとカレーライスをオーダーしてみた

一から十までこんな感じの「マウンテン」である。だからこそ、普通の喫茶店では当たり前のメニューを、あえて「マウンテン」でも注目してみた。

シンプルな「コーヒー」(400円)と日本人の国民食「カレーライス」(750円)である。

f:id:rudders:20180412000853j:plain

▲ぼってりとした厚めのカップ。かすれた文字が歴史を感じる

 

f:id:rudders:20180412000756j:plain

▲登山の疲れた喉を潤してくれるアイスコーヒー

 

「コーヒー? コーヒー豆も、上等だでよ。グアテマラ産の豆をベースに使っとる! カッカカカ」

 

ホットもアイスも飲ませてもらったが、名古屋風のちょい濃厚で酸味を感じる味わいである。ちなみに、つまみがたっぷり付くのもうれしい。これぞ名古屋の喫茶店のセオリーである。

 

f:id:rudders:20180412000837j:plain

名古屋では当たり前のコーヒーのつまみも登山のお供に必携である

 

そして、カレーライスである。ここで加納氏が驚きのこだわりを見せてくれた。

加納氏のコメントにも熱が入る。

 

「カレーはよぉ、仕込みに1週間かかるんだわ。スープから取るでよ。最近は猫もしゃくしもカレーだけど、ホンモノは少ないわ。カレーは大衆化しとるけど、これはこだわりの味。レストランの味だわ、ちょい辛めでよ!」

 

f:id:rudders:20180412000804j:plain

▲実は自慢のカレーライス

 

残念ながら細かな作り方は教えてくれなかったが、山盛り気味のボリュームという以外は、いたってスタンダードなルックス。そして味だけれど、これが直球でうまいのだ。

1週間かけて仕込んだというだけある、深いコク。そして徐々に押し寄せてくる辛さで、うっすらと汗が吹き出る。

 

「こういうのは、あまり出るのはイヤだよな。いっぱい仕込まないかんで。もう100年くらい作っとるしな。フッフフフ、普通の喫茶店じゃ食えん味だて。フランス料理だて!!」

 

と、不敵な笑みを浮かべる加納氏なのだった。

ちなみにこのカレーをベースにした、「スパイス合衆国」というリゾット風のメニューもあるそうだ。

 

神はハイテクを使いこなしていた!

カレーと格闘していると、テーブルの向かいに座る加納氏は、いつの間にかスマホを取り出していじっているではないか!!!!

f:id:rudders:20180412000809j:plain

▲軽々とスマホを操る万能の神

 

思わず「え! スマホ使うのか!!」と思った顔色を察知したのか、

 

「年だから(スマホが)できんなんて思っとったら大間違いだで。うちにはパソコン5台並んどるでよ!」

 

おそらくこの記事もしっかりチェックされるんだろう。

嗚呼。

 

「マウンテン」の味は未来永劫(えいごう)継承される

そんな加納氏だが、少し前に腕をケガしてしまい、現在は息子の隆久さんにお店の経営を任せつつあるそうだ。

隆久さん開発のメニューも増え、着実にマウンテンスピリッツは継承されつつある。

f:id:rudders:20180412000746j:plain

▲左が2代目の隆久さん。魔境の継承者である

 

それでも加納氏は朝5時にはお店に出て仕込み作業にかかるなど、まだまだ意気軒高。お店には夕方まではいるようにしているそうだ。

 

「人が作ったものを売るのは商売じゃにゃあ(じゃない)。自分が生産したもんを売ってナンボのもんだわ!」

 

そんな金言を最後に残してくれた加納氏。「年齢非公表」だが、おおよそのお年は推して知るべし。加納氏が元気な今のうちに、氏の哲学を五感で味わおうではないか!

名古屋が世界に誇る名山は、今日も全国からの登山者を待っている。

 

f:id:rudders:20180412000724j:plain

▲厨房で今日もいろいろなメニューを創造する神

 

お店情報

マウンテン

住所:愛知名古屋市昭和区滝川町47-86
電話番号:052-832-0897
営業時間:9:00〜21:30
定休日:月曜日、年末年始

www.hotpepper.jp

 

日本一のカレーチェーン「ココイチ」第1号店併設の「壱番屋記念館」はファンなら一度は詣でたいカレーの聖地だ

f:id:Meshi2_IB:20180329063529j:plain

国内に約1300店、アメリカや中国、台湾、韓国など海外にも約150店を展開する日本一のカレーチェーン「カレーハウス CoCo壱番屋」、通称「ココイチ」。

その第1号店は、1978(昭和53)年、愛知県・西枇杷島町(現・清須市)にオープンした西枇杷島店であることはファンならずとも有名だ。

 f:id:Meshi2_IB:20180329063543j:plain

2014(平成26)年、建物の老朽化により、リニューアル。

イマドキのしゃれた雰囲気に生まれ変わったが「1号店」のプレートに歴史の重みを感じる。地元のみならず、全国からファンが訪れる“聖地”なのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063612j:plain

今回注目したいのは、西枇杷島店の正面に向かって右隣に併設された「壱番屋記念館」なる施設。私、永谷は仕事で移動する際に、車でここの前をよく通るのだが、ずっと気になっていたのだ。

一宮市にある本社に問い合わせてみると、見学は無料だそう。ただし一宮にある本社に事前予約が必要とのこと(詳細はページ最下部を参照)。

ってことで、予約して行ってきた。今回は「ココイチ」ファンなら一度は詣でたい“聖地”をリポートする。

 

ヒマな時間がお店を育てた

出迎えてくださったのは、株式会社壱番屋・経営企画室の平尾康能さん。

f:id:Meshi2_IB:20180329063630j:plain

「新店舗に建て替えるにあたって、当社の歴史を振り返ることができる施設もほしいということになり、倉庫に眠っていた備品やメニュー、POPなどを展示する記念館という形にしました」(平尾さん)

 

さっそく展示物を見ながら、平尾さんに「ココイチ」にまつわるエピソードをうかがうことに。

そこから日本一のカレーチェーンとして躍進し続けているヒミツを探ってみよう。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063643j:plain

館内に入って左側のショーケースには、店で使用していたお皿やコップなどの食器やメニュー、POPやマッチなどの販促物が年代ごとに所狭しと並べられている。

創業当時のメニュー(写真左上)は木製で、何ともいえない味がある。私はアラフィフだが、この時代の「ココイチ」はまったく知らない。

 

「弊社のルーツは、創業者が経営していた喫茶店でした。市内に2店舗あり、サイドメニューのカレーが大好評だったので、3店舗目をカレー専門店にしようと。それがここ、1号店というわけです。ところが、開店して2日間は、オープン記念の粗品として用意した高級食パン目当てのお客様で賑わいましたが、3日目から閑古鳥が鳴いていたそうです。逆にヒマになったおかげで、お客様一人一人に向き合って、丁寧に接客・調理することができたんです」(平尾さん)

 

よく「ピンチはチャンス」といわれるが、オープン当時から逆境をバネする気風があったということだろうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063657j:plain

少し年代が前進すると、見覚えのあるメニューやお皿が。ハッキリと覚えているのはこの時代から。っていうか、この頃はすでに私は社会人だったと思う。

読者の皆様は中学生か高校生、いや、小学生だった人もいるかもしれない。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063722j:plain

ショーケースの上には年表と写真、その時期に加えられたカレーの写真やユニフォームも展示されている。

あ、そういえば、バナナカレーなんてのもあったな。注文したことはないけど。

 

毎日食べても飽きない味を追求

興味深い展示を眺めていると、担当の平尾さんが「ココイチ」の味の秘密について解説してくれた。

f:id:Meshi2_IB:20180329063736j:plain

「カレー専門店を開店させるにあたって、創業者は東京の人気カレー店を視察したそうです。ところが、どのお店も個性が際立っていて、確かにおいしかったのですが、毎日食べられるかといえば難しい。カレーそのものが個性的な料理だと思うのですが、その個性を強調せずに、毎日食べても飽きない味を追求しました。特徴がない、とも言えますが(笑)、特徴がないからこそトッピングがいかされるんです」(平尾さん)

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063753j:plain

中央のショーケースには、プレゼント用のカレースプーンがズラリ。見覚えがあるのが「グランド・マザー・カレー」のカレースプーン。これ、欲しかったなぁ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063809j:plain

右側のショーケースには、レジ横で売られていたキーホルダーやボールペン、ストラップなどオリジナルグッズを展示。結構なレアグッズぞろいである。中には、時計やミニカーなどもあり、その充実ぶりに驚いた。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063822j:plain

興味深かったのは、「カレーハウスCoCo壱番屋 今日も元気だ! カレーがうまい!!」というゲームソフト。

調べてみたところ、プレイヤーは店員となって、調理や接客など先輩のアドバイスを受けながらシミュレート。各ステージをクリアすると、店長になれるとか。って、新入社員の研修にも使えそうだ(笑)。

 

大食いチャレンジにも歴史アリ

こちらは、かって「ココイチ」が実施していたチャレンジメニューの紹介。これは1300グラム以上の超大盛カレーを20分以内に完食できたらタダになるという、一世を風靡(ふうび)した人気企画だ。

f:id:Meshi2_IB:20180329063836j:plain

高校時代に友人がチャレンジしたものの、残りスプーン一杯分のご飯がどうしても入らずに撃沈したのを覚えている。

 f:id:Meshi2_IB:20180329063849j:plain

1300グラムの超大盛カレーにチャレンジして、タダになるのはチェーン全店を通じて1人1回のみ。途中で席を離れたり、ご飯を一粒でも残したら失格となる。

今では2キロ超えのカレーやスパゲティ、オムライスなど大盛をウリにしたお店がたくさんあるので、1300グラムなんてたいしたことはないと思う方も多いだろう。が、フツーの人は絶対にムリ。このサンプルを見れば、一目瞭然だ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063906j:plain

また、完食した人は、名簿の記入と記念写真の撮影を行うことになっている。店内にポラロイド写真が飾ってあったのを覚えている人も多いだろう。

そのかたわらには、チェーン全店の超大盛達成記録がディスプレーされていたと記憶している。「ライスの量4100グラムとか1300グラムを1分39秒で完食」などなど、驚くべき記録が並んでいた。

ちなみに、1300グラムを完食した最年少記録は9歳。日付には1997(平成9)年3月20日とある。ってことは、今は30歳になっているはず。男性か女性かわからないが、どんな人生を送っているんだろう。

ちなみにチャレンジメニューは、食べ残しによるゴミ問題で2003(平成15)年に中止となった。

 

「ココイチ」は海外進出していた

f:id:Meshi2_IB:20180329063925j:plain

こちらは、海外で展開する店舗の写真と、実際に使われているメニューブックを展示。どの国も、量や辛さ、トッピングを選ぶシステムは日本と同じだが、国によっては日本にはないおつまみやデザートを用意している。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063934j:plain

さらに、インドネシアのメニューが閲覧できる。

インドネシアに限らず、海外の店舗では右ページの「オムレツのカレー」が好評とか。食べてみたいが、残念ながら日本国内の店舗ではこのメニューは用意していない。いちばん近いのが、「スクランブルエッグカレー」だろうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329063948j:plain

私事で恐縮だが、昨年5月にタイ・バンコクへ行った。

高級デパート、「セントラル ワールド」のレストランフロアでココイチを見つけたとき、何だかホッとした。今や「ココイチ」のカレーは日本のソウルフードと言っても過言ではないのだ。

 

秀逸なコピーの「とび辛表」

ところで「ココイチ」が全国制覇、つまり、全国47都道府県下へ出店を達成したのは、1994(平成6)年。ここ、1号店のオープンからわずか16年後のことだ。

その原動力は何だったのか。

f:id:Meshi2_IB:20180329064008j:plain

 「1号店で1日6万円を売り上げたら、2号店を出す目標を立てました。それをクリアしたら、次は10店舗を目指そうという具合に、目の前にある目標をひとつずつ着実にこなしていった結果です」(平尾さん)

 

フランチャイズ展開するにあたって、一般から募集すると、企業理念が伝わりにくいという点がある。また、飲食業で働く社員は独立志向が強くて、長く勤める者が少ないという状況でもあった。

それならばと、社員として働きながら独立の支援をしようという「社員のれん分け制度」を採用した。オーナーは食材の仕入れと販促品の購入などを負担し、ロイヤリティーはゼロ。この独自のシステムも功を奏したに違いない。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329064023j:plain

館内奥には、創業時の店内を再現したコーナーも。

うん、うん、昔はこんな感じだった。この黄色いカウンターがよりカレーをおいしくさせるんだよなぁ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329064043j:plain

見上げると、懐かしの「とび辛表」が!

「目はバチバチ 十二指腸もビックリ」とか「頭はガンガン 二日酔いもマイッタ」、「全身ガクガク 三日はケッキン」など、インパクトあるあおり系のコピーがズラリ。

このコピーを考えた人はマジ天才だと思う。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329064103j:plain

記念館を見学しているうちに、何だかムショーに「ココイチ」のカレーが食べたくなってきた。ってことで、見学後は1号店へ立ち寄って「ロースカツカレー」(753円 ※一部地域 774円)を食べることに。

記念館で学んだ「ココイチ」の歴史に思いをはせながら食べるカレーは、いつもよりおいしく感じた。

 

f:id:Meshi2_IB:20180329064117j:plain

 

施設情報

壱番屋記念館

住所:愛知県清須市西枇杷島町末広31 2F
入館時間:14:00~16:30(予約制・見学無料)
予約申し込み先:株式会社壱番屋 0586-76-7545
予約受付時間:月曜日~金曜日 9:00~17:00

 

お店情報

カレーハウス CoCo壱番屋 西枇杷島店

住所:愛知県清須市西枇杷島町末広31
電話番号:052-502-4738
営業時間:11:00~24:00
定休日:無休

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

台湾ラーメンの元祖「味仙」にはアメリカン、イタリアン、アフリカンという必殺メニューがある【名古屋を真っ赤に染める】

f:id:Meshi2_IB:20180330154909j:plain

名古屋を訪れたアーティストが地元のFMラジオにゲスト出演したとき、「昨日は何か名古屋めしを食べましたか?」と、パーソナリティーは必ず聞く。ひと昔前は、手羽先が多かったが、最近では台湾ラーメンを挙げるアーティストが多い。

そもそも名古屋の台湾ラーメンは、今池の台湾料理店「味仙」が発祥。昭和40年代に台湾出身の創業者が担仔麺(タンツーメン)を辛口にアレンジして、従業員のまかない用に作ったのがはじまりだ。それを知った常連客から、食べたいとのリクエストがあってメニューに加えられた。その際、台湾人が作ったから台湾ラーメンと名付けられた。

 

当時は知る人ぞ知るメニューだったが、転機が訪れたのは、80年代の激辛ブーム。より辛いものを求める激辛マニアの間で評判となり、脚光を浴びた。

台湾ラーメンはお店の看板メニューとなり、市内の中華料理店やラーメン店もこぞって台湾ラーメンをまねて、県内全域に広がった。名古屋市内にある中華料理店の約7割が台湾ラーメンを用意しているといわれる。

 

辛い!「味仙」の台湾ラーメン

話を戻そう。

「味仙」のことである。

f:id:Meshi2_IB:20180330154917j:plain

2018年4月現在、「味仙」は今池の本店と八事店、下坪店、藤ヶ丘店、焼山店など名古屋市内とその近郊に11店舗ある。フランチャイズ展開しているのではなく、創業者の兄弟によるのれん分けだ。

 f:id:Meshi2_IB:20180330154925j:plain

 「今池本店と中部国際空港店、JR名古屋駅店、大名古屋ビルヂング店が長男、八事店が次男、下坪店と矢場店が長女、藤が丘店と名古屋駅店が次女、焼山店と日進竹の山店が四男ですね。私は長女の孫にあたります」と、矢場店の店主、早矢仕朋英(はやし ともえ)さん。

 

台湾ラーメンの味や値段はお店によって微妙に異なり、それぞれ食べ比べて味の違いを発見するのも楽しいが、今回紹介するのは矢場店。ここだけでさまざまな辛さの台湾ラーメンが楽しめるのをご存じだろうか?

台湾ラーメンの特徴といえば、丼一面を覆うニンニクと唐辛子で味付けした台湾ミンチ。これがピリ辛の素になるのだが、シンプルな鶏ガラスープに合わさると、台湾ラーメンの醍醐味(だいごみ)である辛さの中に濃厚なうま味と深いコクが生まれるのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154842j:plain

矢場店の「台湾ラーメン」(680円)は、醤油ラーメンに台湾ミンチをのせるのではなく、スープに台湾ミンチを煮込んでいるので、より濃厚な味わい。

ただ、辛い!

あまりの辛さに汗がダラダラ。鼻水まで出てくる始末。

でも、うまい。これもまた台湾ラーメンの醍醐味なのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154823j:plain

こちらは台湾ミンチをご飯の上にのせた「台湾丼」(700円)。

何でも、台湾ラーメンとライスを注文したお客さんが台湾ラーメンのスープと台湾ミンチをライスの上にかけて食べていたのを見て、考案したメニューなんだとか。生卵をトッピングすることで、マイルドな味わいに仕上がっている。

 

辛さ抑え目の「アメリカン」

しかし、辛さの好みは人それぞれ。実際、台湾ラーメンは辛すぎるという人も少なくはない。そんな方には、辛さ控えめを用意している。

f:id:Meshi2_IB:20180330154828j:plain

その名も「台湾ラーメン・アメリカン」(680円)。

 

名古屋めしの、台湾ラーメンの、アメリカン。

こうやって活字にすると、意味がわからない(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154936j:plain

「もう、35年くらい前になりますね。お客さんがアメリカンコーヒーから名付けました。台湾ミンチや唐辛子の量はノーマルの台湾ラーメンと同じですが、スープを増量することで辛さを薄めているんです」(早矢仕さん)

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154835j:plain

なるほど、だから大きな丼を使っているのか。麺を持ち上げても、唐辛子が絡みつくことはない。

実際に食べてみると、スープの味の方が勝っていて、後からピリッと辛さがくる。しかし、口の中に辛さは残らない。辛いのが苦手な人もこれならイケるだろう。

 

激辛の「イタリアン」

逆に、ノーマルの台湾ラーメンでは辛さが物足りないという人もいるかもしれない。

心配ご無用。味仙にはこんな激辛メニューがちゃんと用意されている。

f:id:Meshi2_IB:20180330154850j:plain

それが「台湾ラーメン・イタリアン」(680円)。

名前の由来だが、薄味のアメリカンに対して、濃厚なエスプレッソ=イタリア、イタリアンということだろうか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154929j:plain

「たぶん、そういう意味だと思いますが、いつ頃に誰が名付けたのかまったく覚えていないんですよ。誰からともなく、いつの間にかそう呼ばれるようになりました。ノーマルの台湾ラーメンの約2倍の唐辛子が入っていますから、かなり辛いですよ。私もよく台湾ラーメンを食べますが、このイタリアンが限界です」(早矢仕さん)

 

f:id:Meshi2_IB:20180401193932j:plain

真っ赤に染まったスープは見るからに辛そう。レンゲでスープをすくってみると、唐辛子が層になっているではないか。

こんなの辛いに決まってるぢゃないかっ!

今さらながら告白するが、実は私、唐辛子の辛さは少し苦手なのである。

だから「味仙」の台湾ラーメンは、いつもアメリカンを注文する。ノーマルの台湾ラーメンでさえムリなのに、これは何の罰ゲームなのだ!?

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154857j:plain

では、意を決して実食!

ううっ、辛いというよりは……痛い

一口食べただけで、顔から汗がドバッと噴き出す。さらに食べ始めると、全身が汗だくになった。頭皮も髪の毛も汗でベトベト。アラフィフになって拍車がかかる抜け毛がさらに加速しそうだ(涙)。

でも、辛さの奥にある台湾ミンチが溶け込んだ鶏ガラスープのうま味をハッキリと認識することができた。辛いもの好きにはこれがツボなんだろうなぁ。

 

最強の激辛「アフリカン」

これで取材は終わり、と思って安心(?)していたところに、早矢仕さんはまた別の台湾ラーメンを運んできた。 

f:id:Meshi2_IB:20180330154902j:plain

な、なっ、なんじゃこりゃぁぁぁっ!

イタリアンよりもスープは毒々しいほど赤い。

まっ、まさか、これは……。

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154940j:plain

「これがイタリアンのさらに上をいく辛さのアフリカン(680円)です。これもいつの間にか名前が定着しました。唐辛子の量はイタリアンと同じですが、イタリアンのスープをじっくりと炊くと、唐辛子が油に溶け出して、より辛くなるんです」(早矢仕さん)

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154906j:plain

唐辛子が油に溶け出すということは、早い話が大量のラー油が入っているのと同じことである。

こうなりゃもうヤケクソだ! 食ってやろうぢゃないかっ!!

まずはスープを飲もうとレンゲですくうと、溶け出した唐辛子がペースト状になっている。思わず、ひるんでしまったが気合いを入れ直してレンゲ一杯分のスープをゴクリと飲み干す。

うぉぉぉっ、舌が痛い。

喉元を通り抜けると同時に全身からおっさん汁がブシャーッ!

 

f:id:Meshi2_IB:20180330154909j:plain

箸で麺を持ち上げると、これまたイタリアンよりも多くの唐辛子がまとわり付く。

よく見りゃ、麺もラー油でコーティングされているではないかっ!

ここでひるんではいけないと思い、イッキに麺をすすり上げる。結果、ムセかえってしまい、吸い込んだ麺を丼にリバース(涙)。再び麺を口に入れると、あまりの辛さに涙が出てきた。

コレ、他店も含めて、今まで食べた台湾ラーメンのなかでも間違いなく最強クラスの辛さだ。

 

お店とお客さんの近さが台湾ラーメンを生んだ

f:id:Meshi2_IB:20180330154839j:plain

辛さが引いたところで、早矢仕さんが用意してくださったのが1年前メニューにくわえられた新作の「ホルモンラーメン」(780円)。

 

その名の通り、麺の上にプルプルのホルモンがたっぷりとのっている。唐辛子も入ってはいるものの、そんなに辛くはない。むしろ、スープに溶け出したホルモンの甘みが際立った深い味わいだ。

 

ノーマルとアメリカン、イタリアン、アフリカン。4種類の台湾ラーメンに共通しているのは、いずれもお客さんのリクエストから生まれたということ。まかない用メニューだった台湾ラーメンにお客さんが興味を示さなかったら、名古屋めしの一つとして数えられることはなかっただろう。

また、辛さの度合いを示すアメリカンやイタリアン、アフリカンという呼び名もお客さんから生まれ、お店が採用している。お客さんとお店の距離の近さ。これが名古屋めしの楽しさなのだ。

f:id:Meshi2_IB:20180330154913j:plain

 

お店情報

味仙 矢場店

住所:愛知名古屋市中区大須3-6-3
電話番号:052-238-7357
営業時間:11:30~14:00(土曜日・日曜日は~15:00)、17:00~翌1:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://www.misen.ne.jp/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

あんかけスパの超有名店「ヨコイ」の夜飲みメニューがいちいち良すぎる【名古屋】

f:id:Meshi2_IB:20180303094305j:plain

あんかけスパの総本山「ヨコイ」

名古屋めしは、夜にお酒のアテとして楽しむよりもランチでがっつりと食べるイメージの方が強い。

その最たるものがあんかけスパではないだろうか?

スパイシーでとろみにのあるあんかけソースにラードで炒めた極太麺で満たされた胃袋が名古屋経済を支えていると言っても過言ではないのだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094257j:plain

「たしかに今は昼がメインのように思えますが、あんかけスパが認知されたのは、夜からだったんです」

そう話すのは「スパゲッティ・ハウス ヨコイ」の三代目店主で副社長の横井慎也さん。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094312j:plain

あんかけスパは、名古屋国際ホテルで洋食を学んだ横井さんの祖父が考案。昭和36年に友人とともにあんかけスパの専門店「そーれ」の共同経営をはじめた。

その後、独立して昭和38年に「ヨコイ」を開店させ、今に至っている。

 

「酢業当時は、夜遅くまで営業していて、新聞社やテレビ局などで働いている方がよく食べに来られていたそうです。あんかけスパは腹持ちがよいので、時間が不規則な仕事をされている方に重宝されたんでしょうね」(横井さん)

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094233j:plain

「ピカタ」や「バイキング」、「サンジェルマン」など文字だけではよく分からないメニュー名も創業当時のまま。

中でも「ヨコイ」を代表するのが、この「ミラカン」(950円、写真上)だ。ウインナーとハム、ベーコン入りの「ミラネーズ」と、玉ねぎとピーマン、トマト、マッシュルームがトッピングされた「カントリー」を合体させたメニューだ。ちなみにこの「ミラカン」は、お客さんの要望によって生まれたとか。

このビジュアルといい、ボリュームといい、やはりランチのイメージが拭えない。が、「ヨコイ」住吉本店には、夜だけの限定メニューがあるのだ。

 

気が利いてる、激安ツマミ

ヨコイの気になる「夜メニュー」を紹介してみよう。

f:id:Meshi2_IB:20180303094243j:plain

まずは、ちょい飲みにぴったりの小皿に盛ったおつまみの数々。これはあんかけスパのトッピングの定番「赤ウインナー」

懐かしい味わいにお酒がすすむこと間違いなしだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094250j:plain

たこのうま味を凝縮させた「たこから」もオススメ。

あんかけスパと同様に、揚げ物はラードを使用しているので、鼻から抜ける香ばしさがハンパない。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094253j:plain

こちらは名古屋人が好きな「エビフリッター」

絶妙な火加減でエビの甘みとプリプリの食感が引き出されている。ラードで揚げた衣の香ばしさとケチャップの酸味がベストマッチ。

 

以上、おつまみはすべてひと皿300円~と激安。

ほかにも「鶏の唐揚げ」や「チキンフリッター」、「かきフライ(冬季限定)」も用意している。

 

チョイ飲み仕様のセットメニュー

これらのリーズナブルなツマミをアテにちょい飲みした後は、あんかけスパで締めたいところだが、夜限定のセットメニューがあるのだ。

f:id:Meshi2_IB:20180303094226j:plain

それがこの「ジェントルマン」なるセット。

950円までのお好きなあんかけスパをメインに、日替わりのおつまみ1品とサラダも付く。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094219j:plain

ここまではありがちだが、なんと、さらにビールかグラスワインも付くのだ。

しかも、値段は1,550円とかなりお得。

 

「出張で名古屋へ来られた方がよく注文されますね。逆に地元の方は、ウチへ行くと決めた時点で注文されるメニューは決まっていますから(笑)、ほとんど出ないですね。このセットの存在自体を知らない方もいらっしゃると思います」(横井さん)

 

それ、何となくわかる(笑)。

しかも、「ミラカン」がお気に入りの人は、他のメニューに浮気することはない。何を隠そう、私もその一人である。もう、ミラネーズ一筋30年(笑)。それだけズブズブにハマるのがあんかけスパの魅力でもあるのだ。

 

少量×多種類派にはガールズスパ

そんな名古屋人な筆者も、食べたことのないメニューにまったく興味がないのかといえば、そうでもない(笑)。

「いろんなあんかけスパを少しずつ食べたい」という女子っぽい要望をかなえてくれる夜メニューが存在する。 

f:id:Meshi2_IB:20180303094237j:plain

それがこの「ガールズスパ」

  • 「ミラカン」
  • 「ミラネーズ」
  • 「カントリー」
  • 「ピカタ」(豚肉黄金焼き)
  • 「ハッシュパ」(ハッシュドビーフのソース)
  • 「スペシャル」(赤ウインナーとゆで玉子)
  • 「チキンフリッター」
  • 「エビフライ」
  • 「かきフライ」(冬季限定)

以上の全9種類から、好きな4種類を選択できるのだ。

 

ちなみに私が選んだのは、いちばん手前から時計回りで「ミラカン」、「エビフライ」、「スペシャル」、「ピカタ」。

f:id:Meshi2_IB:20180305210529j:plain

さらに、サラダと手作りのオニオンスープも付く。

これで値段は1,200円。スパイシーなあんかけスパもビールとの相性は抜群なので、このセットでも十分に飲める。メニュー名こそ、「ガールズ」だが、男性でも注文できるのでご安心を。

 

「実は、夜のメニューにもっと力を入れていこうと思っているんですよ。私はお店を継ぐ前に東京で働いていたことがあって、当時、洋食店でとんかつやハンバーグを上司や同僚とシェアしながらウイスキーを飲んだことがありました。さすが東京はオシャレだなぁと感動したことを覚えています。逆に何かいいアイデアはないですか?」(横井さん)

 

枝豆や串かつ、冷や奴では居酒屋さんになってしまい、わざわざ「ヨコイ」へ来るまでもない。そもそも「ヨコイ」のあんかけスパのおいしさは、スパイシーなあんかけソースとラードで炒めた極太麺である。

が、さらにクオリティーを高めているのは、麺の上にのるさまざまなトッピングだろう。創業者である横井さんのお祖父様はホテルの洋食部門出身である。ゆえにトッピングは洋食の技術がベースになってるのだ。

 

そこで思いついたのは……

f:id:Meshi2_IB:20180303094233j:plain

 

「ミラカン」の……

f:id:Meshi2_IB:20180303094229j:plain

上!

そう、「ミラカン」の上っ張り部分!

つまり、あんかけスパの上にのるトッピングをお酒のアテにしてはいかがだろう?

 

「実は、『ミラカン』や『ピカタ』、『ミラネーズ』などのトッピングはすでにあるんですよ。でも、ほとんど注文するお客さんはいらっしゃらないんですよね。『ミラカンの上』とか『ミラネーズの上』という名称にすれば三点…!ちょっと真剣に検討してみますね! ありがとうございました!」(横井さん)

 

近々、「の上」シリーズが夜のメニューにラインナップされるかも!?

 

55周年でゴーゴーカレーとコラボ

ところで、今年「ヨコイ」は創業55周年を迎える。

55周年、五十五、ゴーゴーってことで、金沢のご当地グルメ「ゴーゴーカレー」とのコラボ商品が愛知県内のスーパーなどで今春発売される。

f:id:Meshi2_IB:20180303094319j:plain

レトルトタイプのソースで、「スパゲッティハウス・ヨコイのソース ゴーゴーカレー風味」(写真左/250円)と、「ゴーゴーカレー ヨコイのソース風味」(写真右/350円)の2種類。

 

f:id:Meshi2_IB:20180303094240j:plain

はい、こちらが「ミラカンの上」をのせた(笑)、「ゴーゴーカレー ヨコイのソース風味」の調理例。

「ヨコイ」も「ゴーゴーカレー」もスパイシーなイメージだが、掛け合わせるとマイルドで食べやすくなるから不思議。お店のレギュラーメニューになってもおかしくはないほど完成度が高い。

 

あんかけスパの元祖「ヨコイ」、今後も要注目だ!

名古屋を訪れた際はぜひ夜メニューの数々を体験してみてほしい。

f:id:Meshi2_IB:20180303094302j:plain

 

お店情報

スパゲッティ・ハウス ヨコイ 住吉本店

住所:愛知名古屋市中区栄3-10-11 サントウビル2F
電話番号:052-241-5571
営業時間:11:00~15:00(LO 14:45)、17:00~21:00(LO 20:35)※日曜日・祝日は昼のみ営業
定休日:日曜日・祝日の夜、年末年始
ウェブサイト:http://yokoi-anspa.jp/

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

過去記事も読む

トップに戻る