風呂屋の番頭が徹底検証!銭湯を改装した「まい泉青山本店」が想像以上に銭湯だった

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最近は建物を建てるとき、すべて壊して建て直すのではなく、既存の建物の特徴を活かして再構築するリノベーションという手法が注目されています。

まい泉は、「かつサンド」で有名なとんかつ屋です。そのまい泉青山本店の館内にあるレストランはリノベーション前、銭湯の脱衣場でした。風呂屋の番頭をしている筆者が、実際の銭湯の写真とともに、まい泉青山本店のレストラン「西洋館」をご案内します。

 

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こちらの写真は開店間際の様子。平日にも関わらず行列ができています。

外国人の方も多く、世界のTOKYOが擁する観光地といっても過言ではありません。

 

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カウンター席を抜けて進むと、通路の中央を壁が塞いでいるところがあります。

どこか不自然な印象をうけませんか? じつはこれ、銭湯の名残なんです。

 

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【銭湯、天神湯の入り口】

これは実際の銭湯玄関です。

正面に傘置き、両サイドには男女別の脱衣場へ続く扉と下足箱があります。

 

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【西洋館の入り口】

改めて、まい泉に戻りましょう。

ふたつの出入り口の両脇にあるくぼみに下足箱、正面の壁面部分には傘置きの名残が感じられます。出入口の上部、すのこ状になっている部分は男、女と掲示されていたのでしょう。

 

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「あ、靴脱がなくていいんだった。」

銭湯ユーザーだと、勘違いしてしまうほど銭湯っぽい! まい泉は土足OKです。

 

改めて比べるとかなり似てる!銭湯と西洋館

銭湯の流れでいうと、下足箱の次は脱衣場です。早速入ってみましょう。

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あ、暖簾ないんだった。

 

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こちらがまい泉青山本店のレストラン、西洋館。一般的なレストランではなかなか見られない高い天井には、格子状の装飾が施されていますね。

 

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【銭湯、浜の湯の天井】

こちらは実際の銭湯の写真です。このつくりは格天井(ごうてんじょう)といい、寺社建築の建築様式と言われています。戦後焼け野原となった東京にこぞって銭湯がつくられたころに流行っていたのだそう。

格天井の銭湯は減っているので、見つけるとテンションが上がります。

 

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【西洋館の天井】

西洋館の天井を見上げてみると、同じように格天井です。

もともと銭湯だったと知らず、とんかつ屋として入店してこの天井を見たら、違和感を覚えると思います。それほど銭湯以外で見る機会が少ない建築様式です。

また、この写真で注目すべきは格天井だけではありません。

 

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【西洋館の天井】

拡大してみました。

天井と壁面が交わる部分がS字にカーブしているのが見えるでしょうか。

このカーブにも大きな意味があります。

 

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【銭湯、浜の湯の天井】

浜の湯の天井も同様に拡大してみましょう。こちらにもS字のカーブが入っています。

これは「折上格天井(おりあげごうてんじょう)」といいます。木材にカーブを付ける加工は難しいと想像がつきますよね。これを天井という規模でおこなうわけですから、単純に格天井をつくるよりも高い技術が必要な、建築というか芸術に近いです。

これを見ると、建設当時、経済力のある銭湯だったのだと推測できます。

 

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【銭湯、浜の湯の脱衣場】

さらに比較をしていきましょう。こちらは浜の湯の脱衣場から浴室に向かって撮影した写真です。

銭湯らしさを感じる藤の籠、ロッカーがなかった時代はこの籠に衣類をいれて床に置いていました。それを泥棒から守るのが番台に座る人の仕事だったと言います。

 

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【銭湯、浜の湯の脱衣場壁面】

床面には銭湯の脱衣場らしいものがあふれていますが、ここはひとつ、浴室上部の壁に掛けられた時計と、浴室に続く扉の上部に注目してください。

 

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【西洋館の壁面】

時計の位置と、壁面を横断する梁がほぼ同じような配置になっていますね。銭湯の写真と比べると、衝立の向こう側は浴室だった場所とわかります。

とんかつがほかほかで出てくるという点では現役の浴室、なのかもしれません。

風呂屋の人間としては、あの位置に時計をずっと置き続けているところから、銭湯としての保存をしてくれているんだなぁと、まい泉の心意気を感じます。

 

「番台」の跡もくっきりと 

銭湯といえば、お金の受け渡しをする「番台」ですね。銭湯のシンボルです。

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【銭湯、浜の湯の番台】

こちらは実際の銭湯の「番台」です。もしかしたら初めて見た方も多いかもしれません。両サイドには男女脱衣場への出入口、そして私の背後には電気のスイッチが集中しています。

この2点に注目してまい泉にある番台の名残を見てみましょう。

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【西洋館の番台跡】

こちらは、先ほどの玄関部分をレストランのなかから見た写真です。

私の背後にある、通路をふたつに分ける壁は、男女の脱衣場を仕切って番台を設置するために必要なものだったのです。

とはいっても、いまはもう必要ないはずです。なぜ残されているのでしょう。

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【西洋館の番台跡】

この壁にある電気のスイッチ、銭湯時代のものをそのまま使っているのです。

「改装当時から建物を変にいじって、レストランとして都合のいいようにつくり変えたくないという思いがあった」と担当者はおっしゃっていました。風呂屋の番頭としては、この壁があるからその言葉が真実だと感じられますね。

 

とんかつ屋には絶対必要ない、風呂屋の象徴も残ってる!

誰が見ても「これあるなら銭湯だわ!」と納得してしまう銭湯の名残がありました。

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銭湯のシンボル、煙突です! とんかつ屋としてはまったくもって不要な設備です。お店の正面からは見えませんが、まい泉の横道を歩くと誰でも見ることができます。

 

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この写真を見ると、煙突以外は民家ですよね。昔ながらの銭湯にはよく見られるつくりで、建物の裏側は店主の家、というケースは多いです。

私自身の経験として、お湯を沸かす釜場が家の中なので、冬場はポカポカ。よく下風呂(お湯をためるところ)の上にタオルを敷いて昼寝をしたりしていました。

現在建物としてどのように使われているのかはわかりませんが、こちらも銭湯時代のものをそのまま残しています。

 

調味料で気分に合わせたとんかつを

銭湯の話ばかりになってしまいましたが、まい泉はとんかつ屋。おいしいとんかつの食べ方を最後に押さえておきましょう。

まい泉の方にオススメの食べ方を聞きました。

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【甘口ソース】
これぞまい泉のド定番、甘口ソース。とんかつらしい味わいを楽しみたいときに。素人の私でもかなりの野菜を煮込んでいるような深い、優しい味わいを感じます。

 

【辛口ソース】
魚介系の揚げ物にピリッとさっぱり食べたいときに。辛口といってもほんのりピリッという辛味なので、味を変えたいときにもいいです。

 

【塩とレモン】
肉らしさを感じながらスッキリと食べたいときに。ソースに目がいきがちですが、まい泉ブランドのスパイスソルトが卓上にあります。

 

銭湯の脱衣場として残す意味

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この写真は、まい泉に残っている唯一の銭湯時代の写真です。この銭湯時代のこと、改装の経緯を知る人は、まい泉社内にはもう誰もいません。

昔銭湯に来ていたお客さんから銭湯時代の話を聞き、店の歴史を学ぶそうです。地域の方が西洋館の歴史を守り、受け継いでくれているのです。

 

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「とんかつは誰でも食べられる庶民の食事」と、担当の方はおっしゃっていました。銭湯も、誰もが入れる地元のお風呂。業種は違えど同じ心意気を感じました。

とんかつを食べながらその歴史と心意気をぜひ感じてみてください!

 

写真協力 

脱衣場、天井、番台……杉並区浜田山「浜の湯」【2013年12月惜しまれながら廃業】

玄関……中野区中野「天神湯」15:45~23:00

 

お店情報

とんかつまい泉 青山本店

住所:東京渋谷区神宮前4-8-5
電話番号:0120-428-485
営業時間:11:00~22:45(ラストオーダー22:00)
ウェブサイト:http://mai-sen.com/restaurant/

※本記事は2016年2月の情報です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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神奈川県の鶴見に「ファンタジー丼」が食べられるファンタジースパがあるらしい。よくわからないので行ってみた

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足を伸ばせる大きな湯船、開放的な露天風呂、たまった汗を解き放つサウナ…と、お風呂屋さんは非日常空間です。


そんな空間で提供されるメシもまた、非日常であるべきではないでしょうか。そんな思いを心の隅に抱えながら生きてきた私は、ついにそんな気持ちを満たしてくれそうな風呂屋メシを見つけました。お店の名前は「ファンタジースパ おふろの国」。そして、その風呂屋メシは「ファンタジー丼」。

 

ファンタジー……スパ……?

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名前からすでに非日常感が漂う「ファンタジースパ おふろの国」があるのは、神奈川横浜鶴見区。お店の前は大型の幹線道路で、トラックがせわしなく行き交います。
外観だけを見ると、ファンタジーのかけらもありません。

 

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館内に入ると、いきなり目に飛び込んでくる大量の情報。まだ風呂に入っていないのに軽くのぼせました。

「除夜の熱波」「サウナ皇帝大生誕祭」「サウナファン感謝祭」「1時間おきに蒸気ジュワ〜」……。

一歩足を踏み入れたと同時に、ファンタジーの世界に片足を突っ込んだ感覚に陥ります。

 

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入場したらまずは入浴のチケットを買いましょう。

券売機の隣にあるのは「熱波神社」。熱波とはサウナ内でバスタオルを扇いで風を起こしたときに発生するものすごく熱い風のことです。熱波を浴びることをアウフグース、ロウリュとも言い、最近お風呂屋さんではかなり流行しています。

それを祀る神社です。ここはきっと、サウナが神聖な場所なのでしょう。

 

お風呂のアイドルOFR48!?

早速ファンタジー丼の情報を集めてみましょう。

券売機から後ろを振り返ってみると… 

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こ、これは……名前から察するに某アイドルグループの一派を彷彿とさせます。

OFR48は、お風呂屋さんの看板娘で、自称48歳以下のメンバーで構成されたアイドルユニット。2012年5月にはCDデビューも果たしています。

 

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そのわきにはOFR48のグッズガチャも存在していました。

(見つけちゃったよ…)というのが本音ですが、風呂デューサーとしてここはやらなければならないでしょう。

 

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ガチャの中身は抽選券でした!

 

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……なんだかすごい幅のある賞が当たりました。

 

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受付で引き換えてもらうと、OFR48のファン投票で4位から8位のメンバーが写っている、ラミネートされた紙をいただきました。

「ハズレ引いたんだな」って感じです。

 

全然見つからないファンタジー丼

いきなりたくさんの情報量に圧倒されてしまいました。

気を取り直して、今回の目的であるファンタジー丼の情報を探します。

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「ファンタジースパ おふろの国」にある「ファンタジー丼」ですから、看板メニューのはず。でも店頭のPOPはおろか、食事処内のメニュー冊子にもその名は書かれていないのです。

 

「ファンタジースパ おふろの国」店長の林さんに聞いてみました。

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「あのー……ファンタジー丼を食べに来たのにメニューに載っていないんですよ」

「……ファンタジー丼? そんなメニューありましたっけ?」

「おふろの国のオフィシャルサイトには案内がありましたよ。でも券売機にすら表記がないんです」

「食品部門の担当者がつくったんですね。たぶん」

 

なんとファンタジー丼は、店長さんにとってもファンタジーな存在だったのです。

 

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林さんと話していると普通に腹が減ってきたので、食べものを注文してみました。

 

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そのとき、カウンターに貼ってあったPOPにふと目がいきました。

夜丼……どんぶり……??あっっ!!

 

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あった!!! ファンタジー丼!!!
食券を買って係の人に渡す最後の瞬間! もう確実に何を食べるか決まっているであろうこのタイミングに、それは待ち構えていました。

POPの情報から「22時から販売開始」「値段が600円」「味噌汁がついている」ということがわかりました。

 

風呂に入る

ファンタジー丼は夜丼というメニューの一種で、22時から販売がスタートするという情報をつかんだものの、時計はまだ20時をまわったばかり。22時までのんびりとお風呂に浸かりましょう。

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お風呂屋さんでは比較的よく見かける薬湯(くすりゆ)。おふろの国にもあります。
写真の薬湯は「さざんかの恋」。ショッキングピンクの見た目から地獄っぽい印象を受けますが、ほんのりと漂う甘い香り。さらに、永久に浸かっていられる36.6℃という温度設定が入浴者を極楽にいざないます。

なぜ「さざんかの恋」という名前かを林さんに聞いてみると、「この入浴剤がそういう名前だから」という、あまりファンタジーじゃない答えが返ってきました。

 

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こちらは取材に訪れた2015年12月の薬湯スケジュールです。
梨やシナモンジンジャーなど安定感のあるものから、BLACK無糖サンタクロースの湯など、怪しさ漂うファンタジーな薬湯までバラエティに富んでいます。

 

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「ファンタジースパ おふろの国」の名物といえば、サウナです。

特定の時間に行けば、名物の熱波を浴びることもできます。時間は公式サイトで確認してください。

多くのお風呂屋さんで実施されている熱波ですが、「ファンタジースパ おふろの国」の熱波は正直ケタが違うようなのです。

 

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おふろの国は熱波師という熱波の達人が在籍しているお風呂屋さんなのです。

写真のような人がサウナで熱波を浴びせかけてくれます。ただサウナに入っている比ではない爽快感に加え、普通のロウリュ以上に「盛り上がる」という噂です。

 

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たっぷり汗をかいた後は、露天のシートに座って涼みます。

サウナ後の水風呂ももちろんあるのですが、私はこれが好きです。

 

ついにベールを脱ぐ!ファンタジー丼 

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時刻は22時をまわり、探し求めていた「THE夜丼」のチケットをゲットしました。早速カウンターに持っていきます。

 

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「どちらのどんぶりにされますか?」

「ファンタジー丼で!」

「なにか苦手なものはありますか?」

「え? 苦手なもの……ナスと漬物全般です」

「承知いたしました!」

 

ものすごいドヤッとした顔で「ファンタジー丼で!」と言った私に対して、苦手なものを聞くスタッフの女性。私の心がザワついてきました。

 

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「お待たせしました、ファンタジー丼です」

「こ、これがファンタジー丼ですか……!?」

 

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これが……ファンタジー丼の全貌……!?


もっとキラキラした、フワフワした、常人には理解できないような、そんなどんぶりを想像していました。豚肉にキャベツ、ほうれん草にコーン。一見でどんぶりの全容が判明し、ほんのりついた色合いから味もなんとなく想像できます。

 

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「うん、生姜焼きだ!」

 

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「なんでうちがファンタジースパを名乗っているかというと、うちは熱波を押し出したり、お風呂の情報誌を出版したり、アイドルのプロデュースをしたり、風呂屋の枠を超えていると思うんです。それを一言でいおうと思うと……なかなか難しくて。考えていた時に、枠にはめるんじゃなくて、かたちがないことを伝えればいいのではないかと考えて、かたちのない言葉、それこそファンタジーだろうと」

……深い。決まったかたちにおさまっていては新たな形は見えてこない。

私が食べているのは「生姜焼きがのっかったどんぶり」かもしれません。しかし、本来かたちのないどんぶりが、たまたま「生姜焼きっぽい」ものがのっかって、偶発的に生まれた産物。それこそファンタジー丼なのです。

 

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日常に疲れたみなさん。現実から少し逃げたいみなさん。

ファンタジーな空間に身を置くことで、活路を見出すことができるかもしれません。頭を空っぽにして、湯船に浸かって……「ファンタジー丼」をただただ喰らってみませんか?

 

※浴室の撮影は許可を得ています。許可なく撮影機器を持ち込むのはやめましょう!

 

お店情報

ファンタジースパ おふろの国

住所:横浜鶴見区下末吉2-25-23
電話番号:045-585-4126
営業時間:月~金11:00~24:00まで受付、土日祝日、年末年始、お盆は8:00~24:00
定休日:第三月曜日(祝日の場合は営業)

※本記事は2016年2月の情報です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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山梨で話題のほったらかし温泉で日の出を拝んでから食べる絶品朝メシ

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朝食に特化したお店って、あまり見かけないですよね。温泉施設の中の飲食店ともなれば、早朝からオープンしているところはかなり限られてきます。

あと、温浴施設の食事って一般的なメニューが多い印象、ありませんか?

温泉好きを名乗るならばまず行くであろう、山梨の有名温浴施設「ほったらかし温泉」で、だいぶこだわったメシを見つけました。

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ほったらかし温泉は山の中腹にある温浴施設です。

温泉的なことをいうと、癖のない無色透明なお湯で、日を浴びて光る水面を見ているだけで何時間も入っていられるような、時の流れがゆっくりと感じられる温泉です。

今回紹介するこだわりのメシを頂戴するには、この写真を取った約3時間前、夜が明け始める時間帯までさかのぼらなければなりません。

 

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ほったらかし温泉は日の出の約1時間前に施設がオープンします。

この日は早朝5時に開場しました。早朝にもかかわらず駐車場にはたくさんの車が停められています。なぜこの時間にこんなに賑わっているのか……

 

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見てください、この景色。

早朝5時にはこのきれいな夜景を望むことができます。

そしてその30~40分後には……

 

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温泉に浸かりながら日の出を拝むことができます! 私の積み上げた徳が足りなかったせいで、日の出の写真はおさえることができませんでした。

富士山が見えないことも多いので、そっちがくっきり撮れただけラッキーですよ。」と、施設の方は優しく教えてくれました。

これを目当てに、多くの人が早朝にもかかわらず訪れるのです。

 

主役を張れるのは温泉だけじゃない!

日の出とともに入浴を終えたところで時間は6時前。1日はこれから始まります。
温泉に入ってお腹もすいています。午前中を駆け抜けるエネルギーを補給したい!

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そんな腹ペコたちに朝食を提供するのがここ、気まぐれ屋です。

この朝ごはん専門店で提供しているメシがスゴイのです。

 

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店に掲示されているメニューが圧巻です。ごはん、味噌汁、生たまご、つけものの「朝ごはんセット」のみ。納豆は1つめが無料、2つめ以降は50円になります。

この一本気というか、ブレがないというか……朝食であることにこだわってますよね。

 

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注文するとこんな感じになります。

ザ・朝ごはんです。早速いただいてみましょう。

 

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卵かけごはんをつくる……そんな何気ない作業です。

しかしその環境は……

 

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自然溢れる爽やかな早朝。空では刻々と日がのぼっています。

しかもこの朝食の前には富士山を眺めながら露天風呂でのんびりと過ごしています。これを休日と言わずして何なのか!ただの卵かけごはんかもしれません。しかしこれは楽しい休日を、贅沢に始めるために必要なことだといまは思えます。

 

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この朝食セットでもっともこだわっているのが、米です。ほったらかし温泉の社長が知人の農家さんから独自に仕入れた新潟米を使っています。

どのくらいの値段か聞かせていただいたところ、家庭で買うくらいの米の値段をはるかに超えていました。

朝食セット500円のうち、コメの値段は結構な割合いを占めており、ぶっちゃけ採算度外視なのだそうです。

 

味噌汁もオススメ!

うまいのはご飯だけではありません。

この寒さを感じる時期、味噌汁のぬくもりがとても優しく感じられるのです。

煮干しの出汁がきいた味噌汁に、ふんだんに山の幸を盛り込んでいます。 

f:id:Meshi2_Writer:20151005230142j:plainしめじに

 

f:id:Meshi2_Writer:20151005230203j:plainなめこ

 

f:id:Meshi2_Writer:20151005230223j:plainしいたけ、ほかにもエリンギと、キノコ好きにはたまらないラインナップです。

しいたけは春、秋と自家栽培した原木シイタケをいれるこだわりようです。

 

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食レポをしているうちに、気まぐれ屋には長蛇の列ができていました。

まだ時間は6時30分頃です。この時間にこんな行列ができる飲食店ありますか。

 

日の出を逃した人にぴったり!もう一つの話題メシ

ほったらかし温泉には気まぐれ屋と別にもう一つ食事を提供しているところがあります。そこにも一風変わったメシがあるということで、調査してきました。

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そのメシが食べられるのは、9時30分頃にオープンする「軽食スタンド桃太郎」です。温泉といえば浮かぶあのメシが、考えられないリメイクを遂げています。

 

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この丸っこいのが話題のメシ。揚げ物ですね。

 

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「柔らかい!なんか出てきた!」

口に入れると、サクサクのころもとほどよい塩気が広がります。

噛むとなかから汁っぽいものがトロ~っと出てきました。

 

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温泉卵です。揚げちゃいました。温玉揚げです。

このほんのりとした塩味……風呂あがりのさっぱりした体が食べたがっている味です。

そしてこの見た目。思い出してください。この3時間前を…

 

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温玉揚げだ! 温玉揚げは日の出を表現している!

寝坊してしまっても、温玉揚げを食べることで日の出を満喫したことにできます。

施設の方に「温玉揚げは日の出のイメージですね!」ときいたところ、

「いや、そういうわけではないです。温泉といえば温泉卵ということで。」

とのことでした。

 

「温浴施設のメシはたいしたことない」そんなかたに行ってほしい!

朝から温泉にはいって夜景と日の出を望み、さっぱりした気分で絶景を見ながらの朝食。ほったらかし温泉のメシで一日をスタートすると、何の変哲もない普通の休みが、忘れられない特別な休みになりますよ!

 

お店情報

ほったらかし温泉・気まぐれ屋
住所:山梨山梨市矢坪1669-18
電話番号:0553-23-1526
営業時間:日の出頃から用意したご飯がなくなるまで
定休日:土日のみ営業
ほったらかし温泉 ほーむぺーじ

 

軽食スタンド桃太郎
営業時間:9:30~22:00
定休日:なし

www.hotpepper.jp

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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【提案】ハロウィンの最高の楽しみ方。いろんな食べ物でジャック・オ・ランタンを作ってみた

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10月末といえば、ハロウィンの時期です。雑貨屋さんがカボチャだらけになりますね。
本来収穫祭という意味合いがあったハロウィンですし、ハロウィンが始まった地域ではカボチャが名産品だったとか、そういう経緯があるのかもしれません。

しかしここは日本。そして時は平成。この時期たくさん収穫される食べ物や、ハロウィン誕生当時にはなかったものがあります。

そこで、カボチャに代わりうる、新たなハロウィン○○をつくってみました。 

 

蕪(かぶ)

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実は、ハロウィンカボチャ、正式名称はジャック・オ・ランタンといい、本来はカボチャではなく蕪だったのだそうです。現代、私たちがイメージする蕪はこのサイズ感ですね。現代の蕪はハロウィンカボチャの代役を務めることができるのでしょうか。

 

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まずは葉の部分を切り離し、スプーンで中身をくりぬきます。

そして外側に顔のデザインをしておき、彫刻刀で切り抜いていきます。 

 

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簡単にできました。固さやサイズ感が加工するには最適。加えて汁があまり出ないので、手がべたべたしません。

個人的に蕪独特のにおいが気になりました。苦手な人は苦手かも。

 

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少し時期が外れてきました、梨です。この時期だから安く買える、とも言えますね。芯が入っているということで、そこをどう切り込むかがカギになりそうです。

 

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最大の難所は、芯のくり抜きです。
硬いのでスプーンを突っ込んでグリグリしてもなかなかとれません。

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できました。頑張ってほじったのですが、まだまだ果肉が残っていますね。

顔の部分を切っていると、梨にたっぷりと含まれた水分がでてきて泣いているように見えます。涙もろい人には向きません。
飾るにしても、切ったり強く抑えた部分が変色していきますので向いていません。

 

マーガリン入りのパン

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パンの加工は精密さを求めると難しいですが、力を込める作業がなく、指でほじってもできるので子供向きです。野菜のように水気がないので、乾燥ても見た目が変わらないという点も飾り付けるに適してますね。

 

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なぜマーガリン入りのパンをチョイスしたのかというと、温めると口からマーガリンが溶け出したりしないかな、なんて期待からです。

加熱してみました。

 

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口のあたりからオゲ〜という感じにはなりませんでした。

そこはうまくいかなかったのですが、焼き具合によってはこのように、ハロウィンにふさわしい、ホラーな感じに仕上がるようです。 

 

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秋の季節もの、代表格が栗でしょう。
まとまった数で売られていることが多いので、たくさん作ってディスプレイしたら、かわいらしく仕上がりそうです。

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外の殻は当然ながら硬いです。切込みを細かくいれて切断していきます。
子供さんには中を削る作業をやってもらうのがよいでしょう。

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マーガリン入りのパンに期待していた感じに仕上がりました。

殻が硬いおかげで、なかをガリガリ削っても外に刃が飛び出しにくい安心感と、サクサク削れる感覚が楽しいです。
栗拾いで拾った栗を家でハロウィン化……子供さんの秋のレジャーに最適です。

 

焼き鳥(つくね)

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ハロウィンカボチャということで、なんとなく野菜や果物にかたよって調査していると感じたので、あえて肉を使ってみました。
つくねのようなこね物はもろいので、加工しやすく、初心者向けな印象です。粘土を扱っているような感覚ですね。

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ハロウィンパーティーを開催するとき、どうしても野菜でハロウィンカボチャ的なものをつくりがちですが、野菜だと好き嫌いの問題がどうしても引っかかりますよね。
その点、肉であればそこまでの好き嫌いはないと思います。

最後に……つくねをハロウィン化する場合はタレではなく、塩のほうがいいです。

 

ぎんなん

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ぎんなんがイチョウの木に実る季節ですね。今まで検証したものと違い、ぎんなんであれば公園にものすごく落ちてます。拾ってくることも可能です。たくさん採れたことを祝う収穫祭ですから、これがハロウィンの本来の姿ではないでしょうか。

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ぎんなんのサイズになってくると、彫刻刀ではくりぬくことができません。
ドライバーのように先端がとがったもので中身をかきだしていきます。

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顔の一部がちぎれてしまいました。このサイズから、高いレベルでの指先の器用さ、集中力が要求されてきます。
みなさん気になる「ぎんなんのにおいがするのかどうか」。一度煮てパッケージしたものを使っていますが、若干指先にそのにおいはあります。公園で拾ってきたものはもっと強烈だと思います。

 

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食材のなかでも最高難度と思われます、米です。

あえて米に挑戦するのは「やべっ、明日ハロウィンじゃん!」そんな急ぎのときにハロウィンを演出できるのは米だと思うからです。

 

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ガジガジと削ります。

炊いていない米は硬いですが、ほじくりすぎると割れます。慎重に表面を削っていきます。

 

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この作業、すさまじい集中力を消費します。肩の凝り方も半端じゃありません。

ハッキリ言って、楽しくもなんともありません。

 

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米粒の撮影が難しく、こんな感じになりました。中央の米がハロウィン仕様です。

家のなかに飾ったところで確実に失くしますし、食べられません。残るのは肩と眼球の凝りだけでした。

 

楽しく作れるのが一番!

こうして種類の食べ物をハロウィン仕様にしました。

作る工程は、米以外楽しかったですし、達成感もあり、オリジナリティも出せます。

カボチャ以外の食べ物を使って、ハロウィンの演出にぜひ活用してくださいね。

 

※飾りとして利用した箇所以外の部分は、筆者が責任持っていただきました。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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和食器は箸だけじゃない! 柄杓(ひしゃく)だって和食器であることを実践して検証する

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食べ物を口に運ぶときに用いる、日本式の食器と言えば箸です。「世界の和食」を象徴するアイテムですね。

そんななか、日本の食器で一つ忘れているものがあると思いませんか。そう、柄杓(ひしゃく)です。その形状としては和のスプーンというポジションにあたるはずです。今回は、この柄杓が食器として機能することを証明し、神社に置かれているキャラからの脱却を図ります。

 

柄杓で食べてみよう

柄杓の本来の役割は水を汲み取ること。柄杓の歴史を鑑みても、「汁もの」への耐性は高そうです。日本式スプーンの役割を担えるのか。実際に食べて検証してみます。 

 

【検証その1:味噌汁】

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柄杓の役割を考えれば味噌汁はいけるはずなのです。問題は具材ですね。それをすくいとって口に運べるのか。確認してみましょう。

 

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お椀とジャストサイズの柄杓。じゃがいもをすくうのに苦戦しています。どんぶりに味噌汁をいれたほうがよかったですね。

 

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「味噌汁」はすくって飲めました。しかし具材はすくえません。

お椀から味噌汁をすくって飲むという考え方がズレていました。鍋から直接柄杓ですくい、柄杓のまま食卓に並べたほうが、洗い物が減らせて具材も食べられます。

 

【検証その2:白米】

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和の食器であるならば、ジャパニーズソウルである白米は食べられるべきです。

 

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お椀からコメをすくいだすことはできました。まえもってふわっとお椀に盛っておいたほうが、すくいだすのが楽そうです。

 

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持ち手の位置がかなり高い位置になるので、五十肩のかたや体が硬いかたにはきつい動きです。「口に運ぶ」というよりは、口に「落とす」といったほうが適切ですね。

 

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食べた後の柄杓を見ると、ご飯粒がべたりとこびりつき、洗うにも時間がかかりそうです。ゆっくり食事を楽しむ時間がないとき、柄杓は避けるべきでしょう。

 

【検証その3:ナン】

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いままでは箸やレンゲなど、他の道具の代わりとして使えるかどうかを検証してきました。今回は手で食べるものに挑戦してみます。ナンです!

 

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……挑戦するといったもののアプローチがわかりません。

「ナイフとフォークで納豆ご飯をたべてみろ」といわれた感覚です。とりあえず切断を試みます。

 

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ちょっと削れました。……ナンは手で食べましょう。

 

【検証その4:ステーキ】

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今度は、洋食器であるナイフとフォークを超えられるか検証します。ステーキを柄杓で食べてみます。

 

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全然切れない…かといってすくいあげてかみつくにもサイズが大きすぎます。

 

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ここはおとなしくナイフを使いカットします。
不思議と柄杓がフォークっぽく見える写真ですね。

 

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カットした肉をすくいとろうとしましたがダメでした。
すくう方向が逆だろ、というツッコミは心のなかに留めておいてください。やはり柄杓はナイフ、フォークの役割を超えられませんでした。

 

柄杓の力を引き出すメシ

柄杓で食べ物をとることは難しいと体感できました。箸やスプーンのような使い方をすることが間違いだったのでしょう。柄杓の特徴を今一度整理し、新たな使い方を模索してみました。

 

盛り付けのアクセントとして

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柄杓で食べ物を口に運ぶことにのみ注目しすぎていました。柄がついている皿という認識でメシを食べればいいのです。柄杓に刺身を盛り付けてみることにしました。

 

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柄杓に氷を入れ、皿の上にひっくり返します。

 

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柄杓の底部分に刺身を盛り付けます。よく高級な料亭で、氷の上に盛り付けた刺身が出てくることがありますね。柄杓であれば、自宅でそれができるのです。柄の部分も何かしら工夫をすればアートっぽく刺身を盛り付けることも可能です。

一風変わった盛り付けを施したい人には柄杓はおすすめです。

 

「柄がついていること」を活用する

柄がついていて、先端に皿がついている食器……柄杓をそう考えれば、こんな使い方も可能です。

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そう、直接火にかけることができるのです。別のお皿に移す必要がないため、洗い物が増えない、アツアツのまま食卓に出せる、熱い部分を直接触らなくて済む、といったいくつかのメリットがあります。

今回、それらのメリットを最大限享受できるであろう料理、アヒージョを作ってみました。

 

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さっきのナンをつけていただきます。むしゃむしゃ食べていると、オリーブオイルが減り、みるみるうちに冷めてきます。

 

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そんなときこそ柄杓の利点が生きてきます。食べてるうちに冷えても、柄杓をそのまま台所に持って行って火にかければ、またアツアツのアヒージョを楽しめるのです。

この方法を使えば、冷えてしまった一人分の煮込み料理の再加熱はもちろんのこと、さらにはご飯や肉におこげをつけたいときにも活用可能です。 

まとめると

  • 変わり種の盛り付けが無限大
  • 再加熱が楽、やけどの可能性が極めて低い
  • 一人分の調理に最適な量を調理できる

上記のような、柄杓には柄杓の利点があると分かりました。

今後ますます注目されるであろう和食文化。そんななかに柄杓の存在を盛り込める可能性は十分にあります。一人暮らしのかたから高級料亭の盛り付けまで!柄杓で和食ライフをエンジョイしてください!

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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物流技術が起こした奇跡。九州に生息する珍魚・ムツゴロウに、赤坂で会える!

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みなさんは、ムツゴロウをご存知でしょうか。

ムツゴロウは九州の有明海の干潟に住む魚。当然それ以外の場所、ましてや東京では生きた状態でお目にかかることはない……。
はずでしたが! 都内で活ムツゴロウをいただけるところを発見しました。今回は食材を紹介することが生きがいのメシジロウくんがレポートします。

 

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活ムツゴロウをいただけるお店は、赤坂見附にある「赤坂有薫」。
そして、私の名はメシジロウ。出発前に動物っぽいTシャツを買おうと思いましたが見つけられず、探検っぽいということでこのシャツに落ち着きました。

「まえもって準備してなくてすみません!でもまあ、探検家っぽくていいっしょ!」

 

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暖簾をくぐると、すぐムツゴロウはいました。
東京ではブクブクを入れた発泡スチロールの容器で生活しているようです。

「実家が豪邸だけど、上京してワンルームの家に住んでるって感じっすね」

 

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早速ムツゴロウを触らせていただきました。
触られるのを嫌がることなく、悟ったように捕まっているのが印象的でした。

「思ったよりおとなしいっす。もっとぬるぬるしてるのかと思った」 

 

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メシジロウくんは食材を紹介するのは好きですが、生き物とのふれあいは不慣れ。
「ムツゴロウ=ぬるぬるしてそう」という偏見で、自前でウエットティッシュを用意してくるレベルの潔癖です。  

 

メシジロウのムツゴロウレポート

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「うおお!胸びれをうまく使って、つるつるのお椀でも動いてる!」

ムツゴロウはこのようにして干潟で移動しています。また、体をしならせて跳ねたりもするそうです。 

 

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「おおふ……おおふ……やっぱキスとかしたほうがいいっすかね…」

「…あのー、ちょっといいでしょうか。持ちかたが違いますね」 

 

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「持ちかたがあるんですか?」

「そうなんですよ、持つ時はエラのあたりをつまむように持ってください。ここに、ムツゴロウがおとなしくなるツボがあります」

 

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「こ、こうですか?」

「うん、そうそう」

赤坂有薫の若大将が直々にムツゴロウの持ちかたを教えてくれました。メシジロウくんは食材を紹介するのは好きですが、生き物の生態には疎いのです。

 

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「ツボおさえたら全然動かなくなりましたね。よく見ると顔結構かわいいっす。笑」

「たまに目がハート形のムツゴロウもいますね」

魚として見て異質なのは飛び出した目でしょう。巣穴からの索敵に適しているのだろうとメシジロウくんは解釈しています。他に特徴的なところは、ギザギザした歯ですね。肉食っぽいですが、主に水中の藻を食べるそうです。 

 

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「全長はライター2本ぶんくらい。ライターの長さはよくわかりません!」

メシジロウさんは食材を紹介するのは好きですが、執筆の段取りに関しては緩いです。このムツゴロウは約15センチほど。年齢は5歳くらいで、福岡空港から空輸されてきたのだそう。

 

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「ムツゴロウ、おとなしくてかわいいっす!飼いたい!よーしよしよしよし…」

おっかなびっくりだったメシジロウさん。社長から教わったツボの位置を完全に把握し、ムツゴロウを愛でまわします。

 

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「はい、じゃ写真はこんな感じでOKっすね!食べましょうか!」

ムツゴロウと仲良くはなっても、そこは仕事と割り切っています。さすが、ドライな男です。 

 

ムツゴロウを食べてみる

ムツゴロウの生態を理解したところで、早速いただいてみましょう。赤阪有薫では3種類のムツゴロウ料理を提供しています。

 

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まずは刺身。
この状態でもムツゴロウは生きており、皿の上をたまに転げまわったりします。
骨の部分は最後にから揚げにしてくれます。

 

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そしてから揚げです。
こんがり揚がったムツゴロウはちょっとかわいそうかもしれません。カリカリの食感はとにかく最高らしいです。

 

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最後に蒲焼き。
秘伝のたれが放つにおいは食欲をそそります。ムツゴロウの味とタレがどのようなハーモニーを奏でるのか、楽しみな逸品!

早速メシジロウくんの感想を聞きましょう。

 

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「…………………」

メシジロウくんの様子がおかしい…。 

 

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あれだけ手を拭いていたのに、ムツゴロウとの別れがさみしかったようで、頬に涙が流れています。しかしこれも人間の営み。別れを乗り越え、喰らいつくすことで生きていくのだ…。

 

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「うぁぁぁーーー!ムツゴロォォォーーー!!!」

 

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「うめぇ!!うまいっす!!この濃い目のタレ!ちょっとジャンキーな風味なのがまたいい!あぁ、これうまいっすね!白飯食べたい!」

どこかに飛んで行った涙の代わりに、笑顔があふれました。
それほどのうまさなのです。

「ムツゴロウってあんまり身がないって思うかもしれないけど、ヒレだ!ヒレにタレがしっかり絡んでて、かつカリッと焼きあげてあるからサクサクしてうまいっす!骨までいけますね!」

 

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「から揚げ!ムツゴロウ味が凝縮されてるっす!ムツゴロウ本来の味を楽しむならこっちっすね!蒲焼きのときに感じたサクサク感が超レベルアップした感じ!」

 

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「刺身は川魚っぽさがありますね。海の魚の刺身より歯ごたえがある。大人の酒の肴って感じっす!そしてなにより、写真見てもらえればわかるんすけど、15cmそこらのムツゴロウをここまできれいにさばくの大変っすよ!このきれいに盛られた皿を芸術として見てほしいっすね。」

冒頭からドライな感じだったメシジロウくん。
熱のこもった感想をくれたのはレポートを通じてムツゴロウへの親しみが生まれたからに他なりません。食材を知ることで、一層メシを楽しむことができるのです! 

 

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「ムツゴロウの命を頂戴して、心なしか背中がでかくなった気がするっす!」

嬉しそうに勘違いしているメシジロウくんですが、その感覚はあながち間違いではないかもしれません。刺身にしても生きているように、ムツゴロウは生命力の強い生き物。食べて元気になれる食材でもあるのです。

ちなみに赤坂有薫では、5月~11月末頃までムツゴロウ料理を提供しています。

今回は東京で生きた姿を見られるとは思いもしなかった、ムツゴロウと出会いました。これからも世に伝えたい食材をレポートするため、今日もメシジロウくんは食べ歩いていることでしょう。

 

お店情報

赤坂有薫

住所:東京都千代田区永田町2-14-3東急プラザ赤坂3F
電話:03-3592-0393
営業時間:【月~金】11:30~14:00、17:00~22:00、【土、日、祝】16:00~21:30

※本記事は2015年9月の情報です。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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水の代わりに“黒い温泉”を使ってメシを作ってみた!

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世の中には黒いものがたくさんあります。それは、当然食べ物にもあります。そしてあまり知られていませんが、”黒い温泉”というのも存在します。
今回は、この黒い温泉を利用すれば、あの有名な黒いメシの偽物を作ったり、本来白いメシを黒くできるのではないかと思い立ち、検証してみました。

 

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これは黒いメシの原料となる、黒い温泉です。
湯船に張るとこんな感じに仕上がります。

 

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湯船の中に手を入れるとこんな感じ。見た目はコーヒーや醤油とほぼ変わらないですね。

この温泉は、通常、一般人が手に入れることはできません。今回この企画が実現したのは、私が黒い温泉を持つ浴場の従業員であるからです。端的に言えば、職権乱用です。

 

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ペットボトルに入れて持ち帰った黒い温泉は、まず2つのざるに濾過紙(諸事情により、今回はティッシュ)をはさみ込み、通過させます。この工程を踏むことで、「湯の花」と言われる固形の温泉成分を取り除くことができます。 

 

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そして殺菌のため、煮沸します。
黒い温泉の下ごしらえは完了です。

 

黒い温泉で富山ブラックのニセモノを作る

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黒いラーメンといえば、誰もが「富山ブラック」を思い浮かべることでしょう。

今回は富山ブラックのニセモノを作るべく、カップラーメンに黒い温泉を注ぎます。本家もびっくりの黒いラーメンが誕生するはずです。

 

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3分後、フタを開けてみると見事に卵が黒っぽくなっていました。
においは普通のカップラーメンです。

 

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食べてみると、ほんのりと甘みが増し、口当たりが優しくなった気がします。
これは全然いけます。というかウマい。

 

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この汁を見てください。黒いです。富山ブラックより黒い気がします。
私は富山ブラックを食べたことがないのでわかりません。

 

イカスミパスタのニセモノを作る

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続いて、黒いパスタといえばイカスミのパスタが有名ですね。ということで、黒い温泉を使って黒いパスタをつくります。

オリーブオイルでニンニクを炒めたところに黒い温泉を投入します。

 

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オリーブオイルと混ざったところでパスタに絡めていきます。
イカスミパスタなのに味付けがペペロンチーノなのは、食材を買うのがめんどうなので、自宅にあった食材だけでできるパスタをチョイスしたためです。

 

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思ったより黒くならなかった……どうやら黒い温泉は汁物系のほうが黒さが際立つようです。イカスミ感ゼロ。ただのペペロンチーノです。

 

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美味しいペペロンチーノだ!
黒い温泉風味もありません。ニンニクのパンチにノックアウトされています。

 

白飯を黒飯にする

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ラーメン、パスタは既にある黒い食べ物を模倣してみました。続いては本来白いものを黒くします。炊き込み御飯です。水の代わりに黒い温泉を注いで炊き上げます。

 

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できました。思ったほど色がつきませんでした。

 

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しかし、普通に水で炊いた炊き込みご飯と比べるとその差は歴然。違う炊き込みご飯の素をいれているようです。

 

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同量の水分で炊いたにも関わらず、黒いほうには水気があります。

浸透圧とかそういうやつの関係かもしれません。味は炊き込みごはんの味に加え、カップラーメンと同様に甘味が際立っているような気がします。 

 

黒さを活かし、本物の闇鍋を作る

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最後に、季節を先取りして鍋料理をつくります。下ゆでした大根、ニンジン、ゴボウ、レンコン、鶏肉に醤油、みりん、酒、砂糖、出汁の素で味付けし、黒い温泉で煮込みます。

 

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黒い鍋、闇鍋の完成です!!!と堂々と言えない、普通の色合いになりました。
これがホントの闇鍋だぜ!と喜びたかったのですが……野菜の水分が出て薄まったのかもしれませんね。

 

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そして気になるのは食器のふちに付いた黒いつぶつぶ
今回の検証で一番の山場な気がします。

 

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あえて、すごくデカイつぶつぶがついている大根を食べてみました。 

 

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苦い!すごく苦い!
私が思うに、こいつは灰汁です。黒い温泉の成分と、食材から出た灰汁が結合し「強い灰汁」が出ているようです。煮込みの最中から灰汁を積極的に取り、ガッツリ煮込まないと本当の闇鍋には仕上がらないようです。

 

総括 

湯船に張ると真っ黒な温泉でも、調理に使うと真っ黒にはなりませんでした。

黒さを強調するときは汁っぽい料理を作るのがよいです。味は食材の甘味が引き立ち、口触りが優しく、まろやかになります。ただし、煮込むときはまめに灰汁を取らないと苦くなります。ちなみにお腹は壊していません。安心してください!

 

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一連の検証を終え、闇鍋に使った鍋を洗っていると、クマちゃんスポンジに黒いつぶつぶがついていました。煮沸に使用したやかんにはついていないので、やはり食材から出た灰汁だと思われます。 

最後に……絶対にマネをしないでください。温泉を飲むときは指定の飲泉所で、飲泉許可があるものを飲みましょう。また、温泉のお持ち帰りもご遠慮いただいています。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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